凄惨なる天命への反逆   作:未奈兎

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遅くなりすぎましたが拠点会話も盛り込んでみました
○obage恋姫プレイ中なんですが色々大丈夫かと心配になります
女主人公イベント絵巻で衝撃を受けたのは私だけじゃないと信じたい


7話 躍進と外れ始めた定め

小帝を護衛し洛陽に到着した一刀達。

 

それを出迎えたのは禁軍を率いた犬耳フードの女性だった。

 

「劉弁様!劉協様!」

 

「蘭花!」

 

「おお、蘭花か!心配をかけた、不覚にも十常侍に捕まってしまったが此方の太守たちに助けてもらったのだ。」

 

「なんと・・・陛下の身をお守りいただき誠に有り難うございます!」

 

陛下の前で恭しく頭を下げる女性に一刀と流琉は思わず首を傾げた。

 

(ん?んん?あの人・・・猫耳フードに変えたら桂花そっくりじゃないか?)

 

(は、はい・・・私もそう見えます。)

 

「申し遅れました、私は荀公達、陛下のお側で侍女と教育係を兼任させてもらっています。」

 

(じゅ、荀攸!?桂花にとって族子にあたる人だけど、この人以前は見なかったような・・・?)

 

以前の外史では知り合わなかった荀彧の親戚に思わず驚きながら一刀達も自己紹介を返した。

 

「両陛下、此処で話をするのはあまり得策ではありません、十常侍派閥が行動を起こしたことで、袁紹らが宦官達を排除しました、報告のために宮殿にて趙忠らがお待ちです。」

 

「うむ、北郷、董卓、ともに宮殿に来てほしい。」

 

「「はっ!」」

 

「あれ、でも今趙忠って言わなかった?そいつってたしか十常侍の一人じゃ・・・?」

 

「間違っていませんよ一刀殿、十常侍の派閥一人が何故未だ健在なのでしょうか?」

 

「疑うのも無理もないですね、ですが黄は張譲と違い父の代から忠厚き文官で私の教育係です、信頼しても大丈夫ですよ。」

 

その言葉に偽りはないのだろう、微笑む劉弁の顔には全幅の信頼の証であろう笑顔があった。

 

(謎だ・・・この世界・・・。)

 

こめかみに指を当てながら以前と全く違う流れに頭を悩ませた、自分が引き起こした流れであったとしても・・・。

 

 

 

小帝二人を護衛し宮殿に入った両軍だが陛下達が暫くやることがあると一刀達は一室に通され待つこととなった。

 

「だいたいの事情は察してるけど・・・やっぱり宦官排除の件かな。」

 

「間違いないかと、宮殿の一部に血痕もありましたしね。」

 

「詠ちゃん、私なんだか私まだ夢見てるみたいで信じられないよ。」

 

「無理もないよ、ボク達は何進に呼ばれたはずなのに、その何進は死んでいて、両陛下を救うことになるなんて。」

 

「全くだ、ワタシらだって陛下の御身を救うことになるなんてな・・・。」

 

「あの時はとっさに体が動いたが、思い返せば体が震える思いだ。」

 

「そやなぁ、あん時の華雄の動きは早かったなぁ。」

 

「ん、華雄かっこよかった。」

 

「恋殿の言うとおりですぞ。」

 

「う、あ、あまり褒めるな。」

 

「焔耶も本当にお手柄だったよ、凪が隙を作ったとはいえ無事陛下を救出できた。」

 

「ああ、合わせてくれて感謝する焔耶。」

 

「よせやい、恥ずかしい。」

 

両軍の突撃要因が揃って照れていると流琉が少し顔を曇らせた。

 

「でも姉様、やっぱり都は・・・。」

 

「ああ、荒れ放題ってやつだな。」

 

「へぅ・・・。」

 

護衛中にわかったことだがやはり表向きは豪華に見える都だが、裏を探ってみれば相当の格差が伺える、一刀達がやや沈黙していると一人の使者が入室してきた。

 

「お待たせしました、両陛下が謁見の間にてお待ちです。」

 

気になることもあったが一刀と董卓は共に稟と賈駆を同行者として謁見の間に向かった。

 

 

 

一刀達が謁見の間に通されると数人の宦官たちが一刀達に揖礼をし、劉弁、劉協らが玉座に座り出迎えた、その側には先ほど見た荀攸、緑髪の女性に、メガネを掛けた真面目そうな女性3人が控えていた。

 

「此度はそなた達の働きにより無事洛陽に戻ることができた、感謝する。」

 

「ありがとうございます。」

 

劉協が口を開くと劉弁も微笑んで一刀達に感謝の意を伝えた。

 

「勿体無いお言葉です。」

 

「御身がご無事でよかったです。」

 

「さて、父が崩御し、政変が起き十常侍らが行動を起こしたが袁姉妹やそなたらの功により乱そのものは極めて小規模なもので収まった、しかし、その後の後始末が少々厄介なものとなってしまってな・・・。」

 

劉協が悩ましげな顔を浮かべると緑髪の女性が口を開いた。

 

