強面男が幻想入り   作:疾風迅雷の如く

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日常編1
第1話


俺は大和(やまと)勇姿(ゆうし)、年齢は18歳…格闘技、マラソン、トライアスロンなどを趣味にしているトレーニングマニアだ…だがここで一言言わせてもらおう。

 

「常識は敵だ…」

 

若くして雄大(長兄)は大企業の社長である親父の後を継いで…その襲名披露宴に俺は夏休みなので司会者として呼ばれた。俺は車でその会場に着いたはずなんだが…随分ボロっちい神社だった…いやいやそんなはずはない。いくら雄大が26歳(ちなみに俺は今年18になったばかりの四男坊の某私立の高校3年生なのにかなりの老け顔で40代のヤとザがつく職業のお偉いさんみたいに見られる)の青臭い若造とはいえ大企業の社長襲名披露宴会場がこんなボロっちいはずがない。そうだとしたら社員の奴ら頭可笑しいだろ。もっと豪華客船みたいな会場とか! 高級レストラン貸切とか! そんなものだろ!?

 

絶対に親戚一同に嵌められたな。とりあえず兄貴達に電話…って電波状態最悪かよ…世界に羽ばたいている機械オタクの裕二(次兄)に山奥でも電波状態MAXになる契約をして貰っているんだがな…

 

このままだったら絶縁させられるな。それはまあいいか。どうせ俺がいなくとも問題ないし。地方でしか活躍出来ない俺じゃ、兄貴達に比較されるのがオチだ…

 

「…いっそのこと車で乱入するか!」

いくらボロいとはいえ神社でそんなことをしたらバチあたりだが仕方ねえよな。…親戚一同が悪いんだもの☆

それにギリギリのところで止めればバチあたりにはならない! そもそもバチあたりになっているから迷っているからやり返すだけだ!

 

「ヒャッハーッ、行くぜ!」

俺の頭の構想だと車で階段を登ってジャンプして神社の前で見事に着地する…親戚一同がいてもあいつらは車で轢かれた程度じゃ死なないし、軽傷で済むチート軍団だ…なんで格闘技やらないんだ? あいつらがやれば世界とれるだろ…

 

そんなことは置いてだ。俺は車で階段を登って、特別製の車の機能を使ってジャンプをした。そこまでは良かった…

 

「ぶべらっ!!」

なんか30近い若作りに焦っている20代の女の声が聞こえた。それはジャンプしている時にだ…つまりジャンプしている時に人を轢いたってことになる…が、まずそんなことはあり得ないので声のことは考えずに無事に着地するように調整した。

 

ダンッ! バキッ! メリメリ…

「到着~っ!」

車が着地すると俺は顔を出した。するとさっきのボロい神社は何処へやら…普通の神社が建てられていた。

 

「「……」」

 

周りにはちょっと変わったデザインの巫女服を着た巫女さんと白黒のフリルドレスを着ている金髪の女の子がこっちを見て絶句していた。どっからどう考えても親戚一同の奴らでもなければ、雄大の社員達でもないな。雄大がこんなコスプレイヤーを呼ぶわけがない!

「すみません、間違えました」

俺は車をUターンさせて階段を降りようとしたが…

「こら! 待ちなさい!」

すると巫女さんが俺に話しかけ止めてきた。

「どうしました?」

ちなみに言い忘れたが俺は強面の為出来るだけ紳士に話すタイプだ。そのため、こんな喋り方になる。

「あんたのせいで私の賽銭箱が壊れちゃったじゃないの!?どうしてくれるの?!」

さっきのメリメリ…って音、賽銭箱が壊れる音だったのか。賽銭泥棒なんて言葉があるくらいだし、結構正月はあそこに金入るんだよな…それ以外はどうか知らんけど。

「それは元々その賽銭箱には金入って無いだろ…それにその賽銭箱は霊夢の賽銭箱でもないぜ…」

金髪の女の子がそう言って水をさすが…巫女さんの機嫌を悪くさせるだけだぞ?

「魔理沙うっさい! と・に・か・く、その賽銭箱を弁償して貰うわよ!」

よく俺の面を見てそんなことを言えるよな…見慣れているのか? それとも神様の加護があるとかいう頭がお花畑なのか?

「そういうことですか…」

とはいえ俺がやったことって巫女さんのATMを壊したような事だしな…神社の賽銭箱ってなると木の材質がどうのこうのってうっさいし…これくらいで足りるか?

「ではこれだけですが…弁償金と賽銭です。ご納めください」

俺が一億の入ったケースを渡すと巫女さんはそれを開いた。すると巫女さんは目の中に金という文字が現れた…守銭奴だな。

「…お、お札が一枚、二枚、三枚…」

お札って…野口さんですらもらえないなんてどんだけ貧乏なんだ?普通は福沢さんが一人、二人とかだろう?株をやる時は万券になるけどな

 

「あんた名前はなんて言うんだ? 私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだぜ」

金髪の女の子こと霧雨魔理沙が俺に自己紹介してきた。

「大和勇姿です。以後御見知りおきを…霧雨魔理沙さん」

「出来れば魔理沙で呼び捨てで呼んでくれ…でないと背中が痒くなる…」

 

