ハリーポッターと3人目の男の子   作:抹茶プリン

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組み分けの儀式

巨大な樫の木で出来ているからギィーと重圧を感じさせるような音で開くと予想していたのだが、想像とは違い、扉はパッと開いた。

扉の先にはエメラルド色のローブを着た厳格そうな魔女が立っていた。彼女がグリフィンドールの寮監であるマクゴナガルだろう。

 

ハグリットからマクゴナガルに生徒が引き継がれ、俺たちは石畳のホールの脇にある小さな部屋に押し込まれる。

この窮屈な部屋で長く待たされるのと危険な道を歩かされるのではどちらがマシか考えたが、どっちもどっちだなと結論が出た。

 

「ホグワーツ入学おめでとう」

 

マクゴナガルが挨拶した。続いて彼女は、組み分けの儀式、これからの学校生活、心構えについて簡潔に話し、最後に身なりを整えることを促すと部屋から出て行った。

 

部屋にいた少なくない数の生徒が手で髪を整えたり、襟を正した。

ドラコと俺は堂々と立っていた。少しでもおかしなところがあればお互いに注意するように昔から言い聞かされてきたので、相手が何も言わなければ自分はしっかりとした格好をしていると分かるのだ。

 

クラッブとゴイルも直しはしなかったが、それはマクゴナガルの話を聞いていなかったからであろうことは容易に推察することができた。

 

「組み分けって何するんだ?」

 

ゴイルが不安げに問いかけてきた。

 

「さあな、父上は最後まで教えてくれなかった。だが、危険なことじゃないだろうな。もしも危険なことだったら父上が許す訳が無い」

 

「おい、ドラコ……。何でもかんでも父上を出すのはやめろって言ってるだろ?」

 

ドラコの”癖”に呆れ、口を挟んだところ、ドラコに睨まれてしまう。

 

「わかっているさ……」

 

ドラコは直そうとはしているようで、渋々ではあるが反省したようだった。

 

そこで会話が終わったと思ったのだが、クラッブが

 

「父上が、お前は必ずスリザリンに入る、って言ってた」

 

と、喋った。

 

タイミングがズレているのに誇らしげに話すのが可笑しくて、笑いながらお前は必ずスリザリンに入るよ、とさらに自信をつけてやった。

隣を見るとドラコは笑みを零していた。

 

マクゴナガルが扉を開けて入ってくる。

 

「組み分けの儀式が始まります。さあ、一列になって」

 

皆が一列になるのを確認した後、

 

「ついてきなさい」

 

そう言って歩き出した。

 

 

 

 二重扉を通った先の大広間には、何千もの蝋燭が空中に浮かび、四つの長テーブルには上級生が座り、机の上には金色に輝く皿とゴブレットが置いてあった。

今までパーティーやらで、こういったものを見てきたが、そのどれよりも素晴らしい光景であった。

 

先生方が座る机の前に二列に並ばされる。

 

俺たちのいる場所から三段の階段を登った先には、四本足のスツールが置かれており、その上にはくたびれたとんがり帽子がのせてあった。

 

突如帽子が動きだし、皺が口の形になる。そして、帽子は歌い出す。

 

帽子は組み分けの仕方とそれぞれの寮の特徴を歌で説明した。

 

歌が終わると、広間にいた全員が拍手喝采した。

 

この帽子が組み分けした結果に不満を持つ者がいないということだろうか。

 

歌い終わった帽子が四つの寮にお辞儀をすると再び静かになった。

 

マクゴナガルが長い巻き紙を手にして前に進み出る。

 

「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子を被って椅子に座り、組み分けをしてください」「アボット、ハンナ!」

 

金髪のおさげの少女が転がるように前に出てきて、椅子に座り、帽子を被った。

 

「ハッフルパフ!!!」

 

帽子が叫んだ。

 

右側のテーブルから歓声と拍手が上がり、少女はハッフルパフの席に座った。

 

その後も次々と名前が呼ばれ組み分けが行われた。

 

「グレンジャー、ハーマイオニー!」

 

