強面男が幻想入り   作:疾風迅雷の如く

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八雲紫視点です…


第6話

私は幻想郷でスキマから覗いて彼の様子を見ていた…誰のことかというと私を車で弾いた人間…大和勇姿のことだ。私に勘付いた挙句コケにした彼が幻想郷をどのようにして乗っ取るか行動パターンをみる必要があった…

「幻想郷を征服するか…」

何故いきなりそんなことを言い出す!? もしかして私に勘付いている…わね…スキマ越しに私と目が合うと彼は「お前のことは気づいているぞ?」と言いたげに見ていた。おそらく私を挑発して目の前に出てきたら掌の上で踊らせるのが目的…全く厄介極まりないわね。

 

「勇姿さん、ちょっと人里に行ってくれない?」

霊夢…ナイスよ!

「ん? 別に構わないが…どうした?」

「ん~…実は今日、妖怪退治の日だったのをすっかり忘れてたのよ…勇姿さんは外の世界の人だけど、かなり弱いし大丈夫よ。博麗の巫女の代行と言っておけば問題ないわ」

「妖怪とは…一体?」

トボけやがって…実際わかっているんでしょ?

「そう言えばその説明して無かったわね…この幻想郷は忘れ去った者達が集まる場所だから、妖怪も例外じゃないのよ…」

霊夢の説明に彼は私の顔を見て納得したように頷いた…大妖怪が暇でこんなことをする訳ないでしょう…?仕事よ! 仕事!

「そういうことか…しかし大丈夫なのか? 筋肉痛…」

内心ではこう思っているでしょうね…「俺の監視は無駄だから暇つぶしにしかならない。諦めて他の仕事をしな!」…と。でも絶対に諦める訳にはいかない。ここで諦めて見ないうちに幻想郷を征服されたらたまったもんじゃない…

「そりゃ痛いけどあらかたの家事は終わったみたいだし、多少動く程度なら問題ないわ。それとリストはそこにあるから頼むわよ」

「そうか…それじゃ行って来る」

「行ってらっしゃい」

 

それから彼はどこからともなく外の世界にあるジェットパックを取り出し周りの様子を見ていた…しばらくするとつまらないと思ったのかジェットパックをしまい、人里へと向かった。

 

「博麗の巫女の代行の者ですが妖怪退治を依頼したのはこちらの方でしょうか?」

彼は敬語で話すが依頼主はビビってしまう一方…当然と言えば当然ね。霊夢などはともかく普通の一般人ならその威圧感に押されてもおかしくはない…

「そ、そうです!」

依頼主が返事をすると彼はどの妖怪を狩ればいいと言いたげに話しかけた。

「それでその妖怪はどこに…?」

すると彼の目がもう妖怪という名の獲物を狩る狩り人となっていた…

「いつも私のいない間に私の畑に荒らしにくるんです…なんとかしてください…」

依頼主も彼の威圧感が他の方向に向けられるとわかると少しずつ話し始めた。

「そういうことですか…では畑に案内して下さい」

彼の機嫌は良くなり威圧感もほぼなくなった…

「へえ…わかりました」

そして依頼主が畑に案内すると…彼の目つきが畑の作物の地面に向けられた。

 

「この辺ですか?」

彼の「この辺ですか?」はおそらく被害があったことを確認しているのだろう…わざわざ聞くのは彼なりの礼儀かもしれない。

「ええ…そこら辺です」

「なるほど…」

いきなり彼の手からピストル型の銃が出て来て地面に向けて…狙撃した。

 

バン! バン!

 

「シャギャァァァッ!」

やはり下級妖怪は地面に潜っており彼の目からは誤魔化せない…私ですら気づいているのにこの男が見破れないと思うの?

「おらぁぁぁっ!」

え…?! 無理やり妖怪の首を掴んで銃頭を頭に向けて撃った!? …通常なら人間は下級妖怪と言えども純粋な力のみなら全く叶わない。ところが彼はほぼ力任せに首を掴んで自分の元へ寄せたのだ…全く持ってやった意味がわからない…というか幻想郷にも常識があるのに彼はそれを次から次へと破壊していく。私の手に負えるかしら…いや負える負えないの問題じゃなく、やるしかない。彼は幻想郷の乗っ取り計画を立てているのだから。

