強面男が幻想入り   作:疾風迅雷の如く

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お気に入りが一件って…とりあえず投稿しました。


第2話

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暇ね…私は幻想郷で何も出来事がなく暇になっていた。今、月に行っても負けるのがオチでしょうし、たまには外の世界の人間でも見てみましょう。外の博麗神社のすぐそばに隙間を使って見て見た。

「常識は敵だ…」

私はそう呟く男を見つけた。…かなりヤバそうな男だ。目はギラギラとしており、下手な小妖怪…いや中級妖怪すらも凌ぐ威圧感がある。そんな男が何故常識は敵と言い出すのだろうか? まさかこんなところに迷った…などというアホなことはないだろう。

 

「…いっそのこと車で乱入するか!」

男はこちらに気づいているのか、わからないがこっちを見てそう呟き、車にエンジンをかけた…まさかこんな小さな隙間、しかもかなり遠くにあるのだから気づく訳がないだろう。そう思ったのが私の間違いだった。

「ヒャッハーッ、行くぜ!」

え?マジで気づいているの?ちょっと待っ…

「ぶべらっ!!」

私は情けなく車にぶつかり、弾かれた…まさか人間の男如きに私のいる場所を特定されてしまい、しかも隙間の侵入方法まで計算されるとは思いもしなかった。もしや常識は敵と呟いたのは私を見たから気づいたのではないのだろうか。しかも車に弾かれて死なないと考慮したあたり監視した私への警告だろう…はじめからそのことに気づくとは恐ろしい男だ。幻想郷は様々な危険に陥ったが今回は史上最悪の出来事が起きるかもしれない…そんな予感がした。何にしても顔の傷を治さないと藍に心配されるわね…私は顔の傷を治してその場を後にした。

 

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私は今親友とも言える霊夢の住む博麗神社に来てお茶を飲んでいた…相変わらず霊夢の入れるお茶ってうまいよな。私にはそんな真似はできないぜ。

 

ダンッ! バキッ! メリメリ…

突然不思議な乗り物が現れ、そのまま着地したのは良いが…勢い余って賽銭箱に突っ込んだ…

「到着~っ!」

その不思議な乗り物から妖怪らしき男がそう大声を出して降りてきた…やっちまったな…

「「……」」

私と霊夢が唖然してその妖怪を見ると妖怪は失敗したと思ったのか乗り物に乗り込んだ。

「すみません、間違えました」

その妖怪は乗り物をUターンさせて階段を降りようとしたが、当然霊夢の手から逃れられる訳もなく…

「こら! 待ちなさい!」

霊夢が回り込んでその妖怪を止めた。

「どうしました?」

妖怪はかなり紳士そうな声を出して敬語で話した…この妖怪声を操る程度の能力持ちか?

「あんたのせいで私の賽銭箱が壊れちゃったじゃないの!? どうしてくれるの?!」

おいおい…霊夢の奴神社を私物化してやがるぜ。

「それは元々その賽銭箱には金入って無いだろ。それにその賽銭箱は霊夢の賽銭箱でもないぜ…」

私はそうつっこんでやると霊夢は怒鳴った。

「魔理沙うっさい! と・に・か・く、その賽銭箱を弁償して貰うわよ!」

妖怪はようやく納得がいったように頷いた。

「そういうことですか…」

男はそれだけ言うと乗り物の後ろからケースをだした…まさか…な?

「ではこれだけですが…弁償金と賽銭です。ご納めください」

やっぱりだ。この妖怪かなり金持ちだったんだ。それはどういう意味かと言うと人との立ち回りが上手いということになる。妖怪ってのは強くなればなるほど立ち回りも上手くなる傾向も強い。現にUSC(アルティメットサデスティククリーチャー)の風見幽香なんかは危害を加えなければ花屋として金を稼いでいる…私か? 私は妖怪じゃないから問題ないぜ。

「…お、お札が一枚、二枚、三枚…」

霊夢はそのケースを開けてすっかりトリップしてしまったのでその妖怪の名前を聞いてみることにした。

 

「あんた名前はなんて言うんだ? 私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだぜ。」

できるだけフレンドリーに話しかけて警戒心を解いた。

「大和勇姿です。以後御見知りおきを…霧雨魔理沙さん」

妖怪こと勇姿はお辞儀の基本とも言えることがパーフェクトで私は照れ臭くなった。

「出来れば魔理沙で呼び捨てで呼んでくれ…でないと背中が痒くなる…」

その照れ臭さと慣れない『さん』付けから魔理沙と呼び捨てるようにしてもらった。

「では魔理沙。私もあなたに質問します…ここはどこですか?」

呼び捨てても勇姿は敬語で話し、私に質問してきた。…意外と洞察力と冷静さがあるな。

「へえ、あんたもうここが外の世界じゃないのに気がついたのか?」

勇姿は私のセリフを遮らずに黙って聞いていた。

「ここは幻想郷。忘れ去られた者が住む場所だぜ。」

 

