一般人の俺が幻想郷を生き抜く為に   作:さわやか

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こんにちは。さわやかです。
シリアス回なんて無かったんだ。
どうぞごゆっくり。


幻想郷を楽しむ為に
第三の人生


朝の光を浴びて起床。

川で体を洗った後、木の実や果物、野菜の朝食を取る。

その後は手製の石斧で木材を採取。

一仕事終わった後は山菜などを摘みに行き昼食。

帰れば薪割りや道具作りに勤しみ、

夕飯は昼の残りをじっくり調理。

日が沈めば寝る。

 

 

これが俺の一日の生活だ。これを数年続けている。第三の人生だ。

まるで原始人だ。文化人にとって想像もできないだろう。しかし充実している。

そんなある日の出来事だった。

 

「お久しぶり。お元気?」

 

頭の上から懐かしい、聞いたことのある声がする。紫だ。

紫だ。嫌な思い出しかない。主にいろんなトラブルの原因だ。

会った瞬間から俺は何かを諦めた。

 

「・・・今更何の用だ?もうあれから何年経ったよ」

 

「あら、以外ね。見るなり怒って殴りかかると思ったけど。」

 

「そんな事しねえよ。もう前の事は全て忘れる事にしたんだ」

 

「それを聞いて安心したわ。それで、こんな野蛮な生活を?」

 

「野蛮か・・・ハハハ!」

 

野蛮という言葉に思わず笑ってしまう。

 

「何よ、随分楽しそうじゃない?」

 

「いや。俺にはお前ら妖怪の方がよっぽど野蛮に見えるからな!」

 

「・・・貴方って、普通の人間だと思ってたけど。変人になったのね」

 

紫が呆れ顔でこちらを見る。

 

「それもおあいこさ。用が無いなら帰ってほしい。あまり妖怪と関わりたくはないんでな」

 

「霊夢が貴方に会いたがってる。行ってあげてくれないかしら?」

 

そんな事だろうと思った。

 

「・・・断る。俺は誰にも会いたくない。それにあいつも、俺のこんな姿を見てどう思うかな。」

 

「それもそうね。ま、無理にでも行ってもらうけど。」

 

「それ来た。お前ら妖怪はいつもこうだ」

 

「喧しいわね。飛ばすわよ」

 

次の瞬間俺は地面のスキマに飲み込まれ、博麗神社に腰から落ちた。。

 

「いてて・・・もうちょっとマシな運び方があったろうに。」

 

「雑で悪かったわね。」

 

「あ、あなた・・・」

 

それは紛れも無く、自分をこの世界に閉じ込めた原因、博麗霊夢だった。

 

「・・・久しぶりだな。元気だったか?」

 

「・・・ごめんなさい」

 

「何だよいきなり。」

 

「あなたがそんな姿をしているのも私のせいよ。まずはこれを言いたいと思って。」

 

「今更気にすんな。くよくよしてると入る賽銭も入らねえぞ?」

 

「・・・冗談飛ばせる位元気になったならそれでいいわ」

 

「だそうだ紫。そろそろ帰してくれ」

 

「あら、帰れないわよ?」

 

「・・・は?」

 

まじかよ。ついに幻想郷の中でもそれを言うか。

 

「あんな僻地にいたんだもの。私だってあんな所知らないわよ」

 

「おいおい待てよ。じゃあ俺はどうすんだっての」

 

「神社にでも泊めてもらいなさいな」

 

「え!?うちに!?」

 

霊夢が呆気に取られたような表情を見せる。

 

「ほら、霊夢もあんな顔してるぞ?」

 

「知らないわよ。それに幻想郷に原始人がいると、私もいい気分じゃないのよ」

 

「何でだよ」

 

「なんだか疎外してるみたいじゃない。イメージも悪いわ」

 

「全くお前ら妖怪は、迷惑しか掛けれねえのか?」

 

「悪かったわね。じゃあ、頑張りなさいよ」

 

「おいおい!ホントに帰れねえのかよ!」

 

「たまに様子見に来るから、精々死なないように。」

 

そう笑いながらスキマへと消えていく紫。

残される二人。

 

「・・・何だ、その、これからよろしく・・・。」

 

「あ、はい・・・」

 

こうして男と巫女の、奇妙な共同生活が始まる。

 

 

「あー。久々に文化な生活してるわー。」

 

洗面台で色々とやり終えた。3年ぶりの剃髭に気分も爽快だ。

 

「おっさん臭くなってるわね。最初の若々しい青年はどこに行ったのかしら」

 

先ほどあった時とはまるで違う口調を聞かせる。

過去の事は全て無い事に、といったらこうなった。

まあこっちの方が俺は俺で気が楽なんだが。

 

