凄惨なる天命への反逆   作:未奈兎

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モバゲ恋姫見てると少しぐらい百合描写自重しなくても良くないかと思ってしまった自分は間違っているのだろうか、元々百合属性ない人たちも続々と女主人公とにゃんにゃんしてるし、最近のイベント美羽様か完全アウトだし。(いや男主人公でもアレだが)


9話 連合同士の激突

反北郷・董卓連合

 

洛陽の後の災いになるであろう二人を排除するために組まれた連合で、現在は集った諸侯が汜水関より奇襲や弓での攻撃の心配のない距離を開けて布陣している。

 

その連合に曹操、劉備も合流し袁紹の建てたであろう天幕に向かおうとしている。

 

「華琳さん、凄く人が集まりましたね。」

 

「そうね、見るものによっては壮観にも見えるわ。」

 

「は、はわ、あの、華琳様、なんだか機嫌が悪い様に見えるのですが・・・。」

 

「大したことじゃないわ、どうせ麗羽のことだから今頃天幕で大笑いしてるでしょうし。」

 

「あ・・・。」

 

「あはは・・・。」

 

「しかし、見るものが見れば諸侯の思惑も透けて見えますね。」

 

「そうね秋蘭。」

 

「やっぱり・・・嫉妬や止むを得ずの参加なんでしょうか?」

 

「はい桃香様、集った諸侯をよく見ると、大半が黄巾の乱で北郷軍、董卓軍に功を奪われて宴席で歯噛みしていた者達が多いように見受けられます。」

 

「義によって立ったというのは少なそうね、それでも真実を知れば道化でしかないのだけれど。」

 

「・・・。」

 

「あら、どうかしたの桃香、やっぱりこういう戦は嫌かしら?」

 

「嫌いです、ですがそれ以上に、嫌な予感がするんです。」

 

「嫌な予感?」

 

「なんだか、連合が勝つとか負けるとか、こんな戦いが許せる許せないの前に、大切なことを見落としてる気がするんです。」

 

「大切なこと・・・ねえ。」

 

「す、すいません、でしゃばったこと言っちゃいました。」

 

「いいのよ、私とあなたは対等なんだから、一理あるし気にとどめておくわ。」

 

「さて、と、麗羽の大笑いを聞きに行きましょうか・・・。」

 

 

 

 

袁紹の天幕に入り席に着く曹操達、劉備は公孫賛を見かけ、手を振ると彼女も苦笑いしながら返していた。

 

「あの、華琳さん、後で白蓮ちゃんと話す機会がほしいんですけど。」

 

「構わないわ、他諸侯と連携が取れるようになるのは悪いことじゃないしね。」

 

「ありがとうございます。」

 

「さて、檄文を送った皆様は全員来てくれましたわね。」

 

(来たか・・・。)

 

内心うんざりとした顔で曹操は袁紹を見ていたがすぐにその思いは裏切られた。

 

「皆様、このたびは私の檄文に応じて遠路お越し戴きこの袁紹、誠に感謝しております、洛陽にて暗躍する者たちを打ち倒し、勝利を掴み取りましょう。」

 

(・・・はぇ?)

 

出鼻をくじかれるとはこの事か、あの袁紹が高笑いもせず真剣な顔で諸侯を労った。

 

「まずは顔見知りの方もいらっしゃるでしょうがこの連合で初対面の方もいるでしょう、それぞれ自己紹介をお願いできますか。」

 

「え、ええ、陳留太守の曹操孟徳よ、こちらは私の盟友の劉備玄徳。」

 

「ふぁ、はい!劉備玄徳です!」

 

「あー・・・うん、幽州の公孫賛だ。」

 

「蔡瑁と申す、主である劉表様のご様態が優れないため名代として参った。」

 

「馬超だ、母の馬騰が五胡との対応で西陵から離れられないから私が名代で来た。」

 

「孫文台だ、んでこっちが袁術。」

 

「陶謙と申す。」

 

他にも挨拶を続けていたが曹操は袁紹の豹変ぶりに驚きを隠せないでいた。

 

「さて、皆様が異論無くば不祥ながらこの私が連合軍総大将を務め、連合の指揮を取りたく思うのですがいかがでしょうか?」

 

「ん、別にいいんじゃないか、麗羽はこの諸侯の中で一大勢力だし、異存がある奴は居るか?」

 

異存もなにもないだろう、連合の総大将ということはその責任を一身に担う大役だ、野心見え見えの連合でそのような面倒事を引き受けるものはいないだろう。

 

