強面男が幻想入り   作:疾風迅雷の如く

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今回は前回の紫視点です。


第17話

「貴方が大和勇姿ね…」

幽々子は彼が来たと同時に話しかけた。

「そうです。貴女は?」

彼は確認の為に幽々子に名前を尋ねた。

「私は西行寺幽々子。この白玉楼を任されている亡霊よ。」

幽々子はドヤ顔で彼に自己紹介をした。何故ドヤ顔…?

「…そうですか。階段であった少女の言っていた方ですね。」

「彼女はなんて?」

幽々子は団子を食べる…あんたまだ食べるの?私なんかダイエットしているのに…って太ったとかそんなんじゃないから!

「貴様のような悪に幽々子様、白玉楼に一歩も近づけん!…でしたね。私としては春を返してくれれば何も害を与えません。」

彼は妖夢の真似をした後シリアスな顔で春の返還を求めた。当然ね…この意見は私も賛成するわ。

「ダメ。私はこの西行妖の花を満開にするためにここまで来たんだから。」

はぁ…完全にこっちのミスだわ。まさか幽々子がそんなことに好奇心を持つなんて…

「仕方ない…それじゃ力づくで返して貰う!」

彼は特製の銃を構えたが幽々子は笑っていた。流石ね…無知の力もそして幽々子の実力も。

「何がおかしい?」

彼は不審に思い、尋ねると幽々子はクスリと笑い私のように扇子を広げた。

「貴方はもう死んでいるわ…」

幽々子の言葉を発した途端周りを見るとそこには幽々子の能力…死に誘う程度の能力で生まれた七色の蝶が彼を囲んでいた。

「なんだこれは!?」

私は彼が狼狽える様子を初めて見て逆に私が狼狽えた。彼は狼狽えるとかそう言ったことに全く縁がなさそうだし…

「これは死の蝶…触れれば即死するわ…さあ死んで私の部下になりなさい。」

幽々子がそう言って蝶を放ち、少しの隙間もなく襲いかかって来た。これは弾幕ごっこじゃ反則だけど彼を葬るなら仕方ない。彼は不気味過ぎる。葬って閻魔様か幽々子の元で監視するしかない…そう考えていると彼はギリギリまで距離を離れ、踊り始めた。

「な、なんの踊り?」

幽々子は不気味なものを見る目で彼に尋ねるが彼は無視して踊る…そして踊り終わると訳のわからない言葉でブツブツと呟いた。その瞬間彼は笑った気がし、瞬時に狼狽えたことが演技だと気付かされた。

「幽々子!上!」

私は彼が規則性のない踊りでジェット機を呼びだしここまで来たことを思い出し、幽々子に注意したが…

「えっ!?」

幽々子は私が注意にしたことに驚いたのかわからないが硬直してしまいそのまま…

 

ドシャッ!

 

幽々子の上に戦車が現れ、そのまま落ち、幽々子は戦車の下敷きになり蝶が乱れ始め、その隙を見て彼は魅魔を召喚した。

「…勇姿どうやらピンチみたいだね?」

どこからともなく魅魔が現れ、この状況を把握して弾幕を撃った。

「そうだ。お前に負担をかけるからあまりお前を呼び出したくはないが緊急時だ。力を貸せ。」

負担をかける?契約でもしているの?…少なくとも魔術という契約の意味では魅魔の方が有利になるはずしかし彼の方が有利に契約を交わしている…彼には魔力もなければ霊力すらもない。

「わかった力を貸してやるよ!離れてな!」

そんな私の疑問は解けぬまま魅魔の必殺技が放たれて蝶を消し去り、戦車へと向かった…

 

DOGAAAAAANNN!!

 

当然、戦車は大爆発して幽々子は気絶した。幽々子が気絶で済んだのは亡霊だったから…人間だった死んでいたわ。それにしても魅魔…貴女、彼にパワーアップのために自分を売ったの?

