「夏だなぁ」
夏といっても、6月の上旬だけど。
この前(といってももう先月の話になるけど)言ってた写真部らしい活動は、結局全員の予定が合わずに見送りになった。なら次の週でと考えたけど、中間試験の期間になってたから部活は出来ずじまい。そのせいで本来の狙いだった春を連想させるものは夏を連想させるものに変わって、昨日行ってきた。街中じゃつまらないから山のほうにまで行って。なんで山だったのか。
――――――
「クロチャー、どっちが多くサケを捕れるか勝負だ!」
「いや、確かにこの時期夏っぽいものなかなか見ませんけど、なんでサケっていうかサケは秋ですからちょ、引っ張らないでくださいこの辺苔多いから待ってくださいこれ防水じゃないんでだから引っ張ら―――のわああああ!?」
「あっはっはっは!クロチャーなに足滑らせてんにょわあ!?」
「あわわ……クロチャー君に続いてヒーノちゃんも落ちちゃった………」
「あらあら。2人とも元気ね」
「落ちたところでシャッター切ったら、いい画が撮れたわぁ」
「6月ならまだ水も冷たいだろうに……じゃない!早く2人を引き上げるぞ!」
――――――
カメラは無事だったけど全身ずぶ濡れ。替えの服なんかあるわけないし、先輩達がいたから脱ぐに脱げなかったし。それでも風邪を引かなかったのは不幸中の幸いか。
「今度からは、着替え必須だな………」
「災難でしたね~」
「まぁね。って、春ちゃん起きてたの?」
「はい、ついさっき~」
膝に座らせていたもう1人の幼馴染、
春ちゃんは俺の2歳下で、親父さんは結構有名な植物学者らしく家には色んな植物がある。あれはちょっとした植物園だと思う。その影響か、春ちゃんは植物に対して深い愛情を持ってる。その代わり、人付き合いはそこまでよくない。親以外でとなると、俺や鈴ちゃんとこの家族くらいだ。
「んぅ…おにーさん、頭撫でてもらっていいですか~?」
「ん、いいよ」
「ん……♪」
まだ寝ぼけてる春ちゃんの頭を撫でながら、綺麗な金髪を手櫛で梳いてやる。こういうのは鈴ちゃんの方が上手だけど、あいにく今日はいない。確か、華道の何かだったか。それにしても、春ちゃんはまだ兄呼びしてくれるんだよなぁ。というか鈴ちゃんの反抗期的な態度が最初は結構キてたから、春ちゃんにまであんな態度を取られたら心折れそうてか折れる。だから春ちゃんにはいつまでも素直な子でいてほしい。
部活もないことだし、今日はこのまま春ちゃんを撫でてようかな。
数日経ったある日の放課後、いつも通り望月と一緒に部室に向かう。俺は1人で行ってもいいんだけど、一度そうしたら、こいつだけなかなか部室に来なかった。探してみたら、鼻息荒くして女子生徒追ってたっけ……。あれ以来、なるべくこいつから目を離さないようにすることにしてる。部活の時だけだけど。
「はぁ………」
「あら、ため息なんて吐いてどうしちゃったの?」
「…ん?お前のことでちょっとな……」
「?」
小首傾げるな、かわいいなおい。まぁ説明するのもダルいし、適当ににごす。望月も追及してこないし。
「お疲れ様でーす」
「すみません、掃除当番で遅れました」
部室に入ると、先輩達はみんないた。けど、今日はいつもと少し違ってた。いつもならみんなソファに座ってお茶を飲んでるくらいなのに、今日は備品の点検でもしてたのか、何かしら作業中だった。テーブルの上にはお茶の代わりに分解されたカメラがあった。……ん?分解されてる?
「お?モッチーとクロチャー来てたのか」
「ついさっきですが」
「珍しいですねぇ、備品の点検なんて」
俺達に最初に気付いた日比野先輩が作業を止めてこっちに来る。他の先輩達も気付いて挨拶はしてくれたけど、作業したままだ。何で今日に限ってこんなことしてるのか解らないから、日比野先輩に聞いてみた。
「あぁほら、もうすぐ球技大会あるからさ。一応写真部なんだし、こういった行事の時はこれらちゃんと使わなきゃだろ?」
「そういえば、そうだったわねぇ」
「え、球技大会?俺聞いてないですけど」
「……火野くん、ここ最近の体育サボってたわねぇ?」
「はぁ!?体育サボるとか何考えてんだクロチャー!お前それでも男子か!?」
男子ですよいきなり肩掴みかからないでください。それに俺運動そこまで好きじゃありませんし、景色撮りに行く以外は基本麻雀漬けでしたし。
「だったら、球技大会での主な撮影係はクロチャーな。あ、言っとくけど拒否権はなしだからなっ」
「まぁ、それで構いませんけど」
でも、俺体育そんなサボってたっけか?確かにテスト直後のはサボったけど、それ以降はサボってないし、球技大会のこととかの話も、あいつらしなかったし。それとも俺が覚えてないだけなのか?……うーん、まぁいいか。その辺は明日辺りに回して、部長達の手伝いでもするか。
ちなみに球技大会のこととかは、テスト前の授業で決めたらしい。その時の俺は風邪で欠席。しかも連絡で電話取ったのは俺じゃなくて春ちゃん。しかも春ちゃんは看病に専念してたから伝えること忘れてたらしかった。春ちゃんらしいけど、せめて書置きしておいてほしかったかも。
お疲れ様です、クロウズです。
先月末にDVDのVol.2を買って、妄想♡モーションを聴きながら書いてました。エレナらしい曲でしたよ、はい。結構気に入りました。
次回はどうしようか。さすがに2年生編に飛ぶのはちょっとアレですかね?
では今日はこの辺で。じゃまた。
人物紹介に〈夢前春瑚〉を追加します