ハイスクールD×F×C   作:謎の旅人

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第8話 私の練習

妖怪たちの襲撃の原因は私の妖力だと分かり、みんな安心したかと思われた。けど、中には本当に私が原因なのかと疑問に持つ者がいた。それは当然だろう。1匹の妖怪で600匹くらいの妖力があるなんてありえないから。

 

私自身半信半疑なところもありますけど、特典のことがあるのでそれが事実だと認めるしかない。でも、この妖力の量は無限に近いはず。なのに600匹くらいというのはおかしい。

 

それはまだ私の体が不完全なせいなのか。でも、あまり関係ない。増えたのはうれしいけど、別にもう妖力で楽をしようなんて思っていないもん。でもやっぱりないよりはあったほうがいい。

 

 

「みんなはきっと本当かどうか疑わしいと思っておるじゃろう。ちょっと解放しなさい」

 

 

先生が私に言ってきた。けど、私は妖力を操れるわけではない。だからただ解放するだけ。さっき解放したときのことを思い出し、それを再現する。体の中から3つある力のうち、1つである妖力を解放する。

 

でも、今回はさっきと違ってちょっとしか解放できなかった。やっぱりあんまり妖力の練習をしなかったからか。今度からはしよう。無限に近いってことはそれだけ強力だってことだから。それを制御するためにも練習をしないと。

 

私の手を見れば妖力が覆っているということが分かる。覆う妖力はゆらゆらと揺られている。

 

 

「さっきと量は違うがそれでも60匹分!!」

「やはりさっきのはこの子か!!」

 

 

これで私の妖力が原因だと分かりました。でも、問題はまだある。私の膨大な妖力があるということは、この集落に危険を呼び込む可能性がある。例えば戦闘狂みたいなやつが来るとか。

 

みんなは私をどうするのか。それがちょっと怖い。私を殺すのだろうか? ここから追い出すのだろうか? 前者は嫌だ。前に死んだことがあるから分かる。あんな怖いのは嫌だ。だから後者がいい。

 

みんなと会えなくなるけど、自分が生きていたらいつか会えるかもしれない。それにお姉ちゃんたちに助けてもらった命。それを無駄にはできない。

 

 

「はっははは、そうびくつくな。何もせん。そうじゃな。今のままじゃ妖力を制御できておらんからもう一度学校に来なさい。そこで妖力の扱いを学びなさい」

「でもみんなに迷惑が……」

「まだ子どもじゃな。私たちはそんなことで追い出したりせん。その強力な妖力を制御せずに追い出すほうが怖い」

「ありが……とう……ござ、い……ます……」

 

 

私は涙を流しながら、礼を言った。自分の身に危険が及ぶかもしれないのに私を受け入れてくれた。私のこの力はみんなのために使おうとそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

私は今学校に通っています。何でまた通っているかといいますと、前は妖力が小さすぎて妖力の授業にはいることができなかったからです。ついでに私は妖力の授業以外も習っています。この頃暇だったの受けることにしました。

 

力といえば他の2つの力はみんな気が付かなかったようです。私自身他の2つがどういうのかよく分かっていない。特に神力という力です。よく分からない。いつか試してみないと。

 

それに特典はよく分からないのが多い。特典のことを考えた私は手を握り締め、歯を食いしばる。思うのはやっぱり私の特典の1つが無効になったことだ。あれがあればお姉ちゃんはと思ってしまう。もう過ぎたことだからと割り切ることはできない。できるはずがない。

 

 

「ほれ。次じゃぞ」

 

 

そこに先生に声をかけられる。私は考えを止め、意識を覚醒させる。

 

 

「は、はいっ」

 

 

今、私は妖力の授業を行っていた。あの事件が解決してからの初めての授業です。周りには他の妖怪たち。ほとんど子どもです。大人な私はちょっと浮いている。だけど、私の他にも大人はいる。

 

妖怪は寿命が長いためか暇なため、こうしてもう一度勉強する大人の妖怪もいる。だから、珍しいことはない。ただどうしても浮いちゃうけど。

 

私は自分の妖力を集中させる。妖力を出すのは私の1メートル先。出すのは火。これは初歩中の初歩です。前のときはライターの火くらいですぐに消えた。でも今は違う。私は膨大な妖力を手に入れた。

 

だから、みんなのようにできるだろうと。私はさらに集中し、妖力を火に変えて出した。だけど、それは私の想像したものとは違った。

 

ゴオオオオオォォォォッ

 

それは縦に大きく伸び、辺りに熱風を放った。それは渦を巻くようにうねる。私は驚き、目をつむり尻餅をついた。これは火なんてものじゃない。炎や火柱という名前がふさわしい。

 

まわりの生徒たちも目を見開き、私と同じように尻餅をついた。ある者はそのまま呆然と見て、ある者は悲鳴を上げる。私はもう妖力のコントロールを手放してしまった。それは暴走し、まだまだ大きくなろうしようとしていた。私の妖力を喰らいながら。

 

 

「あ、ああ……だ、だめ……! 抑えれない!」

 

 

それを止めるために再びコントロールをしようとするが、弾かれてしまった。もう私に止めることはできない。

 

 

「い、いかんっ!!」

 

 

大きくなり暴走する火柱の危険を察知し、先生が前に出る。ほかの生徒はその恐ろしさかまだ驚いているのか、動けないでいた。先生の手に妖力が集中していた。それは水。それは大きくなり水柱となり、私の作り出した火柱とぶつかる。

