マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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妹は知っていた、この後起きる悲劇を…。


第八十八話~妹と英雄レシラム~

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは妹のヒナです。アイントオークに向かって歩いている途中です。ですが途中で兄が崖にいるシキジカを助けようとしたり、近くで隠れていたビクティニの力を借りて何とか遠くの方にある洞窟に着地できたみたいです。ここら辺は原作と一緒なのかな?

 

でもどうしようか悩む。これを兄に伝えた方がいいのかわからない。

でもちゃんとビクティニは無事に生きているし、騒動を止められるのは原作で見たことがあったから、何もしなくても大丈夫だと思う…でもこの後起きるであろう悲劇を私はどう見ていけばいい?どう行動すればいい?

私も兄のようにポケモンを救うための行動をしていけばいいのだろうか…その方がビクティニを救えるだろうか……?

 

 

「どうしたのヒナちゃん?」

『キバキバ?』

『カゲ?』

「え、あ…ううん……なんでもない」

「もしかしてサトシのことが心配かい?」

 

「うんまあそんなとこかな…」

『カゲェ…』

『安心しろ。あのサトシなら無事に合流できるはずだ』

「うんそうだねルカリオ。お兄ちゃんなら大丈夫だよね」

『カゲ!』

 

兄と合流するために急いで向かう途中、皆に心配されてしまった。考えすぎちゃったかと思いちょっと反省する。ビクティニは大丈夫。兄がなんとかしてくれるはずだとそう考えて、ただ走り続けた――――――。

 

 

「おーい!お前ら!俺たちはここにいるぞ!」

『ピカピィカ!!!』

 

 

「人が心配してたのに…」

「まあなんにしても、よかったじゃない」

『キバァ』

『城の洞窟だったのか…』

「あはは…お兄ちゃんってば……」

『カゲカゲェ…』

 

兄が私たちよりも高いところからこちらを見て手を振り、早く来いと言ってくる。私たちは無事に洞窟から出られたこと、兄が無事だったことに安堵した。

その後、シキジカと別れてからデントの話を聞いてこの城の昔の言い伝えを知る。まあまだその言い伝えにはいろいろと真実が隠されているんだけどね…でも言わなくても大丈夫か。

そしてお腹が空いたと言ったらルカリオがマカロンを取り出してくれた。デントと一緒に作ったらしく凄く美味しい。

 

「ありがとうルカリオにデント!」

『カゲカゲ!!』

 

「どういたしまして!」

『…急いで食べるな。喉に詰まるぞ』

 

「はーい!」

『カゲ!』

 

 

ルカリオはいつもの通りお母さんだ。そして私たちはその後城の中を通って大会への道を探す。兄はマカロンを食べながら歩いているみたいだ。そして確信した、ビクティニが近くにいるということを。だって兄の手にしていたマカロンを持っていってしまったのだから。兄は手に持っていたマカロンがないことに気づき、首を傾けている。

 

 

 

「…ってあれ?」

「どうしたのサトシ?」

『キバキ?』

 

「……いや、なんでもない」

「そう…?」

『キバァ…?』

 

 

「……………………」

 

アイリスとキバゴは兄の声に反応して何かあったのかと聞く。けれど兄が何でもないと言って微笑み、誤魔化してまた歩き始めた。でも周りに何かいるのではないかと警戒しているようだ。でもビクティニは姿を消すから見えないので警戒しても意味がないと思う。それに敵意とかないから大丈夫だし。

兄は念のためにルカリオに聞くことにしたらしい。ルカリオは波動を使えるから身体を消してるポケモンがいたとしてもすぐにわかる。でもルカリオはポケモンがいるということは分かっていたみたいだが、敵意などがないと感じとり、放っておくことにしたみたいだ。兄もそれに頷いて前を見て歩き出す。…おそらくビクティニが私たちに危害を加えたら行動すればいいとか思ってるのかなとちょっと苦笑してしまった。

 

その後ドレットさんに会い、大会までの近道を教えてくれた。そして見えてきたのが今まさに果樹園の収穫祭を行っている光景。私たちが走っていくと、近くを通っていく大きなゴルーグの姿が見えてきてテンションが上がった。あんなに大きいゴルーグは始めて見たからだ。そしてそのゴルーグがいるお店は何だろうと思い、私たちはその店まで走って向かう。すると店にはビクティニのいろんな品物を売っていた。

