遊戯王GX 〜伝説の龍を従えし決闘者〜   作:ハクハクモン

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まず最初に謝罪します。

今回において、とある作者様が投稿された話とほぼ同じ流れがあります。
書き直そうと思ったのですが、これ以上間が空くのはまずいと判断した次第です。

暇を見て直そうと考えているので、ご了承ください。



DAへ全速前進DA!

童美野町のとある場所に佇む一軒家。『GAME 亀』と大きく書かれた看板を確認すると、遊戯に続いてその店に入って行く。カランカランとベルが鳴り、それを聞いたのであろう一人の老人が店の奥から現れた。

 

「いらっしゃい。ってなんじゃ遊戯か」

「ただいま、爺ちゃん」

「ああお帰り。その後ろにいるのは…?」

「あ、亀崎賢司といいます。初めまして」

 

初代決闘王である武藤遊戯の祖父ーー武藤双六に挨拶をすると、双六も同じように自己紹介をしてくれた。とても人当たりの良さそうな人だ。

 

「珍しいのう、遊戯が友達以外の人を連れて来るのは」

「まあちょっとね。童美野町を案内がてら、家にも寄ってみたんだ」

「そうかそうか。だとしたら、やはり君もデュエリストなんじゃろう?もし良ければうちのカードを見ていってみんか?」

 

そう言われてデュエルモンスターズが並べられているケースの前に通される。中には先ほどのカードショップでは見なかったレアカードが幾つか見られた。自分にとってはもはや見慣れたカード達、その中には元いた世界では絶版となっていたカードもあった。

 

「おお、『カエルスライム』とか懐かしい…!」

「ほっほっ。それに目をつけるとはお前さんも通じゃな。そういえば亀崎君は、デュエリストとしての腕前はどれくらいなのじゃ?儂はこう見えて、以前全くの素人にデュエルを教えたことがあってのう。何だったら色々教えてやるぞ?」

「爺ちゃん、彼は海馬君に迫るほどのデュエル・タクティクスを持ってるんだ。もしかしたら爺ちゃんより詳しいかもしれないよ」

「何と…!それじゃ儂の出番はないみたいじゃな…ガックリ」

 

項垂れる双六さんと苦笑する遊戯。二人の会話を背に受けながらカードを見ていると、再び双六さんが声をかけてきた。

 

「…そうじゃ亀崎君や。店に並んではおらんが、儂のとっておきのカードがあるんじゃが見てみたくはないかの?」

「とっておきのカード…。もしかして『青眼の白龍』とかですか?」

「!どうして分かったのじゃ?遊戯、彼に話したのか?」

「いや爺ちゃん、実はーー」

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

「何とも不思議な話じゃな。君が別世界のデュエリストで、しかもこの世界のことを知っておるとは……」

「自分でもびっくりですよ。あまりにも現実離れしているもんですから」

 

双六さんは顎に手をやりうんうんと唸りながら驚いていた。しかし俺が驚いたのは、そんな途方もない話を聞いたこの人も信じたということである。

確かに原作では双六さんも闇のゲームなどの非現実的な現象を体験してきたはずだが、さすがに未来や過去ではなく別世界からやってきた人間に遭遇したのは初めての筈だ。

それともそういった現象に対する耐性がついてしまっているのだろうか……。

 

「まあこういう不思議なことには、儂は慣れておるからの。特に気にせんでもいいぞ。それよりもーー」

 

双六さんの言葉にはぁ、と返すと、双六さんはケースの上に並べてある三枚の『青眼』に視線を移した。

 

「羨ましいのう…、絵の違う『青眼』を持っておるとは。コレクターの血がまた騒いでしまうわい…!」

「…渡しませんからね?」

「…どうしてもかの?」

「どうしても、です」

 

双六さんに真っ向から真顔でピシャリと言ったことで何かを感じとったのか、「仕方ないのう…」とあからさまに落胆した。

これ以上外に出しておく理由もないので三枚をデッキに戻す。

 