「ここからは私、趙忠めがお話します、袁紹殿が宦官を排除したのは良かったのですが、その影響で今洛陽は深刻な人手不足と治安悪化が巻き起こっています、格差や治安の悪化は元より起こっていましたが今回の騒動で民衆も不安を感じています、幸い我らが未だ漢室への忠を持つ臣を予め保護したことで戦力はあるのですが、如何せんその纏め役が不足しているのです。」

 

「そこで、そなたらへの褒美へとつながるのですが、受け取って欲しいのです。」

 

劉弁、劉協が玉座より立ち、二枚の詔書をそれぞれ荀攸と趙忠から受け取るとその内容を読み上げた。

 

「天水太守董卓!これより相国の位を授ける、その内政力の高さで洛陽の復興にあたってほしい!」

 

「新野太守北郷一刀!何進亡き後の大将軍の位を授けるそなたはその類稀な発想力をもって洛陽を発展させてほしい!」

 

その幼い身から威厳のある声を出し、一刀と董卓らに玉璽の印が押された詔書を渡した。

 

董卓は受け取った詔書をまじまじと見ながら賈駆に焦点のあってない目で口を開いた。

 

「・・・詠ちゃん、私相国になってる夢を見てるんだけど?」

 

「月ー!?目を覚まして、現実だから、ボクも信じられないけど現実だから!?」

 

董卓達の驚きは当然だが、一刀達も驚きを隠せない、つい最近太守になった田舎者が更なる大出世だ。

 

「・・・謹んでお受けします、ですが一つだけ、袁紹殿はどうしたのですか?」

 

唖然としている稟をよそに一刀が気になったのは袁紹の存在だ、以前の袁紹の性格を知る一刀は宦官を排除した功のある彼女が官位に執着しないわけがないと思っていたのだがここでもさらに予想外な答えが入ってきた。

 

「うむ、それなのだが、実は先ほどそなたらの前に袁紹と袁術、彼女にも相応の官位を与えようとしたのだ、袁術は受けとったのだが、袁紹は今は受け取れないと辞退されてしまったのだ。」

 

(へ・・・?)

 

今度は一刀も唖然とした、以前の彼女であれば高笑いで喜んで受け取ることはあれど辞退するなど考えられない事だった、

 

「彼女は宮殿を血で汚してしまったことと、未だ今以上の官位を預かるには不足の身、と言う理由で最低限の報酬のみ貰い袁術らと既に互いの領地へと引き払ってしまったのです、以前の評はあまり良くはなかったのですが彼女も思うところがあったのでしょう。」

 

(うそ、だろ・・・あの袁紹がそんな謙虚な姿勢で辞退したのか?何があったんだよ。)

 

曹操と劉備軍の連合、孫堅生存によって起きた袁術軍と孫堅軍の合併、更に今回の袁紹の豹変ぶりに一刀はある決心をする。

 

(居るかどうかはわからないけど、少なくとも居る可能性が高い、話を聞きに行くぞ、貂蝉。)

 

「突然の出世に戸惑っては居るだろう、しかし、今の洛陽には民の信頼厚きそなたたちの力が必要なのだ、洛陽より遠いがそなたたちの評判の良さはこの耳まで届いている、どうかこの洛陽を復興するのに力を貸してほしい。」

 

一刀と董卓が平伏すると劉弁達は謁見の間を後にした、自らの大出世、それによって洛陽に留まることになったのだ、漢女に話を聞きに行く時間は取れるはずだと一刀も謁見の間を後にした。

 

一刀らが退室した後に廊下を歩く劉弁にメガネを掛けた女性が口を開いた。

 

「劉弁様、此度の昇進本当によろしかったのでしょうか?」

 

「ええ、彼女たちなら信用できます、楼杏(皇甫嵩の真名)にはこれからも苦労をお掛けすることになりますが・・・。」

 

「いえ、我が身のことはお気になさらず。」

 

「劉弁様、楼杏が気にしていることは其処ではないかと。」

 

「はぁ、蘭花にはなんでもお見通しね。」

 

「私も荀家の一人ですから。」

 

「頼りになる言葉だ、古き大樹にもまだ望みはあるか・・・。」

 

「気掛かりな事があります、袁紹が排除した宦官らの中に未だ張譲の死体が見つかっていません、恐らく逃げおおせたか、最悪どこかの太守達に接触している可能性があります、まだ気を緩められません。」

 

「張り切りさんですねーだから仕事熱心に見られて婚期が・・・。」

 

「ちょ!それとこれとは関係ないでしょ黄(趙忠の真名)!?」

 

「あんたら漫才もいい加減にしてください。」

 

「ははは、そなたらは頼りになるが、見ていて飽きさせもせんなぁ。」

 

「ふふふ♪」

 

「りゅ、劉協様、劉弁様までぇ・・・。」

 

荀攸、趙忠、皇甫嵩らを伴い歩く幼い帝達の姿はその見た目よりも大人びて見えた。

 

 

 

 

