ハイスクールD×F×C   作:謎の旅人

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第34話 私は何で気づかなかったのだろう

「ねえ、なんでこんなことをすると思う?」

 

 

私の半身を拘束する黒歌が聞いてきた。

 

 

「分かるか!! なぜ私を拘束する!! さっきは雰囲気とか言っておったが絶対に違うじゃろう!!」

「う、うん。本当は違うの。恥ずかしくてそう誤魔化しただけ。ただなんとなくこうやって動きを制限をするのが、こ、興奮して」

「変態!!」

「うっ、で、でも興奮するのは御魂ちゃんを拘束したときだけだから!!」

「お主は私に何を求めているんじゃ!!」

 

 

そんな黒歌の性癖を教えてもらっても何もうれしくないよ! それにしても本当に動けない。こうやって拘束されるのってあまり好きじゃないんだけどな。

 

 

「姉さま、それよりも早く」

「うん、分かっている。で、でももうちょっとこの状態の御魂ちゃんが……」

「……姉さま、変態?」

「ち、違うもん! するのは御魂ちゃんだけだもん!」

「それだけで十分変態です」

 

 

白音は冷めた目で黒歌を見ていた。

 

 

「白音だってそうでしょう!」

「いえ、別に興奮もしません。私が御魂お姉ちゃんを拘束しているのは姉さまが拘束したからです。それ以外に理由はありません」

 

 

ならもうちょっと白音側の拘束を緩めてほしいよ。なのになんで黒歌以上に強い力で拘束しているのかな? 血、止まらないといいけど。

 

 

「それで白音。一緒に言うって言ったけど、ちょっと難しいよね。どうしようか」

「そうですね。一斉のと言うのはちょっと変ですから。結局はやっぱり一人ずつ、でしょうか」

「そうするかないわね。でも、普通にやってもね。こうやったら行動しちゃおうかな」

 

 

黒歌がにやりと笑った。な、なにをするんだろうか? その笑みが怖いよ。一瞬だけ身の危険を感じた。

 

 

「姉さま、行動とは?」

「まあ、見てなさいな。私が終わったら白音もお姉ちゃんの真似をしなさいね」

「……はい」

 

 

白音は小さく頷いた。

 

 

「の、のう、話をするんじゃろう? 行動なんて必要なのか?」

「必要にゃん♪ まあ、本当なら言葉だけでもよかったんだけどね。でも、これも御魂ちゃんが悪いんだからね。御魂ちゃんがあそこで変な勘違いをしたから」

「わ、私のせいなのか?」

「そう言っているでしょう」

 

 

で、でも仕方ないじゃない。だって、誰がどう聞いても恋愛相談だって思うに決まっているじゃん。逆にそれ以外に何があるって言うの。ほかに思いつかないよ。私は長く生きているんだよ。

 

だから私が分からなかったということはほとんどの人が分からないはず。うん、分かる人なんていないよね。

 

 

「それじゃ御魂ちゃんが知りたかった話を行動で示しちゃうからね。これで分からなかったら御魂ちゃん、病院に行こうね」

「そこまで!?」

 

 

ちゃ、ちゃんと分からないと! 病院なんて行きたくないもん! それに私が病院に行っても逆に治療されるんじゃなく、実験のために解剖されるよ。いくら私の体が不滅だからといっても解剖はちょっとね。

 

前にたまたま腹に傷を負ったときに穴が開いて、中身が見ることができたとき、あまりいいものではなかったことを覚えている。そして昔、腸を食われたときのことを思い出す。昔のことだからよく覚えていないけどそんな内臓などを美味しそうに食べていたような気がする。

 

肉食にとっては気持ちいいものとか悪いものとかは思わないんだろうな。ただ私たちが生肉を見るときと同じ感じなんだろう。自分のを見るときは気持ち悪く思って、別の生き物のを見るときはそうは思わない。おかしな話だ。

 

おや、ちょっと話がずれた。とにかく黒歌の行動でどういうことかを分かればいいだよね。黒歌だってちゃんと分かってほしいみたいだから分かりにくい行動はしないはず。

 

 

「こ、来い!」

「くすっ、来ていいの?」

「だ、だってそうしないと分からないんじゃろう?」

「まあ、そうだけどね。それじゃ御魂ちゃんの準備も終わったみたいだし、やっちゃうね」

 

 

さっそく黒歌は行動した。黒歌のその行動はまず目を瞑ることだった。そこに疑問は抱かない。ただ目を瞑っただけだもん。次はその状態で私に近づく。まだ私との距離はある。だが次第に近づいてくる黒歌の顔を見てようやく何かがおかしいと気づいた。

 

あれ? おかしいな。いくら行動といってもなんで顔だけが近づくなんておかしいよ。隣にいる白音は息を呑んで見ていた。まるで今からいけないものを見ているかのようだ。それでなんとなく察した。ああ、今から私はいけないことをされるんだと。