「…〜それなら、せめてデュエルを見せてくれんかの?お前さんがどれほど強いのか、この目で確かめてみたいのじゃ」

「それは構いませんが、お相手は?」

「そりゃもちろん儂じゃよ。遊戯が相手してくれてもいいんじゃが、久しぶりに儂もデュエルしたくなったんじゃ♪ただ、流石に年じゃからの。奥でのテーブルデュエルで構わんかの?」

 

双六さんの提案を聞いて遊戯に視線を向けると、苦笑して肩を竦めながらも「相手をしてあげてくれ」と彼も頼み込んでくる。

俺はほんの少し悩んだ末に承諾し、武藤家のリビングにお邪魔することになった。テーブルにつきお互いのデッキをシャッフル、カットして相手に返す。

ただそれだけで昔デュエルしていた記憶が呼び覚まされるのは、元いた世界で久しくデュエルしていなかったからかもしれない。

 

「それじゃ始めるとしようかの」

「お手柔らかにお願いします」

 

「「デュエル」」

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

海馬コーポレーションの最上階にある社長室ーー。

同社の社長ーー海馬瀬人は様々な仕事をこなす一方で、その思考は未だ『新たな青眼』を持つ男に染まっていた。

そしてデュエルの最中に召喚された、あの女の姿をしたモンスター……。考えれば考えるほどに思考は堂々巡りの泥沼と化していた。

 

(『青眼の白龍』を製造したのはI2社のみで間違いはない。だが奴が所有する『青眼』を造ったカード会社と思しきところは一つもなかった……。ならば奴はどうやって手に入れたというのだ……?)

 

己のシンボルたる『青眼』を自分以外の他者が所有するーー。本来ならばそれを絶対に許しはしない筈の自分が、何故今すぐ動こうとしないのか。

デュエルであの男と『青眼』に因縁があるのを感じたからか…?

 

(それに、奴が召喚したあのカード…。あれの出どころも気になって仕方がない……)

 

もうひとつーーあのデュエルで召喚された『青き眼の乙女』というモンスターについても調べたが、該当情報は『ひとつも』なかった。つまりは未だこの世界にその存在を認知されていないどころか、ペガサス・J・クロフォードの手でも造られていない存在なのだ。

そんなカードを持つ奴はいったい何者なのか……。

 

(何にせよまだ時間はある……。時間を掛けて聞き出すとしよう。だがまずはその前にーー)

 

するとパソコンのディスプレイの端に【Sound Only】の画面が映し出される。

 

『社長、こちらの準備が整いました』

「分かった」

 

接続を切り無線電話を取ると素早い指捌きで番号をかける。接続音を耳に入れながら海馬は心中にて新たな計画を練り始めていた。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

日は完全に落ち、月明かりに照らされた町並みはかつていた世界と全く変わらない。強いて言うならば元いたところの方が僅かに田舎寄りだったところか。

武藤家で双六さんとデュエルしていた亀崎は、海馬コーポレーションからの迎えの車に乗りながら外の景色を眺めていた。それは電車で数十分ぐらいの距離にあった街と大差がなかった。それ故にこれは夢ではないか、と現実逃避にもとれる思考を浮かばせるが、少しして着いた目的地を見てそれは霧の如く霧散する。

 

見上げるほどに大きいビルーー。

正面入り口には『青眼の白龍』の像ーー。

そしてでかく【KC】と打たれた名ーー。

その名も、“海馬コーポレーション”である。

 

部下の人に連れられる形で社内に入りエレベーターに乗る。やや長く乗って着いたのは、【開発部門】と呼ばれるなかでデュエルデータの解析やテスト等を行うスペースだった。そのなかにはあのデュエルロボの姿もあった。

 

「来たか」

 

テストスペースに入ってすぐ、視界に入った海馬が振り向かずに発する。

 

