ハイスクールD×F×C   作:謎の旅人

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第41話 私がいちゃつくだけ

 まずは話を聞こう。

 

「……何をするつもりじゃ?」

「何を? ふふふ、決まっているでしょう?」

 

 黒歌はそう言うが私には分からなかった。

 もし分かるならば私が襲われ、黒歌が敵なのではということだけだ。

 

「私には分からん。その手を離せ、今すぐに」

「本当に分からない? こんなに近いのに?」

 

 確かに近い。

 黒歌は肘を曲げて私の両肩を掴んでいたので体は密着し、顔だって近くて黒歌がちょっと顔を動かしたらすぐにでも顔が接触するほどの距離だ。

 

「じゃあ、教えてあげる。私たちの関係はなに? ただの家族? 答えて?」

「き、決まっておるじゃろう。こ、恋人じゃ」

「そうでしょう。ならこんなに近いってことは?」

 

 そこまで言われて私は気付いた。ドキッとして体が熱くなる。

 それとともに黒歌に私を殺すなどという敵意はなく、ただ恋人としてのじゃれあいをしたかっただけだと分かった。

 

「き、キス?」

「正解♪」

 

 黒歌が満面の笑みを浮かべた。

 

「なぜ今?」

「何故って……だって白音だけ恋人としてのキスをしたのよ。なのに私はまだやっていないもの。それに御魂ちゃん、私が怒られているときに白音に―――」

「わ、分かった分かった! 分かったから!」

「じゃあ、やってくれる?」

 

 一瞬悩んだのだが、私のバカな考えが二つの選択肢のうちある選択をした。

 このままキスをせずにフェリたちのもとへ行くか、ここで黒歌とキスをするかの選択肢だったのだが、黒歌とキスをしたいなという欲が湧き、前者を選んだ。

 あれ? 本当に私ってどうしたの? 私ってこんなに接触を求めるような性格だったっけ? こんなにエッチだった?

 とにかく私はここですると選択してしまった。私は黒歌の問いに頷く。

 

「よかった。じゃあ、しよっか」

「……うん」

 

 私は小さな声で返事をし頷いた。

 

「じゃあ、目を瞑って。今は私のターンだからね」

 

 黒歌に言われて目を瞑った。目を瞑ると何も見えなくなるが、それでも黒歌を感じることができた。

 黒歌のただでさえ近い顔がさらに近づき、黒歌の吐息を感じる。思わずのどが鳴った。

 初めてのキスではないのだが、緊張していた。鼓動は大きくドクンドクンと脈打ち、体中をとても熱いのが駆け巡った。自然と息も荒くなる。

 

「御魂ちゃん、好きよ。ずっと、ね。……んっ」

 

 言葉と共に黒歌と私の唇が重なった。

 最初はただ触れるだけのキス。触れた時間はわずか数秒だけで一旦離れる。

 

「はふぅ~まだちょっとドキドキするにゃ」

「こ、これでよいか?」

「んにゃ? 何を言っているの? 白音とはもっと激しいキスをしていたのを見ていて、私がこれだけで満足すると思うの? もちろんのこと、もっとよ。キスだけじゃ満足できないってくらいやるんだからね♪」

「そ、それはまずいじゃろう。私たちは早くフェリたちのところへ行かないとダメなんじゃぞ!」

「ふふふ、分かってる。だからその手前で終わろう。私だってそこまで朝から行こうなんて思ってないもん」

 

 本当だろうか? さっきはそれくらいやろうと言ったのに。

 

「そういうことだから、次はちょっとだけ、ほんのちょっとだけ激しいのをね」

「う、うん。ちょっとだけ……」

 

 私の口からそんな言葉が出ていた。それは反射的なものであった。

 何言っているの、私!! 本当に本格的に変態になっちゃったの? なんでやってって言ったの!?

 

「分かったにゃ。んっ」

 

 黒歌は再びキスをした。次はいきなり舌まで入れてきた。本当に激しいキスなんだ。黒歌の舌は私の口内を隅々まで暴れるように動いた。私の裏頬を撫でたり、私の舌と絡ませたりと。

 私もそれに答える。同じようにした。

 

「んん……ん……ちゅうぅぅ……ちゅ……んむぅぅぅ……んむぅ……あむぅ……」

 

 私の口からは水音とともに声が漏れる。

 まさか私がこんなはしたない音を立てながらこんなことをするとは思わなかった。正直とても恥ずかしかった。

 私の体はどんどん熱を持ってくる。特に股間部分が。興奮してこうなったんだ。

 私の右手はさらなる快楽を求めて自分の股間部分へと移動していた。

 私が着ている服は着物なので着物と長襦袢の隙間から手を滑り込ませるように入れると簡単に下着に触れることができる。

 しかし、私の右手が下着に触れることはなかった。黒歌が私の右手を掴んでいたからだ。

 

 

「ん……御魂ちゃん? 何自分でやろうとしているの?」

「こ、これは違う! 違うからな!」

「じゃあ、何?」

 

 黒歌が掴んだ私の右手を私の前に持ってくる。

 