「・・・ありがとうございます白蓮さん、では皆様、洛陽へは汜水関、虎牢関と漢を守る堅牢なる関があります、ここでは董卓軍、北郷軍とともに激しい抵抗があるでしょう、真直(田豊)さん。」

 

「はっ!偵察からの報告によれば汜水関には円に十文字の牙門旗(北郷旗)、郭、魏、華、張の牙門旗が見受けられるとのことで・・・。」

 

「ふむ、華琳さんと、劉備さんでしたか、あなた方に先陣を頼みたいのですが。」

 

「私達に?」

 

「はい、華琳さんの将たちは揃って優秀な方たちです、敵方の力を測るためにも先陣をお願いしたいのですわ。」

 

「でもねぇ・・・。」

 

曹操は断る腹積もりだった、初戦は最も敵軍が強くまともに当たれば被害が大きいのだ、しかし・・・。

 

「勿論援助はいたしますわ、我が兵と兵糧もお分けいたしますのでどうか引き受けてもらえませんか?」

 

「ちょちょ、麗羽!?」

 

またしても驚いたあの袁紹が自ら頭を下げて、援助まで申し出たのだ、そこに劉備が耳打ちする。

 

(華琳さん、ここは受けましょう、ここで功を上げておけばきっと私達に利があると思います。)

 

(考え方を変えれば意気軒昂な敵軍相手に功を上げれば後は後方でいいとこ取りに備えられるわけか。)

 

(それもありますけど、他の人達はきっと日和見に入ると思うんです、敵に時間を与えないためにも・・・。)

 

(ここで名乗りをあげて戦果を出せばここの連中の歯噛み姿が見れるわけか、それも一興ね。)

 

(あはは・・・そこですか。)

 

「・・・いいわ、受けてあげる、連合の初陣は我が軍がいただくわ。」

 

「ありがとうございます華琳さん、すぐに兵糧の準備と兵への通達を致します。」

 

「ちょっと待ってくれ、なら私が後詰に入る、弓騎隊がいれば攻城も進み易いだろう」

 

「それはありがたい、是非ともよろしくお願いしますわ。」

 

後詰として公孫賛が入ることになり、その後も軍議はつつがなく進んだ・・・。

 

 

 

 

曹操軍天幕

 

「ありえないありえないありえないありえない・・・・。」

 

軍議の報告を聞き、曹操軍軍師である荀彧は猫耳の頭巾を深く被り呪詛のように言葉を繰り返しその顔は疑心に染まっていた、その姿にさすがの曹操も引き気味である。

 

「あー・・・桂花?」

 

「あ・り・え・な・い・わ!?」

 

ガバっと顔を上げた時には曹操も含む全員が少し後ずさった。

 

「はっ!?申し訳ありません!取り乱しました!」

 

少し息が荒い荀彧を置いて愛紗が言葉を発する。

 

「・・・以前黄巾の時に姿を見て袁紹の為人を見たが、たしかに俄には信じられんな。」

 

「そこなのよ、何があったのかしら・・・。」

 

「でも、変わったというなら、この連合の裏を調べそうだよね愛紗ちゃん。」

 

「む、確かに。」

 

「あら桃香、公孫賛との会合は終わったの?」

 

「はい、色々と話してきました、やっぱり袁紹さんのことで驚いてましたけど。」

 

「一体何が渦巻いているのよ、この連合に・・・。」

 

顎に手を当て考えていると服をくいくいと引っ張られる、視線を移すとやや涙目の龐統がいた

 

「あの、華琳しゃま、先ほどから桂花さんが取り乱していて怖いんでしゅが。」(うるうる)

 

「・・・後で宥めておくわ。」

 

「あわわ。」

 

「雛里ちゃん何を考えたの?」

 

 

 

 

汜水関

 

 

「うっひゃーここから見える敵の旗が壮観やなぁ~。」

 

「しかも数だけじゃなく将の質も高いみたいだ、ワタシ達だけで守りきれるか・・・?」

 

「随分と弱気だな焔耶、数で負けていようと我らの気概は負けていないだろう。」

 

「華雄の言うとおりだな、俺達が汜水関を守ってる間に、虎牢関と洛陽で準備が進められてる、できるだけ時間を稼ぎたいな・・・。」

 

「守勢だけならば我らにも分があるでしょう、最も、敵軍が一斉攻撃を仕掛けてきたら策も手もありませんが。」

 

「おい!?」

 

