兄は何も知らない。この後起きる出来事を…。
こんにちは兄のサトシです。アイントオークに行くために歩いている途中です。遠くですが町が見えてきたのでそろそろだと思います。バトルが早くしたいです。
『―――――シジィッ!!!!』
「…ん?おいあれって」
『ピカピ?』
何やらポケモンの鳴き声がしたような気がして周りを見渡す。そして見つけたのは崖から落ちそうになっているシキジカと、落ちそうになったシキジカを助けようとしている仲間のシキジカ。
「どうしてあんなところにいるの?このままだと…!」
『キバキ!!』
「これは何とかしないとだね!!」
「私、行ってくる!!」
『カゲカゲ!!』
『いや待てヒナにヒトカゲ。お前たちだと危険だ、ここは俺が行こう―――』
「いや俺が行くよ!ルカリオは皆のことを頼んだぜ!」
『ピッカッチュ!!』
「ちょっ!?サトシ!!」
『キバ!!』
この崖ならば俺でも行けるはずだと思い、走ってシキジカたちまで行く。そしてギリギリのところでシキジカが落ちそうになったが、何とか助けることができた。
「へ?うわっ!?」
『ピィカ!?』
『シキィィ!!?』
「お兄ちゃん!!」
『カゲカゲ!!』
「危ないサトシ!」
「ダメだアイリス!!」
片足の岩場が崩れ、落ちそうになったところを何とか頑張って踏ん張るが、足元の岩場がすべて崩れてしまい落ちそうになる。…でもその時に何か力が流れ込んできたような?とっさにジャンプしてもいつもとは大幅に高く飛び上がってしまい、崖の向こう側にある洞窟まで飛ぶことができた。…何だったんだ今のは。
妹たちの方を見ると、デントが必死に皆を止めようとしているのが見えた。おそらく俺たちが落ちそうになっていたから助けようと動き、それに気づいたデントが皆まで落ちたらどうする!?と考えて止めていたのだろう。
そして俺たちが無事なことに気づき、安堵のため息をついた。
『ッおい怪我は!?』
「だ、大丈夫…俺たちはこっちから行くよ」
『ピィカ…』
「分かったわ…気を付けてよサトシ!」
『キバキバ!!』
「危ない目に遭ったら逃げるんだよ!」
「分かってる!後で会おうぜ!!」
『ピカ!』
俺はそのまま洞窟の中へと入り、出入り口を探す。シキジカも俺たちの後ろを歩き、出入り口まで一緒にいるようだ。
この洞窟には風が来ているからおそらく出口となる場所があるはずなんだけど…暗くておまけに分かれ道が多くあって探すのに大変そうだ。
『ティニ!』
「へ…?」
何かポケモンの鳴き声がしたと思ったら、この洞窟の出入り口までの道が突然頭の中で流れ込んできた。今ならばどこに行けばいいのか、どの道を通れば出られるのかがわかる…どういうことだ?
周りを見ても何もない…それに音も何も聞こえない。
『ピカピ?』
「あ…ああピカチュウ……なんでもない。行こう」
『ピカ』
ピカチュウが立ち止まって周りを気にする俺を心配し、肩に乗って大丈夫か聞いてきた。俺は周りを警戒するのをやめてピカチュウに微笑み、頭を撫でる。
とにかく、危害を加えるわけではないようだから気にしないで出口まで歩こうと思い、行動を開始した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
出口に出ると、そこは何やら屋内の中のようだった。ベランダのような場所に出ると、かなり高いところまで歩いて来たらしく、絶景だ。ピカチュウとシキジカが喜んだような声を出す。そしてふと遠くを見ると、走ってきている妹たちの姿が見えて、俺は手を振ってここにいると叫んだ。
俺たちの無事な姿にようやく安心したのか、微笑みながら走ってこちらまでやってきた。
―――――合流した俺たちは、シキジカたちと別れてからデントにこの城についての話を聞いた。
大地の剣と呼ばれているということや遠くの谷の方から空を飛んできてこの場所に突き刺さったということ…かなり詳しく教えてくれて俺たちは興味を持ってデントの話を聞く。そして果樹園の話に移り、下の方に見えている美味しそうなきのみを見ていてなんだかお腹が空いてきたと感じてしまった。
『…サトシ、これを食べろ』
「マカロン!!!??ルカリオ、食べてもいいのか!?」
『ピィカ!?』
『ああ、そのために作ったからな』
「もちろん、僕とルカリオで作り上げたお菓子は絶品だよ!」
「大丈夫!知ってるわよ。私とキバゴにもちょうだい!」
『キバキバ!』
「あ、私とヒトカゲにも!!」
