カメラと棒付きアメと   作:クロウズ

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Ⅹ話目

 木曜日。今日は毎週恒例の弁当交換の日だ。俺とエレナはいつも通り用意した弁当を互いに交換して、それを食べる。いつもは屋上か中庭に移動するんだが、今日は俺達にしては珍しく、他の奴らと一緒に教室で食べている。

 

 

「うん、今日も美味い」

「そう?良かったぁ。霞黒くんのも美味しいわよ」

「いいなぁ、弁当交換出来る相手がいるって」

「朝田、お前それ以前に料理しないだろ」

「さ、最近するようになったから………」

「私も京と弁当交換しよっかな」

「二度手間だろそれ」

 

 

 そんな他愛ない話をしながら、弁当をつつく。するとルメールが手を叩き、

 

 

「そういえば皆サン、最近ある噂知ってマスか?」

「噂って、どんなの?」

「それがデスネ、放課後空き教室やとある部室デ女性の切羽詰まったような声らしきモノが聞こえるらしいんデスヨ」

「そ、それは奇妙ですね……」

「は、はははそんなの何かの聞き間違いか空耳じゃないの?」

「ん?朝田って心霊系苦手なの?」

「「………」」

 

 

 瞬間、俺とエレナの箸が止まる。もしかして、アレのことじゃないだろうな。ちらっとエレナを見ると、同じことを思ったのか顔を赤らめてぷるぷると震えている。だけど、まだアレのこととは断定できないしもしかしたら別のことかもしれないし。

 

 

「そして少しシテから入ってみてモ、人の姿はなかったようデスヨー」

「ま、ままままさかそんな……」

「ちなみに、何か匂いとかは?」

「確か、イカ臭いト聞きましたヨ。それが何か?」

「いや、ちょっとね」

 

 

 栢嶋がこちらに意味ありげな視線を送る。こいつ、気付いてやがる。

 そうだよ、その空き教室も部室も俺達の仕業だよ。何やってるんだってナニだよくそが。あの日にヤって以来エレナが病みつきになったのか、2週に一回休日の夜にはヤってて、たまにはいつもと違う場所でヤってみたいっていうエレナの提案に乗って放課後の空き教室や部員を帰した後の部室でヤったんだよ。誰かに見つかるかもしれないとかで逆に燃え上がって興奮してましたすみませんでした!と心の中で謝っておく。しかしそんな変な噂出てるのか。今日からは自重するしかない。

 

 

「火野くん、頭抱えてどうかした?」

「いや……何でも………」

「あ、あはは……でも、噂なんだしあまり気にしないでいいんじゃない?」

「そうだね。犯人は解ったし」

「オー、乙女サン名探偵みたいデスネー」

 

 

 止めろ栢嶋こっちを見るな。

 俺はなるべく栢嶋と目を合わせないようにして弁当を食べ進める。

 

 

 

 

 

 そしてその放課後。部活も終り後輩達を帰らせてから戸締りをしていると、

 

 

「霞黒く~ん♪」

 

 

 どこか甘えてくるようにエレナがすり寄ってくる。しかも体に手を回してくるのだが、その手つきがどこかやらしい。あんな噂流れてるし、栢嶋にも気付かれたんだから自重したいところなんだけどな。発情期を迎えた雌犬かこいつは。

 

 

「戸締りするから一旦離れようか」

「えー、もうちょっとだけぇ……」

「帰ったら存分に甘えていいから」

「ほんと?やったぁ」

 

 

 嬉しそうにしてさらに密着してくるのは構わない。構わないんだけど思い切り胸を押し付けてくるのは勘弁してほしい。元々スキンシップ激しかった奴だけど、最近拍車掛かってる気がする。

 部室の鍵を返して昇降口で靴に履き替える頃には、外は暗くなっていた。そこまで長居してはいなかったはずだけど、冬も近いからだろうか。

 

 

「今日はちょっと寒いわね〜」

「そこまで寒くない、ただくっつきたいだけだろ」

「あら、ばれちゃった?」

「そりゃあな」

 

 

 校門を出るとすぐにくっついてくるエレナに若干呆れるが、剥がすようなことはしない。だってこいつ可愛いし。ただ歩き辛いのはあれだけど。あとこいつの柔らかい胸とかが当たってちょっと、いや、かなりまずい。しかも解ってやってきてるから質が悪い。

 

 

「んー?どうしたの霞黒くん?」

「……明日覚えてろよてめぇ」

「きゃー、霞黒くんのエッチー」

「んだとこのやろっ」

「往来の真ん中でいちゃついてんじゃねーデスヨ」

 

 

 ニヤニヤしながらこっちを見るエレナの頭をわしゃわしゃとしてると背中をどんと誰かに押され、振り向くとうちの部の後輩の1人、暮橋(くれはし)がいた。なんだこいつ、帰ってなかったのか。

 

 

「あらぁ?ユーちゃんじゃない」

「まったく部長達ハ。時間と場所くらい弁えて下サーイ」

「俺は弁えてるんだけどなぁ」

 

 

 そう呟くと、何言ってるんだこいつとでも言いたそうな目で見られた。ので、頭をわしゃわしゃとしてやった。

 

 

「ニャーッ、髪が乱れマース!」

「変な目で見た罰だ」

「ノー!?!」

「はいはい、霞黒くんそこまで」

 

 

 数秒くらい続けてるとエレナに止められたから終了。暮橋は目を回したからか頭をぶんぶんと振る。そうしたら余計に髪は乱れるような気が……と思ってたら案の定ボサボサになった。何がしたいんだこいつは。

 これ以上は相手すると面倒なことになりそうだから暮橋は放っておいてさっさと帰る。多分明日の部活中何かしら文句なり言ってくるだろうけど無視しよう。

 

 

「もう、霞黒くん。あんまり女の子の髪を気軽に触っちゃ駄目よぉ?」

「解った解った。お前も含め今度からはしないようにするよ」

「わ、私にはいいのよ?というかやめないでお願い」

 

 

 髪は女の命って何かで聞いたことあるから、やめようと思ったが止められた。まあ、エレナの髪さらさらで触ってて気持ちいいからやめる気ないんだけど。

 

 

「解ってるよ。俺だってお前の頭撫でれないのは嫌だし」

「霞黒くんのなでなで気持ちいいから好きよ~」

「そりゃどーも」

 

 

 猫みたいにすり寄るエレナの頭を撫でながら家まで送り、別れる。明日は金曜日で、えーと……あの日か。ほんと、あれ以来結構爛れてるよなぁ。これからは学校では控えるとして、この2週に一回の方は……とりあえずはこのままでいっか。ただいまーっと。




 学校で何やってんだこいつら…………。あっ、\(`д´)ゝデュエッ!クロウズです。
 前回の更新から年またいで1ヶ月も間が空きましてすみませぬ。前回の後書きで次回は甘くしたいとか言っておいて甘くないです。微糖ですこれ。重ね重ねすみませぬ。次回こそは、甘くできたらいいなぁ(他人事)。



 それではこの辺で。俺達の満足はこれからだっ!




 人物紹介に〈暮橋ユーキ〉が追加されます。

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