「やかましいやい。こっちのカミソリってのは質が悪りいな、剃っても残っちまう」

 

「ヒゲの方が似合ってるわよ。そういえば、名前はまだついてないの?」

 

「・・・」

 

(確か弦月 降だったか?だがあの名前使うのもな・・・)

 

「いや。まだ名無しだな」

 

「そう。じゃあ名づけてあげるわよ」

 

「お、嬉しいね。イカした名前にしてくれよ」

 

「うん。(ゲン)でどうかしら?」

 

「それは俺が原始人だったからか?だとしたらかなりの安直さだな。」

 

「悪いけどひねりのあるネーミングは苦手なのよ。」

 

「ゲンか。まああり難く使わせて貰うよ。名乗る相手がいるかは分からんが。」

 

「・・・あなたもしかして一生出ないつもり?」

 

「妖怪のせいで俺の人生振り回されっぱなしだからな。サバイバルに学んだ事だ」

 

「原始人返りなのによくもそうペラペラと喋れるわね。」

 

「元々こんなもんなんでね。・・・聞きたいんだが、今あれから何年経った?」

 

「え?・・・3年かしら。」

 

「なんてこった・・・」

 

「何よ、不都合があるの?」

 

「もう俺30手前じゃん・・・」

 

「・・・ご愁傷様。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー布団きもちいー!」

 

「これが文明の力よ。恐れ入ったかしら?」

 

「流石だな。目覚めが違う。草と土とは大違いだ」

 

「じゃあ私は散歩に出かけるから。留守番お願いね」

 

「あ、待った。俺も行く」

 

霊夢が驚いた表情を見せる。

 

「・・・妖怪に会いたくないって、つい3日前に言ったんじゃなくて?」

 

「いやー、身なりを整えるとつい見せたくなってな。」

 

「そういえば髪も切ったのね」

 

「ダンディに決めようと思ってね。似合ってるかい?」

 

「どっちかと言えばワイルドね。似合ってなくはないわ」

 

「切ったのお前だけどな。という訳で、よろしく頼む。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、霊夢じゃない。おはよう」

 

「おはようアリス。」

 

「隣の方は?」

 

「おいおい忘れたのか!?俺だよ俺!」

 

「俺俺詐欺かっての。3年前にいた記憶喪失の人よ。」

 

名前が無かったんだからしょうがないだろうが。

 

「え!?・・・なんと言うか、その」

 

アリスが何か言いづらそうな表情を浮かべる。

 

「何言っても怒らんから言ってみ」

 

「その・・・おっさん臭く、なったわね。」

 

「お前までそれかい。おっさん傷ついちゃう」

 

「好青年に戻ってくれないかしら?」

 

「悪いが俺は過去に囚われない男になったんだ!」

 

ドヤ顔で言い放つ。

アリスは若干引き気味である。

 

(ゲン)って名前がついたの。私がつけたのよ」

 

「何だか妙にマッチした名前ね・・・」

 

「それは褒めてるのか貶してるのか?」

 

「褒めてるのよ、良かったら中でお茶でもどうぞ?」

 

「酷いねえ。頂くよ」

 

「お邪魔しまーす」

 

 

 

 

 

「それで?詳しく話しなさいよ」

 

「何がだよ」

 

「3年間何してたの?」

 

「・・・そういえばアリスちょっと顔が大人びてきたな。そっちのほうが様になってるぞ」

 

「誤魔化さないで。まさか3年寄生生活って訳でもあるまいし」

 

うーん。困った。正直話したくないんだが。

とりあえず半分真実半分嘘で通すか。

 

「そうだな・・・3年間サバイバル生活してたよ」

 

「・・・冗談でしょ?」

 

「残念ながら本当だ。紫が言うには相当な僻地らしい」

 

「あんたも大変ねえ。」

 

霊夢が半笑いで言う。元はお前のせいだっつーの。

まあこれ言うと色々と重い空気になるからな・・・

 

「・・・まあいいわ、それで今は?」

 

「ああ。博麗神社に居候中だよ。またそっちに戻るかい?」

 

「遠慮するわね。」

 

「私も遠慮したいわ。」

 

「おいおい・・・いくら何でも少しは傷つくんだぞ?」

 

「そうは見えないけどね。」

 

アリスの入れた紅茶は温かく、3年前を思い出させた。

 

「もう帰りましょう。日が沈んじゃうわ」

 

今度はうまく行く。根拠は無かったが、そんな気持ちだった。




まさかの3年後です。ネタが切れた訳じゃない。絶対にだ。
主人公が崩壊してしまいましたが末永くお願いします。

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