強面男が幻想入り 作:疾風迅雷の如く
『コード機能とロード機能が回復しました。』
紫と和解してから数日、幻月と夢月と会ったおかげか、ようやくエラーが直り、そんな表示がされた。しかしロードを使ったところでメリットよりもデメリットの方が目立つのでロードはしなかった。
朝食(今日は和食)の支度をして配膳すると霊夢、フウ、フラン、萃香と左回りにちゃぶ台に並ぶ。ちなみに夢月はまだ寝たままだ。「うぐー」って可愛らしい寝言だな…
「「「「「いただきます。」」」」」
そして全員が声をかけ、箸を取る。
フランは箸をうまく扱えないが両隣にいるフウと萃香が箸を上手く使えるように指導している。利き手が出来上がるまでには2年くらいかかり、もうそろそろ出来てもおかしくないが外国の妖怪故か中々上手くいかない。
ちなみに霊夢には利き手という概念がない。器用過ぎて何でもそつなくこなせてしまうからだ。
どうでもいいが俺は普段右利きだが食事に関しては左利きでスプーンやフォーク、ナイフなどは左右対称同じように使えるが箸は別だ。右手で箸を使うと豆100粒のうち95粒しか運べない。
「勇姿、朝食が終わったらちょっと私に付き合ってくれない?」
フランがいきなりそんなことを言い始め、味噌汁飲んでいた霊夢が吹いた。
「ゲボゲボ…何言いだすのよあんたは!」
「まあまあ霊夢。落ち着いてよ、ね?」
霊夢がフランに掴みかかろうとするも間にいるフウが割って入ってそれを止めた。
「というか何であんたらがここにいるのよ!?」
…それは俺も気になった。こいつらは別に帰る場所がある。ないにしても居場所はあるという矛盾だがとにかく博麗神社にいなくてもいいはずだ。
萃香の答え
「楽しいから。」
…率直だな!おい!!この後萃香は霊夢にボコされた。
フウの答え
「天魔を引退したこともあって妖怪の山にもいるわけにもいかないし、どの勢力にも中立な博麗神社が一番住みやすいから。」
まともであってまともでない答えだな…霊夢のアッパーがヒットして伸びる。
フランの答え
「紅魔館にいても退屈だし、勇姿の作る料理が上手いから。」
褒められるのは嬉しいが咲夜のことも認めてやれよ…霊夢は複雑な表情で米神にデコピンを一発。それを見た二人は「贔屓だ!」と叫んだが俺達は無視した。
「それでフラン、俺に付き合ってて言われても何の用なんだ?それを聞かないと話にならん。」
「…アイツがまたバカなことを考えているのよ。」
「アイツ…ってレミリア?また異変でも起こすつもり?」
霊夢が袖を捲ると立ち上がり、肩の骨を鳴らした。
「それが…月へ行くみたい。」
…月って地球の衛星のあの月だよな?文明的に無理じゃないか?人類が宇宙に初めて行ったのが確か昭和の後だ。江戸時代や明治時代の人間が月に行こうなんて無謀にも程がある。…まあ河童の力を借りれば出来なくはないがそれでも材料とかで相当費用がかかるぞ。具体的には1ヶ月に一回親父から貰っていた俺の小遣いが半分程度なくなるくらい。
「月に行こうなんて無謀な事考えたね…」
フウがボソリと呟き俺はそれを聞き逃さなかった。
「フウ、まさかとは思うが月に行ったことあるのか?」
「当時の上司達に無理やりつれて一度だけね。妖怪の全盛期の時、紫を総大将に過激な妖怪達が月に戦争したんだ。」
「戦争って…月に人でもいるのか?」
俺が冗談交じりにそう質問するとフウ達は何を言っている?と言わんばかりに俺を見つめた。
「あぁ、そういえば勇姿は知らないんだっけ?月人の話。」
萃香がポンと手を合わせ、納得していた。
「恐竜時代が終わった理由は何だと思う?」
萃香が突然そんなことを聞き始めた…おそらく何か関係ある…
「火山噴火説、氷河期説、隕石追突説…そんなものか?」
他にもあるだろうが俺が知っている中ではそんなものだ。
「妖怪達の間じゃ恐竜が滅びたのは当時優れた文明を使って恐竜達から隠れ、住んでいた人間が妖怪達を殺すために巻き添えにした、巻き添え説が主流だ。」
「巻き添え説…」
むちゃくちゃだな。婆さんなら…地割れを起こして妖怪全部狩りそうだ。原始的なのにこっちの方が効率が良いと思ってしまうのは何故だろうか?
