某龍玉やらTFSPをやってたのが原因です。
時にTFSPをやってて思ったのですが、御伽が俺口調だったり雪乃の立ち絵の腰辺りから下が透明だったりと思うところはありましたが……
何故シェリールートがないんですKONAMIサン!!??
「結果としては、及第点といったところか」
実技試験から数日後の海馬コーポレーションの社長室ーー。
海馬瀬人は社長室からガラス一枚を隔てた外を眺めていた。そしてその社長室の入り口には今し方入室したばかりの亀崎がいる。
「呼ばれたもんで来てみたら、開幕で厳しいコメントだな…」
「ふぅん。大方相手の出方を伺っての結果だろうが、そのような弱腰ではいつか取り返しのつかんことになるぞ。そうなりたくなければ、最初から全力で相手を叩き潰すことに専心するんだな」
二人の会話の内容は、先日行われた実技試験の過程についてである。
海馬としては最初から相手を圧倒するパフォーマンスを望んでおり、結果だけを見れば失敗という判断には結びにくいものだった。
しかし、あと一歩というところまで追い詰められたことが気に食わなかった。自分と互角の戦いを呈した男がアカデミアの教師程度に押されかけるなど、海馬のデュエリストとしてのプライドがそれを許せなかったのである。
「いよいよ明日から貴様にはアカデミアで過ごしてもらうことになる。だがその前に、ペガサスから送られてきたものを貴様に渡す為に呼んだのだ」
「渡すもの…?」
亀崎が首を傾げると、傍に控えていた男が二つのケースを亀崎に渡した。ケースを開けてみると、その中には見慣れたカードがギッシリと入っていた。
「ペガサスさんに預けてたカードか…」
「ふぅん。どうやら貴様しか持っていないカード達を新たに売り出すらしいな。奴らしいことだ」
未だ存在していない筈の、亀崎だけが持つカード達が普及するーー。
少なからずこの世界に干渉している実感を亀崎は少しずつ感じ取っていた。
ーーーーーー
デュエルアカデミアの入学式当日ーー。
海馬コーポレーションが所有するヘリでアカデミアへとやって来た亀崎は、入学式終了後に鮫島校長の呼び出しによって校長室に来ていた。
「改めてーー私がこのデュエルアカデミアの校長、鮫島です」
「本日よりこちらでお世話になります、亀崎です。どうぞよろしくお願いします」
自己紹介と共に頭を下げる亀崎を見て鮫島はひとつ頷いた。
「クロノス先生から君のことは聞かせてもらいました。なんでもあの『青眼の白龍』の使い手だとか」
「ええ、まあ…」
「この目で見られなかったのが、実に残念です…」
鮫島が噛み締めるその無念さは、その台詞と落ち込みようで充分すぎるほど伝わった。
伝説のデュエリストである兄弟を見て目を光らせる彼のこと、『青眼の白龍』ともなればその無念は推して知るべしといったところか。
「…実はクロノス先生が、その『青眼の白龍』はコピーカードではないかと疑っていましてね。私も念の為にペガサス会長に聞いてみたのですが、ペガサス会長は何の問題もないと断言されていました」
『青眼』の話題となり一瞬息を呑んだが、ペガサスの助けに亀崎はとても小さい安堵をつく。
「ペガサス会長が直接君の『青眼』に触れて、何も問題はないと判断されたとのことらしいです。ならば、私もそれについて詮索することはしません。なので安心してください」
「…ありがとうございます。これについてはかなり複雑な事情がありますから、説明するにしても大変なもので」
「ですが、このアカデミアでは出来る限り『青眼の白龍』の使用は控えて貰えないでしょうか」
安堵の息を再び吐こうとした瞬間に鮫島から持ち出された提案。亀崎は一瞬、理解できなかったがすぐにその理由が思い当たった。
確かに『青眼の白龍』は強力なモンスター。このカードの前では並大抵のモンスターでは太刀打ちはできない為、魔法や罠での対処が一般的となる。そのようなカードを常に使っていれば、『あのカードがあるから勝って当たり前』と思われることもあり得なくはない。
何よりここはデュエルアカデミアーー。一方的なデュエルではなく、互いの強さを拮抗させてより実のあるデュエルをして欲しいというのが、鮫島からの願いだった。
「何より相手をリスペクトすることを心掛けてほしいのです。ただ相手を叩き潰すだけのデュエルを、私は認めることはできません」
鮫島のその目には、確固たる信念が映っていた。アカデミアの校長としてーーそしてサイバー流の元師範として、相手を尊重するデュエルこそがデュエルモンスターズのあるべき戦いの形だと信じて疑わない眼差し。
それはとても立派な思想だとは思う。皆がその考えでデュエルできたならば、それはとても素晴らしいことだろう。
だがーー。
「……それを実行するのは、少し難しいと思います」
「何故でしょうか…?」
「海馬瀬人から徹底的にやれと言われたからっていうのもありますが、一番の原因は自分が今まで身を置いていた環境……ですかね」