「た、ただ偶然にそこに手が行っただけじゃ……」

「ふ~ん、そう。この手は偶然って言うんだね」

「……そうじゃ」

 

 嘘なので力強く言うことができなかった。

 おそらく、いや絶対に黒歌は分かっているだろう。

 

「そう。なら念のためにこうするね」

 

 黒歌の両手が私の肩ではなく手首を掴んで壁に磔にした。これでもう完全に私の体の自由は奪われた。

 これでもう私の体は黒歌の思い通りだ。それに抵抗することはできない。

 

「これで無理よね」

「う、うう……」

 

 恥ずかしいのだが股間あたりがなんだろう、グジュグジュする私は足と足をすり寄せて誤魔化そうとしていた。しかし、直接することができないので、その程度のことで誤魔化すことはできなかった。余計にうずく結果となり、やらなければよかったと後悔することとなった。

 う、うう~この体のうずき、誰かどうにかしてほしい!

 その誰かはもちろん目の前の黒歌だ。今の私には黒歌にしか目がない。黒歌にやってほしい。

 私を楽にして!

 ただそれだけだった。

 

「んにゃ? どうしたの? なに切ないって顔をしているのかにゃ?」

 

 黒歌がそんな私にニヤニヤした顔で言ってきた。

 ぐっ、分かって言っている!!

 私はただ下唇を噛んで鋭さのない目で睨むだけだった。

 

「ふふふ、そんな目で睨んでも怖くないわよ。むしろ可愛いって思っちゃうにゃん♪」

「ぐうぅ……」

「それで私に何かしてほしいんでしょう?」

「なっ!?」

「私には分かるにゃん。ほら正直に言ってごらん? 私なら御魂ちゃんを満足させることができるから。さあ、どうしてほしいの? 私はどうすればいいの?」

 

 黒歌は私の耳元で甘い声で囁いた。まるで悪魔の囁きのごとく。

 いや、悪魔だったか。

 その悪魔の囁きに私はとても心地いいものに聞こえていた。

 この囁きのどこに恐怖があるのか。全くない。

 私はこのまま悪魔の囁きに耳を傾けていた。人間もこうして悪魔に抵抗できずに取引をするのだろうか。そんなことをぼんやりとした頭で考えていた。それと同時に私の口からは、

 

「お願い……。やって。私を気持ちよく……」

 

 自分のやってほしいことを口走っていた。

 

「ふふっ、分かったにゃ。でも、フェリちゃんが怒るからちょっとだけ、ね?」

「分かったから、早くっ」

「急がないの」

 

 そう黒歌に言われるが快楽を求める私にはどうでもよく聞こえていた。

 フェリに怒られるなんて知らない。どうでもいい。そんなことよりも黒歌に……。

 

「じゃあ、やってあげるから両手を頭の上にやって」

 

 両手を開放された私は黒歌の言われたと通りに両手を頭の上にやった。すると黒歌が私の両手の手首を重ね、片手で私の両手を拘束できるようにした。つまり黒歌は片手で私の両手を縛りつつ、もう片方の手で私の体を自由にできるということだ。

 自由が利かないというのは嫌だなとか思うのだが、今このときは私を興奮させるものとなっていた。

 どうやら私はすでに重症のようだった。

 

「さて、まずはキスから。……ちゅ」

「ん、んん……」

 

 再び私の唇が塞がれた。

 するとずぐに快感が体の奥から湧いてきた。これにより足腰の力が抜けていくが、妖怪で悪魔の黒歌の腕の力によって私のお尻は床に付くことなかった。

 それから黒歌は私の唇を貪るようにキスをする。まだ舌を入れたりはしていない。ただ唇だけだ。それだけですでに快感が……。先ほどの激しいキスはいきなりだったということもあったので、下準備がなくそれなりの快感があった。でも今回はこのキスが下準備となっている。

 つまり下準備をされたこの状態にこれよりも激しいキスをされたら私はもっと大きな快感に襲われることとなる。

 そのことに私は一種の恐ろしさを感じつつもその快感を味わうということにさらなる興奮を覚えていた。

 

「ん……あっ……く、黒歌……いれ、て……」

 

 さらなる興奮を求めて私はそんなことを口走っていた。

 興奮が抜けた私が思い出したらきっと恥ずかしさのあまり、その場で悶えるだろう。

 黒歌は私の言葉を聞いて次は舌を口内に入れてきた。

 その瞬間、やはり快感が襲ってきた。下準備があったためか、やはり先ほど以上の快感が襲ってきたのだ。

 

「ん、んんっ……!! あっ……。~~~~~~~~~っ!!」

 

 その快感で私は声を上げてしまった。

 こ、声を出してしまうなんて思わなかった……。しかも結構大きかった……。

 快感でこんなに声を出したことなんてフェリが娘になる前のことだ。娘ができてからは声を上げるなんてできなかったから。

 私は快感で体に力が入らなくなり黒歌の肩に顔を埋める。

 いつの間にか私の両手も解放されていたので、結果的に黒歌に全身を預ける形になっている。

 私は荒い息を繰り返した。

 ちょうど私の耳付近に黒歌の頬がくる。

 そんな近くで黒歌が囁いた。

 

