ハイスクールD×F×C   作:謎の旅人

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第9話 私の初めての戦闘。そして、別れ

それからも私はずっと練習し続ける。始めてどれくらいが経っただろうか? 何十年と続けた。そうしてようやく妖力を完全に制御することに成功できた。とても長かった。

でも、妖怪だからかそれはある意味短く感じた。

 

長く生きていると時間なんてそう感じるのかもしれない。そう感じるなんて私もおばあちゃんなのかな? でも私のこの体はまだ幼い。だからそう感じるのは勘違いだと思いたい。

 

私のこの長い月日の時間は朝起きて朝食を食べ、お腹が膨れれば働きに行く。そして終われば妖力の練習。終われば家でのんびりと過ごす。そして、暗くなれば寝る。私は毎日そんな日々を過ごした。

 

そんな日々で生まれてから900年になった。私の尻尾は800歳のときの9本で最後だったみたい。私の力は尻尾が増えるたびに大きくなっていた。今の私の力は覚醒したときの妖怪600匹以上よりも何百倍も大きい。

 

でもまだ大きくなる。そう感じる。そういえば私の体がようやく成長し始めたんです。今では胸を大きくなり、背も伸びました。スタイルのいいお姉さんです。私が大きくなったせいか、子ども扱いも減った。

 

うれしいことです。妖力も大きくなっても制御できるようになりました。私は妖力が大きくなるたびに練習をし続けました。そういえば、今扱える力の中で妖力以外にもう2つあります。

 

1つ目は霊力。生き物には霊力という力がある。それは生き物が生きるために必要なエネルギーでそのエネルギーをちょっと言い換えるなら生命エネルギーと言える。この力も妖力とともに大きくなっていた。

 

この力に気付いたのは私が700歳のとき。気付いたときにはもう普通の生き物の数百倍だった。この力は生命エネルギー。暴走することはないと思うけど、よく分からなかった。

 

だから先生に聞いてみた。先生からの答えは分からないという答えだった。まさか集落で一番生きていて知識も集落で一番なあの先生が分からないって……。

 

私はそれからこの力の制御を始めた。私はこの霊力を「気」と読んだ。いえ、私の知識からそう言い直したんです。この力については誰も知らない。だから私が独学で学ぶ。私の知識では陰陽術に利用されている力です。

 

だからこの力を陰陽術に使うことにした。妖怪が陰陽術を使うなんておかしいですが、私は吸血鬼でもあるですよね。吸血鬼については私の知識が教えてくれた。私の知識は前世の高校生のときのです。

 

前世の私は本当に高校生だったんですか? それすら怪しくなる。けど、気にしてもしょうがない。だけど知識と実際の吸血鬼は違う。怖かったけど知識にあることを全部試してみた。

 

例えば自分の手を傷つけたり、十字架を自分の体にくっつけたりと本当に色々とやった。だけど、弱点という弱点は全くなかった。日はもう狐のときから浴びているし、銀や十字架もなんの影響はなかった。

 

まあ、さすがに心臓に杭を刺すなんて無理でしたけどね。それに分かったことは他にもある。それは再生力。ちょっと大きな傷でも治った。だけど、どこまでかはやってない。それで死んだら意味がないから。

 

もう1つの力は私が名付けた力、神力。これはさすがに私でも分かる。この力は誰も持っていない力。私の特典能力の中に「下級神の権限」というのがあった。力の名のごとくそれは神の力だった。

 

人の傷や病を治し、作物を実らせる。吸血鬼である私は自身にその力を使うことはない。今ではその力を使い、みんなの怪我や病を治している。つまり私は医者のようなことをしていた。

 

力に頼るのはあまりいいことではない。だけど、この力を悪いことにしようとしないだけいいだろう。だからこの力を使う。私を受け入れてくれたみんなへの礼として。

 

 

「まったくお主は不思議じゃの。妖力は昔と比べ大きくなり、妖力ではない別の力で妖怪たちを治す。どういった存在じゃ?」

「さあ? 分かりません」

 

 

先生の問いにそう答える。本当は分かっているけど、教えられない。教えてもいいけど、これ以上心配はかけられない。私は妖力をサブに霊力をメインに練習を続けた。

 

 

 

 

それから600年が経った。私の友達の中で死んでしまった者も出てきた。それは寿命で。しょうがないけどだからといって泣かないというわけにはならない。私は泣く。やっぱり知っている妖怪が死ぬと悲しい。

 

そして今日、集落に悲劇が襲った。どこかの妖怪が攻めてきたのです。私が気付いたのは攻められて時間が経ったときだった。

 

 

「ふわあああ~。今日ってなにかあったかな?」

 

 

その襲撃による騒ぎを私は祭り事かと勘違いしてしまった。寝ぼけていたせいだと言い訳はしない。私が夜遅くまで起きて昼寝をしていたせいだ。

 