そしてお店を開いているジャンタさんからビクティニのこと、城を守ってくれているということを教えてくれた。

 

「これ1つください!」

『キバ!』

 

「あ、私も1つください!」

『カゲッ!』

 

 

「はいよ!あなたたちにも、ビクティニのパワーがつきますように…!」

 

 

ビクティニの小さなキーホルダーを買い、私は自分の持っているリュックにつけてみた。ヒトカゲがそれを見て喜んでいるし、買ってよかった。このビクティニのキーホルダーはパワーなどはつかないけれど、おそらくここでしか買えないものだと思ったから記念に買ったのだ。

…え、お金?お金は兄から貰ったおこづかいで買いました。この旅の中時々贅沢をしたいから兄にバトルで出た賞金をちょっとだけもらって買ってます。兄も私にお金を渡すのは嫌ではないようで、何も言わずに渡してくれます。でもいつか兄にもらったお金はちゃんと返すからね!

 

「ヒトカゲ、どうかな?」

『カゲカゲ!!』

 

 

――――その後、大会の受付まで行ってバトルの申し込みをする。…すると私を見た大会の係りの人がにっこりと笑って口を開く。

 

 

「君は出ないのかい?」

「うぇ!?わ、私はまだトレーナーじゃないから…」

『カゲカゲ…』

「そうかい…じゃあトレーナーになったら、またこの収穫祭で申し込んでね」

「わ、分かりました…!」

『カゲ!!』

 

「じゃあその時は俺たちもまた一緒に行こうぜ!」

『ピカチュ!』

「あ、私も私も!!」

『キバ!』

『俺も一緒に行こう。お前たちだけだとヒナとヒトカゲが危険だ』

「…君たち、僕のことを忘れないでくれよ?もちろん僕も一緒さ!!」

 

「あはは…」

『カゲカゲ…』

 

 

 

私の年齢でもトレーナーはいるらしく、係りの人も私とヒトカゲを見て申し込まないのか聞いてきたけど、私はバトルできないから首を横に振って断った。するとトレーナーになれる年齢になったらこの収穫祭に来てよと誘われてその時が来るのをちょっと楽しみになってしまった。

そうしたら兄たちがその時は一緒に行こうと言ってきたため苦笑する。私がトレーナーになった時、イッシュ地方に行く時はまた同じような旅になっちゃうのかなと想像してしまった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

その後、まあいろいろありました。バトルしている最中に兄のポカブとズルッグがビクティニの力を借りて強くなり勝利していたこと、兄がそれを疑問に思って首を傾けていることやカリータさんが兄たちにそのビクティニが実際に本物が近くにいるということを。そして兄がビクティニを呼び、マカロンで姿を見せてくれた。

 

「お前が力を貸してくれたのか?」

『ティニ!』

「そうだったのか…ありがとうビクティニ!」

『ティニティーニ!!』

 

兄は助けてくれたビクティニに礼を言ってマカロンをもっと食べろと勧めている。それにビクティニは喜び、くるっと一回転して兄に頬擦りをしている。

そしてその後外に出ようとしてしまったんだけど、私が止める前にもうビクティニは結界に阻まれ悲しみでどこかへ飛んで行ってしまった。

 

「ビクティニに会って謝らないと…!」

『ピィカッチュ!』

 

 

兄は自分がやってしまったことを悔やみ、ビクティニが行きそうな場所を聞いてから走って行く。私たちもその後を追って走り、そして見えてきたのは笑顔のビクティニと遊んでいる兄とピカチュウの姿。もう仲直りしたのかと驚いてしまったけど、まあ兄だからできることかと納得した。

 

その時にあの結界は一体何だったのか聞かれたけど…でもそれはあとで分かる話だと言っておいた。でもちゃんと言った方が良かったかな。この言い伝えに隠された本当の真実を…。

 

 

 

――――その後、モーモントさんからこの城に伝わる昔の話を聞いた。そして城の護りの柱のせいでビクティニがここから外に出れないということ、レシラムとゼクロムのことを知った。

