妹にとっての小さな小さな物語。
こんにちは妹のヒナです。現在私とヒトカゲ、ルカリオで森の中を散歩中です。といっても、今日はもうポケモンセンターにつき、これから夜になって歩くのは少々危険だと言われたため、ポケモンセンターから少し離れた場所での散歩ですけどね。兄たちはそれぞれバトルを行なっている様子です。私とヒトカゲはすぐに帰るとみんなに伝えてから歩き始めたんですけど、ルカリオが心配だから一緒に行くと言い、こうしてルカリオも含めて散歩しているのです。ちょっとルカリオが私たちに対して心配性な気もするけどまあいいか…。
「……ん?あれは?」
『…カゲ?』
『……何故イッシュ地方にいるんだ…』
私たちがふとあるポケモンの姿を見て疑問に思った。そのポケモンはイッシュ地方にはいないはずのポケモンであり、ましてここでみると珍しいけれど、主にジョウト見られ、カント―でもたまに発見されているポケモンだ…。
とても可愛らしいそのポケモンは顔を俯かせて悲しそうな表情を浮かべている。私たちはその様子を見てお互い顔を見合わせてから頷き、そのポケモンに近づいていく。
だが、そのポケモンが近づく私たちに警戒したような様子になったため、私は焦って手を上げながら大丈夫だと言う。
「大丈夫だよ!私たちはあなたを傷つけようとは思ってないからね!」
『カゲカゲ!!』
『ああ、何があったのか聞かせてくれないか?』
『ピチュ…』
そのポケモン…つまり、ピチューは私たちにまた悲しそうな表情を向けて、話してくれた。ルカリオの通訳で分かったこと…それはとても悲しい事実だった。
「…え、捨てられた?」
『…カゲェ?』
『ピチュ…ピチュピチュ…』
『僕の力が弱くて…それでもういらないって言われたんだ…と言っている』
「何よそれ…そんなのピチューは悪くないのに!!」
『カゲカゲ!!!』
『ピチュピチュ!…ピチュゥ……』
『でも僕は進化したくないんだ!…だから僕が進化せずに弱いままだから捨てられちゃったんだと思う……と言っているが、それはお前のせいではないだろう。自分が望んでそう決めたのならトレーナーもその意志を聞くべきだ』
「そうだよ!ルカリオの言うとおり!進化しないことが弱いことなんてないよ!」
『カゲカゲ!!』
ピチューの力が弱いから捨てられたなんてそんなのトレーナーの自分勝手な我儘でやったことではないか。しかもわざわざイッシュ地方で捨てるだなんて何をやっているんだと思った。カント―やジョウトに戻してやりたいけれど、ピチューはもうこのままでいいと諦めているらしい。よっぽどトレーナーに酷いことを言われたから、いま自分に起きている悲劇をすべて受け入れて、そして諦めているのだと知った。
私とヒトカゲはお互いに強気な目で見てから頷き、決心した。弱いからという理由で捨てたトレーナーに怒りを覚えるけれど、それについてはまた後でにしよう…。まずはピチューを助けないといけない。
「ピチュー…あのね。ピチューは弱くないよ。まだまだ強くなっていく途中なんだよ!」
『…ピチュ?』
「ポケモンに最初っから強いポケモンなんていないよ!みんなが鍛えていって強くなっていったんだ!だから大丈夫!!」
『ピチュ…ピチュゥ…』
『でも僕は進化したくないから…だから絶対に弱いままだよ…といっているようだが。お前にマサラタウンのフシギダネに会わせてからその言葉を聞いてみたいものだな』
『ピチュ?』
『カゲ!カゲカゲ!!』
「そうだよ!ルカリオとヒトカゲの言うとおり、フシギダネは私のお兄ちゃんのポケモンでね。みんなのまとめ役なんだよ!でも進化はしないでずっとフシギダネのまま強くなっていったんだ!だからピチューも絶対に強くなれるよ!」
『……ピチュゥ?』
ピチューはおそらく自分に自信がないのだろう。弱いからと捨てられたこと、進化したくないと自分で望んでいるからずっと弱いと思っていることのせいで…。