「これより貴様には、こちらの方で用意した複数のデッキと戦ってもらう。貴様は昼間の時と同じデッキを使え」

「……ず、随分いきなりだな。そんなことしてどうすると?」

「そんなことは今の貴様には関係ない。貴様はただここでデュエルをするだけでいいのだ」

 

海馬からの一方的な指示に亀崎が微妙な顔をしていると、海馬は亀崎の前へと移動し文字通りの上から目線で念を押すように口を開いた。

 

「今の貴様は俺が預かっているということを忘れるな。そして『青眼』に関してもまだ認めたわけではない。手放したくないのならば、おとなしく俺の言うことを聞いておくがいい」

 

海馬のその目には『これが最終警告だ』という色が濃く表れていた。ここでさらに愚図れば実力行使で『青眼』を取り上げると……。

 

「はあ……分かった。普通にデュエルすればいいんで?」

「そうだ。今回のデュエルで貴様のデュエリストとしてのデータを余さず収集する。せいぜい全力を尽くすんだな」

 

選択肢が最初からないことに深い溜息を吐きながら、亀崎は仕方なしと受け入れた。

テストスペースを出て恐らく制御室へと移動するのであろう海馬が退出すると、精霊である『青き眼の乙女』が亀崎の隣に現れた。

 

『……よろしかったのですか?マスター』

「仕方ないだろう。海馬の言う通り、今の俺には頼れる人がいないからな。ただこの世界が【GX】の時代であるのなら、いずれはアカデミアへ行く機会が来る筈…。それまではここに置いてもらえるようにするしかない」

『……分かりました。ならば私も、出来得る限りマスターにお力添えします。私とてマスターと離れたくはありませんから』

「ああ、頼りにしてるよ」

 

信頼の言葉をかけられ『乙女』は優しい笑みを返す。

彼女とその使い手である亀崎が今のように面と向かって話すのは、この世界に来てからが初めてだった。それまではカード一枚を隔てた向こう側から、窓から眺めるように主の姿を捉えることしかできなかったからである。

 

かつて自身が亀崎の持つ『青眼』のデッキに組み込まれた時、そのデッキにおいて最古である『青眼の白龍』と出会った。彼(彼女?)は主が幼い時から今に至るまで、ずっと彼を見守り続けてきたという。

デュエルにおいては望まれた時に力を発揮し、自らがデッキに投入されていない時は勝利へと導くーーかの龍はその長い時に渡り、ずっと主に付き添い続けてきたのだ。

 

それを聞いた時、『乙女』は自身が造られ今こうして主の元に行き着いたのは運命なのではないか、と考えさせられた。事実、主はそれから一貫して『乙女』を軸としたデッキから一度も変更していない。他の三つのデッキはその都度細かいところで変わっているにも関わらずだ。

 

数千、万とあるカードの中からここまで重用してくれることに『乙女』は何かしらの形で感謝の意を表したい、そして『青眼の白龍』のように力になりたいとずっと思っていた。そして今こそが、主の力になるべき時だと『乙女』は判断していた。

 

研究員の一人から受け取ったデュエルディスクを装着、『青眼』のデッキのセットと同時に起動される。デュエルロボに向き合う亀崎への誓いを心に秘めながら、『乙女』は自身のカードへと戻っていった。

 

『準備はいいな?デュエルロボを起動させろ!』

 

拡声器からの海馬の指示によってデュエルロボの中央ランプが赤く点灯し、セットされているデッキからカード五枚が上部にある手札スロットへと移動する。亀崎も同じようにデッキから手札五枚を引く。

 

「デュエル!」

『デュエル』

 

その後、このデータ収集の為のデュエルは深夜に差し掛かる直前まで続いたーー。

 

 

〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜

 

 

データ収集のデュエルを行った次の日、眼下一面に広がる広大な青い海の上空を飛ぶ一機のヘリがあった。【KC】というロゴが入れられたそれは、誰が見ても海馬コーポレーションのものだと理解できるだろう。

