ハイスクールD×F×C   作:謎の旅人

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第7話 私の能力

生まれてから300年になりました。私は朝起きてすぐに体に違和感を感じた。なにか懐かしい感じ。でもいつもの感じもする。私は体を見た。5本の指がある。毛がない。周りの物が小さい。肌もすべすべ。それに頭に髪がある。

 

それは私が人間になっているということを示していた。自分の体をぺたぺたと触る。うん、やっぱりこの体は人間の体だ。懐かしいな。といっても、記憶にある私の人間の体は僅かしかない。懐かしいと感じるのは本能みたいなもの。

 

でも狐から変わらないときがある。それは耳と尻尾。尻尾は今年で生まれて300年なので4本になっていた。人間の体に獣耳と4本の尻尾。人間の男が見たら喜ぶような姿。

 

家にあった鏡で自分の姿を見たら、私は幼い体に金髪の長い髪。そしてくりっとした真紅の瞳だった。私でもちょっと見惚れそうな容姿だった。思わず鏡に手を合わせる。ちょうど鏡の私と手を合わせる形になった。

 

そして、気付く。自分がなにも着ていない生まれたままの姿ということに。手で大事なところを隠す。狐のときはいつも裸でも動物だからという理由で納得していたけど、今の体は人間の体。女の子でもある私はそう行動する。

 

私は恥ずかしさのあまり顔が赤くなっていた。家の中にはもちろん誰もいない。私は1人暮らしだから。それが幸いだった。服は……ない。昨日まで狐だったし、まさか人間になるなんて思わなかった。

 

 

「ど……どうしよう」

 

 

私の口から幼い声が聞こえた。自分の体が幼いということをさらに実感させる。そこで私の中に何かがあるということに気付いた。でもそれは物理的にではない。なんていうか、なにかがある。それだけ。

 

私は目を瞑り、意識をソレに向けた。感覚が夢の中に入っているような感じになった。周りは暗闇。ここは私の精神の中? よく分からない。私はソレを感じる方向へと進む。しばらく歩くと宙に浮く八枚の紙があった。

 

私は近づき、手に取る。よく読んでみるとそれには見覚えがあった。私がこの世界に来るときに書いた紙だったから。八枚のなかには私が書いた紙があった。でも私が書いた1枚はなぜか破れている。その紙の内容は

 

・誇り高き眷属

 

・無限に近い力の泉

 

・魂を呪われた吸血の王

 

複写眼(アルファ・スティグマ)殲滅眼(イーノ・ドゥーエ)

 

・下級神の権限

 

・九尾の狐

 

・あらゆるものを作り出す程度の能力

 

・運と幸の世界

 

と書かれていた。でも、最後の能力は破れている紙に書かれている。最後の紙はただ破れているだけでなく、黒く染まっている。これはどういうことだろうか? 私の考えではこれらは私の転生の特典。私の知らないのがあるのは何かの手違いがあったのだろう。

 

能力の大体の内容は理解しました。なぜなら紙にその内容が書いてあるから。文字からしてこれは私の文字じゃない。やっぱりなにかの手違いがあったみたい。でも私から神様に話しかけることはできない。

 

これはもらっておくしかないですね。でも、はあ~。私は暴力なしに暮らしたいだけなのにこんな戦闘に特化している特典ばかりなんて。私はその紙を眺める。特に破れた私の特典を。

 

 

「も、もしかしてこれは……」

 

 

私は破れた紙を眺めてあることに気付く。破れて黒く染まっているということ。それはその能力が使えないということではないのかと。だって破れた私の特典は幸運と幸せだから。もし使えていたらお母さんは仕方がなかったけど、私は獣に襲われずお兄ちゃんたちは死ななかったはずだから。

 

やっぱりそうだよ。私の特典は神様の貰ったもの。そこらの運がいいひとよりいいはずだから。私はその場に膝をつく。

 

 

「なんで……なんで……使えなかったの!! これがちゃんとしていればお兄ちゃんもお姉ちゃんも寿命で死んでいたのに!! どうしてなの!! ひぐ……うわぁぁぁんっ!! お兄ちゃん!! お姉ちゃん!!」

 

 

私は泣き叫んだ。ただ悲しくて悲しくて。

 

 

 

 

