一般人の俺が幻想郷を生き抜く為に   作:さわやか

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こんにちは。さわやかです。
日にち設定が曖昧なのでおかしい場合は指摘してください・・・
どうぞごゆっくり。


無邪気な吸血鬼

「目が覚めた?」

 

咲夜が話しかける。外はもう明るい。

 

「ああ、すいません・・・大丈夫です」

 

「何が大丈夫よ。三日も寝てたくせに。」

 

三日も気絶していたのか。・・・その時の事をぼんやりと思い出す。そうだった、確か俺は血を吸われて・・・

 

「魅了の呪いに掛かっていたのよ?お嬢様のね。」

 

「何と言うか・・・ありがとう。」

 

「お礼はいらないわ。大変なのはここからよ」

 

「?」

 

「・・・外で美鈴が怒ってたわよ?仕上げがまだなのにー、って。」

 

「あっ!すいません!すぐ行きます!」

 

急いで駆け出す。後ろで何が聞こえた気がした。

 

 

 

「もー!心配したんですよー!?このまま死んじゃうんじゃないかって!」

 

「ご心配をおかけしました・・・」

 

「まあ今日は最後のテストと行きますか。」

 

「テスト?、なんの?」

 

「今から私と、本気で闘っていただきまーす。」

 

「ええ!?ムリですよ!病み上がりなのに!」

「大丈夫、病み上がりが一番力でるんですよ!」

 

「そ、そういうもんですか!?」

 

「では十分耐えられたら合格です!いきますよ!」

 

その瞬間左アッパーが飛んでくる!慌てて後ろに回避。

ストレートは受け流し。ジャブはたたき落とし。あれ?意外と簡単・・・?

 

「中々様になってるじゃないですか!じゃあ本気で行きますよ!」

 

全ての行動が格段に早くなり、攻撃のキレも増した。

でもやる事は変わらない。相手の動きに全神経を集中させる。

作業のように迫る四岐を躱していく。

 

「十分経過でーす!お疲れ様でしたー!」

 

「ゼェ・・・ゼェ・・・」

 

終わった頃には体力はすでに消耗しきり、意識も朦朧としていた。

これほど体を酷使する仕事って何だよ・・・

 

「今日はゆっくり休んでください。それから早速仕事です」

 

「あの、仕事とは一体・・・」

 

「それは今夜、お嬢様から直に説明があるかと。」

 

またあの人の所へ行くのか・・・不安だ・・・

 

「そうですか。ありがとうございました。」

 

「・・・大変なのはこれからです。気を引き締めて。」

 

「?・・・分かりました」

 

あれ?このセリフ、デジャヴ・・・

そう思いながら部屋へと歩き出す。

 

 

「・・・どうか、死なないで下さいね。」

 

 

その夜、レミリアから直々に指名があった。

今回は咲夜が安全のためと言って付いてきた。

 

「よく来たわね。降。まあ、座りなさい。お茶でもいかが?」

 

「頂きます。」

 

そう言ってグラスに手を伸ばすと、ナイフが飛んできて割れる。

 

「!?」

 

「あら残念。よく分かったわね、咲夜?」

 

「痺れ薬を面白半分で使うのは良くないですよ?お嬢様。」

 

あ、危なかった・・・

 

「それで、仕事の事なんだけど・・・」

 

「はい。」

 

「私の妹の『遊び相手』になってもらうわ。」

 

「・・・は?」

 

思わず唖然とする。

妹の遊び相手?そのためにあんなハード特訓を!?

というか妹なんて見たことない・・・

 

「詳しい説明は咲夜から。仕事は明日からよ。。」

 

「はい。・・・付いてきて。」

 

 

翌日。

 

「妹なんて、居たんですか?」

 

「ええ。厳密に言えば、義妹なんだけど。」

 

「義妹??」

 

「妹様、フランドール・スカーレットは、レミリア様のお父様が人工的に作り出した吸血鬼。」

 

「い、いいのかよそれ・・・」

 

「当時は吸血鬼が幻想郷を支配していたから。」

 

いくらなんでも、そんなことしていいのか。

吸血鬼には命のモラルもないのか?