「まあそれがありえないんですけどね、汜水関の関の広さに対して連合の数が多いので一斉に押し寄せても詰まり気味にしかならない、寧ろこちらの矢玉のいい的になり被害がかさむばかりで無駄にしかなりません。」

 

「ちゅうても矢も無限ってわけやないやろ、資材を抑えて敵も食い止める、むずいなぁ。」

 

「む、敵の旗に動きがあるな、数軍ほどこちらに進軍してくるぞ。」

 

向かってくる旗は、【曹】【劉】【公】。

 

「流れが変わって・・・いきなり君か。」

 

「一刀殿?」

 

「なんでもない、曹操・劉備軍、公孫賛軍は精鋭だ、初戦から強敵が来る、みんな気を引き締めた方がいいぞ!」

 

「「「「応!」」」」

 

迫る大戦に気を引き締め、汜水関の精鋭たちは気炎を上げた。

 

 

 

 

「しかし一刀殿、一つ懸念があるのですが。」

 

「・・・新野だね。」

 

「ええ、まず間違いなく連合を口実に何者かの侵攻を受けるかと。」

 

「そこは問題ないよ。」

 

「なぜ言い切れるのですか、主戦力の大半はこちらにいるのに・・・。」

 

「あそこには風と紫苑や天和達がいるから。」

 

その時の一刀の顔は、一点の揺らぎもない信頼した顔だった。

 

「そしてここには、最高の軍師がいる、苦しい戦になる覚悟はしてるけど、負ける気はしないよ。」

 

そして稟にも同じ笑みを向けている、全幅の信頼であり、迷いない笑顔だった。

 

「・・・全く貴殿は、人誑しですよ本当に。」

 

「うえぇぇ!?なんでそうなるの!?」

 

「自覚無しときました、貴殿が男性であればとんだ罪作りでしょうね。」

 

「ガフッ!?」

 

「なぜそこで傷つくのですか、一刀殿は女性でしょうに。」

 

「あ、あはははは・・・。」

 

 

 

 

新野

 

 

「風ちゃん、火急の知らせよ、南から劉表軍と思われる軍がこちらに向かって北上しているわ。」

 

「ほうほう、おそらく連合を口実に自分の領地を増やす算段なのでしょう、そのまま洛陽に援軍に行くという後の言い訳もできますしねー。」

 

「うふふ、それでも動揺してないのね、もう対策は十分なのでしょう?」

 

「そうですよーお姉さんから恋文を貰って風もちょっと本気になってますから。」

 

「あらあらお熱いのね、羨ましいわ♪」

 

「・・・おお?」

 

「あの仁を大切にする思いと凛々しさの中で見せる憂いのある顔がとても惹かれるものがあるもの、亡きあの人を思い出してしまうわ。」

 

(これは・・・一体?)

 

風はある違和感に引っかかる、同性愛というのは古くから禁忌に触れるものであって【華琳】が異常なのだ、同姓に惹かれるというのは普通に考えるとおかしいのだ。

 

「さて風ちゃん、もう策があるのなら私はどう動けば良いのかしら?」

 

「おおう、そうでした~ではではこれからちょっとした準備に移りますよーまあ風の策が思い通りに描ければ・・・。」

 

感じた違和感を隠して、それを悟らせないように口元に手を当てて不敵に微笑む風。

 

「紫苑さんの矢一本で敵を退けられますよ。」

 

とんでもないことを言ってのけたのだった。

 

 

 

 

「敵の弓が来るぞ!全軍大盾を構えろ!」

 

「ちぃ!小賢しいわ!」

 

所戻り洛陽、曹操軍から数日にも渡り射掛けれられた弓矢をそれぞれ対処する一刀達。

 

「傷が深い者は下がれ!もし足を負傷したというのならすぐに家内で典医の治療を受けてくれ!」

 

(くそっ!敵に華琳と真桜が居るなら間違いなく改造された衝車ぐらいは準備しているはずだ、でもそれについては対策をしてるからまだいい、しかしどうにも今までと比べると苛烈に見えて秋蘭が鍛えたにしては攻めに勢いが足りない、諸葛亮たちの智謀を考えると、絶対にこれは牽制・・・何か裏があるはず・・・まさか!)