「すぐに足の早い伝令に頼んで風に伝えないとな、明日から今まで以上に忙しいぞ。」

 

「一刀殿は、冷静ですね。」

 

「そんなこと無いぞ?俺だって今も驚きと不安でいっぱいだ。」

 

「・・・大将軍ですよ大将軍!?元の座に居た何進も元は肉屋の豪族でしたがこの出世は異例です!」

 

謁見の間から皆のもとに戻る際に郭嘉は興奮しているようだったが一刀は苦笑いを返す。

 

「あ、あはは、たしかにそうなんだけどさ、俺よりも深刻そうなのが隣にいるし・・・。」

 

「隣ですか・・・あっ。」

 

郭嘉が視線を伸ばせば詔書を持った手が震えながら覚束ない足取りの董卓が居た。

 

「相国・・・私が・・・相国・・・・。」

 

「どうしよう、李儒に頼んで天水の方は何とかなってるけど、この広い都の管理・・・。」

 

「あ、あー董卓、殿?」

 

「あ、すみません!なんだかまだ夢を見てるみたいで・・・。」

 

慌てる董卓だがその顔は不安で一杯だ、無理もないだろう、自分と同じで先ほどまで一太守に過ぎなかったのだ、しかし、董卓は次第にその顔を引き締めていった。

 

「でも現実なんですよね、それに、私が相国になったことで陛下、洛陽の民、皆さんの助けになれるなら・・・。」

 

「董卓殿はやさしいですね。」

 

「へぅ。」

 

一刀が微笑むと董卓はその薄い肌をほんのりと赤らませて両手で頬を覆う。

 

「それにしてもあんたはずいぶんと冷静ね?大将軍出世に驚かないの?」

 

「稟にも言ったけど、俺も驚いてる、董卓殿たちと違って俺達は元々旅の人間だからね。」

 

「・・・はあ!?」

 

「間違っては居ませんよ、一刀殿は元より私も元は見聞を広めるために旅をしていましたから。」

 

「それが自分で立身出世を志したとはいえいきなりの大将軍って驚かないわけがないよ・・・。」

 

「じゃあなんでそんなに落ち着いてるのよ?」

 

「大した理由じゃないかな、俺は皆を信じてるから、みんなといっしょならどんな困難だって乗り越えられる。」

 

本当の事を言えば、あの大国、それでも衰え始めた魏を支えた時の重圧と比べれば少しマシである、ほんの少しだが・・・。

 

「嬉しい言葉ですが、少々過分なお言葉な気が・・・。」

 

「そう言うなよ、俺は稟の知謀を頼りにしてるよ?」

 

「な、ちょ、だからって撫でないでくださいよ!?」

 

稟の頭を撫でると面白いぐらいに慌てた。

 

「ふふ、一刀さんのお陰で、少し元気が出ました。」

 

「え?」

 

「そうですよね、私にも詠ちゃん、霞さん、恋さん、音々音さん、華雄さんや李儒さんも居るんですよね、詠ちゃん、私も洛陽の人たちの笑顔を取り戻してみたい、そのために相国の座に着いてみる。」

 

決意を決めた董卓の意志は固く、それを見た賈駆はため息を付きながらも微笑んだ。

 

「はぁ、止めても無駄だね、うん分かった、ボクは月のためならどんな策だって紡いでみせるよ。」

 

「ありがとう詠ちゃん。」

 

(微笑ましいなぁ。)

 

両軍の将たちはそれぞれの太守達の異例の出世に驚いたがそれと同時に出世を祝い、焔耶は興奮し、張遼は月を抱きしめて、両軍はそれぞれが洛陽復興のために一丸となることを誓った。

 

「一刀様、これから長いお付き合いになると思います、これよりは私のことを月とお呼びください、」

 

「じゃあボクも、ボクの真名は詠よ、月のことを裏切ったら許さないよ?」

 

「ああ、ありがたく預からせてもらうよ・・・俺には真名がないから、好きに呼んでくれ。」

 

 

 

 

拠点 稟 未来であり過去の君を知るからこそ

 

董卓達は新野に居る風達に伝聞を送ると早速月達と今後のことを煮詰めるために、洛陽の再建を目指して陛下お墨付きの文官たちと今後の方策を練ることにした、すでに多くの人達が集まっていてやや騒然としている、其処には稟も混じっていた。

 

「しかし驚きました、これほどまでの文官がまだ残っていようとは・・・。」

 

稟がさりげに口に出した事を聞き取った皇甫嵩が稟に密かに耳打ちした。

 

「宦官と言っても風評通りの愚者ばかりではないわ、漢の復興を夢見て都に来たものも居る、でもそんな人がいるなんて解らなかったら、袁紹の精鋭に一緒に殺されていたでしょうね。」

 

「あ、貴殿は、皇甫嵩殿?」

 

「ええ、堅苦しい言葉は要らないわよ、私達は陛下直属だけどそれらしい権限は持ってないし。」

 

「では私も、一刀殿の軍師故に郭嘉とお呼びいただければ。」

 

「皆様静粛に、これより洛陽復興のための物議に入ります!」

 