「なんの為に生きているんだ…」

おそらく彼は試した。下級妖怪がどこまで足掻け、どこまで抵抗できるかを…だけどそれは本当に強者だけが出来る物。こんな化け物は人間の中じゃ初めてじゃないかしら…

 

「凄え…流石博麗の巫女の代行だ…」

私もそう思うわ…ただし霊夢と代行という意味でなく、下級妖怪を生け捕りにしたという意味でだけど…

「それでは私は次の用件がありますので失礼しますよ…」

 

とんでもない化け物ね…彼。博麗の巫女、つまり霊夢ですら妖怪を退治するとなれば霊力を使って追い払うのが常。その方が力も使わないし楽…しかし彼は霊力、魔力、妖力、神力などのありとあらゆる力の源を使わないどころか出さずに妖怪を捕まえた…これを化け物と言わずして何といえばいいのかしら? 力のみなら妖怪トップクラスの鬼も妖怪である以上は妖力を使って力を増している。ますます化け物だと思わざるを得なかった。

 

「ありがとうございます!」

その後も彼は人里の下級妖怪を倒して行き…ついに最後の一件を見ることになった。

 

「ヴォォォォッ!!」

あれは確かパワーのみなら普通の鬼に匹敵する中級妖怪だったわね…何でこんなところに? という疑問は…まあ管理不足によるものかしら? 後で藍にお仕置きしないといけないわね。

「ガァァァァァァァァァッ!!」

彼はピストル型の銃をショットガンらしきものに変えてその中級妖怪に向かって撃った。

 

その瞬間、ショットガンの爆音が私の耳に届く。

 

「う…ォォ…」

中級妖怪がその玉の数に耐えきれず、呻き、動きが止まった…もう確定ね。この妖怪の末路は…

「おらぁぁあっ!」

彼はショットガンをしまい、手にメリケンサックをつけて右ストレートを放った…

 

骨が折れ、肉が破壊される音がその場に響く。

 

「グァオォォォォッ!」

その中級妖怪は断末魔を上げると吹っ飛び転んだ。そして彼は縄を取り出して中級妖怪を器用に結んだ…

 

「代行様!これを持って行ってくだせえ!」

そして彼は報酬の食料を持って行き、博麗神社へと向かって行った。彼に会う時は彼のことを代行様と呼ぶことにしよう…うん、それがいいわね。

「霊夢、終わらして来たぞ!」

彼がそう言って霊夢に帰ったことを告げた。

「ごめんなさいね…勇姿さん。私が動けずこんな仕事をする羽目になって…」

霊夢…貴方が謝る必要はないわよ。もし謝ったら彼のペースに乗せられるだけよ!

「いや俺が頼んだことだ。そう気にするな…」

ほら言わんこっちゃない…霊夢もまだまだ未熟ね。

「ところで妖怪退治の報酬はそれ?」

霊夢は話しを切り替えて、依頼主から貰って来た食料を指差した。

「そうだ」

彼は肯定して頷いた。

「これ結構多いわね…勇姿さん…料理できる?」

 

霊夢は間接的に「料理作ってくれない?」と言っているのだ…

彼の返事は「俺に料理をさせる気かぁぁっ!?」とどこからともなく持ってきたちゃぶ台をひっくり返してそういうと思った…今のは冗談にしても言葉を濁して無理というだろうと私は思ったがそれを彼は裏切った。

 

「出来る方だな…」

彼は意外にもそう言った。普通は料理が趣味と考えるだろうが…料理を自分でせざる得ない状況が出来るほど外の世界で暗殺されかけたのかしら?となれば彼の妖怪を上回る力も納得がいく。

「それじゃちょっとした宴会をやるからこの材料を使って夜までに料理しておいて。私は人を集めるから…」

彼は納得がいき、霊夢が飛んだのを見ると「仕方ない奴だ…」と行って台所へと向かった。

 

彼は包丁を取り出そうとして手が滑った振りをして私のいる方向に包丁を落とした…

「やはり生ものだな…」

つまり彼はこう言っているのだ…「今のは警告だ。これ以上俺のことを監視するならお前をいたぶり殺してやるから覚悟しておけ。」と。はぁ…仕方ないわね。ここで争っても多くの犠牲が出るだけでしょうし撤退させて貰うわ。




今のところ勘違いしているのは紫だけという悲しい状況に味方はいるのか!?
そんな時は旧作キャラを使ってしまえ!という理由で次回は旧作キャラの登場です。ではまた次回…

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