圧倒的な力という物が嫌いな俺は嫌悪感を感じる。

 

 

「・・・着いたわ。私も行くけど、くれぐれも無茶はしないように。」

 

「?分かりました。」

 

「それと、これを飲んで。」

 

そういって赤い色の小瓶を取り出す。

 

「何ですかこれ?」

 

「・・・体の緊張をほぐす薬と言えば、分かり易いかしら。」

 

それを怪しみながらも飲み干す。

体が少し軽くなったが、得体のしれない不安定を感じた。

 

「フラン様。入ります」

そう言って、がちゃりとドアを開ける。

中は女の子らしくも、何故か血なまぐさい部屋。

注意して見ると裂けたぬいぐるみや、体の折れた人形が所々に散らばる。

それにしても、なんでこんな地下に・・・?

 

「咲夜!隣の人は?」

 

フランドールは、レミリアと同じくらいの少女だった。

濃黄色の髪を横に束ねた姿が特徴的であった。

 

「フラン様。これは弦月 降。先日お話しした『普通の人間』でございます」

 

「へー!これが普通の人間なんだ!初めて見た!すごーい!」

 

「・・・ええ、と、弦月降です。宜しくね。」

 

「よろしく!じゃあ早速・・・」

 

そう言うとフランは、俺に手をかざした。

その瞬間体が何かに観察されているような感じがする。

 

「あれー?・・・咲夜!もしかして普通の人間って『目』がないの!?」

 

「・・・はい。」

 

目!?目ってなんだ!?目ならあるぞ!?

 

「すごい!すごいよ咲夜!それじゃ簡単に壊れないんだね!」

 

「・・・くれぐれも乱暴な扱いは控えてくださいね。それは私達の、『大切な物』です」

 

「ちぇー、はーい」

 

何の話か理解できなかった。

壊れる?乱暴な扱い?俺の?

 

「ねえ人間!降だっけ?何して遊ぶの?」

 

「え、えっと・・・」

 

 

その日俺とフランは、普通の人間が遊ぶように遊んだ。

フランはレミリアと違い、無邪気で活発な吸血鬼だった。

特訓の意味を疑問に思いつつも、フランの笑顔を見ると、何故かこっちまで楽しくなる。

咲夜はそれを何が言いたげな顔で見守っていた。

 

「それじゃあそろそろ・・・」

 

「えー!もう帰るの!?いやだ!!」

 

「フラン様。人間は脆いのです。夜は寝ないと壊れてしまいます」

 

「ぶー・・・また明日も来てね?」

 

「もちろん。また明日も来るよ!」

 

その日の夕食。

 

「降。フランに会ったんでしょう?」

 

レミリアが唐突に話しかける。

 

「ええ、まあ・・・。」

 

「感想は?」

 

「普通の女の子って、感じでしたね。吸血鬼とは思えませんでした。」

 

「そう・・・まあすぐに、分かるわよ。」

 

「・・・?」

 

「それと、どうかしら?あの、答えは。」

 

「あのって、何でしょう・・・?」

 

「吸血鬼になるって話。明日にでも結論を出して頂戴」

 

そうだった。一連の出来事で、すっかり忘れていた。

咲夜は何とも言えない表情を浮かべている。

今考えても、吸血鬼も悪くないか・・・な?

そう思ったとき。

 

「・・・弦月降。」

 

「は、はい?」

 

紫の髪をした女性が、初めて話しかけてくる。

確かパチュリーだったっけ・・・?

 

「食事が終わったら、図書館に来なさい。いいわね。」

 

「?は、はい・・・。」

 

この館は食事の時に人を呼ぶのが流行ってるのか・・・?

 

 

「お邪魔します。」

 

図書館に入ると、赤い髪をした女性が待っていた。

 

「今晩は。パチュリー様がお待ちです、どうぞ」

 

 

「あら、来たわね。」

 

「こ、こんばんは・・・何かあるんですか?」

 

「大したことじゃないわ。これを、貴方に見せたくて。寝る前にでも読みなさい」

 

そう言うとパチュリーは、一冊の本を私に手渡した。

表紙には「吸血鬼とその歴史」と書いてある

 

「あの、これは・・・?」

 

「用事は終わったわ。早く出ていきなさい」

 

「え!?」

 

「出口までお連れします」

 

「ち、ちょっと・・・!」

 

半ば強制的に外に出される。

この館の人は本当に分からないな・・・。

 

 

 

 

 

その夜、俺はパチュリーから貸してもらった本を読んでいた。

そして、信じられない項目を発見する。

「これって、もしかして・・・!?」


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