いうなれば軌跡の裏道   作:ゆーう1

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リィンって爽やかイケメンだよね


自由行動日の災難

トールズ士官学院

大帝が立ち上げた学院ともあってカリキュラムはそうとうハードなものだ。

なんでも「若者よ世の礎になれ」だっけ?僕は嫌です。

入学してひと月はたったが、正直所詮は学院となめくさっていた僕はあまりの厳しさに頭を悩ましている。

 

え?授業についていけているかって?そこは心配ご無用。授業は半分寝ている。人間諦めが肝心なものだ。

いずれくるであろう学力考査の結果は火を見るより明らかだが僕にはラジオがある。ラジオさえ聞いていれば人生幸せなものだ。

 

 

 

 

4/18

今日はこのトールズ士官学院でも数少ない自由行動日だ。

真面目なものは自習したり武術の鍛錬を積んだりするだろう。はたまた部活に情熱を注ぎ青春を謳歌することだろ。

僕は当然惰眠を貪り大好きなラジオを聞いて過ごす。そう!誰がなんといおうがだ!

 

 

そんなわけでラジオを聞いて一日過ごすわけだから、その前にトリスタの街に出て買い出しが必要だ。お菓子を食べながらラジオを聞く。

なんて優雅な休日の過ごし方だろうか。

 

 

 

「ムンクくん~。」

浮かれ気分な僕の耳にソプラノでやや抜けたようなイメージを持たせる声が貫く。

現在最大の悩みの種ミントだ。

なんでこいつにあうの!!?ちょっとトリスタに買い出しに来ているだけなのに!!

 

 

「み、ミントか・・・。何?もしかしてまた何かあった?」

僕の危険察知センサーが警報を鳴らしている。これは厄介事だと。

 

「よく分かったね!!もしかしてムンクくんはエスパー!?」

 

エスパーもくそもないだろ。たいていお前が話しかけてくる時は厄介事だ。

入学してからこの悪魔のせいで僕の平穏は跡形もなく消え去ってしまった。

ある時は探検だとかいいだして連行され街道にでて迷った挙句魔獣に襲われたり。

ある時は料理を極めるとか言い出してダークマターの試食に付き合わされたり。

落し物探しなど日常茶飯事だ。

 

 

「それでね!叔父さんにもらった大事な時計を落としちゃったよぅ。」

 

 

「また!?それ1週間前も言ってたよねぇ!?大事なものならなくさないでよ!?」

 

 

「うう、ムンクくん~~~。」

上目遣いで瞳を潤ませて見つめてくるミント。

うう!なんか僕この目に弱いな。いや、正直関わりたくないけどこの捨てられそうな子犬のような目をされるとどうも弱い。

 

 

「わかったよ、分かりましたよ・・・探してあげるから!」

僕は諦めたようにため息をつく。厄介事は早めに終わらせてしまおう。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

探すとか言ったもののミントの探し物は普通とはかなりかけ離れていて壮絶さを極める。

以前のことだ。大事らしい時計は校舎中を探しまくった挙句見つかった場所といえば第二寮の近くにあった鳥の巣の中である。

そんなこと、狙っても起こせないぞ。

 

正直またそんな途方もないような作業をしなければならないと感じるとやるせない。

 

 

 

「はぁ・・・。」

「ふぅ・・・。」

 

 

「「ん?」」

 

 

 

「ええと、君は?」

 

「僕はムンク。ああ、その赤い制服は噂のⅦ組か。」

 

 

「まあな。俺はリィン。リィン・シュバルツァーっていうんだ。」

緑でも白でもない赤い制服を身につけ、帝国では珍しい黒髪黒目。髪の毛はツンッと羽気味だ。

顔は中性的ともいえるが整っている好青年だ。

 

 

まさかこんなとこでⅦ組に会うとはな。いや、同じ学院にいるからおかしいことではないか。

特化クラスⅦ組。今年新設されたクラスで何でも通常のカリキュラムに加え特別実習なんてものがあるらしい。

選ばれることは決してないだろうけど選ばれなくて良かった。そんなヤバそうなクラスいったら身が持たないよ。

 

 

「ええと、自由行動日なのに校舎にいるってことは何か部活にでも入ってるの?」

 

「ははっ。生憎まだ部活には入ってないよ。少し生徒会の手伝いをしていてね。」

 

「へぇ。生徒会に入ってるのか。それはまた優秀だね。さすが噂のⅦ組だ。」

 

「うーん、そういうわけでもないんだが。少しややこしいな。なんていうかサラ教官に押し付けられたというか・・・」

 

リィンは顔を歪ませて考え込む。

 

「あぁ、リィンくんも色々苦労してるんだね・・・・。」

なんかこの優等生に親近感湧いてきたぞ。

 

「ムンクも色々あるのか・・・・。」

 

 

「「はぁ」」

 

まさかのお互いため息が重なるという。なにこれ苦労人同士にはなにかシンパシー的なものがあるの?

 

「はははっ ある意味俺らは似た者同士かもな。」

 

「嘘でしょ むしろ正反対だよ。」

 

 

「そうか?おっと早くこれを持っていかなきゃ。ムンクまたな!」

そう言うとリィンはせかせかと何処かへ行ってしまった。しかしせっかくの自由行動日に生徒会の手伝いなんて真面目な奴だなぁ。

いや、僕もひとのことあんまり言えないか。ミントに振り回されてるし・・・・

なんでこうなったのかなぁ・・・

 

 

 

バシンッ

 

 

「いたい!!?」

途方に暮れていると背中にいきなり衝撃が走る。なんだよもう・・・!

 

 

後ろに振り向くとそこには何故か仁王立ちしているミントがいた。

 

 

「ム~ン~クく~んなんでサボってるのかなぁ~~~?」

満面の笑顔だ。でも笑顔に何故か恐怖を感じるのは何故?

 

 

「なんで叩いたの!?というかサボってないよ!少し人と話してただけじゃん!」

 

 

「ほえ?そうなの?ごめんごめんなんだかムンクくんってサボってるイメージしかなくて。」

 

こいつ人に手伝わしといてなんたる言いようだろうか?いや正直否定要素はあんまりないんだけどさ。

 

 

「それでそっちは何か成果はあったの?」

 

 

「それが全然~~~というか聞いてよ~~~!」

 

かくして僕は何故かミントの叔父マカロフの生活について望みもしないのに詳しくなっていくのだった。しかもミントの主観にまみれた。

マカロフさん心から同情します。

 

 

結局その後夜になるまで探しても時計は見つからなかったが・・・が時計はミントのスカートのポケットに入ってたというオチだった。

ふざけんな!!

 




ミントが自由すぎるよね
次回は戦闘をやってみようと思います。
ムンクに幸あれ

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