いうなれば軌跡の裏道   作:ゆーう1

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投稿です。
(そういえばフィー出してなかった。こんど出します!許してください!なんでもしませんから!)


なんでもない決意(前編)

嫌なことというのは突然やってくる。

この世界では力がなければ奪われるだけで何も手元には残らないだろう。

だから、どんな力であろうと僕は欲する。どんな力であろうと求める。

 

 

―――― 

 

 

 

六月下旬。

もう放課後。今日も一日が何事もなく終わった。Ⅶ組が特別実習にいってるおかげか厄介ごとが少なくなってる気がする。やっぱあいつら疫病神だよ、特にラウラ。

そういえば最近は何故か学園の女子の一部で男同士の友情を描く小説が流行してるらしい。のんびりと思考にふけていると・・・

 

「ムンクくん!ムンクくん!」

トラブルメーカーミントの登場。

 

「さーて、寮に帰るか。」

 

 

ガシッ

 

 

「待ってよ!どうせムンクくん暇でしょ?暇だよね?暇だね!」

 

質問しているのに、自己完結させるとかどういうことだ・・・。

 

 

「い、いや、ぼくは今日はラジオを・・・・。」

 

 

「よし!暇だね!じゃあレッツゴー!!」

 

「少しは人の話聞いてよ!?というか引っ張らないで!!あああ~~~~~!!」

抵抗も虚しく無理矢理引っ張られてしまう。

この子なんて力だよ。仮にも僕男なのに。いや決して僕が貧弱というわけではない。本当だよ・・・?

 

 

 

 

 

 

―――― 

 

トールズ士官学院技術館前

色々な資材が少し乱雑に置かれている小屋の前に二人の男女が話している。

ひとりは黒いつなぎをきた少女。首まで切りそろえられた紫髪に整った顔。どこかボーイッシュさを感じさせる美少女だ。

もうひとりは珍しい白髪に赤目。頭にバンダナをつけているのが目に入る。

緑色の制服を着崩していて、どこか軽そうなイメージが感じてしまう。

 

「クロウ、そういえば先日君に似たような後輩をみたよ。」

 

「へぇー。そりゃ変わった奴もいたもんだぜ。で、ゼリカ。どんなイケメンだった?」

 

「うーん、変わっていることは否定しないがね。しいて言うならゾンビみたいな子かな。」

 

「ガクッ おいおいお前の目には俺そんな風に見えてんのかよ。」

クロウは落ち込む素振りをしてジト目で睨む。

 

「冗談だよ。容姿とかそういうのは似てないんだがね。瞳が似てたよ。去年の君のような目をしてたよ。」

ゼリカと呼ばれる少女は微笑む。確実にクロウをからかってる顔だ。

 

「おれそんなひどい目してたのか?結構明るいタイプだけどな。」

 

「ふふっ そういうことにしておいてあげよう。」

 

「この女・・・。」

 

 

 

『さぁさぁ!あっちに行ってみよう~。面白そうな香りがするよ~。』

 

『分かったから!分かったから!引きずらないで!!?』

 

 

 

「おや、噂をすればというやつだね今引きずられてたほうが言っていた子だ。」

 

「へぇ・・・。」

 

 

「っておい!あっちの方向って確か旧校舎じゃねーか?」

 

 

「ああ、念のため様子見に行ったほうがよさげだね。」

 

 

―――――

 

旧校舎はどこか変わった雰囲気を持つ場所だった。もう古く改装もほとんだされてないこともありなんとも言えない雰囲気を醸し出している。もし霊的なものがでたといわれても納得しそうだ。 

心なしか涼しく感じるので居心地は悪くない。次からここで居眠りしようかな。

 

「ほぇ~~~。噂には聞いてたけどうちの学校にこんな場所があったなんてねー。」

 

 

「ねぇ・・・ミントここって確か立ち入り禁止じゃなかったっけ・・・?」

 

 

「うん?へーきへーき。ちょっと見るだけだから。」

ミントはどこまでも気楽そうにニコニコ笑っている。

 

「とてつもなく嫌な予感しかしない・・・。」

というかむしろ確定で嫌なことが起きるだろ。ミントとといて何か起きない方が珍しい。

 

「ムンクくんは臆病だなぁ。大丈夫いざとなったらアタシが守ってあげるから!」

 

 

「激しく不安だ・・・・」

 

 

 

 

 

 

――――

「あ!なんか昇降機みたいなものがあるよ?ちょっと見てみようよ!!」

 

 

「少しは警戒するとかしようよ・・・・。」

しかしミントはそんなことお構いなしに昇降機へと近づく。

 

 

「階層を表してるのかな・・・多分三階まで行けるのかな?」

 