私は現実に戻る。頬に触れると涙が流れていた。精神の世界で泣いたけど、こっちでも泣いていたみたい。私は手で涙を拭う。でも涙は流れる。

 

 

「うう……ぐすっ……」

 

 

しばらくすると私も落ち着いた。今どうにでもできなかったことを嘆いても意味がない。もし私にお兄ちゃんたちみたいな大事な者ができたときに、同じことを繰り返さないようにすればいい。それが私にできること。

 

早速能力を使います。使うのは私の特典である「あらゆるものを作り出す程度の能力」です。頭の中で服を集中すると服が出てきた。どうやら代償や副作用はないみたい。でも出した服は巫女服だった。なんで?

 

でもとりあえずこれを着ます。他に出してもいいけど、今は一刻も早く何かを着たかったら。どうやって着るのかなと思っていたけど、なぜか着方が分かります。鏡で見てみると、自分で言うのはなんですけど、似合ってました。

 

ああ、もう巫女服でいいです。結構気に入りました。私は鏡の前でくるりと回る。お尻の部分には尻尾が出ています。さて、服も着終わったことです。なぜ私がこの姿になったのか先生に聞きに行きます。

 

私は狭い玄関をどうにか出て、麓へと向かう。いつもなら難なく行ける道もこの人間というでかい体では動きにくい。急ぐために途中で走ったりするけど、300年ぶりの人間に体で何度もこけた。きれいだった服には泥が付く。

 

ようやく慣れたところで麓の学校に着いた。私は扉を開け、中に入る。教室にいたのは先生だけだった。

 

 

「せんせー!! せんせー!!」

「何かね?」

「朝起きたらこんな姿になっていました」

「ほう。これはまた珍しい。」

 

 

先生は私の姿に驚くことはなく、私が誰なのかも分かっているみたいだった。

 

 

「どうなんですか?」

「心配はいらんよ。いわばこれはもうひとつの自分の姿じゃ」

「もうひとつの?」

「そう。もうひとつの、じゃ」

 

 

それを聞き私は安心しました。それから詳しく説明されました。どうやらこれは妖怪の能力のようです。私の場合は人間の姿になること。つまり人間化です。でも、全部の妖怪が変化できるわけではなく、できない妖怪もいるそうです。

 

 

「ところで、お主はいつまでもうひとつの箱を開けないつもりじゃ?」

 

 

そういわれた私は首を傾げる。何を言っているのか理解できません。もちろんそれが何かの比喩表現だと分かります。それにもう1つってことは私はもうすでに開けた箱があるってこと。でも私はなにを開けたのだろうか?

 

 

「どういうことですか?」

 

 

私は手ぶらです。服の構造上袖の部分に何か入れることはできませんし、開けられるものはないです。先生はおやおやしまったしまったという顔をする。

 

 

「言い方が悪かったの。自分の体の中の力のことじゃ。意識を自分の中に向けてみなさい」

 

 

言われた通り向けてみます。さっきもやりましたが、他にありましたっけ? 再び私は暗闇の中へ。適当に歩き、見つけた。片手に収まるくらいの小箱でした。意識はこのまま先生へ報告する。

 

 

「ありました」

「では開いてみなさい」

「はい」

 

 

開けた瞬間、私の体から3つの力があふれ出る。

1つ目は神気。

2つ目は妖力。

3つ目は霊気。

すべて私の特典です。霊気は気のことでしょう。神気も特典にあった神関係のものだと思います。

 

意識を現実に戻し、目を開けると先生が驚いています。妖力以外に2つの力があったことに驚いたのでしょう。でも、なにか違う。別のことに驚いている気がする。

 

 

「今すぐ力を抑えなさい!」

 

 

先生が大慌てでそう言った。言われた通りに抑えます。大抵、こういう場合簡単にはいかないがお決まりなんですけど簡単に抑えることができました。私は細かいことをするのは得意ですからね。

 

先生はそれを見て落ち着き、私は自分の体を見る。力の解放での見た目の変化はないようです。また容姿が変わるのはちょっと嫌ですから。それにこれも気に入っています。

 

しばらくしてたくさんの妖怪たちが急いでいる様子で私と先生のもとまでやってきました。何かあったんでしょうか? みんなの顔は怖い顔でした。思わず涙目になりそうでした。