荀攸の声が響くと一瞬にして室内が静寂とした、それほど全員が復興のために熱を入れているのだろう。

 

「さて、此度袁紹殿の功により十常侍を筆頭とした悪官たちが罰せられ、本格的な復興に当たれるようになりました、ですが御存知の通りこの漢王朝は民にとって最早なんの希望もなく、ただ贅を毟り取る恐怖の対象として見られても全く反論の取れない状況となってしまっています、そこで漢王朝に忠ある皆の意見をまず一つ一つ上げていこうと思います、上策下策問いません、まずは浮かぶべきことを一人一人順に浮かべてみてください、あげた策の反論も認めますが、具体的な案件も含んだ上でお願いします。」

 

荀攸の言を切欠に静寂とした室内が再び熱を吹き出した。

 

「まずはなんといっても民への政策でしょう、予算の件は問題ありません、位を解き罰した者達から没収した資金を使えばしばしの間洛陽の民達の税を無税とすることも可能なはずです!」

 

「それも大事ですが区画整備や格差の問題も山積みです、なんといっても洛陽の町は今や廃墟も同然、仕事もなく一日の食事をまともに取れぬものも居ると聞きます、飢えた民への食料の配給も視野に入れたほうがよろしいかと。」

 

「禁軍の編成も大事だと思うんだよね、ボクが思うに練度が低いし、精強な兵は警備にも使えると思うんだ。」

 

「道理、練兵や治安改善の方は相国様や一刀殿にも手を貸してもらうのがよろしいかと。」

 

「しかし、今や我々の信用が低いのは明らかですぞ、まずは付近の太守にも助力を願うのはどうですか?例えば西涼の馬騰殿です、彼女は月殿とも交友があると聞きますし、漢王朝に忠ある馬家の助力を得られれば民に信を得られると思うのですぞ。」

 

「下策ですが、見た目も大事です、廃れた都や虎牢関や汜水関再建の目処を立てねば賊から攻められることも考えられる!」

 

(これはなんとも、知者がこれほど集まれば流れるように意見が出る、不覚にも少しばかり熱くなって来ますね・・・!)

 

稟やねね、賈駆に荀攸も時に混ざり次から次へと文官たちが意見を出し合い、欠点を補い昇華させていくさまは一刀が見れば小規模ながら魏が最も勢いを振るっていた時の文官同士の論争に酷似していた。

 

「みなさーん、喉が渇かぬようにお茶をもってきましたよー。」

 

「え!?あれは趙忠殿では!?」

 

「黄は内政や武よりも料理に通じているからね、毒味役としても優秀なのよ。」

 

「はぁ・・・。」

 

「陛下のお側に控える人達は特徴的ですぞ・・・。」

 

(あれ?まさかその中に私も入っちゃってる?)

 

 

 

 

「お疲れ様稟、その様子だと随分収穫が多かったみたいだね。」

 

「一刀殿、多くの方と語るのは良い刺激になります。」

 

「それにしても、洛陽の文官の質も侮れないなぁ、まさかここまでとは。」

 

「もし、袁紹達が理性的な判断をせずに宦官全員を虐殺してしまったらもっと悲惨なことになったでしょうね。」

 

(それが一番意外なんだよ、俺の知る未来、歴史共に宦官虐殺が起きたからこそ洛陽が廃れて権威を失った、それを狙い上洛した董卓が暴政を敷いて曹操の呼びかけによって袁紹を主体とした連合が成立、かと思えばこっちじゃ月は優しい女の子、単に上洛して権力を得た月に対する諸侯の嫉妬だった。)

 

「だからこそこんなに事態が好転してるって言える、だからこそ稟、無理をしないでくれよ、もし疲れたのなら休むことも必要だぞ。」

 

「お気遣い大変嬉しく思います、ですが、こうしている間にも水面下では恐らく他諸侯が動いているはずです、十常侍筆頭の張譲も行方不明であり、何をしているかわからない以上気を抜くわけには・・・。」

 

「あーうん、分かったからちょっとこっちおいで。」

 

「?一体何を・・・。」

 

一刀は稟を近くに座らせるとその肩に手を置いた。

 

「え、一刀様、なにを・・・んっ!」

 

「ほら、こんなに硬くなってる、無理のし過ぎだよ、風が見たらからかわれるよ?」

 

「あ、でも、これ、くぁ・・・。」

 

(か、一刀殿の上手な手つきが・・・!)

 

「俺は稟に無理をしてほしくない、過労や病気になったらどうするんだい、もう少し自分の体をいたわってほしい。」

 

「あう・・・。」

 

(も、もう無理かも・・・!)

 

一刀の手技を変な方に考えてしまい、妄想が広がった結果・・・。

 

「ぶはぁ!」

 

「うわった!またかよ!?」

 

「ふがふが・・・。」(す、すみません!)

