強面男が幻想入り   作:疾風迅雷の如く

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文字数6500オーバー…前回の倍以上ですね。いずれ文字数1万を突破したいと思います。そして平均文字数も増やしていきたいと思います。


緋想天編
第43話


博麗神社が早苗の手によって魔改造されたが早苗(と霊夢)が元に戻し、どうにか妖怪達が来れるようになった。

 

そんな博麗神社の役割はというと妖怪や人間などの仲裁だ。俺が守矢神社と妖怪の山の二つの勢力を仲裁したのが一番わかりやすい例だ。他にも中立の立場が揺るがない程度であれば妖怪や人間の子供の保護なども当てはまるな。

 

霊夢の役割は誤って幻想入りしてしまった人物を元の世界に戻したり、博麗大結界の点検もする。早い話が霊力や摩訶不思議な力を使う仕事が霊夢の仕事だ。

 

俺は霊力がないからそれは出来ん。

 

博麗神社において俺の役割は宣伝だ。霊夢は暗躍しすぎて全くと言っていいほど宣伝をしておらず、参拝者も来なかった。しかし俺がその役割つまり代行として務めることで宣伝になる。

 

人々は博麗神社を信仰することによって力が宿る。現在そう言われている。何故なら日頃妖怪退治をしまくっているせいか評判が高くなり、博麗神社の評判も高まっている。

さらにフランや萃香、フウが巫女代行として来てからは「信仰すれば妖魔も関係なしに心さえあれば正なる力を宿すことが出来る」などという噂が流れ、ますます信者が増えた。まるでゲームだ…ちなみに夢月は幻月の様子を見に夢幻世界に帰った。いずれまた来るらしい。

 

閑話休題。

 

博麗神社の欠点は立地条件(階段が急で狭い等)が悪く、博麗神社の麓から神社に着くまでが大変だ。それこそが(物理的に)力が宿る要因だが、そこまで行ける人間は多くなく特に老人などは参拝に行きたくともいけない状態なのでその対策を打っていた。

「準備出来たか?霊夢。」

向こうにいる霊夢に電話(正確には通信道具)をかけ、確認すると霊夢の鈴のような声が聞こえてきた。

「もちろん!いつでもどうぞ!」

「それじゃテストするぞ。」

そして俺は元の世界でいう時給2500円相当で募集したバイトに指示して霊夢が達筆な文字で書いた所へ移動させる。次の瞬間、目の前にいたバイトがいなくなっていた。

「霊夢、こっちはうまくいった。そっちはどうだ?」

「来たわよ。大成功よ!」

 

俺達がやっていたのは博麗神社の麓と神社の前まで移動するワープ装置の設置だ。俺は霊力やらなんやらそんなことはわからんがSFのロマンとも言えるワープ装置が擬似的に作れるんじゃないのかと思い、霊夢に作らせた。

 

「それじゃバイトにそれを使って元に戻るように指示してくれないか?」

「…」

「どうした!?霊夢!?」

だが電話からは返事は返って来なかった。電話から聞こえるのは「ガー」や「ピー」などそんな無機質な音と激しい地鳴りの音だけだ。

 

地鳴りの音は大震災の時と酷似している。米国から帰国してから数年後、どでかい地震があったんだよ。

 

俺は婆さんに師事するために北関東の実家の近くにある山小屋-といっても紅魔館の中身と同じくらいの大きさだが実家の近くにある俺の家(俺達四兄弟は高級マンションなどの部屋ではなく家が与えられる)の体積よりも小さいので小屋とする-に来ていたが突如、今までに経験したことのない地鳴りが聞こえ、その後大きく揺れて動揺した。何しろこっちは帰国子女だ。当然地震の経験も浅く、パニックになりかけた。

 

しかしそれをぶち壊すのが婆さんである。婆さんは「男なら狼狽えるんじゃないよ!この馬鹿たれ!!」などとほざき地面を殴って震度6弱の地震を打ち消した後、俺に説諭を加えた。スパルタすぎんだろ。

 

ちなみに流石の婆さんでも隣の県から先を震度0にすることは不可能だったが実家の周りだけ無事に済み、親戚共から俺が酷い目にならなかったことに舌打ちされたのは懐かしい思い出だ。

 

何にせよ、この地震を止めるには婆さんの血を継いでいる俺しか止められないということだ。自分しかできないと思うとだいぶ厨二臭く感じるがそれはどうでもいい。選択肢は一つ、やるしかない。

 

