強面男が幻想入り 作:疾風迅雷の如く
森
「無想転生…!」
新しく習得したコード、無想転生を森の中で試してみたが何一つ変化はない…名前からして霊夢の夢想転生に似ていなくもないが…こういう時はヘルプだ!
『無想転生は一定時間内無敵になれるコードです。ただし自分が攻撃している間は無敵でなくなり、また同じ無敵系統の技を相手が使った場合お互いに打ち消し合います。なお、このコードは依頼をこなす度に継続時間が延長されます。』
…もしかしてこれから戦う敵はこれを使わないと勝てない相手なのか?いや異変で得たコードじゃなく今回のコードは過去の雄山と戦って得たコードだ。異変を解決するには問題はないが…依頼をこなした先にいる裏ボスを倒すには必要不可欠な物だ。だがバランスがおかしい…天魔があれだけ強かったのに、過去の雄山相手ではどう考えてもこのコードは…っ!?
「そういうことか。雄山の奴…とんでもない野郎だ。」
俺は前言撤回した。その理由は胸に異変を感じ、それをみると筋肉が凹んでいた。雄山が何をしたかというと婆さんが得意とした空気を突いて、圧縮された空気による攻撃…空掌だ。空掌はただ空気を突くだけでは出来ず、ピストルのようにまっすぐに突く必要がある上スピードもパワーもなければできない技だ。
アレが原因で婆さんに剛の拳を振るえなかったし、近づくこともままならなかった。だが俺は身体に力を込め攻撃を無効化してようやく勝てるようになった。つまりこの技によって婆さんに長年苦戦したと言っても過言ではない。俺もそれを習得しようとしているが図体がデカすぎてそれにあったスピードを出さないといけないので無理だ。婆さんや雄山がピストルだとすると理論上俺のはショットガンくらいの威力になるがその分スピードも速くないと空掌は使えない。今度の課題はそれの克服だな…
それはともかく…何故俺が気づかなかったかというと盲点だ。盲点は目の神経が視界を遮る場所でその場所に何かものがあっても何もない状態になる。つまり雄山は俺に悟られないように片方の手で破魔札を投げ、盲点の場所を広くさせてもう片方の手で空掌を放ち、俺に傷をつけた…という訳だ。雄山にとって誤算だったのは破魔札が消えたことではなく俺が傷を受けなかったことだ。
しかし…あの時が雄山の全盛期だったのか。俺にコマンドの力を与えた奴は何がしたいのかわからないが…全盛期の頃の雄山を俺と戦わせた。となると全盛期の婆さんが裏ボスになりうる可能性が高いな。
…となると次は誰だ?今までの異変以外での強敵は天魔と雄山の2人のみだ。天魔はコマンドがない状態だから強く見えたが実際には雄山に劣る。雄山に楽勝したのは相性が良かったと言っても間違いではない。他の連中だったら天魔を撃破しても雄山の時点で脱落しただろう…特にスピードは空掌が出来るだけあって素早かったし、パワーもある。間違いなく雄山は天魔と戦って勝てる相手だ。となるとだ…今度出てくる相手は雄山よりも強いことは確かだ。それに備えてやるしかない。
「…練習あるのみか。」
俺は構えて…空掌を放ったが、ボ!という少量の水素が酸素と結合して爆発するような音がしか聞こえず周りの木々には何一つ傷跡は残せなかった。確かに突きとしてはいいが空掌を放てなかったのでは意味がない。
「やはり構えか…?」
構えを試行錯誤を繰り返し変え続けて実証するしかないか…
それよりも依頼をこなしてゲームのような世界観にした奴の手がかりを少しでも見つけないとな…人里なら依頼はあるだろう。
〜人里〜
さて…とりあえず依頼人でも探してみるか。一番依頼が多いのはここだしな。
「あ、魔人様だ!」
「ホンマや!魔人様や!」
魔人…?どこにいるんだ?って何だ!?何でガキどもがこっちに集まって来るんだ!?
