強面男が幻想入り   作:疾風迅雷の如く

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霊夢視点です。


第25話

私は今までの異変を裏で糸を引いていた黒幕、勇姿さんの様子を見ていた。

「あ~…頭痛え~」

勇姿さんがそう言って頭を抱える…珍しいわね。勇姿さんが頭を抱えるなんて…

「仕方ないか。」

勇姿さんはどこからともなく瓶を取り出し、その中身を飲んだ…薬なのかしら?

「って全然効かねえ!?」

勇姿さんが八つ当たり気味に瓶を投げ捨てた…本当に黒幕なのか怪しくなってきた…

 

ドガッ!バキッ!

 

「…ん?」

「おらっ!天魔とあろう奴がそんなものか!?」

「まだまだじゃ!我の力を舐めるな!」

あの脳筋コンビのことを忘れていた…

「つーかなんで喧嘩しているんだ…?」

勇姿さんもそう思っていたのか口に出すと2人が気がついた。

「おっ!?勇姿か!?」

「よく来たの!これで我らがどっちが強いか判別出来る…覚悟!」

脳筋コンビは勇姿さんに襲いかかってきた。

「やかましいわ!」

勇姿さんは2人を一撃で文字通り沈めた。あの攻撃が当たったらヤバい…

「全く…油断も隙もない。」

そう言って勇姿さんは考え込んだ…

「しかし霊夢まで敵になるとはな…」

私が敵になっていることに気づいていたの!?このまま放っておかれれば勇姿さんは必ず手を打ってくる…やるなら今しかない…!紫に合図を送った。他の連中は…どうやら出る気はなさそうね。大方弱った所を奪い取る気でしょうが…私達が決着をつける。

 

私は勇姿さんの前に立った。

「勇姿さん…貴方には感謝しても仕切れない…だけど貴方は少々やり過ぎよ。」

お賽銭箱を壊したことを理由に過剰のお金を渡してくれたこと、私が動けない代わりに家事や仕事をやってくれたこと、そして宴会の準備を手伝ってくれたこと…感謝してもしきれない…だけどそれが幻想郷を乗っとろうとした理由なら全て納得がいく。

「やり過ぎだと?」

勇姿さんが不思議そうな顔をして私を見る…そうでしょうね…私がそんなことで動く訳がないんだから。

「そう…私個人は勇姿さんをほったらかしにしてもいいんだけれどね…仕事だから。」

幻想郷が誰のものかなんてのはどうでもいい。でも勇姿さんが異変の黒幕である以上そうはいかないのよ。そうだと信じたくないけれど…

「そうか。なら俺を倒して見せろぉぉっ!博麗霊夢!」

勇姿さんは開き直り、私に叫ぶと鉄砲を取り出した。本当にそうだったんだ…何でなのかは後で聞いておかないとね。

「はっ!」

私は私特有の弾幕…霊力を纏ったお札や針を使って攻撃するが勇姿さんの鉄砲にあっけなくやられてしまう。

「夢想転生!」

勇姿さんが一瞬驚いた顔になるけれど元に戻し、笑うと構えが解け、無防備状態になった。

「…」

その余裕はなんなの?私を挑発しているの…?裏があるかもしれない。と普通は思うでしょうね…

「私を舐めすぎよ!勇姿さん!!」

私はあえてその挑発に乗り逆に挑発した。

歴代の博麗の巫女は霊力を使って夢想○○という技を使う。その技はその代の巫女によって様々…私の場合は二つある。一つは攻撃用の技『夢想封印』…これは紫曰く歴代の博麗の巫女の中でも最強クラスの技らしいけれど今回は使わない。いや使えないと言った方が良いわね。その理由は二つ目の技であり現在発動している技『夢想転生』がどんな攻撃も受け付けないという効果があるが霊力の消費が激しい上に発動している間は霊力を使い続ける。勇姿さんが夢想封印程度でピチュるとは思えないから無駄に使いたくはない。いつまでも夢想転生を続けるのは勇姿さんのパンチが当たらないようにする為…勇姿さんが時折予想外の動きに出たら私はすぐに負ける…その保証だった。

「…」

勇姿さんは私の攻撃を避け躱す…その連続をする内に私の攻撃が雑になってきた。もしかしたら私の夢想転生を見破っているのかもしれない…だけど夢想転生を止めた瞬間、私は瞬殺される。それだけは避けなければならない。一瞬だけ夢想転生を解いて勇姿さんの攻撃する瞬間を狙って夢想転生をするのもあるけれども一か八かの勝負に出るなんて真似は勇姿さんの前では通用しない…いいえ修業不足ね。

「はぁぁぁっ!」

雑になってきた以上正面から挑んでも勝てないと判断して私は殴るフリをして遅行性の弾幕を放ち、紫に合図を送った。

 

「当たりさえすれば…勇姿さんなんて…」

私はそう言って悔しがるフリをすると勇姿さんの背後に私の弾幕が迫り、紫も勇姿さんの足を掴もうと足の真下からスキマを出していた…そして私は「勝った!」と思った。それがいけなかった…

「時間を止める相手を攻撃出来ても、たった一人の人間には当てられないのか?」

勇姿さんがそう言った瞬間、私の弾幕が消えた。まさか勇姿さんも能力者だったの!?咲夜は時間を操る程度の能力だけど…勇姿さんのは一体…?

「ちょっ!?なんでこんな物がぎゃーっ!?」

 

BOM!