 

そのいけないことが口付けだと気づいたとき、黒歌の顔はすでに私の目の前に来ていて、さらに言えば黒歌の唇は私の唇まであともう少しだった。あとちょっとでも近づけば接触する。私は体を拘束されているが、それは四肢だけだ。胴体と首から上は動かせる。

 

黒歌の唇が私の唇に接触する直前、私は首を動かした。結果、黒歌の唇は私の頬に接触した。あ、危なかった。あのまま動かさなかったらキスしていたところだった。

 

 

「もう! なんで避けちゃうの!」

「なんでじゃと!? キスするところじゃったんじゃぞ!!」

「白音! お願い!」

「はい」

 

 

白音があいた手で私の首を押さえた。

 

 

「ちょ、ちょっとは話を聞け!」

「ダメ!」

「そもそも何でキスを……!」

「これ以上私語禁止! しゃべったらダメ!」

「うぐぅぅぅ……」

 

 

なぜかおとなしく従ってしまった。今の黒歌にはそれだけの迫力があった。

 

 

「御魂ちゃん……」

「ま、待て。やっぱりなんでキスなんてんむっ」

 

 

言い終わる前に私の口は黒歌の口によって塞がれた。始めは無理に固定された首を動かして抵抗していたが、黒歌との長いキスは快感をもたらし、その快感は私の脳に抵抗させるよりも、快感を得ることを優先させた。

 

しばらくは重ねるだけだったが、黒歌の唇が私の口を開けさせた。そして、黒歌は口を動かし私の口元に刺激を与えていく。

 

それと同時に私の口内に何か液体が入ってきた。これは黒歌の唾液だと気づくのにそんなに時間はかからなかった。黒歌は私に覆いかぶさっているのでもちろんのこと、黒歌の唾液は重力に従い、黒歌の口内から私の口内へと移っていく。

 

入ってきたのは他人の唾液。私はそれをのどをならして飲み込んだ。もしいつもなら何かの間違いで入ってきたなら吐き出していただろうが、今は口を塞がれているのでそんなこともできないことや私自身が体内に含むことを受け入れていた。

 

そうしてしばらく。私たちの唇はゆっくりと離れた。唇と唇の間を唾液の糸が引く。さらに離れると糸は切れた。私の思考は快感のせいでぼんやりとしていた。そして、私と黒歌は興奮のせいか息も荒かった。なんだか数日前を思い出す。あのときも今みたいに興奮していた。

 

 

「あ……う。く、黒歌……」

「はあはあはあ……まだ……ちゅ」

「ん、んん……」

 

 

再び黒歌の唇が私のを塞いだ。黒歌とキスをしたのはこれで二回目だ。あのときは触れるだけでこんなに長くはやっていなかったな。こんなに気持ちいいならあの時、もっとやればよかった。理性が薄れた私はそんなバカなことを考えていた。

 

今の私はただ快感を求めるだけだ。それにちょうど答えるかのように黒歌は私の口内に自分の舌を侵入させ、私の舌といやらしく絡ませ、さらなる快感を呼んだ。その瞬間、私の体は快感によって体を痙攣させる。黒歌はそれを確認すると口を離す。やっぱり私たちの間には私たちの唾液が混じった糸が引いていた。

 

 

「この前と違ってキスだけなのにイッちゃったの?」

「ち、違う! イッていない!! それよりなんでキスを……!」

「次は白音よ」

 

 

言い終わる前に黒歌が遮った。そして、入れ替わるように白音が私の目の前に来る。

 

 

「み、御魂お姉ちゃん、お願いします」

 

 

お願いも何もない。一応言っておくけど、私はキスすることを許していないんだけどね。

 

 

「二回目の……キスです。……ん」

 

 

さっきと違って優しいキスだった。黒歌のキスが一気に快感を呼ぶものなら、白音のキスはゆっくりと快感を呼ぶものだ。黒歌よりも長い時間をかけてゆっくりと快感が体の奥から上がってくる。

 

白音は見た目に合わず人をじらすじっくりともてあそぶ才能があるようだ。魔王さえも恐れる最強の私は今、一匹の幼き白猫に遊ばれていた。姉である黒猫にではなくその妹である白猫に。その歳から言っても色々と未熟なはずなのに。

 

黒歌のキスもよかったけどこういう白音のキスもいいなと思ってしまう自分がいた。やっぱりもう私の理性は薄れているようだ。だけどちょっと物足りないのもある。ああ、なんだか最後に黒歌がやったみたいなキスをやりたいな。白音はそういうことは積極的じゃないみたいだし、ここは私からやるしかない。

 

