俺は今、悩んでいる。
11月某日の放課後。今日は部員達を早く帰して、誰もいない部室で1人ソファに深くもたれ掛かって溜め息を吐く。目の前のテーブルの上には進路希望の紙。一応進学にしようとは考えてるんだけど、それをどこにするか。
『なるほど、進路で悩んでいるのか』
あのまま部室で唸ってても仕方ないから、家に帰って間宮先輩に相談。
「進学にしようとは、ぼんやりと考えてるんですがね」
『それの内部と外部で迷ってるんだね。私は外部一択だったからね』
「そういえば、先輩はどうして外部を?」
『教師になりたいというのもあったし、1人暮らしに憧れてて』
あー、なるほど。確かに1人暮らしなら外部の大学選ぶよな。ただ、1人暮らしだと洗濯も料理も自分でやらなきゃだし、俺の記憶通りなら先輩は高校時代、昼食は購買やら学食やらカップ麺の類やらだった気がする。料理は大丈夫だったのかそれとなく聞いてみると、
『……ミスト君、世の中には知らなくていいこともあるんだよ』
震え声でそう返された。しかもネト麻のハンネで呼ばれた。何があったんだろう。多分炭化したとかそんなのだろうけど、聞かない方がいいのかもしれない。先輩料理とか上手そうなのに。
『火野君は何を目指してるとかないのかい?』
「目指してるもの、ですか」
『うん。私なら教師だし、セイは親の跡を継ぐって言ってたしね』
ふむ、将来のことも含めて考えるのも手か。でもそうするとますます悩むな。
『霞なんかは……あ、そうそう。霞で思い出したが、あいつ彼氏できたらしいぞ。知ってたかい?』
「月見原先輩にですか?いえ、初耳です」
『菘にもいるし、セイは婚約者いたっていうしね』
「え、日比野先輩にですか」
『らしいよ。……あれ?そうなるとあの写真部で独り身って私だけ?』
「です、ね。俺はエレナと付き合ってますし」
『私だけぼっちなのか………?また1人でクリスマス過ごさなきゃいけないのか?』
「お、落ち着いてください先輩」
電話の向こうでやたら不気味に呟いてる先輩怖すぎる。ていうかまたって、去年も1人だったのかクリスマス。
「い、いつかは先輩にも彼氏できますよ。ほら、先輩美人ですし」
『慰めの言葉とかかけるくらいなら誰か紹介してくれ!』
「こっちで紹介しても遠距離恋愛になりますよ……」
『うぅ、くそうリア充め……爆発しろ』
「先輩の口からそんなセリフ出てくるとは思いませんでしたよ」
そのまま先輩はぶつぶつ呟いてるだけになったので、電話を切る。なんか先輩の印象変わったなぁ。しかし、目指してるもの、か。…………そういえば、小学だか中学だかの卒業文集らしきもので何か将来の夢とか書いてた気がする。あれどこにしまったっけ。部屋のあちこちを探してるとゆっくりドアが開いて母さんが入ってくる。
「やあ、少年。何かお困りのようだね?」
「……何やってんの、母さん」
「ご飯だよ~。で、何探してるの?エロ本?」
「そんな買った覚えのないもの探してない。卒業文集だよ」
「あー、あれね。でもなんで?」
「あれに将来の夢何書いたっけって思って」
「確か何も書いてなかったよ」
えー?まじかよ。どうしようか。
「とりあえず、先にご飯食べなよ」
「ん、そうする」
仕方ない、文集の将来の夢は諦めて進路は明日にでも捻り出そう。
でもって翌日。
「進路調査票出してないの、後は火野君だけよ」
「すみません……」
昼休みに佐藤先生に呼び出されて職員室へ。内容は予想通りというか、進路調査のことだった。いい加減出さなきゃいけないんだけど、未だどちらにするか悩んでる。
「進学なのは、決めてるんだっけ?」
「まあ、はい」
「そう。まあ、火野君の成績じゃ内部の方が厳しいかもね」
「そうなんですか?」
「成績というか、授業態度ね。一昨年はどれだけばっくれてたかしら?」
「それに関してはまじすみませんでした」
その事を出されたら謝るしかない。そうだった。あの頃の授業態度考えたら難しいか。外部も危うい気がするけど。一昨年はまだ若干荒れてる時期だったからなぁ。
「ま、今日の放課後まで待ってあげるからしっかり考えて」
「はい。失礼しました」
先生に頭を下げてから職員室を後にする。すると、2人分の弁当を持って立っていたエレナと目が合う。わざわざ待っててくれたのか。
「あ、終った?」
「一応な。とりあえず、昼飯食うか」
「そうねぇ。それじゃあ、屋上に行きましょうか」
そう言って腕を組んでくるエレナの頭を撫でながら、校舎内ではなるべくべったりくっつくなと軽く注意して屋上に向かう。こいつはほんと時間と場所を弁える気がないなぁ。可愛いからいいけど、色々抑えるこっちの身にもなってほしいよ。
ちなみに屋上に来てからは、誰もいないというのをいいことにエレナはやたらと密着してくる。具体的には胸を押し付けてきたり手足を絡めてきたり。すごく、食べづらい。
「なぁ、エレナ。弁当が食べづらいんだけど」
「もう、こうして可愛い彼女がくっついてきてるんだから少しくらい手を出してもいいんじゃないの?」
「デザートは最後までとっておく方なんだよ。食べ終ったら相手してやるから」
「むー、仕方ないわねぇ」
俺から離れると、不満げに弁当を食べ始める。けど、俺がおかずを食べさせてやるとすぐに機嫌が直った。せめてもう少し長続きさせるとか、食べないようにするとかしろよ。
「あ、そうそう。俺、内部進学にするよ」
「あら、そうなの?じゃあ同じね」
なんだ、エレナも内部だったのか、良かった。遠距離になるかもしれないけど自分で決めるまで進路は聞かないようにしてたけど、取り越し苦労?だったかな。
「さ、霞黒くん。食べ終ったんだから相手して」
「お前なぁ……」
両手を広げてカモンと言いたそうな顔の彼女(可愛い)に若干呆れながらも、抱き寄せて昼休みが終るまでの時間いっぱい可愛がってやることに。なお、学校では自重することにしてるから頭や顎下を撫でたりとかだけど。昼休みの屋上とか見つかりやすいし、見つかったら死ねる。
\(`д´)ゝデュエッ!クロウズです。もう5月です。
『カメラと棒付きアメと』だけで見ると、3ヶ月ぶりの更新になります。間が空きすぎですね。もう少し更新速度上げていきたいです。
3年生も終盤になると進路がどうだとかありましたねぇ。当時自分は特にやりたいこととか見つかってなかったのでとりあえず進学してました。まあ、今も特にやりたいことなんて見つかってないんですがね。
そろそろ最終回に向けて考えていこうと思うのですが、どんな最終回とエピローグにしようか。恐らく卒業式はカットされますが。まあ、エタることだけはしませんので、最後までお付き合いください。
それではこの辺で。俺達の満足はこれからだっ!