 

「焔耶!数隊を率いて兵糧庫や井戸に向かえ!敵の隠密が崖を超えて関に潜入しているかもしれない!兵糧を焼かれるか、最悪井戸に毒を投げ込まれたら耐えることすら危うくなる!後何もなかったとしても暫く兵糧庫と井戸に信用できる守備兵を多めに残して焔耶だけ戻ってきてくれ!」

 

「応!」

 

「一刀!公孫賛の部隊から第二射来るで!」

 

「そのまま耐えるんだ!反撃の機を伺いこちらも弓を射かけるぞ!」

 

「よっしゃ!!」

 

「おい!敵が衝車の準備を始めているぞ!」

 

「いざとなったらそこらの大きい岩を門の近くに落とせばいい!数十人掛かりで持ち上げて衝車の進路を塞ぐんだ、一時的な処置だけど時間は稼げる!」

 

「わかった、時が来たら私も手伝うことにする!」

 

「(敵の軍流に隙が、好機!)今です!全軍斉射!門の外に居る敵を速やかに減らします!」

 

「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」

 

まさに一丸、一刀は全体の指揮を、焔耶は兵を率いて隙を埋め、華雄、張遼が戦況をつぶさに観察し、稟が攻撃の機を読む、それぞれの役目を果たし、連合軍相手に善戦していた。

 

(虎牢関で凪や琉流、月達の、陛下の最後の仕上げまで粘らなければな。)

 

だが、以前は猪武者で劉備軍が挑発した彼女だけが気がかりではあるが・・・。

 

「お、北郷、岩を落としたら衝車に当たったぞ、やはり岩が落ちれば止まるのか?」

 

「いやいや!それ普通にすごいことだからね華雄!?」

 

・・・杞憂かも知れない、一刀は思わず頭を伏せた。

 

 

 

 

「・・・強いわね董卓軍、そして北郷軍。」

 

「あうあう、失敗しちゃいましたぁ・・・。」

 

「気にしないで明命ちゃん、誰にだって失敗はあるんだから。」

 

「ぐっはー酷いで、ウチの衝車に岩落とされてもうた・・・こりゃもう使えん、新しく組み立てんと。」

 

「あれは運が悪かったな、まさか敵が岩を城壁から衝車目掛けて落としてくるとは。」

 

「しかもご丁寧に大盾隊に入念に護衛までさせてな。」

 

「愛紗はん達、其処ちゃうねん、道に岩があるだけで衝車っちゅうのは使いづらなるねん、大将!また組み立ててええんか!?」

 

「構わないわ、今回は一時退くけど、衝車は常に使えるようにもしていて、それで敵の一部は衝車を警戒するはずだから。」

 

「合点!」

 

(・・・均衡を崩すために秋蘭の矢を牽制気味に射掛けている間に明命に潜入と兵糧の焼き討ちを命令したけど看破、おまけにこちらの衝車の対策も万全、まるでこちらの手が筒抜けね。)

 

連合に腕の良い密偵か内通者が居るのかと疑る華琳だが、過去であり未来、魏軍を最も近くで見て、蜀軍、呉軍と何度も戦った【少年】のことを華琳は知るはずもなかった。

 

「華琳さん、朱里ちゃんと桂花さんが一時退くこととこのまま力押しは愚策と見てこのまま連合が攻めあぐねるなら次の戦いにそなえた策謀を一考に入れて欲しいと。」

 

「そうね、一旦本陣に引き返しましょう、明確な功は得られなかったけど、敵が強いとわかっただけ得るものはあったわね。」

 

(今回はこちらの負けね、あの将達は純粋に強いわ、それを率いる北郷一刀、更にあの鬼神呂布やあの楽進、果ては知に秀でる桂花の姉、荀攸も控えている、ふふふ、なんという僥倖なのかしら。)

 

連合による一方的な戦い、そうは思わなかった、鬼神呂布や曹操が認めた敵に値する北郷一刀、それに付き従う優秀な将達、己の前に立ちふさがる強敵を前に己の信ずる配下たちは一歩も引かず打ち破らんと考えを巡らせ、盟友は最善を求め奔走している、曹操は自然と口元を弧に変えていた。

 

 

 

 

 

「お!連合が引いてくで!」

 

「初戦はなんとか勝利、かな?」

 

「こちらの被害も小さくはありませんが、敵を退けただけ良しとしましょう。」

 

「しかしあれだな、敵も相当に強いぞ、次はどんな敵が来るのか・・・。」

 

「どんな奴が来ようと関係ない、我々は来た敵を退けるだけだ、月様の、陛下のためにも。」

 

「ああ、そうだね。」

 

(今回は勝ったけど、一時的なものでしかない、大局的に見れば兵の救援が見込めない此方が不利、でも退けない、まだまだ遠い背中だけど何時か追いついて、君を救うよ、華琳、だから頼んだ、『皆』。)

