一般人の俺が幻想郷を生き抜く為に   作:さわやか

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こんにちは。さわやかです。
今回も割とシリアスなパートです。
どうぞごゆっくり。


幼き主

「明日の7時になったらここへ来ること。いいわね?」

 

咲夜はそう言うと消えてしまった。

 

「紫め・・・次会ったらぶっ飛ばしてやる・・・」

 

そう呟いて周りを見る。

小奇麗に整った部屋。その綺麗さは逆に不信感を抱かせる。

・・・明日から忙しくなる。早めに寝よう・・・

 

 

〜翌日〜

 

「おはようございます・・・」

 

「おはよう。時間通りに来たわね。早速こっちへ来なさい」

 

「来て早々何だよ、説明くらい、くれてもいいんじゃないのか?」

 

「説明は不要。それとここでは敬語使いなさい、分かったわね?」

 

「・・・分かりました・・・」

咲夜はそう言うと、食堂へと僕を連れていった。

中には5人の女性が座っていた。その中にはレミリアと名乗っていた主の姿もあった。

 

「・・・この方達は?」

 

「この館の住民。これからお世話になるんだから、挨拶しなさい」

 

「えーっと・・・私はこ「普通ね」え?

 

「博麗大結界を破ったって聞いたもんだからどんな奇天烈な人が来るかと思えば、普通の人間じゃない?」

 

「いいじゃない、パチェ。そういう所も買ってるのよ?」

 

「そ、そうですよパチュリー様!普通でもいいじゃないですか!」

 

「・・・あなたの席はそこよ、降。座りなさい」

 

普通で何が悪いんだ・・・というか、おたくらが変すぎるんだろう。

そう思いながら席に着くと、なぜか食事が用意されていた。

 

「それてば揃った所だし、頂きましょうか」

 

え?何で?なんで俺が一緒に食事を・・・?

疑問に思っていると、みんな既に食べ始めていた。

 

「どうしたの?食べないのかしら?」

 

「あっ・・・頂きます。」

 

 

疑問の中食事を終えると、咲夜がついて来いという素振りを見せたのでついて行く。

 

「あの人たちって、幹部的な役回りの人なんですか?」

 

「なに言ってるの?紅魔館にはあの人達だけよ。」

 

「こんなに広いのに?流石に冗談ですよね、掃除もできやしない」

 

「本当よ。ちなみに掃除は全部私一人。」

 

「・・・冗談も程々にしてください。」

 

「いちいち疑わないでくれる?ここには外の常識は通用しないわ」

 

「・・・何だよ、普通の人には理解できなくていいって事かよ・・・」

 

「貴方は美鈴の所へ向かいなさい。門に居ると思うわ」

 

「ち、ちょっと?メイドの仕事は・・・」

 

そういいかけた頃には咲夜の姿はもう無かった。

・・・とりあえず門に行けばいいのか?

 

門につくと、先日と同じ人が同じ場所で眠っていた。

 

「あの・・・?美鈴さん・・・ですよね?」

 

「ヒェッ!?あっ降さん!どうしたんです!?」

 

「咲夜さんから、ここに行けと言われたんですが・・・」

 

「ああ、そうでしたね!じゃあ早速始めましょうか」

 

「始めるって、何を?」

 

「聞いてないんですか?訓練ですよ、訓練!」

 

「訓練!?」

 

「・・・本当に聞いてないんですね。じゃあ説明しますよ?」

 

美鈴というひとの説明によると、こういう事だ。

・メイドの仕事は時を止められる咲夜が全てやるので問題ない。

・これからは自分にしかできない『ある仕事』をやってもらう。

・その仕事が出来るくらいには体を鍛えておく事。

 

「・・・あれですね。幻想郷の人って」

 

「はい?」

 

「説明しない人多いですよね・・・。」

 

「・・・否定はできませんねえ。」

 

その日から訓練は始まったが、非常にハードな物だった。

何しろ美鈴は妖怪らしく、人間用にレベルは落としたものの、一流スポーツ選手並の練習量だった。変なマッサージのお陰で身体は壊れなかったが。

内容は主に、反射神経と体力を鍛えさせられたりした。

一体仕事とは何なんだろうか・・・

 

「これで今日は終わりです。お疲れ様でした」

 

「お、お疲れ様でした・・・ 」

 

「紅魔館はどうですか?楽しめそうですか?」

 

「いえ・・・そうでもなさそうです」

 

「あら、何故ですか?」

 

「咲夜さんは冷たいし、主は子供だし、まともに話してくれるのは美鈴さんくらいですよ。」

 

「ふふふ。私も最初来た時はそんな感じでしたよ。」

 

「美鈴さんも?一体どうやって慣れたんです?」

 

「長い間やると、分かるんですよ。お嬢様の・・・カリスマ性みたいな物が。」

 

「か、カリスマ・・・?」

 

「そろそろご飯ですよ、行きましょう?」

 

「は、はい・・・」

 

カリスマ?あの小さな子供に?