 

「へぇ・・・。しかし随分大きめの昇降機だね。」

 

見た感じ昇降機の大きさは軽く見積もっても10アージュ以上ある。

 

 

僕が昇降機に足を踏み入れたその瞬間―――

 

 

ガコンッ

 

静寂としている旧校舎にいきなり大きな音が鳴る。

 

 

「な、なに?」

 

―異物を検知。危険対象と判断。危険物の排除を行う。―

 

 

無機質な音声が耳に届くとともにいきなり空間の一部が歪んだ。発生した黒い歪みはどんどん大きくなっていく。

 

ガシャン ガシャン ガシャン

 

次元から耳を貫くような金属質の音が一定間隔で聞こえる。そしてその音はだんだんと大きくなっていく。

何かがくる?

音が鳴るたびに地面が揺れる。

だから直感的に分かる。これは巨大な何かだ。

得体の知れない恐怖が駆け巡り手が汗ばむのが分かる。

 

 

バリバリバリッ

何かがはじける音ともに黒い歪みからは金属特有の輝きを持つ巨大な手のようなものが二つ出てきた。

手はスライド式の扉を開けるかのように歪みを広げていく。

 

 

グオオオオオオオオオオオ!!!!

 

大地を揺るがすかのような咆哮とともに出てきたのは高さ10アージュを優に超える鉄の巨人だった。

全身は黒光りする甲冑のようなものに覆われていて関節部には妖しく光る紫色のオーブみたいなものがあった。

巨人とはいってもおそらくは甲冑の中に人はおろか生物はいないだろう。

 

 

 

「う、あ・・・」

心が頭が体が恐怖で支配される。

ミントのほうに目を向けるとこちらも同じような状況だった。

 

 

「!?」

 

いつの間にか巨人の両手には剣が握られていることに気づく。

まずい。不味い。マズイマズイマズイマズイマズイーーーー

心臓が潰れてしまうかと錯覚するぐらい締め付けられた。

 

 

巨人は勢いよく剣の刃を地面に振り落とす。

 

ドガアアアッ

 

 

 

「は、はぁはぁ、なんとか無事か・・・。」

気がつけば足が駆けていて、ミントを抱えていた。

無意識とはいえ、ミントを抱え巨人の剣に当たらないように逃げた自分を褒めてあげたい。

 

 

「む、ムンクくん!あ、あれなに!?」

ミントの肩が震えいる。あんな巨人がいきなり襲ってきたんだから当たり前だ。

 

 

ガシャン ガシャン

 

巨人はゆっくりとこちらに近づいてくる。歩くたびになる金属音がまた僕らの恐怖を一層引き上げ、絶望へと落とし込む。

 

 

「やるしかないか・・・。」

「え・・・?」

 

 

覚悟を決めて籠手を装備する。

 

「ミント、僕が時間を稼ぐから逃げて・・・。」

 

「そ、そんなことできないよ!!?」

ミントは涙目になって叫ぶ。

 

 

「いいから!!!!!」

 

「・・・!?」

あまり出すことのない僕の大声にビクッとミントの身体が震えてしまう。

 

 

 

「いいから逃げてよ・・・分かるでしょ・・・?どっちかが食い止めないと両方死ぬんだ。ミントはアーツ使いなんだからこういうのは向かない。頼むよ逃げてくれ。」

二人死ぬぐらいなら一人だけでも生き残ったほうがいい。

 

 

「早く!!!!」

まだ迷うミントを一括。こうしている間にも巨人は迫ってくる。

 

 

「う、うん!でも必ず生き残って!すぐ助けを呼ぶから!!必ずだよ!?」

 

そう言ってミントは泣きながら駆けていく。

 

 

「ふぅ、行ったか・・・・。全く世話が焼けるんだから。」

 

 

ゆっくりと近づいてくる巨人を睨む。

「ふふっ」

 

???

なんで今自分は笑ったのだろうか?あまりにも絶望的で頭がおかしくなったのか?

いや違う・・・これは自嘲の笑だ。ミントを助けた自分が笑えてしまうのだ。

昔はこんなことしなかったのにと。

ただ悪い気分ではなかった。

 

「そっか、少しは変わったのか・・・。あー、本当は何もかもどうでもよかったのになぁ。まぁ、いいか。」

僕としては毎日ラジオを聞いて惰眠を貪れればそれで良かったのになぁ。

でも・・・・、でもせめてミントぐらいは逃がしてやらないとね。

 

 

 

「行くぞ。このデクノボウ!!」

巨人に拳を向ける。不思議と死ぬ気はしなかった。

 




後半へ続きます。

UAがまさかの2000超えるとはひゃほおおおおお

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