ハリーポッターと3人目の男の子   作:抹茶プリン

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短いです。


亀裂

 お昼の少し前にクィディッチの練習が終わり、箒を片付けユニフォームの泥を落とした選手達は寮へと向かう。その間微かな会話があるだけで気まずい雰囲気が流れていた。

談話室に着くなり俺たちはスリザリン生に周りを取り囲まれ、矢継ぎ早にチームワークはどうだった?グリフィンドールの選手はどんな反応をした?など様々な疑問をぶつけられた。取り囲んでいたスリザリン生は選手達が嬉々として答えると思っていたのだろう。何も答えない選手達をキョトンとした顔で見つめていた。

一人のスリザリン生が選手達の間に重苦しい雰囲気が流れていることに気がつき、隣の人のローブを軽く引っ張り何やら耳打ちした。耳打ちされた方はチラリとこちらを見ると、耳打ちした人と一緒にこの場を離れて行った。

その様子を見ていたり、選手達の間に流れている雰囲気に気がついた人が徐々に離れていく。最初に集まっていた人の四分の一の人が消えたとき、ドラコが口を開いた。

 

「セルス、ちょっといいか?話したいことがあるんだ」

「あぁ…部屋で話そうか」

 

ドラコが自室に向かって歩き出すと、囲っていた人がサッと二つに分かれた。流石に何かが合ったと気がついたらしい。

 

 

 

 

 部屋に戻るとノットがベットにゴロンと横になりながら本を読んでいた。

 

「おっ、帰ってきたか。じゃ、着替えて大広間に行こうぜ。クラッブとゴイルはもう行っ……何か合ったか?」

 

流石というべきか、ノットはすぐに俺とドラコに何か合ったことに気がついた。小さい頃からパーティーや夜会に呼ばれ、大人達にもまれ続けた影響か、観察眼が優れているのだ。

 

「ちょっとね。先に行っててくれ。僕とセルスは後から行くから」

「……わかった。じゃ、先に行ってるよ」

 

ノットが部屋の扉を閉めるのを確認したドラコは、扉から目を離し俺の目をまっすぐ見つめてきた。

 

「セルス……まず確認させてくれ。セルスは『血を裏切る者』なのか?」

 

血を裏切る者……純血であるのにも関わらず、マグル、マグル生まれの魔法使いと仲良くする者。人によっては半純血も含む。ここで俺が違うと答えればドラコは怒りを治め、俺はドラコと今までと変わらない関係を築けるだろう。ただ……それでは何も変わらない。

 

「俺はマグル生まれとも仲良くしようと考えている」

 

ドラコが机を蹴り飛ばす。机は大きな音を立てて倒れ、机に載っていた物は床に散乱した。俺は黙ってドラコを見つめていた。

 

「どうして……どうしてなんだ!?セルスは純血主義だっただろう!」

 

ドラコは激怒しながらも悲しそうな顔で理由を問う。俺はそんなドラコの顔を見ていられなかった。だから目線を下げた。でも、目線を下げても意味がなかった。ドラコが真っ赤っかに染めるほど右手を強く握りしめているのが目に飛び込んでくるからだ。どこを見ても心が痛むのは変わらないらしい。それなら……それなら顔を見て話したかった。それが偽りの答えであっても。

 

「純血主義を貫き通しても魔法界の衰退にしか繋がらないと気がついたからだ。もしも純血の魔法使いとマグル生まれの魔法使いがこれ以上対立してしまった場合、ただでさえ少ない魔法使いが減ってしまう可能性がある。それに本当に純血な魔法使いが僅かしかいないことは知っているだろ?これから先も純血を守っていくのは不可能なんだよ。俺は別にマグルと仲良くしたい訳じゃない。でも、これから先の魔法界を考えれば少なくともマグル生まれとも仲良くしなきゃいけないんだ」

「魔法界のことを考えたら、マグル生まれは排除するべきじゃないか!だってそうだろ?!奴らがマグルと手を組んで魔法界に攻撃するかもしれないんだから!」

 

こういう反論が返ってくるのは想定していたため、返答はあらかじめ考えていた。

 

「勿論、そのことは考えた。だから俺はマグル生まれの奴に、自分が魔法使いだと分かったときに親がどんな反応をしたか聞いてみた。そいつの親はまるで化け物を見るかのようにそいつを見たらしい。同じくマグル生まれに、マグルをどう思っている?と聞いてみた。すると、そいつはマグルは選ばれなかった可哀想な人間だ、と答えた。マグルとマグル生まれは必ずしも仲がいい訳ではないんだ」

 

質問をしたというのは嘘だが、そういった人間がいるのはずだから間違ったことは言っていない。それにドラコが本当か嘘か見分けることは出来ない。俺が間違ってることを言っていると判断するにはマグル生まれについて知っていなければならないからだ。

 

俺の返答をドラコは腕を組みながら相応考えている。ドラコが口を開くまでの時間が物凄く長く感じた。

 

「セルスが、なんて言うか……うーん、こういう考えを持っていることを僕以外の誰かに話したか?」

「いや」

 

ふぅと、ため息を吐き、腕を下ろした。

 

「それなら良かった。セルス、忠告しておく。この話を僕以外のスリザリン生にするな。僕であってもセルスの話を聞いて苛立つんだから。正直言うと僕はセルスが言っていることがよくわからなかった。……だからよく議論しよう。僕はセルスを説得するための時間になるし、セルスは思想を確かな物にするために役に立つだろうから。一番始めに話す相手に僕を選んでくれてありがとう」

 

ドラコは困った顔をしながら、俺に笑いかけた。

 

「……ありがとう。やっぱり、ドラコはいい奴だ。お前のためなら頑張れるよ」

 

ドラコがマグル生まれに寛容にれるように頑張らなければ。

 

「なにが?あっ、でも殴られたことは許してないからな!いつか仕返ししてやる」

 

ふっふっふとドラコが笑う。

 

「昼食にしようか」

「そうだな」

 

ドラコと俺の間には小さな亀裂が走ったかもしれないが、これなら大丈夫だろう。

 

 俺たちはユニフォームから制服に着替えると、大広間に向かうために談話室に繋がる階段を上がった。談話室につくと、スリザリン生が固まってコソコソ話しているのが見えた。そして、俺が来たのに気がつくと慌てて散らばって行った。

何が合ったのか先輩が話し、それが広まったのだろう。後で弁解しなければ。

解散する集団の中から一人がこちらにやってくる。ノットだ。聞いてしまったか。こちらから事前に言い訳を伝えておけば良かった。

 

「なあ、ノット多分ごか「セルス、俺はお前とはもう付き合えない。部屋も移るつもりだ。じゃあな」

 

 

ーードラコがノットに何やら呼びかける声が遠くのことのように感じた




ドラコへの説明、もうちょっと何とかならないですかねー思ってる人多そう……。
気がついてるなら直せよって思ってる人もw
直そうとしたんですけど、メンドクサイ説明の長文が出来上がってしまったのでやめました。

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