幻想郷はやっぱりわからない事だらけだ。

 

 

「ちょっと、降?」

 

食事中、レミリアが話しかける

 

「何でしょう?」

 

「食事が終わったら私の部屋に来なさい。用事があるの。必ずよ。」

 

「・・・?はい。」

 

「フフフ・・・楽しみね・・・」

 

一体何が楽しみなのだろう。

周りを見ると、皆何とも言えない表情を浮かべている。

 

 

 

食事が終わり、約束通りレミリアの部屋に来た。

その体には見合わない大きさの椅子で、レミリアはうすら笑いをしていた。

 

「今晩は。待ってたわよ?」

 

「用事とはなんですか?」

 

「そうね・・・単刀直入に聞くけど、貴方、性行為はした事ある?」

 

「・・・すいません。よく聞き取れませんでした。」

 

「性行為はした事ある?何度も言わせないで頂戴。嘘をついたら許さないわよ?」

 

耳を疑った。なんてことを聞くんだ?この子供は。

顔色1つ変えず言い放つ様子は恐怖すら感じさせる。

嘘をつく必要は無い。のか?正直に答えた。

 

「ええと・・・無いです・・・」

 

「それを聞いて安心したわ。顔を寄せなさい?」

 

「!?」

 

「早く。レディを、待たせるつもり?」

 

勘違いしないで頂きたいが、私にはそういう趣味はない。

ただ、俺はそのどこか大人びた顔をした少女に、何故か逆らうことができなかった。

透き通るような肌、何が頭に訴えかけるような目。

そうして俺は顔を近づけていって・・・

 

「さて、男はどうなのかしらね?」

 

首筋に、熱い何かを感じた。

 

その瞬間。何にも例えられぬ、しかしこれ以上無いくらいの快楽を感じた。

少女に抱きつかれる。動こうとしても、体がそれを拒否する。

何が起こっているのか分からず、パニックになる。

それは数秒の出来事だったが、自分には何分、いや何時間の出来事に感じた。

 

「ぷはっ・・・悪くないわね。」

 

「〜〜〜〜〜!?!?」

 

「あら、立ってる。中々血の気の多い人間ね。」

 

「い、一体何を・・・」

 

「ちょっと血を頂いただけ。吸血鬼なんだから当然でしょ?」

 

レミリアはニヤリと笑う。その瞬間俺は感じてしまった。

圧倒的な力の差と、精神的余裕。

この少女には絶対に、逆らえない事を。

 

「ねえ。降?提案があるんだけど?」

 

「・・・?」

 

「貴方気に入ったわ。吸血鬼になってみない?」

 

「!?」

 

何だ?何を言っている?

吸血鬼になる?俺が?

 

「手段は簡単。私が、吸血鬼の血を貴方に流し込むだけ」

「でもそれには、貴方の心身が私の血を受け入れないと意味が無いの。」

「吸血鬼になれば、今まで出来なかったことが、沢山出来るようになる。」

「ただの人間の生活なんて・・・つまらないと思わない?」

 

つまらない。面白くない。確に俺はそれを常日頃考えていた。

そうだ。俺はいつでも、凡人凡人と見下されて来た。

ここに来てからも力の差は歴然、妖怪や魔法、理解できない物がさらに自分の立場を弱めた。

もう出れないのならいっそ身を任せて・・・

 

「そう・・・それでいいの・・・身も心も、私に委ねて・・・」

 

その瞬間、部屋一杯に声が響く。

 

「お嬢様!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「あら、覗き見?趣味が悪いわよ?咲夜。」

 

「降さんを放して下さい!!!」

 

「私と降の事よ。自由にさせて頂戴?」

 

「お嬢様は分かってないのです!吸血鬼になるのがどういう事か!」

 

「・・・貴方、随分と偉くなったようじゃない?主である私に楯突くとはね。」

 

「例え楯突いてでも、その行為だけは見逃せません!」

 

「私は、この人間に吸血鬼の可能性を感じた。それを有効に使おうとしただけよ。」

 

「・・・第二の妹様を、お作りになる気ですか?」

 

「・・・私にそれを言うとはね。咲夜。」

 

「お許し下さい・・・ですが、それが現実です。」

 

「・・・分かったわ。吸血鬼になるもならないも、この人間の考えで決める。それでどうかしら?」

 

「・・・ありがとうございます。お嬢様。」

 

「この件は不問にしておくわ。早く医療室にでも連れて行ってやりなさい。」

 

 

二人の声の間で、俺は静かに気を失った。


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