…でも私は……私たちはそうは思わない。だってマサラタウンには進化しなくても強いポケモンがいるんだもの。それにみんな最初から強かったわけじゃない。兄のリザードンだって弱いからという理由で捨てられたけれど、今となっては兄のとても強いポケモンとなっているぐらいだ。だからピチューも強くなれる、進化しなくても大丈夫だという意味を込めて力強く頷いた。そして私の隣にいるルカリオやヒトカゲも同じように頷いてくれた。ヒトカゲは私と一緒にまだまだ強くなっていく途中だから、ピチューの気持ちがわかるのだろう。ルカリオは今までの経験してきたことも含めて考え、頷いているように見えた。
何故進化したくないのかはわからない、けれどピチューは自分で望んでいけば絶対に強くなれるんだと私は心の底から思っているから、それをすべて伝えるために口を開く。
「大丈夫だよ。私もヒトカゲも、まだまだ強いとは言えないし、もっともっと鍛えていかないといけないけれど…いつかは強くなる日が来るって思っているからね!だから、ピチューも諦めなければ絶対に強くなれるよ!」
『……ピチュ!!!』
「ピチュー。元気出た?これからも頑張れる?」
『カゲカゲ?』
『ピィッチュ!!!!』
ピチューが私の言葉を理解し、力強く頷いてくれた。おそらく自信を取り戻してくれたのだろう。私はそれを見て笑顔を浮かべてピチューを見る。
ピチューに必要ならカント―地方やジョウト地方に送ろうかと言ったのだが、ピチューは首を横に振って大丈夫だと言ってきた。それに私たちは頷き、頑張れと声援を送る。
『ヒナ、ヒトカゲ…そろそろ時間だ…』
「…分かった。……ピチュー、私たちそろそろお兄ちゃんたちのもとへ帰らないといけないの…だからここでさよならするけど…またいつか会おうね!」
『カゲカゲ!!』
『……ピチュ』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その後、私たちは急いで兄たちのもとへ帰ってきて先程あったことを説明した。そうしたら兄が険しい表情でピチューを捨てたトレーナー潰すと言ってきたからそのトレーナにはご愁傷様とだけ言っておこうと思った。でも同情をする気はない。イッシュ地方で強くなるとピチューが言っていたようだったから、そのままさよならをしてきたけど大丈夫なのかなとちょっと心配になった。でももうピチューはやる気があって、そしてこれから強くなると意気込んでいるようだからきっと大丈夫だと納得する。
「私たちが強くなるころには、ピチューも強くなってるんじゃないかな?」
『カゲカゲ!』
「…いや、それはどうかな?」
デントがいきなり面白そうな表情をして言ってきたため、私とヒトカゲは首を傾ける。でもその後私とヒトカゲ以外の皆が納得したように私たちの後ろを見てきたため、ますます疑問に思ってしまう。そして私たちに向かって後ろを振り向けと言ってきたため、私たちは後ろを振り向いた。
「…………ピチュー?」
『…カゲ?』
『ピッチュ!!』
「…ヒナ、お前の仲間になりたいみたいだぜ?」
「…え?」
『…カゲ?』
『ピチュゥ!!』
ピチューが私に向かって大きく飛び上がり、肩に飛び乗ってきた。その様子から一緒に行きたいということ、私の仲間になりたいということは分かった…でも……。
「でも、私はトレーナーじゃないんだよ?それでも良いの?ちゃんとしたバトルだってまだまだできないんだよ?」
『カゲカゲ…』
『ピチュピチュ!!!!』
ピチューは私とヒトカゲに向かって強く言ってきた。その言葉に、そしてその雰囲気に私は決めた。兄にいいのかどうか見たのだけれど、賛成しているみたいだ。そしてデントやアイリス、ルカリオも微笑んで頷いている。その後、ヒトカゲを見ると、一目で私と同じ気持ちなのが分かった…だから私は口を開く。
「ありがとうピチュー!これからもよろしくね!!」
『カゲカゲ!!』
『ピッチュ!!!!』
――――――――――それは、私とヒトカゲのほかにピチューが加わり、賑やかな旅の友として、そして未来のポケモントレーナーとして私の仲間になった瞬間だった。
妹の心境。
私トレーナーじゃないけどいいのかな…いやピチューと一緒にいたいし…まあいいか!