マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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知らない方が幸せなこともあったりするものだ。


第七十四話~人から見たら…~

 

 

 

 

 

 

 

こんにちはケンジです…ってこれ言いにくいな…。まあいいか。

今日はいつも通りオーキド研究所にいるポケモンたちの健康をチェックしながらも、ご飯を与えたり、問題がないかどうか見たり、オーキド博士の研究を手伝ったりしていますよ。

 

「ベイリーフ、ここまでで充分だよ。ありがとう」

『ベイ!』

 

 

『ダネダネ!』

「あ、フシギダネ。今日もご苦労さん」

『ダネ!』

 

 

ポケモンフーズを配り終え、ベイリーフにオーキド研究所の建物の近くまで手伝ってもらい、食器などを片づけていたらフシギダネに出会った。フシギダネはいつも通り周りを見回りしているようだ。

だが挨拶をした瞬間、いきなり轟音が迷いの森の中から響いてきたため、笑顔だったフシギダネが一気に豹変しその地響き等がする場所まで走っていってしまった。

 

 

「行ってらっしゃいフシギダネ…また草ポケモンと水ポケモンが争ってるのか…」

 

 

ケンジは小さく呟きながら轟音と地響きが今でも起きている迷いの森の方を眺める。そしてすぐにフシギダネの強力なソーラービームが上空に放たれたのを見て、ああ今日もいつも通りだと思える。いつもの平和な時間、そして平穏なトラブルなだけだ。

 

 

「ああいけない。そろそろ見回りをする時間だな…」

 

 

ケンジはフシギダネのようによく森の方に行ってポケモンに問題がないかどうか確かめることが多い。マサラタウンにヒナちゃんがいた頃はよく森の方へ遊びに行っていたから、その時になにかポケモンたちに問題が起きてもすぐに彼女が気づいてくれて助かっていたけれど、今では自分たちでやらないといけない。

だがそれはヒナちゃんが森の中に散歩に行くとしても、本来ならケンジがやるべき仕事だったのだ。だがヒナちゃんが率先して手伝いたいと言ってくれたからオーキド博士と相談して決めて、遊びのつもりでちょっとした見回りなどもやってもらったりした。

本当にヒナちゃんは良い子だと食器を片づけ森の方へ歩き出すケンジはしみじみとそう思った。

 

 

見回りでは軽く森の方を散歩しながら何かポケモンたちに異変がないかどうか見渡して調べたりする。たまにポケモンがこのオーキド研究所の森の中に迷い込んだりするため、ちゃんとトキワの森まで案内したり、ここに残りたいときはオーキド博士に言って歓迎する。

でも今日は迷いの森の方が騒がしいようでこちらではあまりにも静かだ。

 

 

「あれ、ドダイトス?」

『ドッダァ』

『コラッ!』

『コラッタ!!』

 

「ああ、コラッタの世話をしていたのかい?お疲れ様」

『ドダァ!』

 

歩いていると大きな身体のドダイトスがコラッタ達に背中の実を分けて食べさせているのが見えてケンジはその微笑ましい様子に笑みを浮かべる。

 

ドダイトスはよく周りのポケモンたちの喧嘩を優しく止めて、宥める役目を持っている。厳しく叱り、時には怒鳴り込むフシギダネとは逆で優しい兄貴分のようだとポケモンたちは思っているようだった。他にもベイリーフはちょっとおっちょこちょいだけど姉のようにポケモンたちと接しているし、ジュカインはほとんどを1匹で過ごしているけれど、たまにポケモンたちが困っていたら無言でそれを助ける優しさを持っている。…こうして考えてみるとサトシのくさタイプのポケモンは周りのポケモンたちに優しい子ばかりだ。

サトシのポケモンはタイプごとに性格も違っていて、例えばひこうタイプは周りをよく見て判断し、冷静に問題を解決したり探し物を見つけたりする子が多くいるし、ほのおタイプはマイペースにバトルしたりのんびりしたりと自分たちのペースで過ごす子が多い。…水タイプはそうだな、トラブルメーカーがいたり、くさタイプのように周りの面倒をみたりする子で2つに分かれる。ほとんどがトラブルメーカーばかりだけれど…。

ベトベトンはいつも通りオーキド博士にくっついたりするし、ケンタロスは走るのが好きで…本当にサトシのポケモンは個性で溢れているとケンジは思っている。

 

ドダイトスたちと別れたケンジはまた森の中を散歩する。空から見るとポッポの群れが飛んでいるため、もしかしたら近くにピジョットが来ているのかもしれないと考える。…そういえばヒナちゃんがいる間はピジョットやゴーストといったサトシと別離したポケモンたちが多く来るようになっていたけど今は違うなぁと疑問に思う。ヒナちゃんがサトシと一緒に旅をしてからは見かけなくなったのだ。やはりサトシの妹であるヒナちゃんのことを可愛がっていたいからマサラタウンに遊びに来たのかなと思いつつ歩き続ける。

 

 

 

―――――――――――――すると、本日2度目のソーラービームが放たれたのが確認できた。

 

 

 

「ありゃ…もしかしてまだ喧嘩を止められていないのかなぁ…」

 

 

 

ケンジはそのソーラービームを見ながらも呟いた。

最初見たときは驚いたものだが、今ではフシギダネが喧嘩を牽制するためにソーラービームを放つのは日常茶飯事であり、マサラタウンの名物となりかけている。

マサラタウンの住人はこのフシギダネが放つソーラービームを見て、これに関わるお土産か何かでも作ってみようかとオーキド博士に相談していたらしい。

そして最近、出来上がったのがソーラー饅頭というフシギダネがソーラービームを放った瞬間の絵がある饅頭だったりする。ヒナちゃんたちがイッシュ地方に行ってからできたお土産品だからきっと帰ってきたら驚くんだろうなぁと饅頭を食べながらケンジたちはそう思ったこともあったりする。

 

 

 

「ああ、平和だなぁ…」

 

 

 

 

ケンジは未だ途切れないフシギダネのソーラービームを見ながら呟いた。

大きな問題が起きればすぐにポケモンたちがケンジたちを呼びに来るため、このソーラービームはフシギダネでも喧嘩を止められるという証しでもあるのだ。

それに毎日が喧嘩などが絶えないけれど、泥棒が来るという大きな問題は起きてはいないため、この研究所およびマサラタウンは本当に何も起こらず平和なものだとケンジは毎日のように感じている。

 

 

 

 

 

 

 

 

何も知らないからこそ、毎日が平和だと感じているのだ。

 

 

 

 




特になし。

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