「それはどういう意味です?」
「そこじゃ相手をリスペクトするなんて奴はいないに等しかったですよ。あるのはやらなきゃやられる弱肉強食の環境。相手に全力を出させるほどのお人好しは、真っ先に負けるのが常でしたからね」
速攻性のあるカードやコンボで、相手の態勢が整う前に勝負を決めるーー。それが亀崎の元いた世界のデュエル風景だった。
そしてそのような環境でもなお高い攻撃力を誇る『青眼』は、亀崎の不動のエースとして存在しているのである。
「君が身を置いていたその環境は、恐らく私が今想像している通りのものなのでしょう。ですがここはその環境ではありません。私の提案については、今は頭の片隅に留めておくようにしてください」
「…ま、努力はしてみますよ」
いつの間にか緊張感を孕んでいた校長室を亀崎が退出する。鮫島は入り口が閉まったのを確認すると、両肘を机に立てて指を自分の口前で組んだ。
(環境……彼はただ相手を倒すことだけに念頭を置いたデュエルを、長い間続けてきたような口振りだったが…。果たして、彼がこのアカデミアをより良い方向に進ませてくれるかどうか、今は様子を見てみるしかないようだ……)
鮫島は亀崎に対する不安と僅かな期待が入り混じった思考に、暫しの間悩まされることとなった。
亀崎がリスペクトするものの正体を捉えられぬままーー。
するとふいに校長室の扉が再び開かれ、亀崎が戻ってきた。
「おや、どうかしたのかね?」
「ひとつ聞き忘れたことがありまして……」
◇◆◇◆◇◆
校長室を出た俺はただ無言で廊下を歩いている。先程の鮫島校長との話の後から、表情も能面のように無表情である。
『……あの、マスター?』
「んぁ?どうした?」
『いえ…てっきり手放しに受け入れられなかったことで不機嫌なってしまったのではと…』
恐らく機嫌が悪いととられたのか、『乙女』が恐る恐るといった様子で聞いてくる。
「いや、そんなことはないぞ?」
『マスターは怒っている時も考え事をしている時もほぼ無表情になりますから、未だに判断が難しくて…』
「俺は観察対象の動物じゃないんだぞ…」
他愛ないやりとりを交わし、話題は鮫島校長が言っていたリスペクトの話になった。
「リスペクト、ねぇ…。また面倒そうなことを頼まれたもんだ」
『確か、相手の最大限の力を引き出させた上でその悉くに対処する…でしたっけ?』
「相手への敬意も忘れずにな。そんな器用なデュエルが俺にできるのか、甚だ疑問だけどな。はぁ…」
実際に自分自身が器用かどうかで言えば、間違いなく不器用だろうと断言できる。その事実を考えるだけで、自然と口から溜息が零れた。
それと同時に『乙女』が何かに気づいた。その視線の先を追ってみると、廊下の傍から赤い服ーーオシリス・レッドの制服を着た二人が出てきて自分達とは反対の方向へと走って行った。
『あの二人は……』
「もう万丈目と会った後か…」
小さくなる二つの背中を見送りながらそう呟きつつ、その傍の先にデュエルフィールドがあることを思い出した。そういえば以前来た時にここ通ったっけか。
そんなことを考えていると、傍からもう一人が現れた。
「あら?」
長い金髪にスタイルの良い身体にオベリスク・ブルーの証である青と白の制服を着込んだ女子ーー天上院明日香だ。
「貴方は確か、実技試験の時の……亀崎さんでしたよね?」
「この度ここに編入することになったんだ。よろしく」
「こちらこそ。私は天上院明日香と言います」
軽い自己紹介をしたところで、明日香は何かを思い出したようにはっとする。
「さっきオシリス・レッドの二人にも言ったんですけど、そろそろ各寮で歓迎会が始まるんです。早く寮に戻らないと…」
「そういえばそうだったっけか。なら俺も行かないとな」
各々の寮へと向かう為、明日香と俺は移動を始めた。校舎を出たところで明日香が疑問を投げかけてきた。
「亀崎さんはイエローとレッド、どちらに所属してるんですか?どちらにしてもここで別れることになりますけど…」
明日香のその疑問は尤もだ。アカデミアの生徒は自身が所属している寮に合わせて、それぞれの色の制服を着なければならないからだ。
しかし当の俺はアカデミアの制服を着ていない。着るのが恥ずかしいということはあったが、着ろというのであれば着ないことはない。ないのだが……。
そんなことを考えながら、俺は服の左腕部分に付けられた腕章を明日香に見せた。
〜〜〜〜〜〜
時刻は日が落ちきる時間。アカデミアの各寮ではそれぞれのランクに見合った歓迎会が行われていた。
最も高いオベリスク・ブルーではパーティー会場と見紛うほど豪華にーー。中堅であるラー・イエローではブルーほどではないにせよ、一般的な食事よりもランクの高い食事が用意されていた。
そして落ちこぼれが集められているというオシリス・レッドでは白米に味噌汁、めざしに漬物とあまりにもお粗末な品目で、これにはレッドに配属された新入生も文句を言わざるを得なかった。