「その人間達は恐竜を巻き添えにして妖怪達を滅ぼした後は穢れ、つまり妖怪が生まれる瘴気を恐れて穢れのない月に行って月の住民になった…って話し。月人ってのは月の住民の略称みたいなものさ。」
「なるほどな…でどうだったんだ?」
「妖怪側はボロ負け。でもある程度は善戦したよ?あのポニーテール娘が現れなかったら私達の班に死亡者なんていないくらいに…」
ポニーテール娘か…幻想郷は立場が高いとそれに比例するように戦闘力が高くなる傾向がある。おそらくそのポニーテール娘も相当偉い立場だろうな。
「出来ればもう二度と行きたくない。それだけ強かった。」
しかし紫も紫でよく無事で居られたな。総大将なら普通首飛んでもおかしくない。
関ヶ原では一般人の知識では三成が大将みたいに誤解されているが少し調べるとそれは違うことがわかる。西軍の総大将は毛利輝元だ。しかし実際に戦ったのは三成が中心だった…それも間違いではない。その為三成は関ヶ原の戦いの直後打ち首。逆に西軍総大将である輝元は不戦を貫き、打ち首にならずに済んだ。
紫も似たようなことをやったんだろう。いやそれ以上か?まあどっちにしても妖怪の賢者と呼ばれるのは多分ここにあるんだろうな。
「…だいぶ話しが逸れたがフラン、それで俺に何をしろと?」
「アイツを止めてくれない?流石にアイツが死んだら紅魔館管理するの私になって勇姿の御飯が食べられなくなるから…」
「俺は咲夜に料理を教えているから咲夜にお前の好みそうな味付けを教えて実行させればどうとでもなる。」
「そういうことじゃないよ…勇姿のバカーっ!!」
日陰をうまく利用してフランは博麗神社から逃げ出してしまった。
「勇姿、デリカシーなさ過ぎ。」
「今のはひどいねえ…」
「俺にデリカシーという言葉を期待するなっ!説諭っ!!」
妖怪二匹が文句を言ってきたので俺は逆ギレして殴っておいた。
「霊夢、フラン探してくるからこのバカと夢月の相手頼む。」
「いってらっしゃい。勇姿さん。」
バカ二人と夢月を霊夢に預けると俺はメニューを開きシステムを作動させた。マップの検索コマンドを利用してフランを探すというものだ。これなら幻想郷のどこにいても探すことができる。美鈴あたりは気の感知ができるのでこんなものは必要ないが例外として俺はどういうことか気が感知できない不可思議人間らしいのでどうしようもないらしい。
俺の検索機能は名前さえわかればどうにでもなるのでそっちの方が便利と言えば便利だろう。…逆に言えば名前が分からなきゃ検索できないのでどうしようもない。そのため
そして俺はフランの姿を見つけた。そこは紅魔館の近くの湖だった。
「フラン。」
「…何よ。」
「すまなかったな。いきなりあんなこと言って。」
「…別に気にしてないよ。」
不機嫌そうな声で言っても説得力ねえよ。だがそれを言ったところでフランがさらに不機嫌になるのは見えている。となれば…甘味の力だな。システム倉庫から饅頭を取り出し、それをフランに見せた。
「饅頭食うか?」
「うん…」
饅頭が俺の手からフランの手に渡り、口の中へと入っていった。フランはハムハムと可愛らしく饅頭を頬張り、俺はそれを見てほんのりと心を安らげていた。
「あんた達!ここが誰の縄張りだと思っているの?」
チルノが突如現れ、フランと俺を威嚇する…チュートリアルだが最初に幻想郷の異変で戦った相手だ。その後何度も戦ってくるがその度に返り討ちにしている。
「誰?」
「あいつはここを拠点に活動している最強の氷の妖精、チルノだ。俺に何度も絡んでボコされている。」
フランはそういえばチルノのことを知らないのか?博麗神社にいるからそのくらいわかっていそうな感じはしたんだが。
「あんたとは戦ったことなんてないし。そんなことも分からないなんてバカなんじゃないの?」
チルノが何度も俺と戦う理由は俺のことをしょっちゅう忘れるからだ。チルノが俺の存在に気づくと戦うが俺はその度に倒している。しかし自分が最強だと思っているせいか負けたことを忘れ、俺の存在も忘れてしまうということだ。
「てめえには言われたくねえよ。むしろ前回なんか新聞にも四面くらいに載っただろうが。」
そのループに流石にイラっと来た俺は自重を投げ飛ばしメガトンパンチでぶっ飛ばした。その結果かつて萃香が妖怪の山まで吹っ飛ばされたようにチルノも冥界まで飛んでいった…らしい。らしいというのはフウに聞いただけなので本当かどうかは分からないが新聞にも載った。
【博麗の魔人、氷精にブチ切れ!?】
なんて書かれて大変だったんだぞ。確かに邪悪なるドSの神の
「門番不要!覚悟しなさい!!」
「それをいうなら問答無用だ。」
門番不要だったら美鈴がリストラされるだろうが。俺は対物ライフルを取り出し、構え引き金を引こうとした。
「勇姿、ちょっと待って。ストレス発散に私がやる!」
フランが前に立って四人に分身し、指をポキポキと鳴らしていた。
「まあ…お前が良いんなら譲るぞ。」
フランに譲ったのは【今日もマジギレ、大和勇姿!】とか【博麗の魔人、氷精を滅ぼす!?】とか報道されるのを恐れた訳でない。断じてないっ!!