 

紫が何故かダメージを受け、ボロボロになり戦闘不能となった。元々紫は戦闘タイプの妖怪じゃないから無理もないけれど…それでも勇姿さんに勝つには紫のサポートが必要だった。それを失った今、私に勝機は完全になくなった。

「紫!ぐっ…!!?」

勇姿さんの攻撃を受けないために夢想転生をし続けていたけれど流石にもう無理ね…

「終わりだ。」

勇姿さんの鉄砲から弾幕が放たれて私に直撃し、私は気絶した。…強過ぎる…!

 

~翌日~

「はあっ!?あれは嘘!?」

目が覚めると勇姿さんが今までの異変を裏で糸を引いていた黒幕だということが紫から嘘だと告げられた。

「黒幕って証拠は無いけれども幻想郷を乗っ取るという考えは本当よ!私の目の前でそう言っていたんだから!」

紫の前で宣言するような勇姿さんは勇姿さんじゃない。これも嘘ね…

「問答無用!」

私はこれまでの人生の中で最も濃い弾幕を放った。

「ちょっ、止めなさい!霊夢!!」

それを紫はスキマに入れて対処するが返って私の怒りを爆発させた。

「いっぺん死んでこい!」

「本当よ!!お願いだから聞いて霊夢!!」

紫が何か言っているけど私には関係ない。

私は霊力を纏ったお祓い棒で思い切り何回も叩き潰した。

 

それでも私の怒りは収まらず宴会もつまらないものになっていた。

「本当に苛立つわね…」

私の霊力が私の体から歪み出て私を中心に回っていた。

「なあ…霊夢。」

「あぁっ?」

勇姿さんがキレた時以上に低く、冷たい声で返事をすると魔理沙がそこにいた。

「っ…!霊夢…あいつはそんなことで傷つく奴じゃないのは知っているだろう?」

魔理沙が私を励まそうとするけどこの湧き上がる感情を私は抑えきれなかった。

「うるさい!あの人が良くても…私は…私は…」

私はポロポロと涙を流していた…何で…?私がこんなに感情を表すなんてあり得ないのに…

「…霊夢、無理をするな。」

「無理なんかしてないわよ!」

そもそもの原因はあのスキマ妖怪!あいつがいなければこんなことにはならなかった!!

「あのな…霊夢は勇姿に謝りたいんだろ?」

「…そうよ。でも合わす顔がないわ。」

「ウジウジし過ぎじゃないのか?少なくとも霊夢…お前は今まで戦ってきた相手と宴会を通して仲直りしてきたんだろ?勇姿だってそのことは知っているはずだぜ。」

「…もういいわ。私は寝る。」

「おい!逃げるな!」

私は弾幕を放ち、魔理沙を黙らせた。

 

明日になれば私の心も落ち着く…私はそう考えて寝ようと神社の中へと入ろうとしたけど勇姿さんの話し声が神社の裏から聞こえ、そっちに向かった。

「…機嫌を取るならちゃんと…」

あの声は吸血鬼の妹…?機嫌を取るならって…私の機嫌取りでも考えているの?

「…霊夢のこと任せた。」

…え?なんでそんな真剣な表情なの?なんでそいつに私を任せるの?私は様々な疑問が浮かび上がって一つの結論に達した。それは勇姿さんが博麗神社からいなくなるということ。勇姿さんがいなくなるだけでも私は顔を青くした…それだけ私が勇姿さんのことを好きだったってことね…

 

私は気がつくと既に布団の中にいた。

「…勇姿さん…」

私は1人寂しく呟いて、枕元を湿らせて寝てしまった…明日何がなんでも謝らないと…

 

~翌日~

博麗神社には勇姿さんの姿がなくなっており、私のために作ったであろう冷たい朝食だけが残っていた。

「冷たい…」

私はあの時謝るべきだった。あの時紫の言うことを聞かなければ良かった。そう言った後悔が私をより惨めにさせる…

「会いたい…!勇姿さんに会いたい!」

私は立ち上がり、勘でどこにいるのか探そうとした。え…?目の前?

「いや~スマンスマン。今帰ったぞ。」

そこには顔の傷が増えた勇姿さんが中国風の服を着てお酒を持ってスキマから出てきた。

「え…?!どういうこと?」

「本当ならお前を励ますために徹夜で準備していたんだが紫が俺を抹殺しようと漢に送ったんだよ。」

漢…まさかね…でも一応聞いてみよう。

「漢って…もしかして呂布っていう奴と戦わなかった?」

呂布…その名前は地球史上最強の男と知られている。紫曰くその強さは正面から立ち向かったら歴代の博麗の巫女が束になっても全滅すると言われる程…まさか勇姿さんとも言えどそんな化物を相手に戦える訳が…

「よくわかったな。あいつと戦って何度死にかけたことか…」

嘘でしょ!?呂布を相手に生きて帰って来られるなんて…

「まあ最後の最後でなんとか白星を挙げたけどな。」

…私はそれに唖然としてしまった。勇姿さん、本当に人間?

「それじゃ向こうで馬鹿騒ぎして少し疲れたから寝る。」

私はそれを聞いて焦った。このままじゃ私が謝ろうとしたことが無駄になる。

「待って勇姿さん!」

私は勇姿さんを引き止めた。

「ん?」

「誤解してごめんなさい!」

「ああ…こっちこそすまないな。心配させてな…」

私はその言葉に救われた。




呂布はチートです。それでも勝てた理由は次回明らか?にします。

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