「ついに、ついにこの日が来たわよ霞黒くん!」
「そーだな」
興奮するエレナとは対照的に、若干冷め気味の俺。エレナのいうこの日とは、櫻花祭のことだ。一昨年は風紀委員に捕まりかけたりNo.1カップル決定戦に参加させられたりと、苦い思い出がある。去年やってたのはお化け屋敷だったしエレナとは付き合ってたからか、一昨年ほど苦い思い出はない。ただ、そのお化け屋敷が本格的すぎたため鈴ちゃんがガチ泣きしたのはすごく焦った。あの後3日は口利いてくれなかったし。
今は部室で、部員総出でカメラの点検をしている。数人とはいえ部員となってくれる後輩が入ってくれたお陰で、部は何とか存続出来そうだから、さらに増やすためここが頑張り所だ。
「もう、霞黒くんノリが悪いわよ?」
「今こっち優先したいんだけど……。お前のは?」
「ばっちりよ~。昨日しっかり用意したしね」
そう言って抱き着いてくるエレナ。ええい、いちいちくっつくな部員共が見てるだろ。
「ヘーイ部長、いちゃつくのはイイけどサー、時間と場所を弁えなヨー」
「うるさい似非外国人」
「れっきとしたハーフで帰国子女ネ!」
「どーどー。部長、点検終りましたよ」
「おう」
後輩達も点検終了みたいだから、ひとまず解散させて俺達も教室へ戻る。今年のクラスの出し物は、獣耳喫茶とかいう謎のものだった。俺達はもちろん、客側も全員何かしらの獣耳着用を強要され、希望者はコスプレも出来る。なんで客にも強要するんだろうか。
「霞黒くんは犬耳だっけ?」
「だっけって、お前が決めたんじゃんか」
「あはは、そうだったわね」
正直何耳でも良かったんだけど、エレナたっての希望で犬耳になった。俺はそんなに犬っぽいんだろうか。黒狗?狂犬?あーあー聞こえなーい。
「私はコスプレもするから、楽しみにしててね」
「ああ、コスプレするんだ」
「せっかくだしね。ただいまー」
教室に戻ると、いつもと違い喫茶店の様相を呈していた。雀卓はない、当然だけど。そして見渡す限りの獣耳。犬、猫、ウサギはもちろん、たぬきにクマ、果てにはカピバラまでいる。
「ああ、戻ってきたね。はいこれ、火野君の」
「おう。……ん?」
多分、アリスに出てくる白ウサギであろう格好をしたクラスメイト(女子)が渡してきた耳のカチューシャを見て、ちょっと違和感。というかこれは、
「なあ、これ犬じゃなくて狼じゃ」
「あり?火野君て犬耳希望だった?」
「霞黒くんは犬って言ったわよぉ?」
「あちゃー、どっかでミスったね」
「でも、狼もアリかも……」
「いいのかよ、俺は何でもいいけど」
「んじゃエレナちゃんは着替えて着替えて」
「はいはーい。霞黒くん、覗いちゃ駄目よ?」
「覗かねーよ」
備え付けの簡易更衣室に入るエレナに手を振る。まったく、人を何だと思ってるのか。ただ、入る前に一瞬だけ見えたけど、持ってた衣装巫女服っぽかったな。
それからすぐに、櫻花祭が始まった。けど、一般客はまだ校内に入ったばかりだろうから、まだ暇だ。動いてるのはチラシを配りに行ったルメールくらいなものだろう。ついでに他の学年が何してるかも探ってくれるとありがたい。ちなみにエレナは巫女服に狐耳だった。
「部室行ってきていいか?」
「休憩時間まで待ちなさいな」
「お客さん来たよー」
部室に行こうとしたら止められ、すぐに客が来たから仕方なく動く。と思ったら、マイリトルエンジェルズの鈴ちゃんと春ちゃんだった。鈴ちゃんは黒の猫耳を、春ちゃんは茶色の犬耳を付けてた。
「春わんですよ~、ワンワン」
「す、鈴にゃんだ……にゃん」
「ぐはっ」
「火野君が倒れた!?」
