ハイスクールD×F×C   作:謎の旅人

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第25話 私はお腹が空いたの

その数日後、私が植えた種は一気に急成長し、すでに3メートル以上になっていた。だが、実をつけるのはまだだ。この木は特別で完全に生長しないと実をつけないのだ。だが、私の力の宿ったこの木は明日には完全に生長する。

 

しかし、その完全が終わればもう成長しないということではない。木はまだ生長する。ただその完全からしばらく成長しないため、そう区切りとして勝手に決めているだけだ。

 

ただの神果の木の寿命は知らないが、私の力が宿った木は力が効果を持っている限り、寿命はこなかった。というか、そもそも力の効果が弱くなったり、なくなったりしたことなんてあったことがない。

 

あるかもしれないが試したことがないのだ。20万年生きてもあまり興味がなかったからだ。そこに寝起きの黒歌がやってきた。

 

 

「う、うそっ! これってこの間植えたのよね? どうしたらこんなに成長するのよ!」

「じゃから言ったじゃろう。私の力じゃよ。私の力を使えばこうなる」

「はあ…………つまり、私の負けね。さすがね、御魂ちゃん。いつ実がなるのかしら?」

 

 

黒歌は木の幹を撫で、まだ若い生えたばかりの葉を見上げた。

 

 

「明日、じゃろうな」

「早いわね。本当にどんな力なのよ。魔力じゃないわよね?」

「違う。もし魔力なら私のこの土地を狙うはずがない。おそらくこの力は誰も持っていないものじゃ」

 

 

持っているはずがない。この力は本当の神と等しい力。私の場合は手違いのようなものでこの力が存在する。もしも持っている者がいたら、その者は私と同じような転生者ということだ。

 

だが、おそらくそれはないだろう。知識が教えてくれる。大抵の人間は自らの意思で強力な力を望み、それを振るうと。しかし、そのような力を感じたことはない。まだ、転生していないのかもしれないが。

 

私はもし転生者がこの世界に転生したら、すぐに排除するつもりだ。この世界はなにかの世界。転生者はこの世界について知っているはず。もし私も転生者とばれてしまえば、家族が危険にさらされる可能性がある。

 

家族が殺されるのはいやだ。一番いやだ。だからだから力に慣れていないときに消す。家族がいない世界なんて、どうでもいいから。

 

 

「御魂ちゃん? どうしたにゃん? なんか怖い顔をしていたけど」

「なんでもない。ちょっと考え事をしていただけじゃよ」

 

 

9本の尻尾が体に巻きつく。それは自分で自分を抱きしめ、慰めたかったからだ。それはさっきの考えのせいだろう。家族が死ぬということを考えてこうなるなんて、私もまだ幼いようだ。

 

でも、これはずっとだろう。私が壊れない限り、この性格は変わらない。どんなに強力な力を持っても

 

 

「何か悩みがあったらいうにゃん。御魂ちゃんよりは長く生きていないけど、話すだけで楽になるにゃ」

「そうじゃな。それにしてもお主は語尾ににゃがつくときと付かないときがあるな」

「そう? 私には分からないけど。多分、無意識じゃない?」

 

 

私も語尾ににゃとかつけてみたい。私だって何十万年生きているが、まだ女の子でもある。そういうことをしたくなることだってある。でも、さすがに今から語尾をにゃに付けるのは無理だ。

 

絶対にフェリや咲夜から何か言われるだろう。さすがに娘からなにか言われながら、語尾ににゃをつけることなんてできない。

 

 

「それより、式神がこっちに来ているにゃ」

「ん? そうじゃな」

 

 

式神は手になにかを持っていた。式神は私の目の前へと来て、手に持つそれを私に渡してくる。

 

 

「ご主人様、サーゼクスさまから手紙が来ております」

(すず)か。ご苦労じゃ」

 

 

鈴と呼ばれたのはオッドアイの式紙だった。この子は前に私たちにいたずらをした式紙で、詳しく調べたところ私の不注意により他の式紙にはない意志を持つことが分かった。その意思は私たちと大して変わらないものだった。

 

そんなこの子に私は、本物の肉体と名前を与えた。そして、最後に名前と同じ名前である鈴も与えた。もちろんその鈴は普通ではない。あらゆる攻撃を防ぐ能力を持っている。この鈴は特別な術式で私の無限に近い魔力と繋がっている。

 

そのため、その鈴は無敵に近い防御力を発揮する。だが、それはある程度の攻撃での話。もし島を破壊するくらいの攻撃力で攻撃されたら、その防御は呆気なく破壊され鈴を壊し鈴は死ぬだろう。

 

一応、この子の立場は使用人だ。もちろん家族でもある。だがあきらかにフェリや黒歌たちとは違うのだ。鈴は私に一礼し、家へと戻っていった。

 

 

「内容はなにかにゃ?」

「お主ら姉妹のはぐれのことじゃよ」

 

 