ハーマイオニーは走るように椅子に座り、待ちきれないようにグイッと帽子を被った。

 

「グリフィンドール!!!」

 

帽子が叫んだ。俺はそれが嬉しくて控えめな拍手をした。彼女が原作通りの寮に選ばれたからだ。ハーマイオニーがいなければ、ハリーとロンは成り立たないし、困難に上手く立ち向かうことが出来ないだろう。

 

ハーマイオニーは俺が拍手しているのに気がついたようで、こちらに小さく笑みを向けた。そして、全開の笑顔でグリフィンドールの席に走って行った。

 

「知り合いか?」

 

「ちょっとしたな」

 

うかつだったな。ハーマイオニーの両親が魔法族じゃないと気がついたとき、ドラコは俺に不信感を抱くかもしれない。

 

ネビルが帽子を被ったままグリフィンドールの席に走って行き、爆笑を発生させた後、「マクドゥガル、モラグ」が呼ばれ、組み分けをした。

 

「マルフォイ、ドラコ!」

 

マクドゥガルの次にドラコが呼ばれた。

ドラコはふんぞり返って椅子に向かった。そして帽子はドラコの頭に触れるか触れないうちに叫んだ。

 

「スリザリン!!!」

 

左側の席から歓声と拍手が上がった。俺はその音に負けないぐらい大きく拍手した。ハーマイオニーの時のことを忘れさせる意味もあったが、本当に嬉しかったからだ。

ドラコは俺に嬉しそうな顔を向けたあと、スリザリンの席に歩いて行った。

 

「マルフォイ、セルス!」

 

ついに呼ばれた。

スリザリンかレイブンクローじゃなければ家族との関係が壊れてしまうのだ。不安で不安で、恐る恐る椅子に向かった。

 

俺が椅子に座るのを確認したマクゴナガルが、頭の上に帽子をのせた。

 

「フーム」耳の中で低い声がした。

 

「家系では、スリ……いや、違う。どうやら、事情があるようだ。ふーむ、難しい。知識をつけたい意欲がある。才能もある。ふむ、目的の為ならどんな手でも使うか…….。自分のことが大事だが、気遣う心もあるようだ。さて、どうするか……」

 

「スリザリンか、レイブンクローがいい」頭の中で強く願った。

 

「ふむ、君には他の寮は生きづらいか。ならば...君の才能を開花させられる寮にしよう。...スリザリン!!!」

 

スリザリンから歓声と拍手が上がった。

そちらに顔を向けると、ドラコが小さくガッツポーズしているのが見えた。スリザリンでよかった...。

 

早足でスリザリンの席に向かった。

ドラコが隣の席を空けてくれていたのでそこに座った。

 

「時間がかかったな。だけど、スリザリンでよかった」

 

「レイブンクローと迷われてな」

 

ドラコと俺の会話が終わったのを確認した目の前に座る上級生が話しかけてきた。

 

「マーカス・フリントだ。五年生だ。クディッチのキャプテンをやっている。何か困ったことがあれば言ってくれ」

 

体を鍛えまくっている先輩が手を差し出し、挨拶してくる。助けを借りる時は荒事があったときな気がした。

 

「セルス・マルフォイです。よろしくお願いします。その時は是非」

 

差し出された手を握り、自己紹介した。

 

他にも挨拶したそうな人はたくさんいたが、マクゴナガルが新たな名前を呼んだとき、シーという囁きが広がり、皆が帽子の方を真剣に見つめた。

ハリーの組み分けの番が来たのだ。

 

帽子が随分長い時間悩んでいる。スリザリンかグリフィンドールか悩んでいるんだろう。

生徒達は結果が出るのを静かに待っていた。

 

「グリフィンドール!!!」

 

帽子が大広間に響き渡る声で叫んだ。

グリフィンドールが割れるような歓声を上げ立ち上がった。赤毛の双子が「ポッターを取った!ポッターを取った!」と叫んでいた。

対照的に他の寮はお通夜の状態だった。”英雄”というビックネームを逃したのは余程のダメージだったのだろう。

 

