強面男が幻想入り   作:疾風迅雷の如く

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第11話

私の名前は紅美鈴。紅魔館の門番です。いつもは寝ているが今回ばかりは違った。お嬢様曰く妹様がペットに見えるくらいの化け物がやってくると聞いて寝るに寝れない…そしてその化け物は着地音で来たことがわかりました。

「zzz…」

もちろんこのいびきも演技だ。この程度で騙されるようなら大したことはなかったということ…

「…」

化け物は考え込んでいた。するともう一人、来訪者が来たようですね。

「勇姿さん!」

声からして10代前後の女性…おそらく博麗の巫女…異変解決に駆けつけたというところでしょうか?

「霊夢か…」

その化け物…勇姿さんの声は人間年齢に換算すると40代あたりの男性で低く渋い声だった…

「妖怪退治はどうしたの?」

女性こと霊夢さんは化け物に妖怪退治を依頼していたようで、そう尋ねました。

「一応終わった。ただな…こんな天気じゃ霊夢の負担になるだろうと思ってな…文句を言いに来たんだよ。」

化け物が妖怪退治はシュールだけど、霊夢さんは効率が良ければなんでもいいのか妖怪退治はその男の方に任せているらしい…

「偶然ね…私も異変の首謀者に用があるの。さ、行きましょう。」

そう言って霊夢さんは門を飛び越えて行った。

「そうだな。」

そいつも自力でジャンプしてバカデカい門を飛び越えようとしたが…

「っ!」

私は目を開き、私の殺気を浴びさせて勇姿は飛び越えることは止めさせた…

「何の真似だ…?」

なるほど…気配を感じなかったのでどんな人物かわからなかったんですが改めて見ると確かに妹様よりもヤバい雰囲気を持っていますね…レミリア様が警告する訳です。

「貴方をお嬢様の所には行かせません!」

私はその化け物を引き止める。少しでもお嬢様や咲夜さん達の負担を減らす為に…

「…ならば貴方を倒せば良いだけのこと。霊夢!先行ってくれ!」

そこにはすでに霊夢さんの姿はなく霊夢さんは紅魔館の中に入っていった。

 

「覚悟っ!」

 

私の目的は時間稼ぎしつつもこの男…勇姿さんに対して一矢報いること。勇姿さんを殺すなんてことはまず不可能と言っていい。

 

私の能力は『気を使う程度の能力』

…そもそも気とは何かと聞かれたら私はこう答えるでしょう…体内にあるエネルギーを変化させて自分の力にしたりすることができる物。しかしそれができるのはごく一部…何故なら皆気は持っているのですが残念なことにそれを自在に変化させることが出来ない。

しかし勇姿さんには気が限りなくゼロと言っていいくらいにない。気は必ず誰でもあるにも関わらず勇姿さんのみ感じない。

私は一つの結論に達した。勇姿さんは私以上に気を使うことが出来るではないか?ということだ。

 

「…」

彼は…危険だ。それ故に手が出せない。

「っ!」

そう思っていると勇姿さんに隙ができた。僅かな隙だが逃すわけには行かない。ここで逃してしまえば勝ち目はない!

「よっ!」

そして私は腕を掴まれていた。それは罠だったということに気がつき顔を歪ませる…

「っ!」

私は腕を引っ込めようとするが勇姿さんに腕を握られてしまいそれを解こうとするが…

 

ドンッ!!

 

いつの間にか私は受け身を取らせる間も無く投げられ、世界が反転した。

「ガハッ…!」

その勢いの強さに私は血を吐いてしまい、動けなくなった。

「立て、紅美鈴。その程度で終わるのか?」

彼は追撃せず、私を立ち上がらせようと挑発していた。

「何故私の名前を…!?」

しかし私はそれ以上に、彼が何故私の名前を知っているか聞いておく必要があった。私は寝たふりをして聞いていたからわかるが…私の名前は出てこなかった。

「さあな。聞きたければこの勝負に勝つことだ。」

人間のくせに舐めるのもいい加減にしろ…といいたいところだが彼の私の差はそれだけの力の差がある。

 

ビュンッ!!

白黒の弾丸が私達の上を通過した。

「勇姿~っ!先行っているぜーっ!」

そう言って金髪の少女は紅魔館内部へと侵入していった…

「あっ!魔理沙てめえっ!」

あの白黒は魔理沙さんと言うらしく勇姿さんと知り合いらしい。

 

…これは不味い。あの白黒は魔力を感じたことからおそらく魔法使い。魔法使いはここにもいますが室内戦を得意とする魔法使いにとっては喘息という致命的な弱点を持っています。何故致命的な弱点かと言うと喘息は埃に敏感に反応します。室内戦となれば埃が舞い散るとは当然のこと…それ故に長期戦は無理…

 

だから私は勇姿さんをなるべくここで足止めしてスタミナ切れをさせようとしていたんですが…詰みましたね。あの白黒が博麗の巫女の足止めをしている咲夜さんのいる方向にいっても咲夜さんが厳しくなる。だからといって図書館の方にいってもダメ…たった一人のイレギュラーがここまで紅魔館をピンチに変えたのは歴史上初めてですね。

 

「仕方ありませんね…」

私はそう呟いていた。何故なら傷付いているこの身体では勝ち目はない。となればやるべきことは一つ…たとえ大怪我を負ってでも一矢報いるのみ。

「…」

私の様子が変わり彼は初めて構えた。

「っ!!」

私は気を使い、一気に彼の懐に潜り込み…そして拳に最大限の気を溜めて…

「はあぁぁぁっ!」

 

ドゴンッ!!

その風圧で煙が舞い散り、あたりは煙だらけになってしまった。

 

彼の腹を殴った…彼の場合、身体を鍛えて敵を圧倒する剛の型とは違い、できるだけ身体の力を抜き受け流す柔の型。柔の型には長所もありますが短所も目立ちます。柔の型を使う者は最低限の力しか使わない為に押し切られると一般人よりも少し鍛えている程度になるという弱点を持っています。今回はそれを利用して私は彼を倒しに行きました。

 

そして煙がなくなると…影が見えてきた。

「…いいパンチだ。」

彼は無傷で現れて私は唖然としてしまった。手ごたえは感じたはずなのに何故無傷なのか…それが私の疑問だった。

「後一瞬反応遅かったら死ぬかと思った…」

このセリフを聞いて私は一つの推測が出来た。彼はあの一瞬の間に力をほとんど無力化していた。あの手ごたえもフェイクだと思うのも無理なかった。

「ぐっ…!」

私は倒れた。無理もない…あの一撃にほぼ全部の気を使ってしまった。私は力尽きてもう起き上がることすらも出来なくなってしまった。

 

「俺の勝ちだな?」

悔しい…私はかつてとある女性と戦い、完敗した。その女性に師事して私は今の武道の型を手に入れた。免許皆伝までして貰ったのに負けたということは彼女に泥を塗ることだ…私は最後に右手を振って抵抗したが彼に腕を掴まれ止められた。

「これを受け取れ。」

そう言って彼が渡してきたのは液体が入っている瓶だった。

「これは栄養剤だ。飲めば回復する…もう一度俺と戦いたいなら今飲め。」

…今戦ったところで勝ち目はない。私は首を横に振った。

「そうか…それじゃ俺はもう行く。」

勇姿さんはジャンプして紅魔館内部へと入って行った…

「また完敗しちゃったなぁ…」

もっとも今回は武術だけでなく、心も負けてしまいました。二度の敗北申し訳ありません、お嬢様…




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