流星のロックマン Arrange The Original 2 作:悲傷
ブラキオ・ウェーブが消滅したことで、夕刻には避難していた人々が戻ってきていた。現場にはサテラポリスも到着し、事件はお祭り騒ぎと共に終わりを迎えようとしていた。
そんな景色の片隅でスバルと八木はつばを飲み込んでいた。彼らから少し離れたところでキザマロとルナが向き合っているのだ。
バツの悪そうな顔で縮こまっているキザマロに対し、ルナは無言の仁王立ちだ。この状態になってからもう数分が経過しようとしている。
「……あの」
キザマロが長い沈黙を切ろうとしたとき、ルナが背中を向けて歩き出した。
「あ……」
思わず手を伸ばそうとして、すぐに下ろした。ルナは数歩歩くと足を止めた。
「何してるのよ」
「え?」
「さっさと帰るわよ」
「……はい!」
目を輝かせながらキザマロはルナのもとに駆け寄った。それを見て、スバルは「ふぅ」と軽く息を吐き出した。
「どうやら解決したみたいサ」
「うん、もう大丈夫。色々とありがとう、八木くん」
「大したことしてないサ」
八木はさわやかな笑顔を見せながら、包帯を巻いた手を振って見せる。
「で、シノビは俺たちが貰っちまっていいんだな?」
「うむ」
スターキャリアー越しに尋ねてきたウォーロックにゴートが短い返事をした。
「ぜひ貰ってくれって言ってるサ」
「ありがとう、本当に」
ベルセルクとシノビ、二つのオーパーツが手に入りロックマンの戦力は大きく増大した。加えて、八木とゴートがソロたちに狙われることもなくなるだろう。これが最良の選択のはずだ。
そうしているうちにルナとキザマロが2人のもとにやってきた。
「ところで、友達を探してるんだよね? そのゴン太っていう太った子」
「ええ、こんな顔なの」
ルナがブラウズ画面を開いて見せた。ゴン太の大きい顔が映っている。
「あ、この子ならナンスカ村で見たサ」
「え!? 本当!?」
「ナンスカ村ってどこなの!? 教えてちょうだい!!」
ルナがスバルを押しのけてズイッと八木に詰め寄った。美少女に顔を近づけられて、顔を赤くした八木が言葉を詰まらせる。
「お、教えるからちょっと待っ……」
その時、辺りが急にうるさくなってきた。下品な言葉が騒音のように響いている。見れば、数人のサテラポリスが人混みを分けながら出間崎を連行しているところだった。
「……キザマロ……」
スバルは声をかけようとしたが止めた。口を一文字に結んだキザマロの顔に、様々な感情が浮かんでいたからだ。
スバルが思いとどまったとき、うるさくなってきた周りに加えてもう一つ、大きな声が上がった。
「や、やめてくれ!! 何をするんだ!!?」
質の違う声に、周囲にいた者達が距離を取り出して、新しい野次馬の輪が出来上がる。その中央にいる人物を見てキザマロは叫んだ。
「スナップさん!?」
「キ、キザマロくん!!」
カメラマンのスナップがサテラポリスに囲まれていた。両腕を抑えられ、スターキャリアーを取り上げられている。慌てて駆け寄ろうとしたキザマロを隊長らしき人物が阻んだ。
「こら、近づくな!!」
「の、退いてください! っていうか、なんでスナップさんを!?」
隊長はスナップから取り上げたものとは別のスターキャリアーを取り出すと、ブラザー画面を開いた。そこにはスナップの顔写真が映っている。
「これは先程逮捕した出間崎のものだ。このスナップという男は出間崎のブラザーだ。つまり共犯の疑いがある」
「そ、それだけで!?」
「ブラザーは『最も信頼している者である』という証だ」
続いてスナップのスターキャリアーからブラウズ画面を開く。ずらっと並んだ顔写真の中に、出間崎の写真があった。
「加えて共犯しやすいカメラマンであり、出間崎と同期入社の社員。疑うには十分だ」
これは納得がいかない。黙って聞いていたスナップもプルプルと首を震わした。
「こ、こんなのむちゃくちゃだ!」
「証拠もないのにおかしいですよ!!」
「取り調べれば済む話だ」
「そういう問題じゃ……」
「連れて行け!!」
隊長の号令に応じて、1人の隊員がマテリアルウェーブの手錠を取り出した。逃げ出そうとしたスナップが取り押さえられる。喚きもがくスナップと無理やり押さえつける隊員達。危うい空気が辺りを満たした。
「やめろ! そいつは関係ねえっつーの!!」
怒鳴り声がそれを吹き飛ばした。出間崎だった。その場にいた多くの視線が彼に注がれる。出間崎はスナップの驚いたような視線だけから目を背けた。
「今回のことは俺が一人でやったことだっつーの。さっさと連れてけっつーの」
誰も口を開かなかった。隊長は顎で指示を出して隊員たちを引き下がらせ、スターキャリアーを押し付けるように返却した。
スナップは立ち上がり、出間崎に向かって手を伸ばそうとする。だが、先ほどのサテラポリスたちが出間崎の包囲を厚くして姿を隠してしまった。すぐにパトカーに乗せられ、あっというまに小さくなっていく。その光景をスナップはじっと見送っていた。
キザマロは少しだけ躊躇すると、彼の横に立った。
ドンブラー湖はオレンジ色に輝いていた。
出間崎ってあまり良い処ありませんが、根っからの悪人ではないのではないか。ただの悪人として描くのではなく、別の一面も描けないだろうか。
という考えから、今回のような内容になりました。