 

(うーん、変な話だけどこっちじゃあまり出してないからこの鼻血が逆に新鮮に見えるなぁ・・・。)

 

仕事をまじめに取り組んでいるせいか欲求不満なのかもしれない、前回は艷本を購入しては町中で流血事件が起きるという珍事もあったが。

 

「あーもう俺が悪かった、ほら。」

 

「ふが?」

 

一刀は稟に膝枕をすると楽な姿勢にさせた。

 

「あ、ちょっと一刀殿!?」

 

「なあ、本当に大丈夫なのか稟、何かあったら新野のみんなも悲しむし、特に風は泣くよ?」

 

「・・・はい、寧ろ病気になっている暇すらありませんよ。」

 

「そっか・・・。」

 

安心するように微笑む一刀の顔を見ると稟は先程とは違う意味で顔を赤らめた。

 

(なんでしょう、この気持ちは・・・まさか、私は一刀殿の事を・・・。)

 

(って何を考えているのですか私は!?一刀殿は私と同じ女性ですよ!?)

 

(あ、でも以前旅の中で読んだ艷本のなかに女性同士があられもない姿を晒して・・・。)

 

そう思ったが最後、稟の頭のなかではその艷本の内容が自分と一刀に置き換わり・・・。

 

『稟、綺麗だよ。』

 

『一刀・・・殿・・・。』

 

「はぶぅ!?」

 

「えぇ!?今度はなんで吹き出した!?」

 

稟、本人に自覚はないが、その心は既に一刀に奪われているのだった・・・。

 

 

 

 

拠点 焔耶 汚点あればこそ

 

此方は禁軍の練兵所、しかし此方では文官たちとは別の形で熱気があった。

 

「ふん!そんなものか魏延!」

 

「くっそ、まけるかよ!」

 

「あ、あー君たち、手本を見せろって言ったけどもう少し抑えて・・・。」

 

「・・・zzz。」

 

「そんな中で寝ている恋っちはさすがやなぁ。」

 

現在絶賛華雄と焔耶が打ち合い中で二人の武器を木製で模造したものだが、さながら一騎打ちの様相である、それを見る禁軍の兵たちは畏れ半分憧れ半分の様子で一騎打ちを観戦していた。

 

「まあええんやないか?兵たちにもええ刺激になるわ。」

 

「そりゃそうだけどさ、確かに休憩がてら少し武将たちの動きを見てみるって言ったのは俺だし。」

 

「おらおらおらぁ!!」

 

「ぐっ・・・まだまけんぞ!」

 

「そーこーまーでーだっ!!」

 

「う、大将、すまん。」

 

「むぅ、いい感じに熱が入っていたのだが。」

 

いい加減見ていられなくなったので一刀が仲裁に入り事態は収まったのだが二人はやや不完全燃焼気味だった。

 

「ほほう、其処まで身体が動かしたいって言うなら俺とやるか?ただし負けたら暫く恋の食費負担だが。」

 

「そ、それは勘弁だ!」

 

「え、おい華雄、呂布ってそんなに食うのか?」

 

「そんなになどというものではない、見ていて癒されはするが、それとこれとは話が別だ。」

 

「・・・まあ、でもそんな話とは別に、ワタシは大将と一戦やってみたいかな。」

 

「焔耶?」

 

「ワタシさ、なんだかんだで大将が前線で戦うのを見たけど、大将の腕がどんなかしらないからさ。」

 

「お、それはウチも気になるわ。」

 

いつの間にか練兵所の空気はいつの間にか新しい大将軍の腕はどれほどのものなのかという興味でいっぱいだった。

 

「はぁ、仕方ない、俺も対人戦を久々にやりたいしね、お手柔らかに頼むよ?」

 

「そうこなくちゃな!」

 

武器を構えて此方の出方を伺う焔耶、その表情からは油断や慢心はない。

 

(ある意味、俺にとってもいい機会だ、焔耶クラスの人とはまだ手合わせしていなかったし、自分の腕を確かめられる。)

 

木刀を構えて意識を集中させる、凪のように気を扱うことはできないが集中力なら此処の武将たちにも劣らない。

 

「行くぞ大将!」

 

「こい焔耶!」

 

焔耶は跳ねだし一刀に向けて武器をふるう、その一撃を真向から受けきる。

 

「っ!」(木製の武器でもさすがに重いな!)

 

「な!?」(受け切られた!?)

 

「おお、正面から受け切りおった、一刀の膂力もあなどれんなぁ。」

 

「・・・。」(パチっ)

 

「む、起きたか呂布。」

 

「ん・・・。」

 

「さすがに一撃が重いね、手がしびれるかと思った。」

 

「ワタシはまさか防がれるとは思わなかったよ、避けられるとは思ってたけどな。」

 

(魏で戦ってた時には猪武者のイメージが強かったけど、実際に戦ってみればやっぱり格が違う・・・。)

 

彼女とて三国乱世に名を連ねる立派な武将だ、侮りなどという感情など元より無い。

 

「今度はこっちから!」

 

剣道の面の手法で踏み込んで剣道の型そのままに焔耶に技を繰り出す。

 

「くっ!」(速い、いまのが真剣だったら・・・!)