そして兄はビクティニに海を見せたいと考えているようだった。ビクティニも海が見たいらしく、兄の言葉に喜んでいた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

―――――その後、まあいろいろありました。いきなり護りの柱が宙に浮いてしまいビクティニがそれを恐れて城の中心まで行ってしまったこと、城が浮かび、故郷へ戻るために行こうとしていること。

 

 

そして兄はビクティニを犠牲に城を動かそうとしているドレットさんのことを怒っているようだ。

私もその気持ちはわかる。この後起きる真実がもしも嘘だったら、このままドレットさんは故郷へと戻ろうとしていたはずなのだから。そしてビクティニを犠牲にしてもかまわないという気持ちで行こうとしていたはずだった。

龍脈が暴走しなければ、レシラムもドレットさんの従うがまま、ビクティニを犠牲に動いていただろう。だからそれに怒り止めようとする兄の気持ちはよく分かる。

でも今回は少しだけ違う。ドレットさんは故郷のみんなのために行っていて、欲のために動いているわけではない。だから兄も怒ってはいるけれど、激怒してドレットさんを敵として見て行動しているわけではない。ただ止めようとしているだけだ。だからゼクロムが力を貸してくれた。

 

「ゼクロム…!」

『カゲッ!?』

「サトシ!」

「ゼクロムに会えたのね!!」

『キバキ!!』

 

私たちはモーモントさんのヘリコプターに乗せてもらって空からその様子を見ていた。ゼクロムにのってレシラムを止めようとしている兄の姿を。そしてゼクロムに驚くドレットさんの姿を。

 

 

私たちはレシラムがゼクロムの攻撃を受けて地上に落ちた様子を見てから、城へと向かう。そしてドレットはようやく気づいてくれた。みんなの話を聞いて、そしてゼクロムとレシラムの攻撃のおかげで雲が消え、地上を見たことによって間違いに気づいてくれた。兄はその事実にため息をついて怒りを鎮める。私はリュックからオレンのみをだしてビクティニに食べてもらう。この後もしものことがあったらいけないから、オレンのみでできるだけ回復してほしいからだ。

 

「ビクティニ、食べれる?」

『カゲ!』

「ほらビクティニ。オレンのみ食べれば元気が出るぞ」

『ピッカ!』

 

『ティ…ティニ』

 

そしてビクティニがオレンのみを食べている間に、ドレットさんにゼクロムとレシラムが大地の怒りを鎮めるのだということ、この城の剣を使えということを教えてくれて行動することになった。

 

「そうか…!大地の剣で、もう一度龍脈を抑え込むんだ!…レシラム、ゼクロム。力を貸してくれ!!」

 

 

ゼクロム達が力を貸して城を戻そうと行動しているのだけれど、ビクティニの力を失った城はどんどん急降下していき、龍脈の近くまで落ちていく。そして力が城を襲い、ビクティニの結界となっている護りの剣がどんどん近づいてきて暴走していることが分かった。でもビクティニは結界のせいで外に出られない。このままではいけないと兄とピカチュウ、ドレットさんが残ると言ってきた。

モーモントさんの操縦するヘリコプターに乗りながらも無事かどうか祈る…できればこのまま原作のようにもとに戻ってほしいと思いながら、何もかも平和に戻ってほしいと思いながらも―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――――それがお前の真実か?』

 

 

 

 

 

 

「…え?うわっ!?」

『カゲ!!!?』

 

「ヒナちゃん!!!ヒトカゲ!!!」

『クッ…ヒナ!!ヒトカゲ!!!』

「あ、駄目だルカリオ!!君まで落ちたら!!??」

『だがッ!!!』

 

 

 

 

突風が吹き荒れ、ヘリコプターに襲いかかる。そして私とヒトカゲはその風のせいでヘリコプターから落ちていく。私は落ちながらもヒトカゲを掴んで離さず、抱きしめて目を閉じる。ヒトカゲも私のことを抱きしめてこの後起きるであろう衝撃に震えている。このまま落ちていくのか…私とヒトカゲは何もできずに、何も助けられずに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――――お前も、英雄としての器があるようだ…』

 

 

