強面男が幻想入り 作:疾風迅雷の如く
博麗神社で宴会の準備をするために俺は料理…と言ってももう盛り付けて終わるけどな。
「勇姿さん。終わった?…って結構豪華ね…」
霊夢か…そっちは紹介し終わったみたいだな。
「あと盛りつけて終わるだけだ。豪華に見えるのは肉や野菜を上手く使って体積を増やしたからな…」
バイトの時に色々な食材と調味料を組み合わせるのにどれだけ苦労したか…俺のバイト先ではコックが怒られるとコックが客に謝ることになっていたんだが…俺の場合強面過ぎて逆に謝られた記憶がある。それで客が減ったのを見かねてオーナーはそれをやめて俺をコックとして雇ってくれた…ホントあの人には感謝の一言だよな。
「想像以上ね…ここまで上手くできるなんて。」
まあそうだよな…こんな強面の顔が料理しているなんてのは常識から離れているしな…
「色々と訳ありでな…」
ホント訳ありだよ…俺の顔が少し若ければこうは上手く行かなかっただろうな…顔の傷も無ければなおさらよかったんだが…仕方ないことだ。油断した俺が悪いんだし。
「そう…それよりもそろそろ一人目が来るから早く準備しておいてね。」
「わかった。」
一人目と言うと…箒に乗ってやって来るあれか?多分あの金髪といい、帽子や格好といい…魔理沙だろうな。
「よう久しぶりだな、勇姿!」
そう言って魔理沙が箒から降りて俺に挨拶をした。
「魔理沙…お久しぶりですね。」
俺は丁寧に魔理沙に挨拶をした。
「そういえばさ勇姿、霊夢から聞いたんだが…帰れなくて博麗神社に住まわせて貰っているんだって?」
「ええ…その通りですが。それがどうかしましたか?」
「私の師匠がこの神社に住んでいるんだよ。悪霊だけどさ。魅魔っていうんだけど知らないか?最近どっか行っちゃってさ…」
悪霊…悪霊といえば前に超胡散臭い退魔師がニュースで捕まってたな…詐欺罪とかで。しかもその金額がやばかったから良く覚えている…たしか被害総額1億9000万円だったはずだ。一回につき1000万くらいぼったくっていたらしく俺の友達もその被害にあったらしい。世の中って狭いよな。
「少なくとも私は知りませんね…ですが…」
マップ起動!博麗神社付近に魔理沙や霊夢以外の主要人物は…うん?物置か?
マップを解除して俺は物置に近づいた。
「私の勘だとここにいると思いますよ。」
そう言って物置の中に入り、マップを再び起動させた…すると目の前の…陰陽師のマークを球にした物が主要人物と同じ点にいることが分かった。それがわかれば後はマップを解除して俺はその球を手にした。
「この球ですね…」
「これは霊夢の陰陽玉か…?」
魔理沙はその球…陰陽玉を見て目を開く…俺だってこんなのか主要人物なんて信じたくはないけどね。
「この陰陽玉におそらく魅魔という方がいるのでしょう…」
だから言ってやったよ…俺の感想の一部を。
「全くこんなにあっさりバレちゃしょうがないね。」
第三者の声が響き渡るがその場所は陰陽玉から出ているとわかっているので俺と魔理沙は陰陽玉を見た。
「貴方が魅魔さん…という訳ですか?」
俺がそう言うと緑髪の女性(と言っても足はなく幽霊みたいな感じ)がドヤ顔で現れた。
「そ~さ…私が魅魔様さ。」
それを魅魔が言った途端俺の空気が凍った…いや何ね?まさか自分で様をつける奴なんていないと思っていたからさ…
「あ~…とは言っても勇姿…あんたは私のことを魅魔と呼んでおくれ。それと弟子でもないのに敬語はやめておくれよ?霊夢と同じように普通に話してくれれば構わないから…」
俺の凍った空気を溶かそうと魅魔は呼び捨てで呼ぶように命令した…ん?なんで俺のことを知っているんだ?聞いてみるか。
「何故私の名前をご存知なのですか?」
「そりゃ、博麗神社が私の領域だからさ。だからあんたのことはよく知っているしあんたは自己紹介もしなくていい…それよりも敬語やめなって…それとも私の弟子になりたいのかい?」
なるほど俺のマップを弄ったものか…
「いや…それはない。」
「それでいいのさ…あんたには魔力が感じられない。魔法使いとは縁がない体質なのさ…あんたは。」
魔力?幻想郷には忘れさられた奴らがいるっていうけどモノホンの魔法使いか?それとも30歳童貞のあれか?後者だったら魔理沙が30歳…嫌すぎる。
「まあ、魔法使いになる気にはサラサラないけどな。」
もちろん30歳童貞の方だが…前者にもなりたくはないな。前者になっても精神的に疲れそうだしな。ほら王道とかでよくあるじゃん?魔力を使うと疲れるって…精神的に疲れると身体を動かすしかないんだよな。
「まあ、魔法使いの対策くらいは教えてやることは出来るからいつでも話しかけな!」
そう言って魅魔は陰陽玉に入って行った…勝手な奴。
『陰陽玉を手に入れてください。』
ぬおっ!?まだチュートリアルがあったのかよ!まあいい…後で霊夢に渡すという口実で手に取るか。
『陰陽玉は魅魔が眠っており陰陽玉を使うと戦闘では補助、それ以外では特訓の相手や話し相手になってくれますので是非活用しましょう。』
便利だが…特訓とかの方に使うだろうな俺。
「あっ!?魅魔様!カムバーック!!」
魔理沙がそう言って呼び戻そうとするが無駄だよ…あん?なんで無駄なんだ?魔理沙は魅魔に師事していた感じだったし…別に戻ってもおかしくないよな?まさかとは思うけど試してみるか?