起きた私は外に出る。麓でなにがあるのかを知るために。私の家は山の頂上。私が見たのは麓に火が上がっている光景だった。それとともに小さな声が聞こえる。それはみんなの悲鳴だった。狐である私はその声が小さいながらもはっきり聞こえた。それは私の寝ぼけた脳を一気に覚醒させた。

 

私は動きやすさを重視するために狐になり、山を駆け下りる。私は戦えない。それは怖いから。だけど、逃がすことはできるはず。それくらいはしないと。それが私の力だ。私の小さな体は木々を通り抜ける。

 

吸血鬼の身体能力の高さはこの山を僅か数分で駆け下りさせた。麓に着いたと同時に人型になり、巫女服を作り着る。私はみんなを探す。でも見つからない。

 

だってあるのは動かない赤い液を垂らしたものだから。それはみんなの死体。だけど私は信じたくなかったんだ。その現実を。

 

 

「誰か!! 誰かああ!! 返事をして!!」

 

 

私は呼びかける。でも何も返ってこない。うめき声さえも。少しでも息があれば私の力で助けられる。助けるためにも必死で探す。耳と目で必死に。そして、私の耳に何か聞こえた。

 

それは2種類の声。1つは聞き覚えのある声。もう1つは知らない声だった。聞き覚えのある声は先生だ。いつもより激しい声だった。知らないほうはなんというかへらへらしている。

 

それを目指して走った。私がそこへ来たとき見たのは先生と鋭い刃のある剣を持ったこの集落をこうした妖怪の1人だった。2人は戦っていた。だけど、先生のほうが手負いだった。

 

先生は確かにこの集落でも一番強い。だけどもう歳だった。それに比べ相手はまだ若い妖怪で戦闘に特化していると見るからにも分かる。

 

 

「へへへ、もうあきらめたらどうなんだ? もう結構死んじまったぜ。いや、たしか拉致した奴らもいるな。まあ、全部女か子どもだがな。女は俺たちの慰めものにして、子どもは素質のある奴以外は俺たちの遊びにしてやるよ」

「このっ!!」

 

 

外道め!! 先生と私の心が合致する。そんなことはさせない!! させてたまるか!! 今動けるのは私1人。私が救うしかない。私はここから離れ、探す。そして、なんとか見つけることができた。

 

みんなは一箇所に集められていた。よかった。みんなまだ何もされていない。だけど、やっぱり男はいない。殺されたんだ。思わず涙が出そうになる。でも、泣くわけにはいかない。まずはみんなを囲んでいるあの妖怪たちをどうにかしないと。

 

突然、後ろから妖力が迫ってきた。それを察知し、私は横に跳ぶ。跳んですぐに私がいた場所に妖力が爆発する。

 

 

「おい! ここにまだいたぜ。見たことのない種族だな。まあいい」

 

 

私が見つかった。やばいやばいやばいやばいやばいやばい!! とてもやばいです。私が見つかったら何もできない。私は確かに妖力はあるけど戦うためのことはしていない。

 

私は腕をつかまれみんなのところに連れて行かれる。見たところ、ここにいる妖怪は8人。せめてここにいる妖怪のみんなだけは助けたい。だから賭ける。ここで戦ってみんなを救うことに。

 

それに私の体を好きな人以外に弄られたくない。そのためにもここで戦う。

 

 

「ね、ねえ、私を好きにしてもいいよ。だけど、そのかわり私と戦って」

「はああああっ? 何言っているんだ? 今、お前の立場分かっているのか? 人質だぜ?」

「こ、ここにいる妖怪はみんな、戦闘に特化してない。だから最後のか弱い人質の悪あがきだと思って……」

 

 

怖い。心のなかにはそれで占められている。私を好きにしてもいいよと言ったが、なにもしなくてもその道同じ。だからそう提案した。

 

 

「おい、どうするよ」

「そうだな。乗ってやれ。その女はお前が好きにしていい。お前のもんだ。どんなに痛めつけようが、なにしようがいい」

 

 

襲撃した妖怪たちはにやにやと笑う。そして、人質たちに私との戦いを見せるようにする。リーダー格の妖怪が前に出て人質たちに説明する。

 

 

「いいか! 今からお前たち、特に女たち!! 今からお前たちがされる末路を見せてやろう!! ゆっくりと見て楽しめ!!」

 

 

人質のみんなが私を見る。その顔は心配そうな顔。

 

 

「さあて、まずはお前をどうしてやろうか? その邪魔な変な服をゆっくりと裂いてやろうか? 死なない程度にいたぶってやろうか? まあ、俺が楽しめるようにしてやるよ」

 

 

私の相手である妖怪の男の手に妖力による風が集まる。その風が私へ向かってきた。それはカマイタチ。真空波によるものだ。私に当たらずに服を裂く。どうやら私の服を剥がすようだ。裂かれたのは脇の部分だった。