そんななか俺が配属されたランクはというとーー。
「それでは最後に、ここのオーナーの特別な計らいで在籍することになった亀崎賢司君です。彼はデュエルがとても強いそうですので、自信がある人は是非挑んでみてください」
寮長である樺山先生による紹介が終わり、この寮の生徒達は目の前の食事にありついていく。俺もそうするべく席に座って一息吐くと、右隣から声を掛けられた。
「貴方もラー・イエローになったんですね」
「ん?ああ、確か…三沢だったよな?」
「俺のこと覚えていてくれたんですね」
その相手は実技試験でも会話した三沢大地だった。実技試験を受けた生徒はどんなに良い成績を納めても、ラー・イエローに配属される決まりになっている。オベリスク・ブルーになれるのは、中等部で優秀な成績だった者のみだ。
「貴方のことは実技試験の時から気になっていたんです。こちらの方で貴方のことを自分なりに調べたりしていたんですが、貴方についての情報が全くなくて…」
「あ〜……まぁそんな目立つようなことはしてなかったからな」
「なので、これを機に貴方のことを色々と知ろうと思っています。特にデュエル・タクティクスについてを重点的に…!」
三沢は自分をより高めようと理性的な炎を燃やしているようで、その熱さに俺は苦笑いしながらも「こっちこそよろしく」と返した。
〜〜〜〜〜〜
やがて歓迎会が終わり、各々が割り当てられた部屋へと戻っていく。特別編入生である自分も例外ではなくきちんと部屋が当てられていた。
「ふぃ〜、食った食ったぁ」
『マスター、食べた後すぐに寝ると牛になりますよ?』
「モー」
ベッドに寝転がると『乙女』が母親染みた苦言を呈したので、敢えて牛になって返す。『乙女』は溜息を吐くと言葉を続けた。
『寝るにはまだ早いですよ…。それに折角預けていたカードが戻ったんですから、やるべきことがあるんじゃないですか?』
「あぁ、そういえばそうだった」
勢いをつけて起き上がると学習机へと向かう。机には元いた世界から持ち込まれた多くのカードが詰め込まれたケースが二つあり、その両方を開く。
「さてと、三番目を組み直すとしてどんなデッキにしようか」
現在『バニラビート』である三番目のデッキは、童美野町でのデュエルで使ったものだ。あの時は何とか勝てたが、やや安定性に欠けたので1から組み直すことに決めたのだ。
『まずはエースとなるモンスターからですね。どれにするんですか?』
「ん〜。『銀河眼の光子竜』とか『オッドアイズ』辺りが使いたいんだが、この時代で使ってもいいんかね?」
『『オッドアイズ』は旧バージョンであれば問題はないかと。『銀河眼』の方はこの時代にエクシーズモンスターが存在しないので、効果の半分近くは意味がなくなってしまいますが…』
『銀河眼の光子竜』と『オッドアイズ』ーーどちらも後の主要人物が持つエースカード。『銀河眼』はその格好良さに惚れ込み、『オッドアイズ』は効果の有用性から得たモンスターだ。
恐らくどちらもこの時代で使っても問題はないとおもうんだが…。
「う〜ん……いっそのこと、こっちで伝説扱いのモンスターでも使ってみるか?例えば『竜騎士ブラック・マジシャン・ガール』とか」
『……マスター。そのカード持ってましたっけ?』
「そういや持ってないな。ハハハ…」
こういう時に限って持っていないことに悔しさが募るのは、デュエリストならば誰でも通る道である。
あ〜欲しいなチクショウ…!
「まあとりあえず、最初の内は純粋なドラゴンでいってみるか。そーなると……どれにしようかなー」
ケースからカードの束を幾つか取り出して一枚一枚確認しながら捌いていき、とあるカードで止まる。そのドラゴンをエースと定めたら、後はデッキを構築するだけだ。
ただ、普通の構成では活かしにくいモンスターだった為に夜遅くまで頭を悩ませることになり、デッキ構築が終わったその直後に十代と万丈目のデュエルをすっかり忘れていたことに気づいたのだった。
「チクショウめぇェェ!!」
〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜
入学式の次の日、アカデミアでは早速授業が行われることとなった。その記念すべき最初の授業はクロノス先生が受け持つ実技だ。
「それで〜ハ、最初の授業を始めるノ〜ネ。まずはシニョール達でデュエルをしてもらいますーノ。対戦相手は基本的〜ニ、同じ寮の者同士で行ってくださいーネ」
今自分達がいるのは教室ではなく、授業及び試験で使うデュエルコートだ。最大で六組が同時にデュエルでき、早くも全てのコートが埋まってしまった。
「同じってことはラー・イエローとか。手頃な相手はーー」
相手を探すべく周囲を見渡すと、イエローの生徒が一斉に顔を逸らした。やや呆気にとられたのち他の一角を見ればそいつらも顔を逸らす。
…これはアレか。イエローの皆さんは俺と戦いたくないってことか?