最後の一人である、ザビニがスリザリンに決まるとダンブルドアが立ち上がった。

 

「おめでとう!新入生おめでとう!歓迎会の前に一言言わせてもいたい。そーれ!わっしょい、こらしょい、どっこらしょい!」

 

そう話すと大きく手を広げ席に座った。

 

スリザリン以外の生徒が拍手し歓声をあげた。少し微妙だった俺も拍手はしなかった。

 

ダンブルドアから目を離したとき、テーブルの上に様々なおいしそうな料理が並んでいることに気がついた。

 

少しずつ好みの料理を取り、お皿に並べていたとき、ドラコと俺の間から白くて透明なものが出てきた。

肌寒くて少し水気を感じさせるものが急に出てきたことに驚いたドラコと俺は「「うわっ」」と声を上げた。

 

「新入生か...私は血みどろ男爵だ。今年も寮対抗優勝カップをとれることを願っている。今年も取れば七年連続の記録が達成出来る」

 

ゴーストらしい。虚ろな目に、げっそりとした顔、衣服は銀色の血で染まっていた。不気味そのものだった。

血みどろ男爵が側にいると食べる気にはなれず、血みどろ男爵が移動するまでドラコと俺は食べ物に手を出せなかった。

 

 

 食べ物がデザートに変わり、満足出来るだけ食べたとき、テーブルに載っていたものが消えた。

 

「エヘンー皆よく食べたじゃろう。皆が眠くなる前に注意事項を言っておこう。構内にある森には入ってはならん。これは上級生もじゃぞ。

それと、管理人のフィルチから授業の合間に廊下で魔法を使ってはならないとのことじゃ。最後ですが、死にたくない人は今年いっぱい四階の右側の廊下には入ってはならん」

 

ダンブルドアが真剣に言うものだから笑うものは少数だった。

 

「以上じゃ。さあ、就寝の時間じゃ!駆け足始めっ!」

 

 

 

スリザリンの一年生は監督生に従って地下にある少し湿っている壁の前にやってきた。

 

「合い言葉は一週間ごとに変わる。週の初めに談話室の掲示板に貼られるから確認するように。『純血万歳』」

 

監督生が合い言葉を言うと壁が横に移動し洞窟が現れる。薄暗かった。

 

洞窟を抜けると談話室だった。高級そうなソファーが置かれ、奥には湖が見られる大きな窓があり、淡い緑の光りが部屋の中を照らしており、落ち着きのある部屋だった。

 

「左の階段が男子寮に繋がる道、右が女子寮に繋がる道、部屋は五人部屋だ。好きなところを選んでくれ。あとから変更も出来るぞ」

 

監督生が説明し終わると皆は部屋に向かった。

 

いつものメンバーで部屋に入った。知り合いの方がやりやすいと思ったからだ。

 

「俺もいいかな?」

 

「おっ、ノットじゃないか!勿論だ。いいよな、セルス?」

 

「当たり前だろ?」

 

ノットはドラコと俺の友達だ。気の利く奴でノリもいい。

 

「もっと、しゃべりたいけど今日は疲れた。もう寝かせてもらうよ」

 

すでにベットに倒れ込み、寝ているクラッブとゴイルを見ながらドラコが話した。

 

「そうだな」

 

それぞれは寝着に着替えると、お休みと言ってベットに潜り込んだ。

 

俺はベットに潜り込んでも寝ようとせず、この一年間どうするかを考えていた。

この一年間はハリーが自信をつけるために用意されているような年で一般生徒にはほぼ関わりのない年になる。つまり、特に動く必要がないのだ。

ならばこの時間は自分を磨くのと使えそうな物を手に入れるために使える。

本当に動かなければならないのは二年生の時だ。それまで家族を守れるように力をつける。

 

明日から始まるホグワーツでの生活を頭の中で描き、俺は眠りについた……。

 

 

 




オリジナルの部分が少ないんだけど、これでいいのだろうか(震え声)なんか不安w

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