カメラと棒付きアメと   作:クロウズ

23 / 50
9話目

 あれからだいぶ日が過ぎ、期末試験も何とか乗り越えることが出来た。一応全教科とも平均点より上にはなってる。数学は例の如く満点で。

 

 

「霞黒くん、あーん」

「あむ。……いきなり突き出さないでくれ怖い」

「だってぇ。霞黒くん上の空ぽかったし」

 

 

 期末試験も終ると授業は午前までとなり、昼になれば帰ったり部活に行ったりで教室にいる生徒の数はわずかだ。で、俺とエレナは昼飯を食べてるそのわずかな数の一部だ。今日は木曜日だからお互いが作った弁当を交換して、たまにエレナはおかずを俺に食べさせてきては俺から食べさせてもらうのを待ってたりする。最初の頃は弁当が甘くなるとかなんとかクラスメイトには色々言われたけど、今では何も言ってこない。さすがに慣れたか。

 

 

「霞黒くーん?」

「ああ、ごめん。はい、あーん」

「あーん。……んっ、美味しい♪」

「そりゃよかった」

「で、どうして上の空だったの?」

「ん、いや、なんでもないよ」

 

 

 考え事って言っても、別に言うほどのことでもないしな。エレナも追及はせず、弁当を食べ始める。って、口元にご飯粒付けてるし。手を伸ばしてそれを取った後、何の気なしに食べる。と、ガタッと音を立ててエレナが立ち上がってた。どうしたんだ、急に?

 

 

「かか、霞黒くん………今…………っ」

「ん?……あ、悪い、いつもの癖で」

 

 

 昔から鈴ちゃんや春ちゃんがご飯粒付けてたら俺が取ってたから、ここでもやってしまった。しかし、今日みたいに食べさせ合いしたり、最近では人目気にせずキスをしてきたりせがんだりしてるのにこれで恥ずかしがるのはどうなんだろうか。

 真っ赤になってあわあわ言ってるエレナを何とか落ち着かせる。こいつテンパると何言い出すか解らないからな。そして、忘れていた。

 

 

 

「やれやれ、まーたいちゃついてるよ」

「今度もまたベタなことしてやがりますね」

「げっろ……マジ爆発しろ」

「見てるこっちが恥ずかしいんだし」

 

 

 

 数人程度とはいえまだ他にも残っていたことを。さすがにさっきまでの全部見られててああ言われると居心地が悪いというかなんというか。今日は部活やらないから、食べ終った弁当を片付けて荷物をまとめるとまだ赤くなってるエレナを連れてそそくさと退散する。途中昇降口の辺りで鈴ちゃんと春ちゃんに会ったから、そのまま4人で帰ることに。まだ中学生の春ちゃんがここにいたのは驚いた。どうやら園芸部の活動の一環で用事があったから来てたらしい。その用事が終ってからはずっと鈴ちゃんと一緒に華道部の部室にいたという。

 

 

「来るなら言ってくれれば良かったのに」

「こっちに来ること、今日思い出したらしいぞ……」

「うっかりしてました〜」

「これで今年受験生なのだから、私としては心配だ……」

「そっか〜、春瑚ちゃんも来年からは高校生なのよねぇ。何かあったら私も力になるからね〜。……ぐふふ」

「エレナ、変な笑い出てるぞ」

 

 

 あと、いくらお前でも春ちゃんに手出しさせないからな。もちろん鈴ちゃんにも。それにしても、さっき2人が言ったように春ちゃんももう受験かぁ。この頃の俺は………確か一番荒れてた時期だったっけ。今思い返すと、あれは酷かったな。学校内では誰とも話さなかったし、誰も近寄って来なかったし。生徒どころか教師すら何も言ってこなかったからなぁ……当時の自分をぶん殴りたい。

 そうやって過去の自分に自己嫌悪した後、いつの間にか来てたいつものコンビニでエレナと別れて、それから少しして鈴ちゃん達とも別れる。

 