 

 

「こっちで何か大規模な妖力を感じてきたんだが、別の妖怪が攻め込んできたのか!?」

「あれだけの量だ。きっと大勢に違いない」

「しかし、どうやってこの集落に入ったんだ? 明らかに入り口や異空間の端からじゃなく、中から出現したみたいだったが」

「ああ。中にいきなり現れるなんて芸当は誰にもできることではない。あの魔力量からして絶対に600匹以上だな」

「しかし、姿が見えない。どういうことだ?」

 

 

どうやらどこかの妖怪たちが攻め込んできたらしいです。私たちは戦闘に特化してはいません。私の特典はほとんど戦闘型ですが、今日知ったばかりで戦えません。それに戦うのは怖いです。どうしましょうか? 

 

私は先生のほうを見ます。先生は集落のリーダーのような存在です。みんからも先生と呼ばれています。あれ? いつもどおりの顔のままですが、大量の汗を流しています。

 

先生がこんなに大量の汗をかくなんて。やっぱりやばいようです。みんなも先生の様子がおかしいことに気が付いたようです。みんな、慌てだします。私は怖くなり震えだす。情けないかもしれませんが、私は女の子です。

 

 

「ど、どうする! 逃げなくては!」

「でもどこに!」

「戦おうにも俺たちじゃ無理だ」

 

 

みんなが混乱しだす。そのときようやく先生がしゃべりだしました。

 

 

「あ~、みんなよく聞いてくれ」

 

 

みんなが静まり、先生を見る。私も怯えながら先生を見た。私の鼓動はもう破裂しそうなくらい動いていた。また私が死ぬ。あんな目に会うのはいやだ。怖い! 怖い!! 視界がふらふらとなる。

 

 

「敵は攻め込んではいないんじゃよ」

 

 

その言葉に全員が疑問を持った。私も怖いという心が止まった。私は妖力を感じるなんてことはできません。私は先生に質問する。

 

 

「先生、どういうことですか?」

 

 

多くの妖怪が感じたのです。勘違いではないはずです。では、なんでしょうか? 考えていると先生が私の頭に手を置きます。私は先生を見る。みんなの視線も私に集まってきた。

 

 

「先生、この妖怪は?」

「みんなも知っている妖怪じゃよ」

「おい、知っているか?」

「知らんな~」

「見たことがない」

 

 

そっか。今の私は人間の姿でした。みんなが分かるわけがない。どう見ても変わりすぎです。

 

 

「この妖怪はあの狐じゃよ。郵便で有名なあの、な」

 

 

一瞬静まりました。私は郵便で有名です。みんなの視線が私に集中した。やっぱり恥ずかしいです。思わず顔を伏せる。

 

 

「まさか変化ですか!? それにしては遅い気がするのですが……」

「そうだな。大体生まれて数十年で変化するはずだ。まさかこんなに遅く変化するとは」

「個人差があるからな。きっとそのせいだ」

「だが、ここまで遅いのは聞いたことがない」

「それも個人差だ。ただ遅かっただけだ。気にすることではない」

「そうだな。それより問題はあの妖力だ。この狐の子は問題ではない」

 

 

みんなからの言葉を聞いていました。この変化って生まれて数十年でなるものなんですか。私って本当に不思議です。

 

 

「それで先ほどの妖力はなんですか?」

「そうです! 我々は戦う力がない。それでも戦うか逃げるしかありません」

 

 

みんなの視線が私から先生に移る。再び私の頭に先生の手が置かれた。また私にも視線が集中した。

 

 

「さっきの妖力はすべてこの子1人のものじゃ」

 

 

みんなが驚く。私も驚き見開いた。確かに私の妖力の解放と妖怪たちの襲撃。全部タイミングがよかった。でも、まさか私の妖力のせいだったなんて。そんなにあるとは思わなかった。

 

だから先生が慌てたんだ。先生もまさか私が膨大な妖力を持っているとは思わなかっただろう。今度からは気をつけよう。私のせいでここを危険な目に会わせたくはない。

 

 

「ま、まさかこの妖怪1人で!? なんという妖力量だ!! 授業では妖力は低いとされていると聞いたが、それは覚醒していなかっただけなのか!!」

 

 

みんなはそれぞれで驚いていた。

 


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