「魔人様〜っ!願い叶えて!」
わ、わからん…一体どうなっているんだ?それに願いを叶えるって…『依頼が発生しました。受けますか?』…これも依頼かよ!?まあいい受けよう。少しでも情報が欲しいからな。内容は『子供達の願いを叶えよう』か。まあやるだけやってみるか。
「それで何を叶えたいんだ?叶える願いは3つまでだぞ。」
「一万円欲しい!」
…一万円か、それくらいならあるだろう。
「ほらこれで一万円だ。」
俺はコマンドを使って福沢さんを渡し、願いを叶えた。
「何これ?」
「これは外の世界で使う一万円だ。願いを叶えた以上返品不可だ。」
幻想郷内で使う金と外の世界の通貨は大きく違い、こちらの一万円は100万円くらいの価値がある。つまり俺は実質100円しか渡していない。
「まあこれでも一万円だしいいか…」
諦め早いな…突っかかってくるかと思っていたんだがな。
「次の願いは?」
「慧音先生の授業を面白くして!」
面白くか…国語教師目指している雄山曰くつまらない授業ってのは『教師が教えるのが下手なのか、生徒の成績が悪いのかの二つのパターンが多い』とのことで授業を見てみないとわからないが俺に出来ることは…
「これを解いていけば慧音先生の授業が面白く感じる。」
そう言って渡したのは『幼稚園でもわかりやすく解けるセンター試験問題集』の本だ。俺の年はまだセンター試験だが確か20年あたりに変わるんだよな。
「あ…ありがとうございます。」
顔が引きつっていたな…まあそうだよな。自分が何もしなくても出来ると思っていたら目の前に課題を出されたらそうなる。
「これで最後だ。」
「お母さんの病気治して!!」
…やたらヘビーだな。しかし医学は専門外だ。一番いいのは専門機関である永遠亭に連れて行くことだが…聞いてみるか。
「永遠亭には行ったのか?」
「永遠亭に行けるほどお母さんは元気じゃないし、お金もないの…」
「…そうか。ではお母さんの場所に案内出来ないか?」
「わかった!」
まあ無理っぽいけどな。
〜民家〜
「ゴホッゲホッ!」
…さて出来ることと言えば、この母親をどうやって助けるかだな。…システムを使うか。この前俺が萃香をシステムで調べた時の応用で目の前の母親を調べ、体調はどんなものか、そしてどこが悪いのかということまで調べた。その結果がこれだ…!!
『弥生
性別 女性
種族 人間
能力 なし
状態 鳥型インフルエンザ』
鳥インフルは感染しづらいがその分インフルエンザの中でも病状が重く、死に至りやすい病気だ。豚はその逆…病状こそ軽いが脅威とも言える感染力がある。これくらいは一般常識だが明治時代の文化圏内である幻想郷にそんな常識はない。とうとう鳥インフルエンザまで幻想入りしてきやがったのか…早い所永遠亭に連れて行かないと母親だけでなくこの娘が犠牲になりうる可能性もある。
「治せますか?魔人様…」
「至急、永遠亭に連れていく。お母さんは風邪をかなり強くした病気にかかっている。このままでは里の皆も感染する恐れがある。」
「でもお金が…」
「安心しろ。俺は魔人だ。金なんぞいくらでも出してやる。里の皆が危険になるよりかはマシだ。」
「ありがとうございます!」
そして車を召喚し、俺は母親を乗せて永遠亭に直行した。
〜迷いの竹林〜
「オラオラオラーッ!車に落とし穴なんぞ関係ねえーっ!!」
車で飛ばして俺は竹林の中を走っていた。その理由は落とし穴に落ちないようにするためだ。この竹林には悪戯好きな兎が住んでおり、車でノロノロ走ろうものなら落とし穴の餌食になりかねない。
「急患だ!誰かいるか!?」
「うるさいわね〜永琳はいないわよ〜。」
俺が怒鳴り声を上げて言うと障子から輝夜が出てきて永琳がいないことを告げた。
「こんな時にか…!」
「一体何なの?一応聞いておくけど…」
「インフルエンザという感染症だ。それも死に至りかねない病状のな。」
感染症で間違いではないよな?だから医学って好きじゃねえんだ。
「…それじゃ永琳が来るまでこの先のベッドで寝かしておきなさい。永琳には私が言っておくわ。」
輝夜はそう言って奥の方へ指を差した。
「感謝する。」
母親を奥へ連れていき、寝かせてしばらくすると永琳がやってきて治療して入院させることになった。その後金を払い、母親と娘が再会して依頼が終わるとシステムのレベルが上がり、渾名も博麗の代行から博麗の魔人へと変わった。最後のは嬉しくねえ…!