 

 

「痛ッ!?…あれ、レシラム?」

『カゲ!?』

 

 

 

落ちていく私たちをレシラムが助けてくれた。背中に私たちを乗せて空を飛んでいる。周りを見ているとヘリコプターに乗っているルカリオとデント、サザンドラに乗っているアイリスがこちらを見て無事な様子に安堵していた。そしてレシラムが背に乗っている私を見て話しかけてきた。

 

 

 

『お前のやるべきことは、真実とは何だ?』

 

 

 

「私の、やるべきこと…」

『カゲ…?』

 

 

 

おそらくレシラムは私を試しているのだろう。私の知っている真実を感じとり、そしてその真実にどう突き進むのか聞きたいのだろう。私は考えるまでもなく、決心した。このまま何もしないというのも嫌だ。ビクティニを、兄を何とか助けていきたいと…!

 

 

 

「城に戻りたい!お兄ちゃんたちを助けないと!!!」

『カゲカゲ!!』

「ヒトカゲも協力してくれるの?」

『カゲ!!』

「ありがとう!!…レシラム、私たちを城まで戻して!!」

 

 

『…いいだろう。お前の真実、確かに受け取った』

 

 

 

レシラムが城まで飛んで私たちを降ろしてくれた。城にはドレットさんの姿がなく、護りの剣が暴走し少しずつ範囲が狭まっているのが分かった。

そして、兄とピカチュウが私とヒトカゲに気づき、怒ったような表情になってこちらに近づく。

 

「何でここに来た!!危ないだろうが…早く戻れ!!!」

『ピカピカッチュ!!!!』

 

「嫌!私は…私たちはビクティニを助けたいの!このままじっとしてられないよ!!」

『カゲカゲ!』

 

「……どういうことだ」

 

 

 

兄は私の言葉で原作の知識について考えたのだろう。ビクティニがもしかしたらこのまま消えてしまうのではないかと誤解してしまい、眉間に皺を寄せて私に問いかけてきた。私はとっさに首を横に振って兄に原作は大丈夫だということを教える。でもそのせいでだったら戻れ!と言われてしまった。でも私は戻りたくない。

 

 

「このまま…ここにいても皆が傷つくだけ…だったら私は私のやるべきことをするだけよ!」

『カゲ!!』

 

「ヒナ、ヒトカゲ…分かった。でももしもお前たちが怪我をするようなことになったらすぐにゼクロム達に頼んで地上に戻すからな」

『ピカ!』

 

兄とピカチュウは仕方ないといった表情で私たちを見た。私とヒトカゲはお互いににっこりと笑って気を引き締める。この後護りの剣が暴走し、私たちを閉じ込めてしまうはず。その前にビクティニを元気にしなければならない。

 

「ビクティニ。ほらきのみだよ!元気出して…大丈夫だからね!」

『カゲ!』

「ビクティニ、元気出せよ…俺たちがなんとかしてやるからな!」

『ピッカッチュ!!』

 

 

『ティニ…』

 

 

 

ビクティニは少しずつだけど元気を取り戻し、私たちに向かって笑みを浮かべるぐらいに回復してきたようだ。これなら大丈夫かな―――――。

 

 

「うわっ!?」

『カゲッ!?』

「ヒナ、ヒトカゲ!!」

『ピカチュ!?』

 

 

護りの剣が狭まり、私たちに向かって近づいてきた。私とヒトカゲは微妙に兄たちから遠かったためか、護りの剣に押され、潰されそうになる。とっさに兄が助けてくれたからよかったけど、危なかった…。

 

 

「大丈夫かヒナ!ヒトカゲ!」

『ピカピカ!?』

 

「だ、だいじょーぶ…」

『カゲェ…』

 

 

ちょっとだけ空元気で私とヒトカゲが笑うのだけれど、兄とピカチュウはそれに険しい表情で見つめていた。でも怪我もなく無事だと分かり私たちを抱きしめてくれた。かなり強く抱きしめられてちょっと苦しい。でもピカチュウも私たちの頭を強く撫でてくれて、兄に抱きしめられて少し安心した。

 

 

「いいか。もう俺たちから離れるなよ!」

『ピカッチュ!!』

 

 

「うん…分かってる。でもこのままだとどんどん宇宙まで行っちゃうよ…ヒトカゲ!ひのこで周りを温かくして!」

『カゲッ!!!』

 

 

寒くなっていく周りに私たちの身体が凍っていくのを感じ、ヒトカゲにひのこで温かくしてもらう。そしてビクティニを励まして何とかしてもらわないといけない。さすがの兄でもこの状況はどうにもできないはずだから…ビクティニに何とか頑張ってもらわないと…!