「デリャァッ!!」

一番振動が響き易い石の階段を殴り、その地震を止めさせる。すると電話の向こうから聞こえる地鳴りの音が止んだ。

 

うまく行ったか。やっぱ幻想郷に常識は通用しねえな。空掌は百歩譲って出来るようになるのはいい。あれは雄山でも出来るしな。しかし地震止めが出来るようになるのは流石におかしい。あれは波の動きだ。なので打ち消すことは不可能なはずなんだが幻想郷では常識は通用しない。地震止めをすることすらも容易くなっている。

そういえば早苗も常識は投げ捨てるものとか言い始めたな。あれは頭打ったんだろう。俺が関わっているはずがない。

 

だいぶパニックになって地震止め云々を解説してしまったが『異変が発生しました。』…何の異変だよ?人が考察している時に邪魔する相変わらずKYなシステムだ。

 

まあいい。異変を解決する方が先だ。俺が考察しても無駄なことは学がないことからよくわかる。しかし矛盾点をついていけば良い訳だ。

裁判で弁護士や検事は矛盾点を探して犯罪者を庇ったり、追い詰めたりする職業で学がなくとも法律を暗記してしまえば馬鹿でも出来る…なんて馬鹿にしていたのは長兄雄大であり、俺ではない。「丸暗記してしまえば問題ないってどういうことだよ。丸暗記が難しいからそういう職業があるんだろうが。」と突っ込んだが雄大には届かない。奴は天才だからそういうことも出来るんだろうが身体はどうあれ頭が凡人たる俺は無理だ。

とにかく異変を解決するには、腹ただしいことだがコマンドシステムを使って言いなりになるしかない。

 

まず異変である以上、首謀者と妨害者、ボーナスにextraがいる。extraは妨害者と同じ表示で現れるのでどんな奴かわからないが首謀者は妨害者と見分けがつくようになっている。

しかし現時点ではマップは俺が行った場所のみしか表示されない為、首謀者が行っていない場所にいるとどこにいるのかわからない。

 

幸いにも目的地が表示されるのでそこに向かえば妨害者と出くわしてヒントが得られるという訳だ。

 

この方角は守矢神社の方か?そういえばあそこには地を操るスペシャリストがいたな。行ってみるか。

 

「霊、夢?」

そして一言声をかけようとしたら霊夢があの時のように怒り狂っていた。

「あら、勇姿さん。これから地震起こした馬鹿の始末しに行くけど、いく?」

「奇遇だな。俺もその準備をしていたところだ。」

こういう時の霊夢はできるだけ同調しておくことだ。でなければ魔理沙のように首を絞められる。いくら霊夢にやられるとは言ってもそれは勘弁して欲しい。

「それじゃあ行きましょう!」

つい最近ようやく手に入れた空飛ぶコードを使い、俺と霊夢は空へと飛んだ。

 

「だから何で守矢神社にいくのよ!?」

「あそこには手がかりがある可能性が高い。何せ地を操るスペシャリストがいるからだ。」

しかしすぐに言い争いになった。これから言うことは男女差別をする訳ではない。れっきとした事実だ。男は理屈攻めでどうにかするが女は勘や直感でどうにかする傾向が強い。そのため弊害が起きて俺と霊夢の言い争いが始まったという訳だ。

もっとも本当の理由は二手に分かれて効率良く異変の首謀者を探す訳ではない。異変の首謀者を俺自身が懲らしめないと俺が生きられない可能性も出てくるからだ。

これまで俺は異変の首謀者を確実に仕留めてきた。もし俺が仕留めず霊夢や魔理沙、あるいは他の連中が首謀者を仕留めたらどうなっていた?俺の最悪の仮説だとゲームオーバーになり、セーブした箇所からやり直せずにそのまま死ぬ…もしかしたらそれ以上に最悪な事態もあり得る。だから俺がやるしかない。

 

「なあ霊夢。このままじゃキリがない…とりあえずこうしよう。二手に分かれてどっちかが異変の首謀者を見つけたら懲らしめる。それでいいか?」

俺としてはベストな提案をしたつもりだ。だが霊夢は首を振った。

「嫌よ。」

「何故だ?」

「偶には勇姿さんにも私の活躍を見てもらいたいもの。二手に分かれたら勇姿さんに私の活躍する姿を見せられないじゃない。」

霊夢はいじらしく、俺に抱きついてそう言い放った。…ならこうするか。

「霊夢。俺にその姿を見せたいなら俺と戦え。それでお前の見せたい姿が俺に伝わる。」

 

作戦その一。

この作戦は勝負に勝たなくとも二手に分かれるように誘導する作戦だ。霊夢を満足させたら後はオサラバ!異変の首謀者を探すだけだ!