…中学の時の職場体験は警察署だったんだがマル暴(マル暴には某特選隊シリーズのイケメンヒーローを2、3人墓場送りにしている強面の人たちが多い)の年配のベテランと間違われて、普通4日くらいの体験だったんだがそのまま俺だけ1ヶ月仕事をさせられた…学校側は俺がいない方が良いという理由でどうやったか謎だが隠し通したらしい。そのくらい俺の顔はかなり強面だ。…ちなみにその学校関係者は親父の手によって社会的に殺されたのは言うまでもない。

 

その強面の俺にフレンドリーに話しかけるのは見慣れているのか、そういう性格なのかは知らないけど感心するぜ…人を見た目で判断してはいけないよな。ホント。

 

「では魔理沙。私もあなたに質問します…ここはどこですか?」

こっちとしては会場に行きたいんだよな…司会者としての務めもあるし。

「へえ、あんたもうここが外の世界じゃないのに気がついたのか?」

外の世界…別の世界だってことだから嫌な予感がする…

「ここは幻想郷。忘れ去られた者が住む場所だぜ」

忘れ去られた者が住む場所…幻想郷…道理で兄貴達に連絡が着かないわけだ。

「なるほど…それで魔理沙、外に戻るにはどうしたら良いのですか?」

なんでこんな冷静なんだろうな…あそこで金勘定している巫女さんを見ているせいだろうか?

「それはあそこで金勘定している巫女…博麗霊夢に聞いてくれ。私は専門外だ」

魔理沙は霊夢を呆れた顔で見て説明した。コスプレじみた服装の割には常識人なんだな。題名が焼き鳥のメニューの漫画に出てくる常識人もコスプレイヤーだということを考慮すると見た目と常識は反比例するってことか。

「わかりました。では失礼します魔理沙」

そう言って俺は霊夢に近づいた。

 

「うへうへ…お札が一杯…これだけ有れば小銭でお風呂ができるわ…」

どんだけしょぼい夢だよ?少し俺は引いたが気を取り直した。

「すみませんが少しよろしいでしょうか?」

「神様! 何の御用ですか?!」

うわ…神様って凄え態度の違い…まあ人から一億貰ったらそうなるのか…?貧乏だったら逆にビビって使えなくなるのがオチだよな。こいつは異常だ…うん。

「博麗霊夢さん、魔理沙から聞きましたが、あなたは私の世界…所謂外の世界に戻る方法をご存知のようですがその方法を教えてくれませんか?」

「あー…ちょっと待って。今外に帰れる準備をす…しますから!」

どうやらとっとと帰れるようだな…まああれだけサービスしたんだし当然か。多少素が出ているけどそこは気にしないでおこう。

「わかりました。」

 

その間俺は車の整備をして待った…そしてしばらくすると霊夢が近づいて来て準備が終わったことを報告した。

 

「これが帰る道ですか?」

その道とは、なんか黄色に光る道でいかにもなにかあるような思わせぶりをするような感じだった。長ったらしいが気にするな。

「ええ、私としては神様をおもてなししたいのですがあなたも忙しい身…せめて私はこうして準備をした訳です。では良いお旅を…」

霊夢はそれだけ言うとお辞儀をしてビジネススマイルをした。

「霊夢がいつもの霊夢じゃない…」

魔理沙がボソッと声に出したが俺と霊夢はスルーした。

 

「では失礼します…」

そう言って俺は車のエンジンをかけて車を発進させ、その道を辿った…

 

数分後…

 

「ようやく見えてきた…」

車を運転すること数分…光輝いていた景色が木の家らしき景色に変わり、その地点に車を置いた。

「さて、連絡しないとな…」

そう言って携帯を出すが電波状態が最悪だったことを思い出した。

「はあ…そうだった」

そんなことを呟くと誰かが近づいて来た。

「も~うっさいわね…」

その人影とは先程の巫女こと博麗霊夢だった…

「…博麗霊夢さん。お久しぶりですね。わずか数分でしたが…」

俺がそういうと霊夢は口を開けて唖然としていた。

「え?どういうこと?」

どうやらいつもなら成功してそのまま帰れたけど今回は失敗したパターンか…あれだな、異世界トリップ物のテンプレだ。それじゃ俺は何か? 強面の勇者にでもなれってか? …俺を呼び寄せるくらいなら親戚一同にでもやれよ…現時点じゃ俺の方が強いけどあいつらは鍛えたらめちゃくちゃ強くなる。…言わないけど。

「それは私のセリフです…まっすぐ行ったはずですが、またここに来たみたいですね」

俺は冷静にそう言って…事態を整理する。

「…もう一度!」

霊夢は再び道を開いた…最初からそれをやれよ。

「何か?」

霊夢…心読んでいるのか? まあいい…俺は車を使って再びやって見たが結果は同じだった。

 

「フフフ…」

そこには鬼のような顔をした霊夢がいた…俺の面よりも怖ぇよ!

「これは私に対する挑戦状と見てもいいわね…!!」

 

それから何回も試して見たがどれもダメだった。車から降りて歩いてもダメ、全速力で行ってもダメ…ナメクジよりも遅く歩いてもダメ…そんなこんなで日が暮れた。

「はあ…仕方ないわ。それじゃ勇姿さん、今日は神社に泊まって。晩御飯も作るから」

ちなみに何回かやっているうちに俺と霊夢共に諦めの色が見えた時に自己紹介しあって、互いにギクシャクしないように敬語を使わないようにした…

「わかった」

そうして俺は博麗神社に泊まることになった。


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