「ただ『青眼』を持っているだけでこうも避けられるとは……分からなくはなかったけど、かなりヘコむな…」
「それは仕方ないでしょう。あんな強力なカード、普通なら手に入りませんから」
「おお、三沢…」
やや落ち込んでいたところに、同じイエローの三沢がやってくる。
「でもさ〜、強力なカードを持ってるからってそいつに勝てないとは限らないだろ?」
「まあ、あくまで貴方の持つカードのパワーが強すぎるということですから。それに、何も力比べがデュエルではありません。己の知識と技術を活かしてこそ、真のデュエルだと僕は考えています」
「実際その通りなんだけどな…」
モンスター同士の殴り合いとなれば高い攻撃力に目が行きがちになるのは分かるが、三沢の言う通り何も馬鹿正直に向かう必要はないわけで。足りない分は魔法や罠で補えばいい話である。
「しつこいぞ、ドロップ・アウト・ボーイ!」
「ん?」
いきなり聞こえた声の方を向くと、そこにはオシリス・レッドの遊城十代といかにもプライドの高そうなオベリスク・ブルーの万丈目準が何か言い合っている。
あとクロノス先生も両者の間にいた。
「だから昨日の決着をつけるだけじゃねえかよ。なんで受けてくれないんだよ!」
「お前の実力はまぐれだと分かったんだ。もう一度デュエルしたところで、結果は分かりきっている」
「そんなのやってみなくちゃ分かんねぇだろ!」
「シニョール十代。シニョール万丈目は受ける気はないと言ってるノーネ!いい加減諦めなさイーノ!」
どうやら昨夜のデュエルで決着がつかなかったらしい。確か原作では最後に十代が『死者蘇生』を引いたことで、己の勝利を確信していた筈。
それが今目の前で決着をつけようと言っているのだ。
そのことに疑問を持った俺は十代の後ろで心配そうにしている一人のレッドーー丸藤翔に声をかけた。
「ちょいといいか?」
「え…?あ、貴方は…」
「何かあったのかあの二人。決着がどうとか言ってるけど」
当たり障りのないよう知らない風を装う。大体は知ってるけど知らないふりするのって面倒くさいな…。
「実は昨日兄貴と万丈目くんがデュエルしたんだけど、訳あって中断したんだ。その時兄貴は絶体絶命のピンチで、最後の最後で『死者蘇生』を引いたんだ。でもーー」
「『死者蘇生』で『フレイム・ウィングマン』は特殊召喚できないって、私が教えたんです」
翔が話してくれた経緯は知っているものと全く同じだった。その途中で原作通りその場にいたであろう、天上院明日香がやって来た。
「そしたら彼、『だったら決着をつけたい!』って躍起になっちゃって…」
「なるほどね」
納得して再度当人達を見れば、未だ十代は食いついているが万丈目は涼しい顔で受け流している。
するとたまたま視線を動かした万丈目と目が合った。万丈目は十代を無視してこっちへと歩いてくる。
「そういえば、アンタも一応この学園の生徒ってことになってるんだったな」
「おーい!無視するなよ、万丈目!」
「決めたぞ。クロノス教諭、僕は彼とデュエルします」
万丈目の宣言に十代と翔、明日香や三沢が驚いた。
俺がアカデミア関連でデュエルしたのは実技試験の時のみ。恐らく周囲の生徒からは『青眼』使いと認識されているだろう俺に、アカデミアのいち生徒が挑むのは無謀と言うべきなのだろうか。
「ま、万丈目さん…!勝てる見込みあるんですか…!?」
「あるから挑むんだろうが。どんなに強いカードだろうと、無敵というわけではないのだからな。要は対策をとればいいだけだ」
なるほど、伊達に中等部でトップをとってはいないか。ちゃんと相手への対策を考えているみたいだ。
「さて、アンタはどうする?受けるか受けないか。もっとも、伝説のレアカードのコピーを使って俺に勝ったとしても、虚しいだけだと思うがな」
「え!?コピーカード…!?」
「当然だろう。『青眼の白龍』はあの伝説のデュエリストーー海馬瀬人のみが所有するモンスター…。それを持っているなど、コピーカード以外のなにものでもないだろう」
一気に周囲がざわつき始め、俺へ向けられる視線に軽蔑やら侮蔑が感じられるようになった。過去の【グールズ】の件でもあったが、この世界でのコピーカードの使用は一発で嫌われる要因となっている。複製された『エクゾディア』を使ったレアハンターに対して王様が非難していたのがいい例だ。
「…ハッ、随分な物言いだな。そんな曖昧な根拠で人様のカードを贋作呼ばわりするとは…。いいだろう」
だがこう言われる予想はできても、それに対する憤りは抑え難い。俺にとって『青眼の白龍』は起源なのだからーー。
それを非難することは、ドラゴンで例えるならば【逆鱗】に触れるのと同じことだーー!