 

「私は二度と勇姿さんと戦いたくない!」

「何故だ?」

「私は勇姿さんがいなくなった時、寂しかった!もう二度と離れないで!」

霊夢が依存しすぎているな。似たような経験がある…

 

雄大の悪友の息子であり、俺の舎弟分だった堂島時光ことトキと同じだ。俺とトキが出会ったのはトキがまだ6歳の頃だった。表向きは暴れん坊でそれを止められる相手が俺と雄山、そして婆さんくらいのもので俺たち三人が面倒を見ることになったというのが表向きの理由だ。

本当の理由は父親があまりにも若く、トキと父親の関係が世間に広まったらスキャンダルの嵐になる為父親の家から依頼され預かることになった。だから父親との関係を少しでも悟られないようにトキは母親の姓である堂島を名乗っている。

 

しかし雄山はマフィア狩りという悪趣味を持っており、トキと会う機会は滅多になく、実質俺と婆さんだけが面倒をするようになった。

婆さんは練習というよりもしごき、特訓というよりも相撲部屋的な可愛がり、しごきというよりも拷問といった具合にやるためトキから恐れられた。トキの味方は俺しかいなかった為に俺も必然的に少しでもトキの心が折れないようにトキの前では弱音を吐くことはなかった…そのためトキは俺のことを慕ってくれた。

 

しかしそれがいけなかった。

 

俺が別のトレーニングをしているとトキが無気力になっていつもよりも婆さんにボコボコにされる姿を見かけた。トキによると俺がいないと気力を奮い立たせられないようになってしまい、婆さんにボコボコにされたらしい。

 

そしてトキが今の霊夢と同様に俺に依存しているとわかり、そこから治療して依存せず慕う程度になった。

 

問題はトキと同じように治療すれば良いのか、あるいは他の方法で治療するべきか…どちらにせよ今セーブしておこう。

 

『セーブ処理が終了しました。』

 

「霊夢。俺は記憶が失っていることを自覚している。」

俺はこれまで異常に感じたことを話すことにした。

「どういうこと…?勇姿さんって記憶喪失なの?」

「おそらくだがな。守矢神社の異変のことを覚えているか?」

「あれがどうしたの?」

「守矢神社が異変を起こす直前まで俺が守矢神社のことを思い出そうとしたら神社の名前や強烈な印象を残していたはずの早苗のことも思い出せなかった。しかし異変が起き、俺が対面すると思い出せた。」

「それは普通なんじゃないの?早苗も覚えていたし…」

「確かに普通かもしれない。しかし俺は部下だった奴等の名前は全員はっきりと覚えている。強烈な印象を残してもいないのにな。」

俺は苦笑気味に笑った。

 

「でも考えすぎなんじゃないの?」

「無論、それだけではない。かつて兄のところで働いていた女が一人だけ思い出せん。そいつも幻想郷の異変に関わり得る妖怪なのかもな。」

前に裕二の秘書に裕二のスケジュールなどを教えるバイトをしていたがその秘書のことだ。当時の大和財閥の専務とかの名前とかは覚えているのにも関わらずその女を思い出せんのはおかしい。一番会社で関わった奴を覚えていないのはむしろ何か脳に障害があると考えられる。

「つまり誰かが意図的にそう仕組んでいると考えられる。その為には霊夢の協力が必要だ。」

だが俺は脳に障害があるとは思えない。脳に障害がなければ誰かに洗脳-この時洗脳という言葉は正しくないが面倒なので洗脳とさせてもらう-されている可能性もある…それを解くには霊夢の協力が必要だ。しかし依存しすぎていたら元も子もない。過度な依存は弊害となり得る。親父からの教えだ。

「だから二手に分かれようって訳なの?」

「俺の為だと思ってくれ。」

依存しつつも依存から離す。これが俺の思いついた作戦だ。

「嘘ではないようね…わかったわ。でも理解はしても納得はしてないわよ。」

マップの霊夢が赤く染まり、敵になったと認識した。

「ならやはりこれだろう?」

霊夢は札と針を指と指の間に挟み、俺は銃を構えた。

「「いざ勝負!!」」

俺と霊夢は弾幕ごっこを始めた。

 

