一般人の俺が幻想郷を生き抜く為に   作:さわやか

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こんにちは。さわやかです。
今回は(特に博麗大結界について)独自の解釈を含みます。
結構シリアスだったりするのでご注意を。
どうぞごゆっくり。


出れない箱庭

「・・・つまり、博麗大結界に欠陥があったと?」

 

「そういうことになるわね。」

 

「分かったわ・・・博麗の巫女には私からよく、言っておく」

 

「彼は?」

 

「・・・今日の昼にも、2人でお伺いするわ。」

 

「わかりました。・・・よろしく、お願いします」

 

 

 

「シャンハーイ!」

 

人形の声によって起こされる。変なことにはもう慣れた。

それより、今日はここから出れるのだ!

帰ったら何しようかな?とりあえず、文明機器を使いたい・・・

あっ、バイクないじゃん。はははは。いやーどうしよう。

名前も分からないし、いっそ改名しようかな?

1からやり直す人生も楽しそうだな。

 

食卓には既に朝食ができていた。

しかしアリスがいない。どこかに出かけたのだろうか。

人形が食べろという素振りをするので、頂くことにする。

やはり美味である。毎日食べられたらいいのに。

 

ちょうど食べ終わった頃、アリスが帰ってきた。

 

「おかえり。」

 

「ただいま。・・・話が付いたわ、昼にここに来るそうよ。」

 

「本当ですか!・・・お世話になりました。」

 

「残念ながら、まだ帰れると決まったわけじゃないわ。」

 

・・・え?どういう事だろう?

まさか帰れない?馬鹿な、来れたんだから帰れるはずだ。

 

「詳しい話は本人から聞いた方がいいわ。」

 

「あの・・・俺は帰れないんですか?」

 

「私にはわからない。前例がないから。」

 

心の中で何か嫌な予感がする。

 

 

〜数時間後〜

 

「そろそろね。来るわよ。」

 

「え?」

 

何が、と思ったのもつかの間、目の前に表現しがたい黒い空間が突如出現した。

そしてその中から、二人の少女が出てきた。

どうなってるんだ、この里は・・・?

 

一人は赤と白の、奇抜な巫女のような格好をした少女。

もう一人は背の高い、何故か威圧感を感じる少女。

 

「待たせたわね。・・・この方が、例の外来人?」

 

「ええ。」

 

「えっと・・・はじめまして・・・」

 

「初めまして。私は八雲 紫。隣が博麗霊夢よ。」

 

「よろしく。」

 

「早速だけど本題に入るわ。結論から言うと、あなたは帰れない。」

 

「なっ!?」

 

紫という少女の口から告げられる衝撃の事実。帰れない!?そんなバカな!

 

「ち、ちょっと待て!説明してくれ!何でだよ!?」

 

「それは霊夢が話すわ。ほら、ちゃんと説明してあげなさい」

 

霊夢は不機嫌そうに、だがどこか悲しい表情で説明を始めた。

 

 

説明は10分ほど続いたが要約するとこういうことである。

・幻想郷は外から干渉ができないよう博麗大結界という結界を張っていた。管理者は霊夢である。

 

・通常外から人間が入る場合は紫の行為による物である。

 

・結界は整備をしていたが、人間が入れないような場所は整備を怠っていた。

 

・そこで予想外にも俺が空から降ってきた為、弱まった結界は裂け俺は幻想郷内に突入した。

 

・正規の手段で入れば幻想郷からは出られるが、俺は正規の手段で入らなかったためシステム的に出られない。

 

・また無理やり結界を割った作用で記憶の一部が消えた。

 

つまり俺は本来認知できない場所に不法に入り込んだ。

それは結界の管理者である霊夢の責任。

それらの事実は俺の中の何かを壊した。

そして混乱した俺は大人気なく、少女たちに向かって暴言を吐いた。

 

「訳わからねえよ!帰せよ!お前らのせいで俺がとばっちり食らっただけじゃねえか!」

 

「落ち着きなさい。今は感情的になるのは良くないわ」

 

「ならずにいられるか!帰れないしさ!記憶も消えたとか!そもそも魔法とか妖怪とか!もう意味わかんねえよ!」

 

「どれだけ喚いても現実は変わらないわよ。」

 

「なんだてめぇ偉そうに!元はといえばそっちの責任だろうが!他人事みてえに言いやがって!」

 

「・・・仕方ないわね。霊夢、やりなさい」

 

「・・・全く情けないわ。」

 

そう霊夢が言った瞬間、体の身動きが取れなくなる。

誰かに操られるように頭が冷めていく。

恐ろしい現実を受け止められない俺は、年甲斐も無く涙を流していた。

 

「こちらの責任に関しては本当にすまないと思っているわ。でもこれは、今からどうこうして解決する問題じゃないの。」

 

「そんなのおかしい・・・非常識だ・・・」

 

「残念ながら、外の非常識は、私たちの常識なのよ。」

 

「・・・俺はこれから、どうすればいい?」

 

「責任もあるし、私と霊夢があなたの身の安全を確保できる場所を探すわ。人里は無理だけど。」

 

「本当に、ごめんなさい」

 

「・・・」

 

3人の少女は、俺をじっと見つめた。しかしそれは同情の目ではなく、哀れみの目というように感じられた。

 

 

「それじゃあ、見つかったら、また来ますから。」

 

「お疲れ様です。さようなら。」

 

 

黒い空間に飲み込まれる二人を横目に、俺は放心していた。

どうしてこうなった・・・?分からない。俺が悪いのか?

もう家には帰れない。二度と。

今までの話が全部冗談だったらよかったのに。

 

「あの・・・何と言うか、ごめんなさい」

 

「アリスさんが謝ることではないでしょう。」

 

「帰れると言ったのは私だわ。」

 

「・・・今日はもう疲れたので横になります。」

 

「あ・・・夕食は?」

 

「要りません。おやすみなさい」

 

「おやすみなさい・・・」

 

今日は食事も喉を通る気がしない。

訳のわからない土地に閉じ込められる。もう沢山だ。

 

俺はこの先、どうなってしまうんだろう。


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