 

 

 

 

 

虎牢関

 

 

「うおおおおおお!!!」

 

「うっひゃー・・・細工のためとはいえ、常人を遥かに超えてるわね。」

 

「恋殿!あちらの補修資材が足りないそうですぞ!!」

 

「・・・ん。」

 

「あっちはあっちでとんでもない数の資材運んでるし、これ想定しているよりも数倍早く終わるんじゃないかしら?」

 

「こらー!蛇柄女!恋殿が働いているのにサボるなですぞ!!」

 

「へ、蛇柄!?わかってるわよもう・・・。」

 

「はっ・・・はぁ!埒が明かん!氣を全開にする!」

 

「凪!【掘る】のは良いけどしっかりと範囲と深さを計算しなさいよ!?」

 

「言われるまでもない詠!」

 

「賈駆様!流しこみの準備ができました!」

 

「待ってたわ!片側は既に楽進将軍らが作業を終えているから順次流し込んで!」

 

「はっ!」

 

(雨が降って水かさが増していたのが幸いね、これなら川が減水して農作物に影響が出ることはないわ。)

 

「でも、一刀って太守は相当ね、まさか元々堅牢なこの虎牢関を更に改築するなんて。」

 

「悪い策じゃないわ、汜水関でどれだけ守り切れるかって懸念はあったけど、これなら行けるわ。」

 

「でも心配なのよね、この策って陛下が間違いなく危険な矢面に立つわ。」

 

「それを了承したのも陛下よ、ボク達が陛下の意見を蔑ろにしちゃったらダメ、それは月の望みにつながらないし。」

 

「結局月ちゃん一筋なのね。」

 

「当然、ボクにとって月が全てなの、月の意思はボクの意思、ボクが尊重するのは月の意思だから。」

 

「ごちそうさまって言えばいいの?」

 

「ちょ、違うわよ!ボクと月は親友であってそんな関係じゃ・・・!」

 

「だからお前らさっきから何無駄話しているですか!陳宮蹴撃ー!!」

 

「「ぎゃー!?」」

 

「みなさーん!ごはんできましたよー!作業を中断して英気を養いましょう!」

 

 

 

 

連合軍本陣

 

 

「なるほど、北郷軍、董卓軍は我々の予想よりも強く、侮れませんわね。」

 

「麗羽、私たちは初陣で敗退したわ、それについて責はないの?」

 

「ありませんわ、いえ、ありえませんわ、私の兵達から華琳さんの奮戦は聞いています、手を抜いた、何もしていないならまだしも様々な攻め手を打って最善を尽くしたあなた方を罰する権限など誰にもありませんわ。」

 

(・・・こいつだれよ!?麗羽はどこに行ったの!?)

 

思わず失礼な思考をする曹操だったが無理もない、今の彼女はまさに別人、黄巾の乱の高笑いをしていた彼女はどこに行ったと思わず本物かと疑うほどだ。

 

「さて、孫堅さん、お次はあなたに攻略を頼みたいのですが。」

 

「あん、俺か?」

 

「ええ、そろそろ孫堅さんたちの兵たちの疲れも取れたこともあり攻城も可能と思ったのですがいかに。」

 

「はっいいぜ、そろそろ暴れたいと思っていたところだ、美羽、行くぞ。」

 

「わかったのじゃ!」

 

「あ、だったらあたし達が後詰に入るぞ、」

 

「よろしくお願いします馬超さん西陵の騎馬部隊と孫堅さんが合わさったのであれば敵なしですわ、孫堅さんも美羽さんのこと、おねがいしますわ。」

 

「言われるまでもねえよ、娘共より可愛げがあるからな。」

 

(麗羽、貴女に何があったの・・・?)

 

他者をよく観察し、状況を見極める目、それを得ている袁紹の変わりぶりに曹操は底冷えする物を感じていた。

 

 

 

 

汜水関

 

 

連合軍の初撃を退け、つかの間の休息を取る洛陽の軍団、そんな中一刀と焔耶は城壁の上で連合の旗を見ていた。

 

(しかし本当に圧巻だな、前は曹操軍で此処を攻めて、今は逆に此処を守ってる、不思議な感じだな。)

 

一刀は日本刀を握り目を瞑る、瞼の裏で巡るは以前の外史の汜水関、劉備軍や孫策軍が華雄を釣りだし、指揮系統が乱れ陥落した、振り返ってみれば酷くあっさりした戦いだが、今回はまるで状況が違う、孫堅が生きていて、袁術軍と合併し恐らくこの大陸で最高の戦力を揃えていると言っても過言ではない強大な相手だ。