 

「しかし危ない賭けだった…」

彼がそうボヤいた途端スキマを使って後ろから不意打ちをしたが一気に前に出てそれを回避した…

「っ!」

私は不意打ちに失敗し舌打ちをしてしまった故に全身を出して藍に連絡をした。

「不意打ちとは中々やるな。」

彼の嫌味が私を苛立たせるが我慢し、嫌味で返した。…え?侵入者?放っておきなさい。それよりも大変な事が起きているわ。いいわね!

 

「貴方が言っても嫌味にしか聞こえませんわ。」

彼の言葉を嫌味で返すと有能な藍は戻っており、私と藍はアイコンタクトで指示を受け渡しをした。

「さて、お名前は?」

「八雲紫と申します。以後お見知りを。」

私は少しでも藍が準備する時間を稼ぐ為に長々しい自己紹介をした。

 

「さて貴方好みの1対2の対戦方法といきましょうか。」

彼は紅魔館の吸血鬼姉妹を相手にしても全くの無傷だった。霊夢ですら無傷でいられるかと言えば無理。それに加え門番を倒す時間と比べたら彼女達が倒れる方が速かった。ということは彼は1対2の勝負は得意だが短期決戦で挑まなければならなかったということ。つまり1対2で長期戦となれば私たちにも勝ち目はある。幽々子のように短期戦で決めようとしたら間違いなく死ぬ。

「…もう一人は?」

彼は不審に思い私にそう尋ねた。

「もういますからご安心なさいな。」

藍の殺気は彼からみて右の真横から出ていて普通なら…というよりも私達ですらその右に振り向き対処する。しかし彼は左斜め後ろに回し蹴りをして対処した。そこには藍がスキマを使って不意打ちした場所があった。

「!?」

藍は吹っ飛び、私がキャッチする…藍…油断しすぎよ。あれに用心しすぎるなんてことはないわよ。

「紫様、こいつ…かなり強いです。」

想像以上ね…彼。不意打ちすらも許さないなんて…短期戦でもないのに不意打ちするのは正解だったわね。不意打ちするのは普通は短期戦でやることであって長期戦は無理…しかし彼の場合は違う。彼は不意打ちをしないと相手にすらして貰えない。いやという程実力差があるとわかってしまう…

「ね?だからあの侵入者を放っておいてまでここに来させた理由がわかったでしょう?藍…」

藍は頷き、私の意見に肯定した。無理もないわよね…私の式になったとは言え藍は九尾の妖怪。むしろ式になったことでよくも悪くも賢くなりこれまで身体能力任せだったのが頭脳戦に持ち込み勝つようになった。身体能力でも頭脳でも完璧をほこっている藍に勝てるのは私を含めごくわずか…

 

「さて、大和勇姿さん。貴方が幻想郷にいる価値があるのか私の手で確かめてもらいますわ。」

悔しいが彼はまだ戦闘ですらないと思っている節があるので私は逆にそれを利用し、話しかけた。弾幕ごっこで不意打ちは禁止されているけど幽々子も反則しているから問題ないわよね…

「判定はどうあれ出して貰いたいものだ。今の時代どいつもこいつも役立たずだしな。」

役立たず…つまり外の世界で彼と戦って人間も妖怪も関係なく無事でいられたのはいなかったということ…つくづく恐ろしい奴ね。

「ご心配なく。判定は出してあげますよ。」

だけど私はそんなに甘くない。私にも幻想郷を守る者としての意地がある。彼は幻想郷を乗っ取る気である以上…私はやらねばならない!

「そうか。なら安心してやれる。」

彼は笑ってそう言った。この戦闘狂…!

 

「中々良いじゃねえか。」

私は何も言わない。そして技名も告げない。それだけ彼との戦いは油断は出来ないのだ。私がやることはせいぜい藍にアイコンタクトで指示するかこうやって殺気も込めず弾幕を撃つことだけ…

「ベラベラと喋るのは俺の趣味じゃねえが…俺ばかり見てないでちっとは周りを警戒したらどうなんだ?」

周り?…スキマを通して全体を見てみるが何一つなかっ…!

「ぐっ!」

藍が私を庇い、私を助け戦線離脱をした。

「藍!」

今何が起きたかというと私がスキマを覗いているうちに彼はその開いたスキマに弾幕を撃ち、私はそれを避けようとした。しかしそれこそが彼の狙いでその避けたところに弾幕があり、藍はそれを受けた…ということだ。私らしくもないわね…彼の言葉に操られるなんて。

「やはりな…」

やはり?一から藍を狙っていたの…?!