俺はすぐにメインコマンドを開き、時間を停止させ霊夢の攻略法を考える。

 

霊夢攻略法は札や針を使う為、コマンドを使用し、全て収納してしまえば問題ない…それは守矢神社の異変までの話だ。

俺は霊夢に一度だけ収納システムを見せたことがあり、俺の能力の一部である収納システムを霊夢は警戒している。現にこれまでの霊夢とは違い、札や針の投げる量がかなり少なくなっている。

 

霊夢はいくつか俺を倒す方法を思いついている。

 

収納システムを使わせない、あるいは使ったとしても無駄にさせる。

これがシンプルかつベストな手段だ。だかこれをするにはかなり難しく、力任せに俺を攻略しようとする奴は無理だが搦め手の得意な霊夢のことだ。これをやってくる可能性が高い。

 

俺の自滅を狙ってくる。

十分にあり得ることだ。合気道などでは相手の力を利用して敵から身を守る…言ってみれば霊夢は俺の力を使って自分の力に変える。

 

敢えて接近戦で挑む。

これもあり得る。紫曰く霊夢の戦闘センスは抜群らしく歴代の博麗の巫女の中でも最高クラス、とのことだ。戦闘センスが優れているということは真似をするのも上手い為、俺の武術も真似してその長所や短所も見分けることも容易い。それだけならいいがそれを昇華して…いや戦闘中に進化する可能性もある。そうなったら流石の俺でも勝つのは厳しくなる。しかしこれはごり押しに近く俺がさらに化けたら搦め手を得意とする霊夢が勝つ可能性はほとんどないだろう。

 

だが全て混合すれば俺の攻略は出来る。俺の弱点はシステムに依存していることだ。システムがなければ戦えないという訳ではないがだいぶ弱体化する。システムに異常さえ起これば霊夢の勝機はさらに増え、俺に勝てる。

 

だがシステムに異常が起きたのは異変以外の時だ。少なくとも異変の時に異常は起きていない。異変以外のシステムはポンコツになってしまうが異変の時は作動する。

システムに異常が起こる理由として考えられるのは異変以外のイベントは異変イベントよりも難易度が高く設定されているからシステムに異常を起こさないと難易度が高くならないという事態がある。実際にフウの時もシステムに異常が起きなければリンチに出来たと断言できる。

つまり異変イベントの最中である以上、霊夢に勝ち目はない。

 

「変幻自在の自動銃-オートキルガン」

 

オートキルガン。こいつは壁や床に設置すると自動で標的を高速射撃してくれるという非常にありがたい武器だ。しかも魅魔がいらない子になってしまうくらい正確に狙撃するため重宝している。捨てないが。

 

「夢想天生」

 

霊夢の夢想天生は俺の無双転生と同じ系統の技。つまり無敵属性だ。オートキルガンで狙撃しても攻撃は効かない。そうなると接近戦しか勝利はない。…此れ迄の俺であればな。

 

コードで無双転生(時間制限なし)をし、すぐに対物ライフルに持ち変える。

 

「一撃必殺-対物ライフル」

 

あれから依頼を数こなしてコードのパワーアップをしてきた。そしていつの間にかチートと呼ぶには生易しいくらいのシステムに変わった。

 

「ぎゃふっ!?」

 

そう、今のように無双転生の状態で銃を撃てば相手が無敵属性の状態でも狙撃が可能になったり、マップで弾幕を表記出来るようになったりと多彩なシステムへと変わった。

今の俺を相手にするならそれ以上のチートでなければ出来ない。ここまで食らいついた霊夢が異常なだけ。具体的にはソーシャルゲームで非課金者が課金勢が上位を占める総合ランキングで3位を獲得するくらい異常なことだ。

 

「これで納得したか?」

「いつっっ…仕方ないわね。ここまでされちゃ流石に従うしかないわよ。」

「従うしかないと言っても俺の記憶に刺激を与えるものを探してくれればいい。」

「それじゃあ勇姿さん。またね…」

霊夢は寂しげに別れを告げる。その様子は幼い頃のトキと酷似しており、まるで幼い頃のトキが霊夢に乗り移ったかのように見え、俺は霊夢の依存をどうにかして治そうと考えながら守矢神社へと向かった。




ちなみにトキこと堂島時光の名前の由来ですが北斗の拳のトキが由来ではなく、執権時代の北条家が名前を受け継ぐ際に使われた時の一文字が由来です。そこから一気にトキ、時光、堂島時光と繋がってきました。

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