あの、初めまして。聖櫻学園3年B組の正岡真衣と申します。私は体が弱く、授業を受けていてもすぐに保健室へ、ということが多いので、今までクラスの皆さんに迷惑をかけてしまいました。だからといって、今は元気なのかと言えばそうではなく、今日も授業のほとんどを保健室で過ごすことになりました。
そうして寝込むことが多かった私ですが、今、
「あ、桐崎さん。部活終りですか?」
「ん、まあな。正岡は、体調はどうだ?」
「今は何ともありません」
彼、桐崎剣丞さんに恋をしています。
彼は去年こちらに転校してきた方で、剣道部に所属している同級生です。今年はクラスが違うので滅多に会えませんが、部活が終るとわざわざ保健室へ来てくれます。そのほとんどは私と関係ないのですが、こうして会えると、とても嬉しいのです。今日はどうやら竹刀の手入れの最中に手を切ったそうで消毒に来たようです。
「今から帰るのか?」
「はい」
それでも帰る時は途中まで送ってくれます。
「随分と嬉しそうだな」
「えっ?あ、その……」
それは貴方と一緒にいられるから、と言えない自分が恨めしいです。実際に付き合えてあんな風に一緒にいられている火野さんと望月さんが羨ましいです。……あ、でも、あそこまでは恥ずかしくて無理ですね。
「?変な奴だな。そういえば今日の練習で律がな」
そう言って笑う桐崎さんは、どこか楽しそうでした。五代さんが従姉なのは聞いてますが、この笑顔が家族だからだと思うと、胸が苦しいです。
「あの……」
「ん?」
「桐崎さんは、その……す、すごく、背が高いですね……」
好きな人は、いるんですか?そう聞ければ、どれだけ楽でしょう。そんな勇気は私にはなく、思わず変なことを言ってしまいます。すると桐崎さんは目をきょとんとさせて、小さく噴き出して笑いました。
「180を少し越えてるくらいだが、確かにお前と比べたら高いか」
「あぅ……」
私の頭をぽんぽんと叩いて微笑む桐崎さん。その笑顔は、夕日と重なって少しかわいらしかったです。普段はキリッとしてかっこいいから、そのギャップでしょうか?
その後バス停で別れて、私は先を歩く桐崎さんの背中を眺めながら、バスが来るのを待ちました。
あれから数日経った今日の放課後は、体調が良かったので保健室に行くことはありませんでした。なので、同じクラスにいる五代さんから、桐崎さんについていろいろ聞いてみることにしました。
その結果、五代さんは桐崎さんのことを家族として、剣道の良きライバルとは見ているようでしたけど、恋愛での好きではなさそうでした。少しほっとしました。すると、
「正岡、いるか?」
「ひゃいっ!?」
急に桐崎さんが教室に来て、思わず変な声が出ました。
「あの、どうしました……?」
「ああいや、律から、今日は部活はいいからお前を送って帰れって言われてな。大丈夫か?」
「は、はい、大丈夫です………」
五代さん……もしかして気付いてこんなことを……?
今日も今日とて、桐崎さんと一緒に下校しますが、五代さんの後押し?の所為か、いつも以上に意識してしまいます。桐崎さんの顔もまともに見れません。で、ですがこれはチャンスというものです。だから、
「あの、桐崎さん……!」
「ん?」
「その、私……」
心臓がドキドキして、今にも息が詰まりそうですが、私は勇気を振り絞って、
「私は、貴方の事が―――」
to be continued...
続き物番外編、《恋する病弱少女》です。主役は小ネタでも人気の正岡真衣ちゃんです。本編と絡めるかは未定です。本編はあくまでも霞黒×エレナですからね。でも真衣ちゃん書いてると結構楽しい。
本編もありますが、こちらも最後までお付き合い下さると幸いです。