 

「ただいま」

「おっ帰りー。あれ、エレナちゃんはー?」

「連れてきてないけど」

 

 

 今日は珍しく家にいる父さんの膝に座ってる母さんに手を振って答えて弁当箱を洗う。つーか、ああしてるとほんと親子にしか見えないなあの2人は。

 

 

「えー、なんでなんでー?」

「なんでって、別に何も約束とかしてないし」

「エレナちゃんって、霞黒と同い年の金髪の子だったか?」

「そうそう。霞黒くんと付き合ってるんだよ」

「ほー。あの霞黒に彼女ねぇ」

「びっくりだよねー。で、もうヤった?」

「なんでそういうの聞き出そうとすんのさ」

 

 

 ヤってないと手を振って答えて2階に上がって部屋に入り、鞄を放ってベッドに寝転ぶ。あー……着替えなきゃいけないんだけどとてもダルい。このまま寝たい。

 でも、そうはさせてくれないのが俺の家族。少し休んでから着替えたりしようと思ってたらドアからカリカリと音が聞こえてくる。そういえば帰ったら散歩に連れていく約束してたんだった。ドアを少し開けると、その隙間から首輪にリードを付けたシロが素早く入ってきては足に擦り寄ってリードを足に巻き付けてくる。これはシロが散歩を急かしてる時にしてくる行動だけど、絶対に俺にしかしない。母さんや父さん、さらには鈴ちゃんや春ちゃんがいる場合でも絶対に俺に来る。シロのこれには困ったもんだ。

 

 

「ワンッ、ワンッ」

「解ってるって。着替えるから待ってろ」

 

 

 足に巻かれたリードを解いてちゃっちゃと着替えを済ませる。着替え終ってリードを持つと、シロはブンブンと尻尾を振って引っ張り始める。そのシロを抱き抱えて外に出る。

 

 

「さて、それじゃ行くか」

「ワンッ」

 

 

 元気に先を急ぐシロに引っ張られながら、いつもの散歩コースである公園まで歩く。相変わらずちっこいのに意外と力あるんだよな。

 

 

 

 

 

「じゃあ、俺はベンチに座ってるから」

「ワンッ」

 

 

 公園に着いてリードを外すといつも通り砂場に一直線。相当気に入ってるんだな、あの砂場。しっかし、相変わらずというかなんというか、子供全然いないな。小学生ならまだ学校だから当然といえば当然なんだけど、ここ数日、ここで遊んでる子供は見てない。数日どころか、数週間見てないって言えるくらいに。俺はよく遊んでたけど、今の子供はそうでもないのかなぁ。

 砂場で遊んでるシロを見る以外することがないからぼーっと空を眺めたりしてると、視界の端で誰かが公園に入ってきた。珍しいと思ってそっちを見ると、春ちゃんと鈴ちゃんだった。

 

 

「あれ、珍しい。どうしたの2人とも?」

「お散歩ですよ~。おにーさんは~?」

「シロの散歩。今はあっちの砂場で遊んでるから」

「あの子はほんと、砂場が好きだな」

「着いた途端に一直線だからなぁ。……で、鈴ちゃん。何してんの?」

 

 

 俺の右隣に座って、こてんと膝上に頭を乗せてくる鈴ちゃん。かわいい。

 

 

「久しぶりに黒兄と日向ぼっこ……」

「じゃあ、わたしもおにーさんと日向ぼっこ〜」

 

 

 そう言って春ちゃんも、俺の左隣に座って俺の膝を枕にする。かわいい。頭を撫でてやると、2人ともくすぐったそうにする。かわいい。さっき鈴ちゃんが言ったけど、こうして日向ぼっこするのは確かに久しぶりだな。そう思いながら撫で続けてると、2人そろって寝たのか、下から寝息が聞こえ始める。

 

 

「すぅ………」

「ふみゅ……」

「あれ、寝ちゃったのか……」

 

 