 

辛うじて防御が間に合い距離をとったが焔耶の脳裏によぎったのは今の技が真剣で繰り出されたら、そう思っただけで背筋が凍る。

現代で研鑽を積んで、現代に蘇った剣聖とまで言われた一刀だ、その技量はまさに老練な武術の域だ。

 

「北郷も相当だが、今のが防がれるとはな・・・力は魏延だが、北郷には技があるな。」

 

「そやな、今のはかなり速かったで、動きに全く無駄があらへん。」

 

「・・・。」

 

華雄と張遼が戦況を見守る中、恋は無言で観戦していた、禁軍兵達も大将軍とそれに従う武将の強さに息を漏らした。

 

(どうする、剣道の技が防がれた以上速さに頼ってもカウンターで返される危険があるな。)

 

(大将の実力は本物だ、守りに入っても次が防げるかわからない、だったらいっそ!)

 

「でやぁぁぁぁ!」

 

「なんの!」

 

ひたすら攻撃を繰り出し一刀に反撃の暇を与えないように攻撃を繰り返す焔耶とそれを受け流したり避けたりで後の先を取るべく機を伺う一刀

 

(くそ!あれから高めるために修行をしたのに、まだまだワタシは・・・!)

 

「む!」

 

焔耶が見せた一瞬の隙を見逃さず縦振りの攻撃を横回転で避けてその遠心力を利用して焔耶に叩きつけた。

 

「っ・・・しま!」

 

とっさに防ごうとしたが手に攻撃が当たってしまい武器を落としてしまった、そして木刀を焔耶の前に突き出した。

 

「勝負あり、かな?」

 

焔耶は一瞬だけ悔しそうな顔を浮かべたが、はぁ、と溜息をついて頭を下げた。

 

「・・・参った。」

 

「「「おおおおお。」」」

 

練兵場が歓声で湧いた。

 

「おつかれさん、何やあんたら随分やるやんか。」

 

「そうだな、いいものを見させてもらった。」

 

「二人共、お疲れ。」

 

「ありがとね、焔耶もお疲れ様。」

 

「ああ、ためになったよ。」

 

「じゃ、ぼちぼち休憩もいい具合やろ、さっき見た戦い方までいけとは言わん、最低限生き残る技を磨くんや。」

 

「強さなど後からついてくる、その前に死んでは元も子もないからな。」

 

「死んだらごはんも食べれないし、悲しい。」

 

「じゃあ、班を分けようか、騎馬、槍兵は張遼と、戟兵は華雄と、剣兵は焔耶、弓兵は俺だ。」

 

「「「「はっ!」」」」

 

 

 

 

その夜、一刀は焔耶に呼び出されて焔耶の私室に向かった。

 

「大将、悪かったな、夜遅くに呼びだしちゃって。」

 

「気にしてないさ、話ってなんだい?」

 

「ワタシは少し前に益州の劉焉様に仕えながらき・・・厳顔様に師事していたんだ。」

 

「していた?そういえば前は劉表に・・・?」

 

「恥ずかしい話なんだが、益州にでた賊討伐の時にワタシがとんでもない失態をして勘当されてしまったんだ。」

 

「賊討伐そのものは結果的には終了した、でも生き残ったのは、率いていた兵の半分も居なかった。」

 

項垂れて後悔の表情を浮かべる焔耶、その顔には一筋の涙が浮かんでいた。

 

「ワタシのせいなんだ、たかが賊と侮って前に出すぎた結果、挟撃を受けて兵を無駄死にさせてしまったんだ。

その時は、戦況もろくに見てない猪武者でさ、厳顔様に横っ面ぶん殴られておもいっきり怒られた。」

 

『貴様は何をした!貴様は策の警戒を疎かにして死ななくていい兵まで死なせたのだ!』

 

「散々怒られた、最後に自分を越せるぐらいに将として成熟するまで儂の元に戻ることと真名を呼ぶ事を禁ずる!

って言われて追い出されてどうしようかと死人みたいに放浪してた時に紫苑様に拾われたんだ。」

 

「・・・そうか。」

 

「それから、将としてどうすればいいか必死に鍛錬を積んだり勉強をしても全然解らなくてさ毎日あの時の後悔ばかりだった。」

 

「でも、大将と会えてなんとなくわかった気がするんだ、将にとって大切なのは兵を死なせず自分も生き残ること。」

 

「どんな時も戦況を見極めて策を警戒するだけの冷静で居ること、何よりも、色んな意味で強くなくちゃ守れない。」

 

「焔耶・・・。」

 

焔耶は少し笑うと一刀に向き直り拝礼をする。

 

「一刀様、改めてお願いします、この焔耶の武、どうぞお役立てください、一刀様の道にワタシはついていきます。」

 

「勿論だ、俺こそよろしくな焔耶、いつかその厳顔って人に胸を張って会える将になろう。」

 

「はい!」

 

(厳顔様、いつか、貴女を越えるぐらいの武人となって、堂々と貴女に会いに行きます。)

 

焔耶は遥か遠くにあるであろう益州を見て、かつての師を越えるべく再び決意を新たにした己のせいで犠牲になった兵の償いのためにも。

 