ただーー

 

「Zzz…」

 

それに乗っているのが必ずしも社の人間とは限らない訳だが。

 

「まったく……悪びれもせずに頬杖を立てて居眠りとはな。肝が据わっているのかただの阿呆か」

「昨日のデュエルの疲れがまだ取れていないのでは?」

「ふぅん。あの程度で根をあげるなどデュエリストとして三流に過ぎん。真のデュエリストならば、いつ何時デュエルを挑まれようとも、その全てにおいて完全なる勝利を得ねばならん。仮にも『青眼』を持つデュエリストとしては、できて当然だ」

 

亀崎は昨日のテストデュエルにおいて、一応の休憩は与えられたものそれ以外はひたすらにデュエルしていた。

元いた世界では椅子に座ってのテーブルデュエルこそが一般的な形式で、まったく体力を使わないのが当たり前だった。

それと比べてもソリッド・ビジョンを用いたデュエルでは、モンスターの攻撃等を受けた際に本物に近い衝撃を受けることによって体力を消費する。亀崎はこの世界に来てからのデュエルでそれを再確認させられていた。

 

しかし亀崎の疲労の要因はそれだけではなかった。

憧れを持っていたとはいえ全くの別の世界、そしてソリッド・ビジョンによるデュエルという未だ慣れない経験を経て、亀崎の身体は本人の予想よりも疲れていたのだ。

無論、海馬瀬人にとってはそんなことを知る由もない上に知ったことではないのだが。

 

「社長、まもなく到着致します」

「いつまで寝ているつもりだ亀崎!さっさと起きろ!」

「……んぉ。あれ、いつの間に寝てたのか…俺」

 

海馬の怒声を受けて眠りから覚めた亀崎は目を擦りながら、なんとはなしにすぐ横の窓から外を見る。

するとヘリの前方ーー青い海の上にひとつの島が見え、心に僅かな懐かしさを感じることができた。

 

「あれは……」

「ふぅん。あれは我が社が所有するデュエリスト養成学校ーー【デュエルアカデミア】だ」

 

やがてKCのヘリがデュエルアカデミアの波止場にあるヘリポートに着陸する。ヘリから降りた海馬と亀崎を迎えたのは、一人の初老の男性だった。

 

「よくいらっしゃいましたオーナー。態々このような遠い所まで、ご苦労様です」

「そのような世辞はいらんぞ、鮫島。こうして自分の眼で直接見に来なければ、分かるものも分からんからな」

「それはそうですな。ところで、そちらの方は?」

 

初老の男性ーー鮫島が亀崎に視線を移した。

 

「こいつは先日我が社で預かることになった男だ。昨日話しただろう」

「おお、オーナーが気にかかるという人ですな。その彼もここに来たということはーー」

「ふぅん、そういう事だ」

 

二人の会話の意味を知りあぐねていると、海馬が鮫島について簡単な説明を始めた。

 

「ここの校長を務めている鮫島だ。こんな見た目だがプロデュエリスト達の間では『マスター鮫島』という名で知られ、それとは別に『サイバー流』という流派を生み出した傑物でもある」

「オーナーには負けますよ。たった今紹介に預かった、鮫島です。どうぞよろしく」

「亀崎です。こちらこそ」

 

差し出された鮫島の右手に答えて、亀崎も己の名を明かす。鮫島の大きく逞しいその手からは、デュエリストとしての実力の高さが滲み出ているような錯覚を覚えた。

 

「互いの自己紹介がすんだならさっさと行くぞ。折角だ、貴様もここをしっかりと見ておくがいい」

 

足早に歩き始める海馬と、後を追う亀崎。

亀崎は海馬が何を考えているのか、この時まだ知らないーー否、自身の心の片隅に僅かな期待が膨らみ始めていた。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