『カゲカゲ!!』
ルカリオが手に持っている箱の中にマカロンがたくさん入っていて、俺たちは目を輝かせてそのお菓子に飛びつく。ルカリオとデントは苦笑しながらもマカロンをくれた。…ああ、やっぱり美味い。
そしてマカロンを食べながら城の中に入り、大会の受付会場まで向かって行く。
「…ってあれ?」
「どうしたのサトシ?」
『キバキ?』
「……いや、なんでもない」
「そう…?」
『キバァ…?』
手に持っていたはずのマカロンが消えてしまい、俺は周りを警戒する。でもこんな奇妙なことは先ほど洞窟でも起きたからもしかしたらさっきのポケモンが俺たちの後を追っているのかと思ってしまった。
俺はルカリオの近くまで行き、話しかける。
「なあルカリオ…ここに何か身体を消して俺たちの後を追っている奴っているか?」
『………気にするな。あれは危害を加えようとするポケモンじゃない』
「ということは、やっぱりポケモンの仕業ってことか…」
『ああ。だが敵意というものを感じない…ただの悪戯だろうな』
「なるほどな。分かったありがとう」
『いや、何かあればまた伝える』
「おう」
ルカリオはもうとっくに何かがいることに気づいていたらしい。でも危害を加えないでただついて来ているというだけらしいから気にしないで行こうと思う。これで危害を加えたり仲間たちを傷つけたりしたらいろいろと制裁すればいいしな。
その後、花火の音が聞こえてそろそろ大会が始まるのだということを知り、慌てて走っている途中でドレットさんに会い、バトルの受付までの近道を案内してくれた。
そしてようやくバトルが始まる―――――――――。
…やっぱり様子がおかしいような気がする。ポカブのかえんほうしゃのようなひのこやズルッグの強靭なずつきをバトルをしている最中で起きていくことに俺は首を傾けた。もちろんバトルに勝利したポカブやズルッグを褒めるのだけれど、でも急にそんないつも以上よりも力強い技が出るだなんて…そういえば、俺もあの崖の時に大きくジャンプできたからもしかして後を追っているポケモンがやらかしたのか?俺はそう疑問に思い、ルカリオの方を見る。ルカリオは俺の言いたいことが分かったらしく、小さく頷いてくれた。
やはりずっと俺たちの後を追っているポケモンがいるようだ。いったい何なのだろうと思っていたら、カリータという少女が教えてくれた。力を与えてくれたのはビクティニと呼ばれているポケモンだということを…。
これで色々と納得ができた。なるほど、ビクティニなら絶対にできることだと思い、俺はビクティニに向かって声をかける。するとビクティニが声を出してくれた。そしてマカロンを出してビクティニにあげようとすると姿を現してくれた。
…でもビクティニはここから外に出られないということが分かった。なにやら結界のようなものがあってビクティニが外にでた俺たちのもとまで行けず、悲しい顔をして離れて行ってしまった。俺たちはその後を追いかけるために、ビクティニがいるであろう場所を探し回った…そしてビクティニがいる場所でちゃんと謝って仲直りをしたからよかったと思う。
…でもなんでビクティニだけがいけないのだろう…あの結界は一体何なんだ?
「なあヒナ…さっきのって一体…」
「…すぐにわかることだよ。昔々のお話だからね」
「昔々のお話…?」
妹に聞いてみたんだが、苦笑をされて後ですぐにわかると言われてしまった。でも昔々って一体何なんだろう。そう思っていたが、村長が本を取り出して昔の言い伝えを教えてくれた。そしてビクティニがこの場所に取り残されているわけを知ることもできた。
「ビクティニ…」
『ピィカ…』
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――――――――まあそれから、いろいろあった。護りの柱が突然動きだし、城に集まってきたり、ドレットさんが大地の民のためにいろいろと動いていたということを俺たちは知ってしまった。
大地の民のためにやるということはわかる。そして城をもとの場所に戻し、故郷を復活させようとする気持ちもわかる。けれどそれでビクティニを犠牲にするのは話が違うだろう…!
それに知ってしまった。ビクティニの過去に起きた出来事を。この城を動かしてはいけないという真実を…。
だから、止めないといけない。
「行こう、ゼクロム…」
―――――全部を、終わらせに。
兄の心境。
止めて、全部の問題を解決させてやる…!