 

 

 

拠点 凪 流琉 ?? 真実を知る者

 

一刀達が大将軍として洛陽の警備についた時には民達が不信な状態でここまで信用を得るにはかなりの時間を要した。

 

復興もまだまだ半ばもいいところで人も少ない状態、辛うじて無税が効いて商業はにぎわいを取り戻し、

食材も配給などをして民衆に配るなど、少しづつ洛陽の機能を取り戻し始めていた。

 

「一刀様、洛陽の復興作業は順調に進んでいます。」

 

「そうか、これからが大変だからね、気を抜かずに行こう。」

 

「・・・やはり一刀様の経験した董卓様を打倒するための連合が組まれてしまうのでしょうか?」

 

「どうだろう、袁紹の動きが読めないから別の人が盟主になるかもしれないし、連合が起きないかもしれない。」

 

「それでも、洛陽の復興は民にとって必要なことだからね、治安改善、施設改修、魏での事を活かしていこう。」

 

「はい!」

 

「それにしても、こうして凪と歩いていると北郷隊として町の警備をしていたのを思い出すよ。」

 

「北郷隊、ですか。」

 

「色々あったよ、真桜が絡繰りで色々やらかしたり、沙和がまれにサボって凪の雷が落ちたりとかさ。」

 

「うう、記憶が無いのにその時のことが容易に浮かんでしまう・・・。」

 

「ははは、でも、俺にとってはあれほど楽しい日常はなかったよ、ずっと続いてほしいと思うくらいにさ。」

 

「一刀様・・・。」

 

「凪、多分連合軍が攻めてきたら間違いなく曹操軍が来るだろう、名を上げるために。」

 

「そして間違いなく其処には、真桜達がいるということですね。」

 

「虎牢関か汜水関で相対するだろうな。」

 

「その時には武で語りますよ、多分、二人共相当頭にきているでしょうしね。」

 

「真桜とかは『凪のやつ勝手にいなくなってからに!次あった時にはその顔ひっ捕まえて尻にお菊ちゃん突っ込んだる!』とか言ってそうだね。」

 

「さすがによくご存知で・・・。」

 

頭を抱える凪の頭をポンポンと撫でながら警備に戻る一刀達。

 

 

 

「あ、姉様、凪さん。」

 

「おお、流琉か、仕事はどんな具合だい?」

 

「はい、食事の配給の他にも農耕に感心を持っていただくために頑張っています!」

 

「・・・そう言えば流琉も過去の記憶を持っているんですよね?」

 

「ああ、凪みたいに一部分だけじゃなくて風みたいに完全に以前の魏の記憶を持っているんだ。」

 

「魏・・・。」

 

「凪さんは合肥の戦いだけでしたね、魏は曹操様が建国した許昌を首都とした強国の一つで蜀、呉と天下を三分した・・・らしいです。」

 

「尤も、均衡があったのは結構短くて最終的には三国はどの国にも勝てなかったんだ。」

 

「勝てなかった?」

 

凪が首を傾げると一刀が説明を続けた。

 

「最後は政権を奪取した一族に統一され、まもなく異民族が攻めてきて魏呉蜀はあえなく滅亡、後に一つの国として統一されちゃったんだ。」

 

「そうなんですか・・・。」

 

「あらん、興味深い話をしているわねん。」

 

「「!?」」

 

「・・・・!」

 

三人が振り向けば其処には引き締まる肉体美、盛り上がった筋肉は強者の証、ピンク色のビキニと三つ編みおさげは漢女の証。

 

「な・・・化け物!?」

 

「だーれが一目見れば韓信も裸足で逃げ出す化け物ですってぇ!?」

 

「いや、貂蝉誰もそこまで言ってないから、と言うか韓信っておい。」

 

「え!姉様お知り合いなんですか!?」

 

「まあね、俺の恩人。」

 

「お、恩人でしたか、知らずとはいえ失礼なことを・・・。」

 

「気にしないでいいのよん、この貂蝉の心の広さはこの大陸並なんだからん。」

 

「しかし、復興がてら探しては居たけどそっちから会いに来てくれるなんてね。」

 

「当然よん、私はご主人様の愛の奴隷なんだからん。」

 

「!!!!????」

 

「誤解を招くこと言うな、凪が混乱してるだろ。」

 

「ああん、ご主人様のイ・ケ・ズ、でもごめんなさい♪」

 

「な、なんだかすごい人です。」

 

「とりあえず立ち話も何だから、お茶でもいかがかしら?」

 

 

 

「さて、これからの話しは周りの人には聞こえないから心配しなくていいわよん。」

 

「心遣い感謝する、さて紹介するよ、こいつは貂蝉、俺が此処に来た切欠でもあってもう一度来るときに世話になったんだ。」

 

「よろしくねん♪」

 

「楽進・・・です。」

 

「典韋です、よろしくお願いします。」

 

「さて、楽進ちゃんと流琉ちゃんは魏の頃の記憶があるのよねん?」

 