アカデミアの様子は、それこそ自分の知る学校のそれとなんら大差はないように見えた。生徒と教師の授業風景、清潔な教室や廊下、体育の授業に使われるのであろう広々としたグラウンド。そして自分の知る学校との一番の違いであるデュエルフィールドの完備など、あっと言う間に過ぎ去る時間の中で様々な場所を見て回った。

 

(こりゃすぐには覚えられんな……)

 

最後に校長室へたどり着くと、海馬は見て回ったなかで感じた問題点等を次々に鮫島校長に投げかけていく。特に問題視するような点を感じられなかった自分と比べて、やはりものの見方が違うことを感じさせられる。

 

「今挙げた問題点は速やかに解決させろ。いいな」

「分かりました。手を尽くしましょう」

 

鮫島校長の返答に海馬はふぅん、と笑うと、こっちに振り返った。

 

「亀崎。何故俺が貴様をここに連れて来たか分かるか…?」

 

海馬の目には『もう分かるだろう』という色が見える。波止場で膨らみ始めた期待は、ここで確かな確信へとその姿を変えた。

 

「俺をここに入学させる、ってわけですか…?」

「そういうことだ。昨日のテストデュエルの結果を見て、貴様をデュエルアカデミアに放り込むことにした。得体の知れぬ貴様でも、ここの生徒達に発破をかけることぐらいはできるだろう」

「つまりレベルアップの起爆剤ってわけね。ちなみに拒否権はーー」

「元より貴様に拒否権などないわ。貴様はただ大人しく引き受ければいいだけだ」

 

分かりきっていたことを確認して落胆どころか、その内心ではむしろ海馬に感謝していた。これで【GX】の舞台であるここに来る為の架け橋が(ほぼ勝手に)出来上がったのだ。

だがここで自分の中に、ひとつの疑問が浮かび上がった。

 

「ひとつ疑問なんだけど、その際の俺の立場は…?」

「一応はここの生徒として扱うことになっていますよ」

「いやどう考えても、他の生徒と一緒にするのは難しいのでは……」

 

デュエルアカデミアへの入学が難しいと自分が考える理由ーーそれは単純に『歳』だった。

まだ十代ぐらいだったならこの問題をスルーして素直に喜べただろう。しかし現在の自分の歳はそれを上回ってしまっている。

アカデミアに在籍するのであれば臨時教師辺りが妥当かもしれないが、そのような経験がある訳でもない。やれと言われればやるしかないだろうが……。

 

「そんな心配など無用。既に貴様を『特別編入生』としてここに在籍させる手筈をこっちで進めている。それとも臨時教師の立場が良かったか?だが貴様には到底務まるとは思えなかったのでな」

 

本来なら怒るべきところを、心の中でほっと胸を撫で下ろす。お世辞にも人にものを教えるのが得意じゃない自分にとっては、この措置は有難かったからだ。

 

「アアハイソウデスカ。心遣イ痛ミ入リマス」

「だが代わりに俺から貴様にひとつ、仕事をくれてやる。貴様にはアカデミアに在籍中、それをこなしてもらう」

「それを断ったら……?」

 

俺の質問に、海馬は不敵な笑みを浮かべて言った。

 

「貴様の大事なものの安全は保障できんぞ?」

「うおぅ……」

 

海馬の非情な言葉に引きながら、その仕事の内容を確かめるべく海馬を問いただす。

 

「そ、それでその仕事ってのは…?」

「そんなことも理解できんのか?何の為に貴様をここに連れて来たのだと思っている」

「ん〜…やっぱりデュエル関係、か?」

「そうだ。どうやらここの生徒のなかには、俺が定めたランクの意味を勘違いしている輩が多いようだからな。特にオベリスク・ブルーとオシリス・レッドの間には、ひとつの格差社会が出来上がっているほどだ」

 

これに関しては原作でも描写されていたことだ。純粋にデュエルが弱い、知識がない、持っているカードが弱かったりとオシリス・レッドに所属する生徒はそういった理由で、オベリスク・ブルーに所属するエリートのほとんどに見下されていた。