いつの間にか手足は自由になっていたので、手を動かし白音の背中に腕を回して抱き寄せた。これによって私と白音の間にあった空間はなくなり、密着する形となった。

 

 

「んん!? ん……」

 

 

一瞬驚く白音だがすぐにおとなしくなり、再びキスをすることに集中した。そして、ここからが私のやりたかったことだ。密着したのはやりたいことをやりやすくするためだ。私は黒歌がやったように自分の舌を白音の口内へと侵入させた。

 

 

「ん? ん、んん!! ん!? んちゅ……」

「ん、あむ……」

 

 

ああ、やっぱりこのキスって気持ちいい。ただ重ねるよりも気持ちよかった。でもな、白音はさっきの黒歌と私たちみたいに舌を絡ませてくれない。ただ私のほうが攻めるだけだ。何度そうやっても分かってくれないみたいだし、これは言葉で伝えるしかない。

 

私は両手を白音の肩に置き、白音を引き離した。もちろん唇も。私の唇と白音の唇をつなぐのはやっぱり互いの唾液が混じった糸だ。白音の目はとろんとしている。そして、きっと私も同じような目をしているだろう。

 

 

「白音……舌、出して」

「……はい」

 

 

白音は小さく口を開けて舌を出す。可愛らしい小さな舌だ。私も同じような舌だ。舌を出したのを見て、すぐさま白音の背に腕を回し密着する。それと同時に次は私からキスをした。白音は舌を出していたのでさっきとは逆に白音の舌が私の口内に侵入してきた形になる。

 

ああ、やっぱり攻められるのもいいかも。でもね、早速と私は自分の舌を白音の舌に絡ませた。舌同士が絡み合いそれとともに互いの唾液が交換される。その度にぴちゃぴちゃと水音を立てた。その音さえも私を興奮させる要因となっていた。

 

しばらくキスをしていると白音の快感がついに一線を越えたのか、黒歌とキスをしていたときの私のように私の上で体を震わせた。

 

 

「ん……はあはあはあ……気持ち……よかったです」

「そう、か。よかった。私も……気持ちよかった」

 

 

ついそう言ってしまった。やっぱり理性は崩壊していたみたい。私たちはキスはもうこれで終わりと感じ取る。もう無理。体力の限界。ん~興奮したせいで汗でびっしょりだ。あとで着替えなきゃ。和服は色々な部分に汗などが滲み、濡れていた。あ~あ、この和服、まだ着たばかりなのに。

 

 

「白音!」

 

 

いきなり黒歌が白音に向かって怒っていた。どうしたんだろう?

 

 

「なんで私よりも長くキスしていたのよ!! ずるいわ!!」

「そ、そう言われても私は御魂お姉ちゃんにされるがままでした。御魂お姉ちゃんのほうからキスされたんです」

「なっ!? うらやま……じゃなくて、なら適度に止めなさいよ!!」

「そう言われても……」

「はあ……もういいわ」

 

 

もじもじと顔を赤く染めて顔を伏せる白音に黒歌は大きくため息をついた。そして、私を見る。私は上半身を起こして汗などで濡れた和服の帯を緩めて、風を体に送っていた。

 

 

「それにしても、御魂ちゃん。最初は随分と嫌がっていたのに白音とのキスでは自分から進んでやっていたみたいね」

「? ………~~~~!!」

 

 

黒歌の言葉は私の理性が復活するきっかけとなった。私は自分たちのさっきまでの行動に恥ずかしくなり顔が一気に熱くなった。きっと真っ赤になっているだろう。わ、私は何をやっていたんだろう!!

 

 

「そ、そうじゃ! ふ、二人とも何をするんじゃ!!」

「そんなに動揺して言ってもあまり……ね?」

「う、うるさい! わ、私たちは同性じゃぞ!! な、なのに、き、キスなんて!!」

「もう御魂ちゃん、理由なんて分かるでしょう? なんで私たち二人が御魂ちゃんにキスしたと思う?」

 

 

き、キスした理由? 二人がした理由を考えようとすると二人とのキスを思い出してしまう。思い出しちゃって、か、考えられないよ~。

 

 

「姉さま、どうやらオーバーヒートしているようです」

「意外と可愛らしいわね。白音、こうなったら私が代表して言うからね。それでいいわよね?」

「はい、いいです。まだ体に力が入らなくて言えそうにありませんですし」

 

 

白音は上半身を起こしているが、体はうまく動かないことを証明するようにだらんとしていた。黒歌は私に向き合う。

 

 

「ねえ、御魂ちゃん。教えてあげるわ。まず口付けってどういう相手にすると思う?」

「それは……好きな人?」

「そう、好きな人。口付けは好きな人が相手のときだけにするの」

 

 

そこで私はやっと思い当たった、二人が私にキスをした理由が。分かった瞬間、私は二人の顔をまともに見れなくなった。


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