 

(孫堅文台、正史であれば彼が生きていれば三国志という歴史は全く変わったものを辿ったかもしれない、よく言う【IF】の話で孫堅が生きていたら、って話はよく見たけど、やっぱりとんでもないよな。)

 

正史であれば孫堅は洛陽攻略後、玉璽を発見したこと後、劉表との戦いで罠に嵌まり討ち死にする。

 

しかし前回の外史ではそれが前倒しのように黄巾の乱のまえに孫堅は亡くなっていた。

 

(この外史、本当に何が起こってるんだろ、風や琉流や凪が【こっち】に来てくれたり。洛陽のこの変わり様、黃、十常侍にも陛下の派閥がいたってことなんだろうけど、それだと張譲は誰と結託してあの偽玉璽や勅書を作り出したんだ、あんな精巧な印、よっぽどな職人じゃなきゃ作れないはずだし、でもそれは既に詠と蘭花さんが対応してるし・・・。)

 

「あぁー!もう!考えてたらこんがらがってきたぁ!」

 

頭をかきむしり項垂れる一刀、一度老人まで生きた彼だが女の身と成り若返ったことで若干粗行が退行していた。

 

「うお!?どうしたんだ一刀様。」

 

「な、なんでもない・・・って、あれ?あそこに居るのって・・・?」

 

「せっ!はぁ!」

 

「華雄じゃないか、何をやってるんだ。」

 

「おーい、華雄もう夜も深いぞ、どうしたんだ。」

 

「む、北郷に焔耶か、中々寝付けなくてな、少し身体を動かしていた。」

 

「ああそうなんだ、でも華雄のお陰で敵の衝車が無力化できたのは大きいよ、ありがとう。」

 

「気にするな、単なる偶然だ。」

 

その後金剛瀑斧を暫く振り続ける華雄だったがふと口を開く

 

「少し良いか?」

 

「ん、なんだい華雄?」

 

「お前は、孫堅に会ったことがあるか?」

 

「黄巾の後の宴席の時に少しね、かなりの人物だってのはわかったよ。」

 

「・・・かなりの人物か、そうだろうな。」

 

「華雄?」

 

「私は、孫堅が先陣で来るのではないかと思っていた、凶暴な力と英雄の器を兼ね揃えたあいつが先陣をただ見送ることなどあり得んと。」

 

「華雄は、昔孫堅と会ったのか?」

 

「ああ、まだ月様に世話になる前にな、あの時の私は自分の武に誇りを持っていた、だがあの時孫堅に会った時、あっさりと砕かれた。」

 

 

 

 

『ちっ、喰らいがいのない奴だ、ちったあ楽しめると思ったが見当違いだったか。』

 

『ぐ、は・・・。』

 

朦朧とした意識、己が地に這いつくばり、相手は肩で息すらしていない、それだけで実力の差が伺い知れた。

 

『お、のれ・・・!』

 

『はん、空元気で立ち上がったか。』

 

最後の意地で立ち上がり、霞んだ目で孫堅を狙い、その時出せる全力で斬りかかった、だが。

 

『オラァ!』

 

腹部に感じた尋常じゃない痛み、斬られたかと思ったが、打たれたのはただの拳だった。

 

『あ、ぐぅ・・・。』

 

『まあいい、もっと強くなるこった、そんときは、てめえを喰らってやるよ。』

 

踵を返して悠然と立ち去る孫堅、意識が戻った時には、全身の痛みと情けなさで涙が出た。

 

殺す価値もなく、ただ気紛れで見逃された、それを知った時に、頭を地に打ち付けた。

 

呆然とした頭で彷徨いながら、気がつけば天水にいて、月に救われる、それが華雄の経緯。

 

 

 

 

(思い返してみれば、あいつに負けなければ今の自分は此処にいない、か。)

 

「華雄、どうした?」

 

「いや、少し呆けていた、北郷、恐らく次の陣には必ず孫堅が来る、油断はできん。」

 

「当然さ、江東の虎を前に油断するほうがどうかしてる。」

 

「城壁もまだまだ持ちそうだし、気合を入れないとな。」

 

来るべき強敵を前に、益々気炎を上げる将達、来るは虎、猛虎が軍を率いて、一刀達に遅いかかる。

 

 




来たるは猛虎、そして錦馬超

来たるは、因縁二つ

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