「あら? まだキスだけよ? しかもただ舌を入れただけ。まさかもうイッ―――」

「い、言うなぁ……。分かったから言うなぁ……」

 

 力の弱い声しか出なかった。

 これは快感だけではなく黒歌が耳元で喋っていたためでもある。

 黒歌の吐息が耳にかかってくすぐったのだ。

 

「ふふ、でももう満足したよね?」

「えっ? あっ、そう、みたい」

 

 一度、一定の快感を得たためか今はもう大丈夫だった。

 本当ならばもっとやっていただろうに。

 だが、黒歌がもっとしたいと言い、やってしまえば再びすぐに興奮することになるだろう。

 お、お願いだからやらないでね? もうあんなふうになりたくないから。

 ちょっと冷静になった今では先ほどの私の言動が恥ずかしすぎるものであった。

 

「本当はまだやりたいけど、時間だしね。やるとしたら夜、ね?」

「そ、そうじゃな。で、でもその前に体に力が……」

 

 どうやらしばらくこうやって黒歌に寄りかかるしかないようだ。

 黒歌はそんな私を抱きかかえる。

 私はそれに甘えて黒歌の首に両手を回した。

 王子様に抱えられるお姫様の気分だった。

 ちょっと恥ずかしい。

 

「抱きかかえて運んでいいよね?」

「う、うん、そうしてくれ」

 

 情けない話だがしたいからという理由ではなく、本気でそうしてもらわないと動けなかった。

 私は黒歌の腕の中で小さくなっているしかない。

 たまにはフェリ以外の者にこうやってしてもらうと色々と心地が違って面白いものだ。

 だけど黒歌はまだ体が成長しきってないからか、ちょっと窮屈に感じる。フェリにされていたときはそうは感じなかった。でも、ちょっと成長すればきっと余裕になるだろう。

 ちょっと将来が楽しみになった。

 将来といえば白音も。今はまだ小さいけどきっと立派になるだろう、色々と。

 このままの状態で私は運ばれて行く。そしてこの家の居間へと入った。中にはちょうど準備し終わったところのフェリと咲夜が座ろうとしていた。

 

「ん? おや、お母様はどうされたんですか?」

「え? あっ、ちょっと甘えてきてね。だからこうしたのよ」

 

 いくらなんでもそれは! と思ったが、どうやらフェリはそれで納得したようで何も言わなかった。

 あ、あれ? おかしいな。怒らないの?

 

「あ~、いいな~! 母様だけそんな風にされるなんて!」

「咲夜、静かにしなさい。早く食べたいのでしょう?」

「そうだけど……。あっ、そうだ! 姉さま、さっき慰めてくれるって言いましたよね?」

「そう、だったかしら?」

 

 フェリがとぼける。

 

「ぐすっ、姉さま……」

 

 すると咲夜が目に涙を溜めた。今にも泣きそうだ。

 あ~あ、こうなったじゃない。でも、涙目の咲夜はちょっと可愛いかも。

 それをフェリはくすりと笑っていた。

 

「冗談よ。ちゃんと覚えているわ」

「!! じゃあじゃあ!」

「ほら、今は朝食でしょう。ちゃんとするから慌てないの」

「はい!」

 

 咲夜が満面の笑みを浮かべて頷いた。

 本当に咲夜って単純だよね。まさに純粋無垢って言葉が似合う。そして元気だ。悪く言ってしまうと小さな子どもみたいってことだけど。

 ゆえに正直に言って騙されないかって不安になる。騙されて利用されたりとか変なことをされないとか。

 まあ、そんなことをしたらそいつに地獄を永遠に見せてやるけどね。

 

「黒歌、もう降ろしていいぞ」

「大丈夫?」

「大丈夫じゃ。ありがとう」

「どういたしまして♪」

 

 黒歌の腕から降りた私はすぐに座る。その隣に黒歌も座った。

 咲夜はお腹が空いているからね。そのためにも早くしないと。

 四人が座卓の周りに座り、食べられる準備ができた。私は料理を眺める。

 ふむ、相変わらず美味しそうな料理だ。お嫁に出しても恥ずかしくない。立派な嫁になるだろう。まあ、フェリを嫁にするならば、私を倒さないとダメだけどね!

 

「さて、揃ったようですし食べましょうか」

「うむ、そうじゃな。じゃあ、手を」

 

 私が手を合わせて、みんなも手を合わせた。

 

「いただきます」

「「「いただきます」」」

 

 

 言った後はそれぞれが箸を取り、一斉に食べ始めた。

 特にお腹が空いた! と人一倍言っていた咲夜の勢いはすごかった。行儀は良いとは言えなかったが、うれしそうに食べているので怒ったりはしない。

 フェリも私と同じようで自分のを食べながら横目で咲夜を見ながら小さく微笑みながら見ていた。

 食べ終わったあとはきっと咲夜はフェリに甘えるのだろう。


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