黒歌に手紙を渡す。内容は黒歌たちがはぐれでなくなり、その手続きも終わったので魔王城まで来なくていいという内容だった。うむ、こっちは魔王城まで行って、それを聞こうと思ったのだが。

 

 

「にゃは♪ これでもう追われることはなくなったんだね♪」

「そういうことじゃ。これで少しは気が楽になったんじゃないのか?」

「そうね。なったにゃん。ありがとうね、御魂ちゃん!」

「のわっ!?」

 

 

いきなり跳んで私を抱きしめてきたので、支えきれずに地面に倒れこんだ。幸いか地面はそんなに硬くはなかった。

 

 

「御魂ちゃんのおかげでこうして幸せでいられるし、追われることもなくなった。本当にありがとう! 御魂ちゃん、大好き!」

「そ、そうか。よかった」

「もう本当にお世話になりっぱなしにゃ。だから、私たちは……」

「お返しなどせんでよいぞ」

「もう! なんで先にそう言っちゃうの! でも、ちゃんとお返しするって決めているにゃ。だから、するからね」

「せんでよいと言っているのに……」

「それよりほら、手」

 

 

黒歌は起き上がり、私に手を差し出す。私をそれに掴み、黒歌が腕を引くことで立ち上がった。私が下だったため、背中には少々土が付いていた。今着ている服は和服だ。ついこの間から巫女服から変えた。

 

着ている和服の色は赤だ。赤を背景に花々が所々に描かれている。黒でもよかったのだが、黒は咲夜がすでに着ている。さすがに同じ色を選ぶのは気が引ける。ただ巫女服も長年着ていたので、愛着があるので嫌になったとかではない。

 

ただそういう気分だからという理由だ。私は土を払う。土は乾いているものだったので、すぐにきれいになった。

 

 

「……ありがとう」

「いいのよ。もともとは私が押し倒しちゃったんだから」

 

 

押し倒すって言われるとどうしても数日前の夜のことを思い出してしまう。私たちはそういう関係ではないのが、あのきれいな肌を触りたいと思ってしまう。2人のまだ成熟していないあの体。

 

ぜひとも()()してみたい。幼い子猫たちは()()()()()()()()()()? ああ、とても美味しそうだ。食べてしまいたい。子猫を食べた後は娘を食べるのもいいかもしれない。

 

あはははっ、そうだ。そうしよう。4人も美味しそうなお肉があるんだ。でも、食べてしまえばそれで終わり。フェリと咲夜は吸血鬼だから、傷は再生する。だから、黒歌と白音も吸血鬼にして、ずっと食べれるようにしよう。

 

私の真紅の瞳は不気味に輝いた。私は私に背を向けいる黒歌に狙いを定め、ゆっくりと歩く。

 

 

「んん~、いい気持ち! ここって本当に空気がおいしいにゃ」

 

 

黒歌は自分が今からどうなるかを知らず、ただ無警戒にうれしそうに言う。

 

 

「ねえ、御魂ちゃん。御魂ちゃん?」

 

 

振り返った黒歌は私を見た。黒歌は私のいつもと違う何かに困惑していた。何かが違う。分かるのはそれだけ。ゆっくりと近づき、黒歌は下がる。だが、黒歌は地面に躓き尻餅をついた。

 

 

「ね、ねえ、どうしたの? ちょ、ちょっと怖いにゃ……。え? ちょっいたっ」

 

 

尻餅をついた黒歌の肩を掴む。だがその掴んだ力は強く、黒歌は顔を歪めた。私は顔を近づける。その距離はすでに僅かだった。

 

 

「私、黒歌のこと大好きだから」

「えっ……」

 

 

その発言に黒歌はさらに混乱する。だが、口調がおかしかったことに気づかなかった。黒歌の顔は真っ赤になっていた。まさか告白されるとは思わなかったからだろう。だが、それは違う。

 

愛であって愛でない告白だ。

 

 

「だから……食べてもいいよね?」

「……!?」

「大丈夫。吸血鬼にして食べるから、死なないよ。ただ毎日ちょっとだけ食べるだけ。黒歌、白音、フェリ、咲夜の肉。きっと美味しいだろうな」

「ね、ねえ、ちょっと悪ふざけがすぎるんじゃない? そんな冗談は許さないよ」

「あははっ! 何言っているの。冗談なわけないじゃん。ちゃんと食べるよ」

「……っ!! ごめんっ!」

 

 

黒歌から魔力が放たれた。それは至近距離から私へと向かってくる。

 

 

 

 

side out

 

フェリ、咲夜、白音はその魔力を気づいたときは、まだ起きたばかりだった。あきらかに戦闘の魔力。長年、御魂に育てられたフェリ、いろんな猛者たちに使われその技術を吸い込んできた咲夜、御魂に会うまでは危険と隣合わせで生きてきた白音。

 

そんな3人がそれに気づかないはずがなかった。たとえ御魂の仕業でも一応確認する。そして、勢いよく外へと飛び出した。そこで見たのはところどころ土にまみれて、肩で息をする黒歌とさっきの魔力の攻撃での傷が治っていく御魂の姿だった。