「おい?勇姿?」
魔理沙がそう言って俺に声をかけるがちょっと黙ってくれ。メインコマンドの道具にある陰陽玉を使うと…
「よっ…!」
魅魔が再び出てきた…
「魅魔様!さっきは酷いぜ!」
当然魔理沙は師匠である魅魔に抗議した。まあ俺もそうするしな。
「もしかして魔理沙かい?」
魅魔は魔理沙に気がついたけど…しばらく会っていなかったみたいだな。
「そうだ!私は霧雨魔理沙!魅魔様の弟子だぜ!」
魔理沙がそう言うと魅魔は目を丸くした
「いや~成長ってのは怖いもんだね。てっきり別人かと思ったよ…」
上手いこと誤魔化そうとしているけど実際にはあれだろ?気がつかなかった言い訳だろ?
「へへ…」
魔理沙は褒められて照れ笑いをしていた…全くどいつもこいつもダメだこりゃ。
「ところで…早速私の講座を聞きたいのかい?」
そう言って魅魔が俺に尋ねるが…俺はこう答えた。
「いや、俺が呼んだのは魔理沙に会わせる為でそれ以外に理由はないぜ。」
とはいえ、流石に講座を受けるほどKYではない。
「そうかい。それじゃ勇姿、魔理沙に会わせてくれてありがとうよ。」
そう言って魅魔は陰陽玉に入っていった…
「それじゃ魔理沙。宴会の続きでもしましょう。」
俺はそう言って魔理沙を促すと魔理沙は照れ臭そうに言った。
「勇姿、ちょっとその…敬語は止めてくれ。なんか恥ずかしいぜ…」
魔理沙はそう言って俺に敬語を止めるように言ってきた。
「では魔理沙。宴会の続きだ…ぱーっと騒ごう!」
俺は微笑んだ後、そう言って魔理沙の背中を軽く叩いた。
「おうよ!」
魔理沙は満面の笑みでそう答えた。
しばらくして…魔理沙とは別行動していたら二人の女性を目に見えたのでそれを眺めていた。
「ん~…どれにしようかな~…」
そう言って銀髪の髪をサイドテールにした小柄な女性が結んだ髪で選んでいた…それしか言いようがないから表現に困る…
「神綺様…アホ毛をぶん回して選ばないで下さい。」
もう一人は金髪の女性だがメイド服を着ており、その小柄な女性のことを様づけしていたことからモノホンのメイドだとわかった。
「夢子ちゃん、箸じゃないからオーケーよ!」
そういう問題ではないと俺は思う…え~と確かにあの銀髪は神綺で、メイドの方が…夢子だよな?ちょっと面白そうだし、話しかけてみるか。
「そういう問題ではなくですね…ほら止めて下さい。」
夢子は俺が近づくにつれて冷や汗をかいているが神綺の方は俺が近づくことに気づいていないため全くあせる様子もない…まあ二人の反応は普通の反応だな。俺って顔かなり怖いしな…
どのくらいかと言われれば親父狩りしているチンピラが俺の顔を見ると顔を真っ青にして逃げて警察に駆け込んでそのまま逮捕…なんてことはよくあった。他にも他校の女子高校生に告白しようとしたら脅迫罪の容疑で逮捕されかけた…誤解は解けたものの顔が怖すぎると言う理由で振られたのは記憶に新しい…というか似たような説明をしたような気がする…
「よし!これに決めた!」
そう言って神綺は皿に手を伸ばそうとして顔をわずかに動かすと俺と目が合い硬直した。
「…」
そして神綺は手を引っ込めて夢子を連れて、そーっと俺から離れようとした。
「神綺さん…でよろしいですか?」
俺がそう言うと神綺はビクッと反応した。
「な、な、な、何かしら?」
めちゃくちゃ動揺しているが俺は挫けない…
「先ほど手に取ろうとした食べ物は食べないんですか?」
自分のコミュニケーション能力のなさにうんざりする…
「ちょっとお腹壊しちゃって…あ~お腹痛いわ~…夢子ちゃん。私ちょっとお腹治してくるから頑張って!」
そう言って神綺は腹を下したことを理由に去っていった…
「ええと…私は神綺様の看病があるので失礼します。」
優秀だな…このメイドは。もう冷や汗をかかずに俺に冷静に対応してきた…
「では二人ともお気をつけて…」
俺は自分の立場上そうしか言えないのでその場で立ち尽くした…はぁ…この強面の顔が恨めしい…