 まあ、風が気持ちいいしあったかいしな。………ふぁ……なんか、2人見てたら俺も眠くなってきたな…………。ちょっと、寝るか……。

 

 

 

 

 

   ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲

 

「公園公園っと~」

 

 

 数学のことで霞黒くんに質問があったけど電話に出ず、家に行けば散歩に行ってたとのこと。もしかして霞黒くん、散歩だと携帯持ち歩かないのかしら?それにしてもついでとはいえおばさんとおじさんに挨拶したらあんなにも引き留められるなんて……親公認ねぇ。ママも霞黒くんに会ってみたいって言ってたし。

 

 

「でも霞黒くんは未だに玄関より先には入らないのよねぇ。……あ、いたいた。おーい、霞黒く………おっとぉ」

 

 

 公園に入ってすぐのベンチに霞黒くんの後ろ姿を発見して近付いてみたら、五十鈴ちゃんと春瑚ちゃんの2人と一緒に気持ち良さそうにお昼寝中だった。しかもその足元では遊び疲れたと思えるシロちゃんが丸まってお昼寝してる。ここまで無防備だといたずらしたくなるけど、さすがにそれは悪いからカメラと携帯で写真を撮らせてもらうことにしましょう。携帯で撮る理由?そんなのもちろん、後でおばさんや先輩達に送る為よ。

 

 

「んー………よしっ、綺麗に撮れたわ」

 

 

 そしてこれを送信してっと。これで後は、3人が起きるのを待つだけね。それにしても本当気持ち良さそうに寝てる。今度私も混ぜてもらおうかしら~。

 

 

「すぅ……くしゅっ………」

「んゅ……おにーさーん……」

「…くろにぃ………えへへ……」

「……………」

 

 

 ……………こうやって見てると、私も眠くなってくるわ。……誰もいないし、いいわよね?私も霞黒くんと一緒にお昼寝しても。試しに頬を突いて、起きないことを確認したら春瑚ちゃんを起こさないように抱っこして、霞黒くんの隣に座って膝の上に春瑚ちゃんを乗せる。

 

 

「……槍槓だ…その槓成立せず………むにゃ」

「おねーさーん……くぅ………」

「…えへへ~……」

 

 

 はぁ~、今この状況とてつもなく幸せだわぁ…………ぐふふふ~。それじゃあ……お休みなさ~い。




 あてーんしょーん、はろはろ~。秋刀魚釣りに疲れ果てたクロウズ提督です。磯風はいません。
 今回もいつもと変わらずいちゃついてます。クラスメイトの皆さんはもう慣れました。テスト期間は勉強会という名のデートしてましたがカットしました。だって、見ても壁を殴りたくなるだけですし。最後の方みたいな、いちゃつき無しのほのぼのらしきものもぬるりと入ってきます。この作品に悪男なんていらないんです、多分。



   では、いつものように嘘予告をと言いたいですが今回は告知をば。




 ―――親父が再婚した。それに伴って引っ越しすることになって、相手側の家に住むことになった。急な仕事が入ったからと先に行かされて挨拶に行った俺の前に現れたのは、文字の入った変なTシャツを着た髪の長い人だった。義姉になる人がいることを伝え忘れた親父は後で殴った。Tシャツはいい趣味してると思った。
 ―――母さんが再婚した。それで義理の弟ができるって言われたけど、私としてはどうでもよかった。だから何時来るかも気にしてなかった私は、着の身着のままで文字の入った変わったTシャツを着た義弟となる奴の前を出迎えることになった。シャツはいい趣味してると思った。




    ここまで。
 ↑の内容の小説をここで書いていこうと思います。こちらもガルフレの小説ですので、ヒロイン(義姉)が誰かは想像つくと思います。
 そんなクロウズの新作、『俺達/私達の関係』(近日公開予定)。もし良ければこちらもご閲覧下さい。一応、投稿すれば活動報告にてご報告します。



 ではこの辺で。はらたま~きよたま~。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。