 

互いに敵対していることが分かる。それは御魂はともかく黒歌の表情からは本気であるということが分かった。つまりは練習でもないということだ。御魂の顔は笑みを浮かべているが、なにか違う。

 

いつも見る笑みではない。笑みなのに怖い。3人はそう感じた。だが、その表情は子どもらしい無邪気な笑みにも見えた。

 

 

「あはははっどうしたの? 私のこと嫌いなの? でも好きだよね。さっきそう言っていたもん。だったらいいじゃない。抵抗しないでよ」

「嫌よ。どこに食べられようとしているのに、抵抗しない人がいるの!」

「だから大丈夫だって。ちゃんと治るんだよ」

「そういう問題じゃない!」

 

 

3人はまだよく理解できない。なにが原因で2人は争っているのか。食べるとか言っているが、それはどういう意味なのか。

 

 

「母様の口調が変わっています! これって前のときと同じですよね!」

「ええ、そうですね。神様のときのお母様と同じです。ですが、なにか違うような……」

「そうですか? それよりどっち側についたほうがいいんでしょうか?」

「個人的にはお母様側に付きたいですが、今は見ておきましょう。ですが、すぐに戦闘に入れるように」

「はい!」

 

 

咲夜のテンションはこんなときでも高かった。その隣では不安そうな顔で見ている白音。白音は特に黒歌の心配をしていた。どこか違う怖い御魂と少々ボロボロになっている黒歌。それだと自分の姉である黒歌しか心配できない。

 

 

「ねえ、御魂ちゃん。どうしたの? なんで食べたいの?」

「なんで? 逆に聞くよ。黒歌がご飯を食べるのはなんで?」

「……お腹が空いたから」

 

 

黒歌は御魂の問いに渋々ながら答える。御魂はその問いにパアッと笑みを浮かべ、

 

 

「そう! 正解!」

 

 

小学校の先生のような感じでそう言った。

 

 

「私が食べたいのはお腹が減ったから。それだけだよ」

「それだけで私たちを食べるというの!?」

「あれ? じゃあ、黒歌は食べられるために育てられる牛たちのことはどう思うのかな?」

 

 

黒歌が殺気を放つが、御魂はそれを無視し何もないようにしていた。御魂はスキだらけのように見えるが、黒歌は油断できなかった。自分を2度もなんともないように倒した相手。そんな相手に油断なんてできるはずもない。

 

 

「はあ……もういいよね? そろそろ吸血鬼にして食べたいんだけど」

 

 

その発言でフェリはなにかに感づく。

 

 

「咲夜、お母様の目を見てください」

「母様の目? あっ! 目が輝いています!」

「ええ、そうです。あれは吸血鬼が吸血衝動に駆られたときになる現象です」

 

 

フェリは自分がそうなったときのことを思い出した。吸血鬼には3大欲求のほかにもう1つある。それは吸血欲である。この吸血欲は3大欲求に深く関係している。フェリの場合は食欲に関係していた。

 

フェリは今は人間の姿をしているので、忘れがちだがフェリは銀色に輝く毛を持つ狼である。それも2メートル以上の狼だ。そのため、子どもの頃は食欲旺盛な子だった。ゆえにお腹が空きすぎると、吸血欲が表れる。

 

いつもあんな風になっていた。そうなると理性を失いただ血を吸いたくなる。だが、御魂を見ると普通にしているように見えた。本当に吸血欲で理性を失っているのか、分からなかった。

 

だが、とりあえず今は、御魂がフェリたちにとって危険だと分かった。ここは黒歌側についたほうがいい。

 

 

「咲夜、白音。お母様を攻撃しますよ。おそらくもうすぐで襲ってくるはずです。本気で攻撃してください」

「で、でも、御魂お姉ちゃんが死んじゃうんじゃ……」

 

 

黒歌や自分たちが危険な状態でも白音は御魂を心配していた。

 

 

「大丈夫です。問題ないです。確かに今のお母様は中級悪魔クラスまでに封印されていますが、それでもお母様は強いです。お母様のことを思って攻撃すれば、逆に私たちがやられますよ」

「……分かりました」

 

 

白音は覚悟を決め、体内にある気に集中し戦闘態勢に入る。

 

 

「さあ、黒歌! おいで! 死なないようにしてから食べてあげるから!」

 

 

そうは言ったが御魂は自分から黒歌へと向かって一気に突っ込んだ。

 

 

「くっ! 『妖術 大炎蛇!』×3!」

「あはははっ!」

 

 

3体の炎蛇が御魂に向かうが、御魂は笑いながらそのまま突っ込んでいく。黒歌は今の御魂が正気ではないためかと思い、直撃したと思った。だが、それは次の瞬間に間違いだと分かった。

 

御魂に当たる直前に炎蛇は消えていった。いや、そう見えたが実際は吸収されたのだった。黒歌の妖術はなんの足止めにもならなく、御魂に襲いかかられた。


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