カメラと棒付きアメと   作:クロウズ

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十話目

 夏休みも終って、9月の半ば。6日には俺の誕生日があったけど、今更誕生日で喜ぶのは難しかった。これでバイクの免許取りに行けるけど。

 

 

「て言っても、来月からなんだよな……教習所」

「それじゃあ、火野さんも16歳なんですね」

「6日になったばっかりだけどな。正岡はいつなんだ?」

「わたしは9日です。火野さんの3日後ですよ」

「へぇ、意外と近かったんだな」

 

 

 今は家庭科室でミシンを借り、保健室から正岡を拾って教室に戻る途中。もうすぐある櫻花祭での衣装作りに使ってたミシンが一つ不調になったから、ついでに正岡の採寸もしたいからと俺が駆り出された。内装の買い出しが終って戻ろうとした途端にこれだもんなぁ。

 うちのクラスは望月を筆頭に半数(主に男子)がメイド喫茶を提案したようだけど、全員メイドだけだとつまらない、男子が制服のままになりそう、などの理由からコスプレ喫茶になったらしい。らしいの理由は、当然俺はその時教室からばっくれてたからだ。どうせ部活であちこちの写真を撮りにいかないとだろうし。

 

 

「それにしても、コスプレは…恥ずかしいですね……」

「喫茶店だからな、料理担当とかならしなくていいんじゃないか?それより、そっち重くないか?やっぱり俺が持とうか?」

「大丈夫です。今までお手伝いできなかったので、これくらいは………」

 

 

 そうは言ってもな。さっきからちょくちょく揺れてて気が気じゃないんだよな。

 

 

「今日は、体調が良いので大丈夫です…けほっ」

「言ってるそばから咳こんでるし………」

 

 

 でも教室に着いたか。うーん、一応は大丈夫そうか。

 

 

「ミシンと正岡持ってきたぞー」

「あいよー、その辺に置いといてー」

「あの、わたしは物じゃありませんよ………?」

 

 

 悪い悪い、誰もお荷物だとか思ってないから。それじゃ、後は任せた。

 

 

「あー、ちょい待った火野君」

「なんだ小野寺。俺は今から帰って誰もいない家でシロの世話をしないと」

「お前の採寸も残ってるんだよ、ばっくれたり買い出しでいなくなるから」

「1人だけ逃げようったって、そうはいくか」

「いや、どうせ俺部活の方が………うおっ、なんだお前ら!?離せ!俺は火野だぞ!!」

 

 

 クラスメイト数人に拘束されて、抵抗むなしく教室の隅に連れて行かれる。いや、レンタルだけどもコスプレ自体は慣れてる、慣れてるんだけども!

 

 

「小野寺!あの時の執事服はどうした!俺のはあれで十分だろ!?」

「いやぁ、あれ火野君には少し大きかったし。あと、うちの宣伝になるから強制的に執事服だからね」

「どっちの宣伝だ!このクラスのか、それともお前の漫画か!?」

「もち、どっちも」

「はいはぁい、諦めて採寸されてねぇ~」

 

 

 やめろー!〇ョッカー!ぶっ飛ばすぞー!

 と、口ではそう言うものの長引かせたくはないので素直に受ける。それにしてもこいつ、ほんと胸んとこどうにかしてくれないかな……見ないようにするこっちの事も考えてほしい。

 

 

「んー、やっぱり火野くんは細いわねー」

「無駄に太ってるよりマシだろ……」

「それもそうね~。はい、いいわよぉ~」

 

 

 それじゃ、採寸も済んだんだし俺は帰る。部活もないし。

 

 

 

 

 

 

 

―――――それから数日後。

 

 

 櫻花祭当日の今日、準備のため教室で着替えを済ませた俺達男子は、中で着替え中の女子を待つ間廊下で待機している。

 

 

「うーむ………」

「どうしたの、火野くん。さっきから唸って」

「この格好、やっぱり落ち着かないんだよ」

「そうか?オレはこういうのも良いと思うんだけど」

「俺も好きだけどなぁ」

「………」

 

 

 もしあの時、小野寺の生贄が俺じゃなくてこいつらだったら、今と同じ発言はなかっただろうな。ただ執事服を着せられるだけじゃなく、そのまま執事らしいことをやらされまくった。その所為でこの格好だと動いてないと落ち着かない。誰かに仕えたい。そんな衝動に駆られる。そんな俺の衣装は、小野寺が言った通りもちろん執事服だ。

 別の意味でそわそわしてると、男子の何人かがドアに耳を当てて中の様子を知ろうとしてた。一応聞くが、何してんだ?

 

 

「望月さんみたいな人がいるんだから、女同士のアレなことが起きててもおかしくないだろ?」

「今まさにそんな風になってるしね」

 

 

『ぐふふ、いいわいいわぁ~!』

『も、望月さん……』

『あ~、文緒ちゃんの照れ顔いいわぁ~!もう最っ高よ~!』

 

 

「声大きすぎだろ、あいつ……」

「頼む望月……!写真を!」

 

 

『早速一枚………カメラ…ない!……そういえば、火野くんに預けてたんだった!』

 

 

「なに!?」

「こうなるだろうと思ってな」

 

 

 入れ替わる時にちょっと借りて正解だった。

 

 

「なんてことしてくれたんだ火野ぉ!?」

「うるさい。風紀委員会の命令だ」

 

 

 1年の時点で風紀委員にマークされるのはどうかと思うけどな。とにかく、今日はいつも以上にあいつと一緒に行動しなきゃな。やれやれ。

 

 

「火野くーん!カメラ返してー!!」

「ああ、着替え終っ………」

 

 

 勢いよく飛び出してきた望月は、ポニーテールに犬耳を付けた、アニメにありそうな魔女のコスプレをしてた。似合ってはいるんだけど、なんで犬耳と魔女コスなんだろうか。

 

 

「火野くん、早くカメラ!撮りに回る前に文緒ちゃんのメイド姿を収めたいの!」

「お、おう…」

 

 

 急かす望月の後ろで揺れる髪が、玩具を欲しそうにしてる犬の尻尾みたいに見えた。こういうの見ると、無性に頭を撫でたくなるな。

 カメラの入ってる鞄を渡してやると、一瞬でカメラを用意して教室に消えていった。あいつカメラがある時とない時で身体能力違うだろ、絶対。

 

 

 

 

 

 

 この後、撮りに回る時に望月が例の如く暴走して俺を巻き込んで風紀委員会から逃げ回ったり、冷やかしに来た先輩達にからかわれたり、どこかのクラスが行ったNo.1カップル決定戦に出されそうになることを、俺はまだ知らなかった。




 後編(十一話目)に続きます、どうもクロウズです。
 服装を一々考えるのがめんd・・・・・・むずいっす。助けてNo.39さん!あ、今回量少なくて申し訳ないです。


ガルフレのキューピッドであったエレナのデートガール、2枚は手に入ったんですが3枚目は手に入らず。バッジとかで手に入らぬものか……。



もうすぐ学校が始まる頃になるので、今よりもっと遅れるかもですが、それでもお付き合いくださいましたら幸いです。じゃまた。

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