 

「ビクティニ!お願い…あなたの力が必要なの!」

『カゲ…』

「ビクティニ…俺たちにできることは何でもやる…一緒に海まで行くって約束しただろ?だから絶対にここから抜け出そう!」

『ピッカッチュ!!』

 

 

『ティニ…ティーニー!!!!』

 

 

ビクティニが私たちの声を聞いて、力が出てきたようだ。ビクティニの身体が炎で溢れ、私たちの周りを飛んでから結界に向かって突撃する。

 

私と兄はお互いに顔を見てから頷き、口を開く。

 

 

「ピカチュウ、10まんボルト!!」

「ヒトカゲ、ひのこ!!」

 

『ピッカッチュゥゥウウ!!!』

『カゲカゲェェェエエ!!!』

 

 

『ティーニィィイイイ!!!』

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

―――――――その後、私たちは何とか護りの剣を吹き飛ばすことに成功して、ビクティニも原作とは違って姿を見せたまま私たちの周りを飛び回っている。そして城を元に戻すため、ドレットさんたちが城に降りてきて行動を開始した。もちろんレシラムとゼクロムも一緒に協力して城をもとに戻していく。

ビクティニも協力して一緒になって城を戻してくれて、無事に暴走していた龍脈が静まり、何とか元通りに戻ってくれた。よかったよかった…。

 

 

『ティニ!!』

 

 

「ビクティニ、約束通り海に着いたぜ!」

『ピカッチュ!』

『ティーニ!!!』

 

兄たちが海を見て感激しているビクティニと遊んでいる。デントがマカロンを取り出して、ルカリオが皆に配っている。そしてピカチュウやキバゴ、ヒトカゲが自分の持っていたマカロンをビクティニに与えて食べてもらっているのが見えた。私はそれらの光景を見ながらも、ため息をつく。

 

…私が事前に言っていれば、こんな悲劇は起きなかったんだということを。最初に言っておけばこんなことにはならなかったし、ビクティニも傷つくことなんてなかったはずだと思う。あとからどんどん後悔の気持ちが高まっていくのを感じた。

 

 

「ヒナ。あまり気にするなよ」

「…え?」

「お前、今凄く後悔してるんだろ?俺の妹なんだからわかるよ」

「…そんなにわかりやすい?」

「ああ、先に原作の話をした方がよかったって思ってるんだろ?でも、ヒナは俺たちを助けようと動いてくれた。ビクティニを元気にしようときのみをくれた…それだけで十分だと思うけどな?」

「でもお兄ちゃん。私が原作の知識を早く言っておけば、ビクティニは傷つくこともなかったかもしれないのに…」

「知識を喋っただけで、自分の望み通りになるとは限らないだろ?大切なのはヒナがどう行動して、どう助けていくかだよ」

「どう、行動して…どう助けていくか……」

「やらない後悔より、やる後悔だ。俺はいつもそうやって行動してるからな。ヒナ、まだまだお前は幼いんだから、お前ができることだけでいいから…今は後悔せずに突き進め」

 

「……分かった。ありがとうお兄ちゃん!」

 

 

やらない後悔よりやる後悔…つまり兄は私に原作の知識を話すよりもどう行動していくのかを考えろと言いたいのだろう。そして無茶をせず自分でできることだけをやってくれと言いたいのだということが分かって、私は兄に向かって微笑んだ。

 

 

「よし皆!一緒にあそこまで競走するよー!!」

『ティニ!』

『カゲカゲ!!』

『ピッカッチュ!!』

『キバキバ!!』

 

 

 

 

「…これで、一件落着だな」

 

 

 

 




妹の心境。
 私のできること…よし、頑張っていこう…!






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