「なるほど…それで魔理沙、外に戻るにはどうしたら良いのですか?」

勇姿は他の外来人とは違い発狂(とはいっても人間だけで妖怪はそんなに動揺しない)せず冷静にどう戻るか私に聞いてきた。

「それはあそこで金勘定している巫女…博麗霊夢に聞いてくれ。私は専門外だ」

だけど私に聞いても専門外…とはいえ今は気は引けるが霊夢に頼ることにした。

 

「わかりました。では失礼します魔理沙」

勇姿はそういって霊夢の元へ近づいた…

 

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「うへうへ…お札が一杯…これだけ有れば小銭でお風呂ができるわ…」

怪我の功名ね…あのボロ賽銭箱元々壊れそうだったから助かったわ~。

「すみませんが少しよろしいでしょうか?」

おっと、私の人生を変えてくれた恩人が呼んでいる…

「神様! 何の御用ですか?!」

私はできるだけ愛想よく振る舞った…博麗の巫女として当然のことよね。

「博麗霊夢さん、魔理沙から聞きましたが、あなたは私の世界…所謂外の世界に戻る方法をご存知のようですがその方法を教えてくれませんか?」

もしかして外来人? そうだとしたらちょっと面倒ね。

「あー…ちょっと待って。今外に帰れる準備をす…しますから!」

少し素が出てしまったけどそんな程度で怒らないのは彼を見てわかる…彼は妖怪のように悪人顔だが中身はかなりの善人だとわかるわ。

「わかりました」

うん、やっぱり善人ね。

 

「これが帰る道ですか?」

そして帰る道を開いて案内した。

「ええ、私としては神様をおもてなししたいのですがあなたも忙しい身…せめて私はこうして準備をした訳です。では良いお旅を…」

こんな善人は幻想郷にぜひいてもらいたいものだけれど、彼にも帰る場所があるし、私はそれを止める権利はない。だからせめて彼が笑って帰れるように準備をしてあげた。

「霊夢がいつもの霊夢じゃない…」

魔理沙が何か言っているが無視だ。彼もそうしているし。

「では失礼します…」

彼は乗り物に乗るとそのまま道を通って帰っていった。

 

「それじゃ霊夢、私はそろそろ他の用事があるから行くぜ…」

魔理沙がそんなことを言い、箒を持った。

「ん? まああんたも一応気をつけなさいよ。死にかけの人間がここにいます…なんてことになったら嫌だから。」

「さっきと対応違いすぎないか?」

「そりゃ彼は私の恩人だもの…対するあんたは貴重なお茶を飲んでいるしねぇ…」

私が全力で嫌味を言うと魔理沙は渋い顔をした。

「あ~もうわかったよ。今度良いもん持ってくるから!」

…勝った!

 

にしてもゴトゴトうるさいわね…

「も~うっさいわね…」

そこに向かうと…あり得ないことが起きていた。

「…博麗霊夢さん。お久しぶりですね。わずか数分でしたが」

先ほどの彼が神社の裏にいた。

「え? どういうこと?」

私は思わずそういってしまった。

「それは私のセリフです…まっすぐ行ったはずですがまたここに来たみたいですね」

 

「…もう一度!」

私がすぐに道を開くと彼が変なことを考えていそうな感じがした。

「何か?」

そういって私は彼に尋ねるが言葉を濁された。

 

そしてやはりというか案の定、彼がまた戻ってきた。

「フフフ…」

私は笑うしかないわよ…二回も失敗するなんてことはなかったし。

「これは私に対する挑戦状と見てもいいわね…!!」

そう、誰かが意図的にやっているとしか思えない。彼にも協力して貰ったけど結局わからずじまい…すごいムカつく。

 

「はあ…仕方ないわ。それじゃ勇姿さん、今日は神社に泊まって。晩御飯も作るから」

とはいえ、良いことがないわけでもないのよね。私と勇姿さんの距離が縮まったのは良いことよね。

「わかった」

勇姿さん…その笑顔やめて欲しいなんて言えないよね…理由が私が罪悪感にとらわれるからなんて言えないじゃない。


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