「ありがとーっ!勇姿!」
分身の一人が俺に抱きつき、喜びを表現すると他の分身がその分身を殴った。もしかして分身に自我でも芽生えているのか?
などと考えているのチルノの弾幕がフラン達の目の前まで来ていた。
「禁忌-禁じられた遊び」
四人のフランは十字の弾幕を全方向に放ち、チルノの弾幕を消していく。しかもフランの弾幕は消えないというふざけた弾幕だ…まあ俺ならその弾幕を蹴っ飛ばしてフラン全員に返すけど。
「禁弾-フォービドゥンフルーツ」
二連発!?しかもスペルカードルールガン無視の弾幕かよ…えげつないな。本当。霊夢の場合なら夢想天生で避けるだろうが相手はチルノだぞ…弾幕を凍らせて弾幕の動きを止めることが出来るなら互角に戦えるだろうがチルノはまだ成長途中だ。切り札を使う間もなくチルノは砕け散るのだ…思っていても寒い親父ギャグだ。これで言葉にしてフランだけが硬直して負けたら俺のせいにされるな。むしろそれしか理由が思い浮かばない。
チルノが硬直するイメージがないのは超が3つも4つもつく簡単な計算…繰り上がりなしの一桁(例 1+1、2+3等)の四則演算の加法すらもできないからだ。そんな奴に親父ギャグを理解出来るかと言われれば無理だろう。第一何度も顔を合わしている俺のことを覚えていない時点で頭が相当悪い。
ちなみに長兄と次兄である雄大と裕二は5歳で大学受験用の試験問題(書き込み式)を全問正解しやがった。しかもその試験問題はパーフェクトが二人を除いて皆無…という超難問だ。あの二人に関しては俺と血が繋がっている以前に人間かどうかすらも怪しくなってきた。
「⑨〜…」
そんなことを思っているとチルノがピチュリ決着が着いた。
「やったーっ!」
分身を解いて一人になったフランの顔はすっきりしていた。
「フラン、よく頑張ったな。」
俺はそういって褒めて頭を撫でる。するとフランは気持ちよさそうにしていた。その仕草はまるで子供だ…フランらしくもない。いや猫被っているんだからそれもそうか。フランは普段は幼女らしく振舞っている。だが俺の前では猫被りを止めている。フランが言うには女の前で猫をかぶるのは当たり前らしい。
「だけどフラン…あの二つは霊夢とかそんな奴らに使う切り札級のスペルカードだぞ。」
「そうかな?勇姿が最強っていうから思わずやっちゃった。」
フランは舌を出し頭を自分の手でコツンと叩いてウインクする。その仕草は可愛らしいが中身を知っている俺からすれば道化そのものである。
「…まあチルノはいずれ強くなるからまた使う機会もあるだろう。それまでの間に手加減用のスペルカードを用意しておけ。」
俺がチルノを評価しているのは身体で覚えるタイプだからだ。チルノは頭は悪いがセンスに関しては天才だ。今日の弾幕ごっこもフラン相手に二つもスペルカードを使わせた。落ちたあの弾幕も反則級のスペルカードだしな。チルノは無自覚だが確実に成長している。
…しかしバカ故に自覚もなく振り回され、翻弄される。それがあいつの一番の欠点だ。それさえなければ今頃本当に幻想郷最強クラスに食い込めた。それだけに残念だ。
「わかった。…でもここまで来たんだし紅魔館まで寄らない?」
紅魔館か…レミリアの偏見をどうにかする為にも行く必要はあるか。霊夢に連絡したいのは山々だが今断れば絶対ゴネる。ゴネてかなり面倒なことになる。
「…まあ少しだけだぞ?俺はすぐ帰るからな。」
「先っちょだけって奴だね。それでもいいよ!」
フランのセリフが下ネタっぽく聞こえるのは何故だ?兎にも角にも俺達は紅魔館へ行くことになった。
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