俺の妹可愛すぎかよ、鼻血出たわ。人間て異常な可愛さに当てられると鼻血出すんだな、今日初めて知ったよ。周りに心配されたけど幸い鼻血はすぐ止まったから血の跡を拭いて、2人を席に案内する。その際見えたエレナがむすっとしてたのは、気のせいじゃないだろう。
「大丈夫か黒兄?」
「平気平気。それより、ご注文は?」
「ああ、私はこのチョコケーキで」
「わたしも同じので〜」
「ん、解った」
ついでに、紅茶も淹れてあげよう。
「チョコケーキと紅茶2つなー」
「はいよー」
「すみませーん、注文いいですかー?」
「は〜い、すぐ行きま〜す」
客はどんどん増え、徐々に席も埋まっていく。そしてエレナがいつも通り女性客に絡んでいた。表現が悪い?実際に絡んでるようにしか見えないんだから仕方ない。とりあえず、盛況といえば盛況なんだろう。それからというもの、迷惑な客も来ることなく休憩時間になるまで面倒事は特に起きなかった。エレナが若干迷惑かけてた気がしないでもないけど。あいつはずっとああなんだろうな、きっと。
休憩中は他のとこを見回って写真を撮ったり、部室に行って様子を見たりした。ただ、やっぱりエレナが一般の人や後輩達相手に暴走しかけてた、というかしてたから止めるのに苦労した。
そして、その休憩中に日比野先輩と高町先輩に会った。
「やっほークロチャー、モッチー」
「久しぶり~」
「あらぁ、ヒーノ先輩とスズちゃん先輩じゃない」
「お久しぶりです。高町先輩は、イメチェンでもしたんですか?」
眼鏡を外して、長い三つ編みだった髪もバッサリ切ってショートになってる。
「うん、思い切ってね。どうかな?」
「すっごく可愛くなってるわよ~」
「だろー?彼氏が出来たんだってさ」
「へぇ………えぇ!?」
あれだけ俺やすれ違う男子に怯えてたあの高町先輩に彼氏とは。
「びっくりだよなー。あーあたしも彼氏欲しいぜ」
「ヒーノ先輩もそんなこと思うのねぇ」
「お?喧嘩売ってるかモッチー?」
「まあまあ。ヒーノちゃんにはお見合いとかあるじゃない」
「やだよあんな堅っ苦しいの」
「お見合い?」
日比野先輩にはしっくりこない単語だけど、どういうことだろう。
「あぁ、綾小路程じゃないけどあたしん家ってわりと良家なんだよ」
「そうなんですか……意外ですね」
「よく言われる」
からからと笑う先輩。本当に良家のお嬢様なんだろうか。
先輩達は他にも見て回りたいものがあるからとそこで別れ、俺達も教室に戻る。
『櫻花祭、終了の時間となりました。皆さん後片付けをしましょう。繰り返します――』
「ふぃー、お疲れ様ー!」
「終ったねー、櫻花祭」
櫻花祭終了の放送が入る中、クラスではそれぞれ感傷に浸っている。まあ、これが3年生にとって最後の櫻花祭になるからな。行事自体はまだまだあるけど、一大イベントみたいなこの櫻花祭が終るのは、少し寂しいんだろう。
「はいはい、しんみりしないで。後夜祭あるでしょ?」
「あー、あったなそういえば」
「今年は誰がどんなことするかしらね」
片付けも終り、俺達は後夜祭の話に少しばかり盛り上がる。片付けだけでなく、後夜祭も終れば今度こそ櫻花祭は終了。長いようで、短い1日だったかな。
\(`д´)ゝデュエッ!クロウズです。
皆さんは学園祭に思い出ってありますか?自分にはまったくありません。高校では出し物なんてなく、大学では1回生の時以外バイトで行けなかったのです。
今回はいちゃいちゃ要素がまったくだったので次回は甘くしたいと思います。ネタが思い浮かべばですけど。
あ、CA体験エレナ3枚手に入りました。
それではこの辺で。俺達の満足はこれからだっ!