「あの二人、同じ寮同士じゃないみたいだけどいいのかよ?」
「互いが合意の上なら〜バ、それは関係ないノーネ」
「ちぇっ…」
◇◆◇◆◇◆
六つあるデュエルコートのひとつで万丈目と亀崎が対峙する。その周囲では誰もデュエルを始めることなく、事の成り行きを見守ろうと注目していた。
そんななか万丈目は不敵に笑い、亀崎は無表情で万丈目に視線をやっている。
そしてついに、どちらもデュエルディスクを起動させた。
「「決闘
万丈目 LP 4000
VS
亀崎 LP 4000
「先攻はこちらからだ!カードドロー!」
先攻を獲得した万丈目は引いたカード、そして手札を見て内心舌打ちをする。悪い手札ではないのだが、亀崎に対抗する為のカードがないからだ。
「俺は、『地獄戦士』を攻撃表示で召喚!さらにカードを一枚伏せてターンエンドだ!」
地獄戦士
ATK/1200
万丈目が召喚したのは屈強な肉体を持つ厳つい戦士。ステータスそのものはお世辞にも高いとは言えないが、侮り難い効果を持っている。
(いかにコピーとはいえ、その強さは本物の『青眼』と同等。召喚されるまでにあのカードを引けるか…それがこのデュエルの勝敗の分かれ目だ)
昨日、亀崎がアカデミアに来たことを知った万丈目は、亀崎に対抗できるカードをひたすらに漁り続けた。
それらのカードを探り当てデッキに投入することである程度は対抗できるーー。後は自身のタクティクスで勝利をもぎ取ればいいーー。万丈目はそう思っていた。
「ーー俺のターン、ドロー」
対する亀崎は怒りを露わにすることなく、未だ無表情のまま淡々とカードを引く。
「『デコイドラゴン』を召喚」
デコイドラゴン
ATK/300
亀崎が召喚したのは、大きくつぶらな瞳ーーの模様が特徴的な小さなドラゴン。『地獄戦士』を倒すには至らないそのステータスを見て、万丈目は鼻を鳴らす。
「ふん。そんな雑魚を出すとは、どうやら自慢の『青眼』は来なかったようだな」
「来なかったもなにも、このデッキに『青眼』は一枚も入っていないんだが?」
「なんだと…⁉︎」
亀崎の告白に万丈目は浮かべていた笑みを引っ込める。
「魔法カード『生け贄人形』を発動。『デコイドラゴン』を生け贄に捧げ、手札からレベル7の『ドラゴン・エッガー』を特殊召喚」
ドラゴン・エッガー
ATK/2200
『生け贄人形』と『デコイドラゴン』が光に呑まれ現れるのは、その中から巨大な卵の殻の割れ目から鋭い眼光を放つドラゴン。何とも懐かしいカードである。
「さらに『トランスターン』を発動。場のモンスターを一体墓地に送ることで、そのモンスターと同じ種族・属性のレベルがひとつ高いモンスターをデッキから特殊召喚する」
「『ドラゴン・エッガー』のレベルは7…、ということは…!」
事態を理解した万丈目の顔に緊迫の色が浮かぶ。事実万丈目は、亀崎が最初のターンで切り札レベルのモンスターを出してくるとは思っていなかったのだ。
ドラゴン族といえば、まずその強力なステータスが売りのモンスターである。他の種族と比べてみても、同じレベルでも高い能力を有するのがほとんどだ。特に高レベルのドラゴンとなれば、ゲームエンドに持ち込めるパワーを持つ切り札として投入されることも珍しくない。
しかし、そこにつきまとってくる問題として召喚方法が挙げられる。これはドラゴンに限らず全ての高レベルに当てはまることで、如何にして妨害されずに召喚するかがカギとなる。
アドバンス召喚ーー生け贄召喚はそのなかで妨害されやすい方に入るだろう。高レベルとなれば必要な生け贄は一体ーー多くて三体にもなり、これらが一体でも欠ければ召喚できなくなってしまう。
もっとも、それを補う方法はいくらでもあるのだがーー。
「レベル7の『ドラゴン・エッガー』を墓地に送り、レベル8の『タイラント・ドラゴン』を特殊召喚!」
『ドラゴン・エッガー』の足元から吹き出た炎が覆うと、暴君の名を冠する巨大なドラゴンが炎を吹き飛ばし咆哮する…!