「貴方…これが狙いだったの?」

私は思わずそう呟いて尋ねた。

「大方な。お前達が筋書き通り動いてくれて助かった。」

この化物が!幻想郷の中でも頭脳派である私をここまで出し抜くなんて信じられない…月に攻めた時以来ね…この屈辱は。

「ふむ…もう時間だな。」

彼はそう言って構えを解いた。

「時間?」

私には彼が構えを解いたのを見て不意打ちをしようとしたが無駄だと諦め、何を企んでいるのか尋ねた。

「そう、彼女達がやって来た以上お遊びはここまで…ということだ。」

…藍が言っていた侵入者ね。まさか霊夢が来るなんてね。

「ふんっ!」

わっ!?これは消火器の粉!?目くらましの積もり…!?しまった!!!やられた!!!!これが通常の相手なら霊力や魔力、妖力等を感知して戦えるが彼はなぜかそう言ったものは感知出来ない。その上あの銃から出る弾幕は殺気がまるでないので殺気を感じ取り避けることも出来ない。肉体派の妖怪は音とか空気を感じ取り避けることも出来るだろうが私にはそんなことは出来ない。そんなことをやる機会がないからだ。つまり今の私はただジタバタと暴れることしか出来ない。

「うっ!?」

そして、私は弾幕に頭をぶつけ気絶した…強すぎる…!!

 

…NOWLOADING…

 

「はっ!?」

私は気がつくと博麗神社の布団で寝ていた。

「起きた?紫。」

丁度良く霊夢が襖を開けてそう呼びかけた。

「霊夢…」

霊夢が来てくれたことに私は感謝した。これで彼が来たら私は錯乱していたでしょうね…

「もうそろそろ宴会の時間よ。あまり寝ていると遅れるわよ。」

「うん…ありがとう。」

「それと隣にいた…え〜と…幽々子だっけ?」

「幽々子がどうしたの?」

「幽々子がつまみ食いをしているから止めて。私の話しは終わり。」

…はい?幽々子がつまみ食い?…まさかね…私は恐る恐る尋ねた。

「幽々子がつまみ食いしている料理って…もしかして…」

これで藍や妖夢の料理じゃなかったらもう一度冬眠しようかしら…

「勇姿さん…大和勇姿の料理よ。勇姿さんは甘いから叱るだけにしているけど…」

ガバッ!!

私は耳を閉じて冬眠しようとしたが…

「夢想封印!」

あっけなくやられました(雑魚)

 

「幽々子…今回ばかりは恨むわよ。」

私は呪いの言葉をかけながらブツブツと幽々子の居る部屋へと向かって言った。

「幽々子ぉーっ!!」

気合を入れて私はその部屋に入った。

「ん〜っ?」

そこには小さな皿を持った幽々子、藍、妖夢、あとメイド…そしてせっせと料理を作っている彼の姿が見えた。

「起きたか…」

彼に話しかけられ私は思わず硬直するが取り直した。

「これは何?」

「いやあまりにもつまみ食いをするからな…新しい料理の実験台になって貰っているんだよ。今までのメニューじゃ物足りないしな。」

彼がそう返事をしても私は放心状態にあった…

「紫〜っ、貴方も来なさいよ。うまいわよ〜…」

「遠慮しておくわ。」

確かに前の宴会の時、彼の料理を食べてうまかったけど…そういう訳にもいかないわよね…

「まさか紫様…また太りましたか?」

「うっ!?」

藍が確信をつき、私の心にダメージを与え、私は狼狽え言い訳をした。

「し、仕方ないでしょう!?胸がまた大きくなっちゃったんだから!」

それを聞いた銀髪二人がゆらりと立ち上がった…

「紫様…」

「八雲紫…」

そして二人はまるで姉妹のように息があった。

「それは私への嫌味ですか!?」

「それは私への嫌味でしょうか!?」

そして私は再び気絶した…彼が来てからこんなんばっかり。


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