 

さすが先生。この集落で1番の実力の妖怪です。だけどやっぱり大きさが違う。未だに大きくなろうとする私の火柱とこれ以上大きくならない水柱。

 

 

「むっ!? やはり無理か!」

 

 

先生もそれを察する。やっぱり先生では無理です。これを止められるのは私だけ。今、失敗したばかりだけど、やるしかない。でも、まずは火柱と私の妖力のつながりを絶つ。それでこれ以上大きくなるのを止める。

 

そのためにまず落ち着く。焦っても仕方がないから。目を瞑り体中の空気を全部入れ替えるように深呼吸をした。

 

落ち着いたところで自分と火柱のつながりを消した。それは簡単に絶つことができた。次は妖力。今度はコントロールを手放さない。絶対に。出すのは水。火に対極するものです。でも、威力が弱ければ逆に飲み込まれる。

 

私の妖力をたくさん喰らった火柱に、意図的に対抗できるほどの威力を持った水柱を作り出せるだろうか? 不安だらけだ。

 

 

「ま、待ちなさい! なにをするつもりじゃ! またやれば暴走するかもしれんぞ!! そうなればもう誰にも止めることはできん!!」

 

 

先生が私のやらんことを察し、止めようとする。だけど私は無視し、さっきと同じように妖力を集中し、巨大な水柱を出す。出された水柱は先生のより大きい。でも、火柱には及ばなかった。

 

私はそれをコントロールし、火柱にぶつける。もちろんのことだけど、火柱はびくともしない。逆にこっちの水柱がぐらついた。どうにかさらに妖力を込めようとするけど、それは無理だった。それは私が未熟だから。

 

例えると、ある容器に水は満タンなのにさらに入れようとしているということ。できないのは当たり前。私はそこで思いつく。できないのはある容器にそれ以上入れること。なら容器を増やせばいい。質に対し数で攻める。

 

そうなるとコントロールが難しくなる。でも、これもやるしかない。ただ自分をしんじるだけ。さらに水柱をいくつも作り出す。その数、10。

 

 

「……コントロールできるのか? その数を」

「やります。やってみせます。じゃないと止められないから」

 

 

先生の問いに私は答える。私の額には妖力を使いすぎたせいか汗が流れる。それだけでなく視界はぐらつき、体から力が抜けていく。もう絶っているのが不思議なくらいだ。私はすべての水柱を操り、火柱にぶつけた。

 

1つの火柱を囲むように水柱はぶつかる。火柱と水柱が密接するところからは蒸気が溢れ出る。それはジューという音をたてた。水柱に集中していたので気が付かなかったが、他の生徒たちはすでに避難済みだった。

 

もう気にする必要はない。火柱を囲んだ水柱をできるだけ中心へと動かす。水柱同士の距離は近くなった。水柱同士を合体させる。それにより、本当の意味で火柱を囲む。

 

これで終わってくれればいいのだけど……。私の目に2つの魔力が小さくなっていくのが見える。このままいけばどちらも消滅するはず。私は集中力を切らさないために、必死になった。

 

そしてどれくらい経ったのだろうか? 私の意識は朦朧とし、全身は汗でびしょ濡れだった。立っていたはずなのに私は尻餅をついていた。

 

 

「おわった……の?」

 

 

口に出して確認する。

 

 

「終わったんじゃ」

 

 

先生が私の頭に手を置く。

 

 

「うぐ……ご、ごめんなさいっ! わた、しの……せいでっ! こんな、こと……に、なっ……て」

 

 

私は泣きながら謝った。全部私のせい。

 

 

「よい。妖力が暴走したのはまだおぬしが未熟のせい。だから何度も練習するんじゃ。次は気をつけなさい。今回のことで力加減は分かったろう。それを思い出し、蝋燭くらいにまで小さくできるようになりなさい。それが今のおぬしが目指す目標じゃ」

「はい……」

 

 

私はしばらく先生に撫でられ続けた。

 

 

 

 

 

 

それから私は毎日練習し続けた。もちろん先生の監視の中で。どうも私の得意なのは火らしい。その次は水。毎日火柱を作ってはそれを小さくしようとした。どうもうまくいかない。

 

力は制御しないと意味がない。でなければ力に飲み込まれるから。あの暴走もその一端だった。力を制御したいのには理由がある。もちろんのことだが、私の力だからということ。自分の力なのに制御できないなんてダメだ。

 

でも、それより自分や周りの人を傷つけたくない。例えば、力に飲み込まれ死ぬ。あの火柱に巻き込まれて。死は怖い。何度も思うけど、怖い。もう死にたくない。でも、私はもう一度味わうことになる。

 

 

「お母さん、お姉ちゃん、お兄ちゃん……」

 

 

こうやって思い出したときは3匹を思い出して紛らわす。布団を丸めてそれに抱きつく。でも物足りない。温もりがほしい。布団じゃまた寂しくなる。いつかずっと一緒にいてくれる者に会いたい。

 

私も女の子ですからそういうのを求めているのかも。このまま1人は嫌です。はう、でもそういう妖怪って見つかんないんですよね。

 

私は毎日そう考えながら過ごしてきた。そして結局、妖力の成績は悪いまま卒業しました。


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