 

でも、どうしよう。よく考えてなかった。これで相手を倒してみんなが殺されるってことにならないだろうか? 私ってバカだ。でも、やるしかない。

 

 

「どうしたどうした? なにもしないのか? もしかしてわざとか? 本当は戦うのを口実に犯されたかったのか?」

 

 

そんなわけないじゃないですか。ただどうすればいいのか分からないだけです。しょうがない。私はその手を相手へ向けた。手に妖力が集中し、火、いや、炎として現れた。

 

 

「お、おい、なんだよその妖力……。お前まさ」

 

 

男は途中でいい終わる前に何も言えなくなった。私の炎が放たれ、当たった瞬間巨大な火柱を作ったせいだ。その強大な妖力のこもった火柱はその体を一瞬でこの世から消した。

 

私の次の行動はもう決まっている。怒った他の妖怪たちは私か人質に手を出す。それは確実だ。そうされないために私は1本の日本刀を作り出した。

 

 

「こ、この野郎!!」

 

 

やっぱりだ。人質ではなく私に向かってきた。その手には妖力だ。相手はまだ私の作り出された日本刀に気付いていない。吸血鬼の身体能力を使う。私は一気に相手の後ろへ回り込む。

 

相手にはきっと消えたように見えただろう。それくらいの速さだ。ごめんなさい。後ろに回りこんで斬る前にそう心の中で謝った。そして、振り上げた刀を振り下ろした。

 

その手に肉を斬った感触が伝わる。それはあまりいいものではない。だけど、あと6人いる。今は気にしない。

 

斬った次の瞬間、また別の妖怪の後ろへ。そして斬る。それを相手がいなくなるまで続けた。終わったとき、刀の刃は粉々に砕けた。きっと私の力に耐えられなかったんだろう。これが斬っている途中でなくてよかった。

 

私の服もまたボロボロだった。これも耐えられなかったせいだ。でもギリギリ見えないように隠れていた。残った布には血で赤く染まっていた。手に残るのは肉を斬る感触だけだった。心の残るのは殺したという罪悪感。

 

みんなを救うためとはいえ、やっぱり罪悪感がある。これが殺したときの罪悪感。

 

 

「ありがとう!! ありがとう!!」

 

 

私が罪の意識でボーっとしていたときに人質にされていたみんなから感謝の言葉が来た。それを聞いたとき、私は涙を流した。妖怪をころしたという事実は変わらないけど、それがみんなを救うためだとちゃんと実感ができたから。

 

私はみんなに囲まれて感謝を言われる。私に付いた返り血なんて関係なく、抱きついてくれる。私は今度こそみんなを守れた。お姉ちゃんたちのときとは違う。ちゃんと守れた。でも、みんなとは言ってもここにいるみんなだけ。

 

男は救えなかった。そのとき巨大な爆発音がした。私たちはその音のしたほうを見た。見えたのはもくもくと立ち込める土煙。確かあの場所は先生がいた場所!! 私はみんなの間を抜け、その爆発のあったところへ向かう。

 

 

「……先生」

 

 

心配になり呟いた。先生は戦いに負けたのだろうか? その可能性が高い。先生はもう老体だから。でも、先生が勝ったと信じたい。そこに着いたとき、私が見たのは巨大なクレータだった。それ以外なにもない。

 

 

「先生!! どこですか!!」

 

 

望みが薄くても探す。

 

 

「う……ううう……」

 

 

声が聞こえた。そこを探す。

 

 

「せ、先生!!」

 

 

見つけたのはやっぱり先生だった。もう傷だらけだった。いや、傷だらけどころではない。もう半身が消えていた。私は神力を使おうとする。だが、残った先生の腕に止められる。

 

 

「もう……よい」

「なんでですか!! これなら治ります!!」

「私はもう十分に生きた。もう生きるのは疲れた……」

「そんなこと……言わないでください!! みんなはまだ先生を必要としています!! 私もです!!」

「すまんの。だが、もう生きても長くは生きれんよ。実は寿命なんじゃ。あと数年じゃろう。だからこのまま逝かせてくれ」

 

 

私はもう何も言えなくなる。

 

 

「………………分かりました」

 

 

ただそう言うしかなかった。先生はみんなのためにやってきた。私はそれを見届ける。そこへ生き残ったみんなもやって来た。みんなは先生の傷を見て何も言えなくなる。

 

ある者は私にどうすることもできないのかと聞くが、そこに先生が自分の気持ちを打ち明けた。それで私のようになにも言えなくなった。みんなが泣く。先生がどれだけ慕われていたのかが分かる。

 

こうして先生はみんなに見守られて静かにその生を終えた。

 

 

 

私は狐で妖怪で吸血鬼です。


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