タイラント・ドラゴン
ATK/2900
「1ターン目でいきなり攻撃力2900のモンスターを…!」
「すっげえ…!強力なモンスターを簡単に召喚しやがった…!」
驚きを隠せない翔と逸る気持ちを抑えきれない十代。周囲もまた『タイラント・ドラゴン』の出現に騒つく。
「『タイラント・ドラゴン』で『地獄戦士』を攻撃!」
『タイラント・ドラゴン』が吐き出す炎のブレスが『地獄戦士』を呑み込み、渦となってその身体を焼き尽くす。その火力はまさに『暴君』の名に恥じない程だ。
万丈目 LP 4000 → 2300
「くっ…!だが『地獄戦士』のモンスター効果発動!こいつが破壊されて受けた戦闘ダメージを、相手にも与える‼︎」
亀崎 LP 4000 → 2300
「そうだ、あのモンスターにはそういう効果があるんだった…!」
「高い攻撃力が仇になったわね…」
昨日、万丈目とデュエルした十代が『地獄戦士』の効果を思い出す。ダメージを共有するカードは確かに厄介だ。しかし亀崎は全く顔色を変えず、デュエルを続行させる。
「カードを一枚伏せて、ターンエンドだ」
万丈目 LP 2300
手札:4
モンスター:0
魔法・罠:1
亀崎 LP 2300
手札:1
モンスター:1
魔法・罠:1
「俺のターン、ドロー!」
引いたカードを見た瞬間、万丈目はニヤリと笑う。必要としたカードを引き当てたのは、緻密な計算によるものだと言わんばかりに。
「罠カード『リビングデッドの呼び声』を発動!その効果で『地獄戦士』を復活させる!」
『タイラント・ドラゴン』に倒された『地獄戦士』が万丈目の場に復活し、亀崎は初めて眉間に皺を寄せた。亀崎のなかで、万丈目がここから打ってくるであろう手は予想できなくはなかった。
要は『地獄の暴走召喚』に『ヘル・アライアンス』のコンボーー原作にあった通りのコンボを仕掛けてくると。
「そして『地獄戦士』を生け贄に捧げ、『竜殺者』を召喚!」
だが亀崎の予想は裏切られた。完全に自分への対策として投入されたそのカードの存在に、二重の意味で驚かされた。
竜殺者
ATK/2000
「『竜殺者』…懐かしいカードだな」
「クク、そんな呑気でいられるのも今のうちだ。『竜殺者』が召喚されたことにより、フィールド上のドラゴン族モンスター1体を破壊する!」
瞬間、『竜殺者』の姿が消える。瞬時に『タイラント・ドラゴン』の懐深くへと潜り込んだ『竜殺者』は、必殺の一撃をもって暴竜をフィールドに沈めようとするーーが。
「リバースカードーー『炎王炎環』を発動。自分の場と墓地の炎属性モンスターを選択し、選んだ場のモンスターを破壊したのち墓地のモンスターを特殊召喚する。『タイラント・ドラゴン』を破壊して、『ドラゴン・エッガー』を特殊召喚」
『タイラント・ドラゴン』炎に包まれたのち『ドラゴン・エッガー』が再び姿を現すと、周囲の生徒は亀崎のプレイングに関心する。
「ちっ、上手く躱したか…。カードを伏せてターンエンドだ
◇◆◇◆◇◆
「俺のターン、ドロー」
相手の攻撃をなんとか躱して自分のターンを迎える。だが、仮にもエリートである万丈目が投入した対策カードが『竜殺者』だけとは思えない。何より元から入っているカードも油断できないものが含まれているので、気は抜けない。
万丈目が伏せたカードも気になるが、破壊できる『サイクロン』等がない為このまま攻撃するしかない。
「『ドラゴン・エッガー』で『竜殺者』を攻撃。ドラゴン・ツイン・フレイム!」
『ドラゴン・エッガー』による攻撃で『竜殺者』は焼き尽くされ、破壊される。
万丈目 LP 2300 → 2100
「この瞬間、罠カード『ヘル・ブラスト』を発動!自分のモンスターが破壊されたターンに発動でき、フィールドで最も攻撃力の低いモンスターを破壊!そして互いのプレイヤーにその攻撃力の半分のダメージを与える!」
万丈目 LP 2100 → 1000
亀崎 LP 2300 → 1200
『ヘル・ブラスト』…だと?あれってこの時期だと魔法カードじゃないのか?というか改めて考えてみると、メッチャ使いにくいカードだな…!
「これくらいのダメージ、アンタに王手をかける為の必要経費だ。このデュエルに勝って、アンタをI2社に突き出してやる。そうすればその『青眼』がニセモノだってことが証明されるだろうさ」
「もう勝った気でいるのか。そう思うのは勝手だが、口に出してたら後で負けた時が恥ずかしいぞ?俺はカードを一枚伏せて、『ポケ・ドラ』を守備表示で召喚。その効果によってデッキから同じカードを一枚手札に加えてターンエンド」
ポケ・ドラ
DEF/100
メイン2にて、子供向けにデフォルメされたようなちっこいドラゴンを召喚する。小さな卵(?)を持ったその姿はとても可愛らしい。
万丈目 LP 1000
手札:3
モンスター:0
魔法・罠:0
亀崎 LP 1200
手札:1
モンスター:1
魔法・罠:1
「俺のターン、ドロー!ククク…どうやらこのデュエル、俺の勝ちで決まりのようだな。このカードがあればアンタのドラゴン達は完全に無力化させることができるんだからな!」
万丈目の台詞に俺の頭の中にあるデュエルモンスターズの記憶から、一枚のカードが浮かび上がった。まさかあのカードまで入れていたのか…?