作中では十代達主要メンバー以外のデュエルは全くなかったものの、彼らも最終的にラー・イエローやオベリスク・ブルーに昇格できていた。つまり彼らもやろうと思えば、いくらでも上を目指すことができるのだ。

 

しかしそんな彼らをその場に燻らさせている原因を作っているのが、先にあげたオベリスク・ブルーの生徒達だ。

彼らは自分が優れている、特別であるということを鼻にかけ、ランク下であるラー・イエローやオシリス・レッドを馬鹿にしていた。デュエルにおいても終始高圧的だったり、相手のプレイングやカードを貶す等のデュエリストに有るまじき行為を平気で行っていた。オシリス・レッドの生徒が向上心を失った最大の理由は、これなのではないかと原作が放送されていた時から考えていた。

無論、ブルーの生徒全員がそうだとは思っていないが。

 

「貴様には、そのなかで驕り高ぶった奴らを徹底的に叩きのめしてもらう。奴らも上には上がいると分かれば、少しはマシになるだろう」

「それは別に構わないが、自信喪失したらどうするんだ?さすがに叩きのめした相手に優しい言葉を投げられるほど、俺は器用じゃないぞ?」

「ふぅん。敗者に情けをかける必要などない。一回打ちのめされただけで簡単に折れるようなら、そいつは所詮その程度だったということだ」

 

確かに一回負けただけであーだこーだ言ってる暇があるのなら、次こそ勝つ為に手を尽くした方が己を高める結果に繋がるもんな。今の海馬の言葉は、寧ろブルーよりもレッドの方に対して放ったような台詞でもあるが。

 

「レッドの方には何もしなくていいのか?」

「デュエリストたるもの、己の路は自分の力で切り開くものだ。奴らにまだデュエリストとしての誇りが残っているならば、自然と上を目指す筈だ」

 

俺に与えられた仕事というのは、とどのつまり『エリートの鼻っ柱をへし折れ』ということらしい。デュエル自体は問題ないとしてもその後の人間関係に不安が残るが、悩んでいても仕方がない。少し間を置くように考えた末、この話を受けることに決めた。

 

「了解。どこまでやれるか分からんが、やれるとこまでやってみよう」

「まったく、随分と時間がかかったがまあいいだろう。鮫島、そういうことだ」

「分かりました。亀崎君。君がこのデュエルアカデミアでどのようなデュエルをするのか、楽しみにさせてもらうよ」

 

鮫島校長の言葉から自分が引き返せない道を進んだことを実感するが、それと同じくようやく自分が進む道が見え始めたような錯覚を覚える。

どのようにしてアカデミアに行くかが問題だったが、こうして海馬の助けをもってクリアすることができた。

高鳴っていく鼓動に翻弄されながらも、請け負った役目を忘れないように気を引き締めようとする。

 

「ふぅん。やる気を見せるのは結構だが、まずは実技試験をクリアしなければアカデミアには入れんぞ」

 

一瞬自分の耳を疑った。が、すぐにそりゃそうだと自分のなかで納得した。いくら特別だとか言っても無条件で入れさせるほど、海馬は甘くないということだ。

認識の甘かった自分が恥ずかしくなる……。

 

「はは……それはそうか。まずはちゃんと試験を受けないとな。それでその試験はいつなんだ?」

 

海馬はふぅん、と鼻で笑うとーー

 

「明後日だ」

 

そう静かに言い放った。

固まる俺を呼び覚まそうとする『乙女』の声があやふやに聞こえるなか、俺の頭のなかではひとつの新たな問題が浮き彫りになるのであった……。

 

 




知人と久しぶりにデュエルした感想。
クリフォート強すぎィ!!

待ってくださった方、お待たせして申し訳ありませんでした。
最近になってTFSPや某無双などやりたい事が増え、こちらに割く時間が短くなってしまいました。
それでも書き進めてはいますので、次話もどうかよろしくお願いします。

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