「はい、私は一刀様と手合せをした時に一刀様に仕えていた楽進に会いまして。」

 

「私は、夢で赤壁で負けたことが映って、そこから魏の記憶が少しづつ蘇りました。」

 

「因みに風も太陽の夢を見て蘇った感じだね。」

 

「なるほどねん。」

 

「って、ちょっと待て、自然と凪と流琉を会話に混ぜているけど大丈夫なのか?」

 

「問題ないわよん、だって此処はとっくに外史の楔とは切り離されているのだから。」

 

「「外史?」」

 

聞きなれない単語に首を傾げる凪と流琉。

 

「ちょ、ちょっと待て!切り離された!?どういうことだよ!」

 

不穏な言葉に慌てる一刀だが貂蝉は親指を立ててサムズアップする。

 

「言葉のままよん、この外史ではもう管理者とか天の御遣いも関係ない、ご主人様も消えずに英雄たちと雌雄を決するだけねん。」

 

「あ、あの、一刀様、外史とは一体・・・?」

 

「外史っていうのは一概に黄巾の乱が始まる前からこの大陸統一までの時期の事をまとめた事を言うんだ、でも切り離された、か。」

 

「うーん、時を戻って今にいる時点であまり驚きはしませんが。」

 

「因みに管理者とは私みたいに外史を観測するものを指して、天の御遣いはまさにご主人様その人よん。」

 

「管理者って・・・貂蝉さんはこの世界を作った人なんですか?」

 

「はずれよん、私達はただ観測するだけ、いい結果悪い結果関係ないの、それこそご主人様が体験したようにね。」

 

「・・・。」

 

「だからこそ、その定めを覆すためにご主人様はこの外史に舞い降りたの、可愛い女の子になってね。」

 

「可愛い言うな。」

 

「あの、戻ってきたのはわかるんですが、何故私達も記憶を持ってるんですか?」

 

「良い質問ねん、外史はそれこそ大樹の葉のように無数にあるの、ご主人様が蜀や呉に降りたりする外史も有るわよん。」

 

「俺が、蜀や呉に・・・。」

 

「一刀様と戦うなんて、考えたくもありません。」

 

「私も・・・。」

 

「そしてさっきの記憶の話になるんだけどご主人様がこの外史に舞い降りた特に数人の思いが一緒に流れて来たの。」

 

「思い、ですか。」

 

「ご主人様一人だけが戦わせることに耐えられない、そんな尊い思い。」

 

笑みを浮かべる貂蝉はそのまま話を続ける。

 

「程昱ちゃんがその最もな娘ね、ご主人様とずっと一緒に居た娘だしねん。」

 

「そこまで見てたのかよ。」

 

「でも、だったらなんで華琳様や他の皆様の記憶は戻らないんですか、こういうのもあれですけど、華琳様は兄様のことを・・・。」

 

「それはねん、外史から切り離されても外史の鎖と言う名の呪いが解けていないからよん。」

 

「外史の呪いはとても強いわよ、切り離されても尚住民たちにその役目を課そうとするの。」

 

「つまり・・・まだまだ気は抜けないってことか。」

 

一刀が浮かべるのは前回での外史での悲劇の数々、もう一度経験するなど考えたくもない

 

「そういうことよん、曹操ちゃんをその呪いから開放したいなら覇道を諦めさせなくちゃならないわん。」

 

「そこら辺は予想してたけど、すっげえ難易度高いじゃん・・・。」

 

顔を覆って物憂げにうつむく一刀、曹操が、華琳が自分に戦いで屈するシーンが全く浮かばない。

 

「私は、合肥で弔ってもらった時と黄巾討伐の天幕で見かけただけですが、あの方を完敗させるですか。」

 

「華琳様を、負かす、難しそうです・・・。」

 

「それとねん、最後に一つだけアドバイスをあげる、ご主人様は他国から事前に武将を引き抜いているけど、今の時点じゃ他国に取ってマイナスには絶対にならないわ、それが外史の修正力ってやつよん。」

 

「外史の修正力・・・。」

 

「近いうちにその修正力はなくなるから、その後はもうご主人様の実力次第、私は陰から応援しているわん。」

 

バッチン♡っとウインクをしてその場から消える貂蝉。

 

「なんだか、すごい人でした・・・。」

 

「でも俺の恩人だよ、あいつが居なかったら俺は此処にはいないんだから。」

 

「一刀様・・・。」

 

「さぁて、休憩終わりだ、見回り再開と行こうか。」

 

「はい一刀様!」

 

「がんばってくださいね!」

 

「ああ。」

 

(外史の修正力・・・もしかして、荀攸や趙忠がヒントか?)

 

以前は居なかった歴史の名将、もしそれが更に増えていて、他国に加入していれば?

 

(戦力差を考えていたけど、寧ろこっちが不利になるかもしれないな。)

 

見回りを再開しながら、一刀は空を見上げる、空の先につながる彼女を案じて・・・。

 




劉皇帝姉妹がやや聡明すぎるように思いますが、大体荀攸と趙忠のせい

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