「俺は二枚目の『地獄戦士』を召喚し、その雑魚モンスターを攻撃だ!」
『ポケ・ドラ』が『地獄戦士』の一刀のもとに斬り捨てられる。決して高くないステータスだが、その身を犠牲にライフを守ってくれたモンスターに感謝しながら墓地に送る。
「そしてカードを伏せてターンエンドだ。このカードが発動すれば、アンタにはもう勝ち目はなくなる。負けを認めてサレンダーするなら今のうちだぜ?」
「デュエルは最後まで分からないもんだ。そしてこのドローで勝敗が決まる…!」
「ふん、どうやらアンタにもデュエリストとしてのプライドは持ち合わせているようだな。カードの偽造さえしていなければデュエリストとして賞賛していたものを…」
あぁもうさっきから犯罪者扱いが続くなぁ…。
この世界での『青眼』の在り方は分かっちゃいたけどここまでとはな。素直に説明したって信じてくれそうもないし……というか信じてくれる奴がいるかどうか。
昨日の鮫島校長も半信半疑って感じだったしなぁ…。どうすればーー。
『ーーさっきから偽造だなんだと好き勝手言いよる。
証がないのは腹立たしいが、大した確証もなしに主の僕を侮辱するなど見過ごせん…!
主よ……我が焔で愚か者を焼き尽くしてやる故、我を呼べ…!』
いきなり頭の中に響く声ーーそれは自分のデッキから聞こえた。『乙女』とは全く違う、怒りに満ちた荒れ狂う焔を連想させる女の声。
まるで自分と怒りを共有するかのように、焔が自分の心にも燃え移る。焔の勢いはあっという間に激しくなり、身体が焔に包まれている錯覚すら覚える…!
「万丈目…と言ったな」
「?」
いきなり俺の雰囲気が変わったことに万丈目が疑問を持っている。
「お前に今の俺の気持ちが分かるか?長い歳月を共に過ごしたモンスターを侮辱された俺の怒りが…!」
「だからどうした?そんなもの俺には関係ない。どれほど長い歳月だろうが、そのカードがニセモノだというのならそれに一片の価値もない。文字通りただの紙きれさ」
「アイツ…!人の大切なカードを紙きれ呼ばわりしやがった!」
「でも、よく考えたら万丈目くんの言うことも分からなくないっスよ…。伝説のデュエリストしか持ってない筈のレアカードをなんで持ってるかなんて」
紙きれ…?俺の『青眼の白龍』が……ただの紙きれ?
俺ノ大切ナかーどガ価値ノナイ紙キレダト……?
『感じる…感じるぞ!主の怒りの焔が強く、強く噴き出すのを‼︎主よ、その怒りを抑えるな!思うがままに燃え上がらせよ!その荒れ狂う焔で奴を焼き尽くしてやろうぞ‼︎』
「俺のターン…ドロー‼︎」
とうとう抑えきれなくなったそれは、すぐに俺の身体を支配した。指先が僅かに震え、頭には万丈目を倒すことでいっぱいになり心臓が燃え盛る炎になったようだ。
声に促されるまま、怒りに満ちた指で引いたカードは上級のドラゴンだった。聞こえた声の主なのかどうかは定かではないが、万丈目を倒すには十分なカードだ。
「俺は墓地から二体の炎属性モンスターを除外して、『焔征竜ーブラスター』を特殊召喚する」
「何⁉︎」
「墓地のモンスターを生け贄にして召喚…⁉︎」
墓地から除外された『ポケ・ドラ』と『タイラント・ドラゴン』がひとつの炎球となり、その中から新たな竜ーー『ブラスター』が姿を現した…!
焔征竜ーブラスター
ATK/2800
「ふ、ふん…!上手く上級モンスターを召喚したようだが、そっちのモンスターは既に無力化されていることを忘れたのか!リバースカードオープン!『ドラゴン族・封印の壺』‼︎このカードがある限り、ドラゴン族は全て守備表示となる!」
焔征竜ーブラスター
ATK/2800 → DEF/1800
守りの体勢を強いられる『ブラスター』。だがこの程度の罠で俺が動じることはない。このモンスターを召喚できた時点で、こっちの勝利は確定したからだ…!
「リバースカードオープン!『火霊術ー紅ー』発動!炎属性モンスターを生け贄に捧げることで、その攻撃力分のダメージを与える…!」
「なっ…⁉︎」
『ブラスター』から炎が勢い良く噴き出すと、頭上に炎が集まっていく。次第に『ブラスター』の身体から赤みが失われ冷えた溶岩のように黒ずんでいくと亀裂が入り、粉々に砕け散る。
「大切なカードを侮辱された怒り……その身で味わえ‼︎」
「うああぁぁぁ‼︎」
万丈目 LP 1000 → 0
『ブラスター』から抽出された炎が万丈目を文字通り焼き尽くしていく。この場で声を発する者は誰もおらず、果てには息を殺すやつさえいる。それは竜の逆鱗に触れた愚者が迎えた悲惨な末路を見届けた観衆と言うべきか。
「どうだ万丈目。負けた気分は?」
デュエルを終えて語りかけると、万丈目はこちらを睨みつけてくる。その目は「まぐれで勝った分際で…!」と声高に吠えそうなほど鋭い。
「っ、偶然上級モンスターを引き当てただけでいい気になるな…!あのモンスターを引いていなければ俺がーー!」
「散々相手を馬鹿にして、負けたら負けたで言い訳か。どうやらデュエルアカデミアの教育は、俺が思っていたのと違うようだ。こんな奴をエリートに据えているとはな…」
感情のこもっていない淡々とした口調でそう言うと、万丈目は俺から目を逸らし握り拳を作り黙り込む。クロノス先生も一連の出来事に呆気に取られていたようだが、授業終了のチャイムが鳴ると気を取り直した。
「エ〜…じゅ、授業はここまでナノーネ。皆さん次の授業の準備に向かうノーネ」
生徒達がまばらにデュエルコートを後に次の授業へと向かっていく。自分もここの生徒として他の授業にも同じように出席するべく教室に向かう途中、後ろから声を掛けられる。
「おーい待ってくれよー!」
振り返ってみると、昨日見たレッドの二人組ーー遊城十代と丸藤翔が走ってくる。
「さっきのデュエル凄かったぜ!え〜と名前は……」
「アニキ、亀崎さんっスよ」
「あぁそうだったそうだった。でもホントに驚いたよなぁ、上級モンスターが次々に出てきてさ」
「それで、俺に何の用だ?」
そう嬉々として語る十代に翔は苦笑している。いったい何の用で呼び止めたのか……否、それについては見当がついていた。彼が誰かのーー戦ったことのない人物のデュエルを見た後に言う言葉は決まっている。
「亀崎さん、今度は俺とデュエルしてくれよ!」
「えぇ⁉︎無茶っスよアニキ!いくらアニキでも亀崎さんが相手じゃ…!」
「試験で『青眼』を見た時からデュエルしたくて仕方なかったんだ…!伝説のデュエリスト・海馬瀬人しかもっていないとされる『青眼の白龍』と戦えるんだせ。ワクワクするだろ!」
その時の十代の目は、子供というワードがぴったりと当てはまりそうな純粋そのものだった。しかしそれ以前に驚いた。十代は俺の『青眼』を偽物だと疑わないのか…?そんな怪しい物を平然と使う俺を怪しまないのか……。
「万丈目に馬鹿にされた時に亀崎さん怒ってたけど、本当にコピーカードだったらあんなに怒らないだろ。俺も最初は疑ってたけどさ、俺にはあの三枚が偽造とか複製じゃないって何となく思うんだ。何でかは分かんねえけど…。まあとにかく、亀崎さんの『青眼』が【魂】のカードだってんなら、万丈目の言う事は気にしなくていいんじゃないか?」
何の根拠もない言葉にコケそうになるが、さっきまで感じていた炎のような怒りはあっという間に鎮火していった。むしろ生徒相手にあれほどの怒りぶりは大人気なかったと、自分でも若干引きたくなるくらいだ……。
だが今の十代の言葉で俺の心はかなり軽くなった。万丈目のような奴から何かしら言われる覚悟はしていたが、実際に言われれば心は傷つく。それが一人……たった一人に面前で受け入れてくれる姿勢を見せてもらうだけで、こうも変わるとは。
何だかんだ言って自分も不安が拭い去れなかったということか。
「っていうかアニキ!そろそろ行かないと授業に遅刻するっスよ…!」
「もうそんな時間か…⁉︎やっべえ早く行かねえと!ほら、亀崎さんも行こうぜ!」
十代と翔が教室へと走り出していくのを見送り、窓の外を眺める。外ではちょうど一羽の鳥が空へと羽ばたいていくのが見られた。その飛ぶ先には、先に飛び立ったのであろうもう一羽がいた。
「…十代の言う通り、一々気にしててもしゃあないか」
確かに後ろめたいことは何もないのだ。これは偽造でもなければ複製でもない。正規の方法で製造され、そして販売されたカードだ。
ならば胸を張って振るえばいい。己の信頼するモンスターの力をーー。例え何と言われようとも、俺はこいつらと共に行けるところまで行ってみたい。
その先にあるものを見たいが為にーー!
授業開始のチャイムと同時に教室に滑り込んだ俺は、教師の挨拶そっちのけでそう心に決めたーー。
第三者視点(って言うの?)の書き方を試してみましたが、書きにくいことこの上ない……。
やっぱり誰かの視点で書く方がいいですね。
そして改めて調べてみて分かった【征竜】の強さーー。
当初「微妙だな」と言ってすまなかったレドックス君。
レドックス「訴訟も辞さない」