マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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マイペースな箱入り娘に出会った。


第六十九話~妹はある少女に出会う~

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは妹のヒナです。まだまだシッポウシティまでの道のりは遠いです。ですが途中でヤブクロンと子供たちを説得したり、卵をもらったりしていたので、目的地に着くまでの旅路もいいものだと思いました。

途中でサングラスかけているメグロコにも出会いましたが、以前のロケット団並みに吹っ飛ばされるのを見て同情してしまいましたよ。

あと、まだ卵は生まれていないのだけれど、いつか生まれてくる時が楽しみです。

 

そして今日、いつものように歩いていたら、ある少女に出会いました。だけど何だかせっかちそうな感じです。例えばであった時も――――。

 

「どいてどいてどいてぇ!!!!」

 

「え…うわぁあ!!」

 

少女が走って私たちに向かってきて、ぶつかりそうになった。でも私とヒトカゲはルカリオに抱えられて、兄とピカチュウ、アイリスはとっさにジャンプして避けていた。でもデントは少女のとっしんにも似た走りに避けきれずぶつかってしまい近くにあった川に落ちてしまった。

 

そして今、デントの服を乾かすために私たちはたき火をしている最中だ。ちなみに少女はぶつかったことをずっと謝り続けている。

 

 

「ご、ごめんなさい!ごめんなさい…本当にごめんなさい!!!」

「い、いや…もういいから…」

 

デントは苦笑して少女にもう謝らなくていいと言う。その声に少女が申し訳ないような表情でまたもう一度謝罪をした。…というか、少女というより、ベルだよね。よく覚えてるからわかる。この後どうなるのかも知ってるし…どうしようかな。

 

 

何者なのかアイリスが聞いたらベルがアララギ博士に連絡をして、兄に見せた。そして分かったことは、兄のバッチケースを渡すのを忘れてしまったということ、ベルの自己紹介、ベルがバッチケースを持ってきてくれたことである。

ちなみにアララギ博士の話がまだ終わっていないのに電話を切ってしまっていたことや、デントの服が渇くぐらいの時間をかけていてもバックの中に入っているはずのバッチケースが見つからないベルに私やヒトカゲが微妙そうな表情を浮かべていたのは言うまでもない。

兄やピカチュウは自分のバッチケースのことだから微妙そうな表情というよりも苦笑をしてどう対応していこうか悩んでいる顔だ。まあベルがわざわざ持ってきてくれたと思ったら忘れてきたっていうのは怒ったほうがいいのかどうか迷うよね。

そしてようやくバッチケースが出てきたと思ったらそれは埃に汚れていて新品のようには見えない。ベルの持ってるバックの中ってどうなってるのか少しだけ気になってしまった。

 

「はいこれ、アララギ博士から頼まれてるバッチケースだよ!」

「サンキュ…これでよしっと」

 

兄は少し汚れているバッチケースを受け取り、その中に最初のバッチを入れる。それを見たベルが興味深そうにバッチケースの中を見ていて、私にも見せてと頼んできた。それを兄は了承し、バッチが入っているバッチケースを渡そうとする。

 

でもその後すぐにチラーミィが出てきてバッチケースを奪い取りに来ると分かっていたから、私はルカリオに頼んでおこうとしたんだ…けど……。

 

 

『チラッ!!』

「ああバッチケースが!?」

 

「おいゴラ待て!!人の奪い取ってんじゃねえぞ!!」

『ピッカ!!』

 

 

『チラァッ!?』

 

 

「あーあー…」

『カゲェ』

『ああ、いつも通りだな』

 

 

兄とピカチュウがそれぞれバッチケースを奪い取ったチラーミィに一瞬で近づいて攻撃をしていた。兄は普通に回し蹴り、そしてピカチュウはその回し蹴りで宙に浮いたチラーミィにアイアンテールでバッチを取り返しつつ地面に叩きつける。

一瞬で終わってしまった出来事にベルを含むアイリスとキバゴ、デントは茫然としていて、それ以外の私たちは遠い目をしてその光景を見ていた。

 

 

 

――――――その後、チラーミィは皆の前でバッチケースの汚れをふき取り、謝罪をしていた。みんなもバッチケースを奪い取ったのは汚れを綺麗にしたいということだと分かって納得していた。まあこれでもう安心だと思ったんだけど、ベルがやらかしました…はい。

 

「可愛い――!!決めた!私チラーミィをゲットしちゃおうっと!!」

『チラァ…?』

 

「え…?ちょっおい!!」

『ピィカッ!?』

「何言ってるのいきなり!?」

『キバキ!?』

「ははは…ずいぶんとマイペースな子だね…」

 

チラーミィの可愛さに惚れたベルがさっそくポケモンバトルを仕掛けてチャオブーを出してきた。そしてチラーミィはバトルだと分かりすぐにチャオブーを警戒しながらも体勢を整える。当然私たちはその行動に驚きながらポケモンバトルを見ていた。ルカリオなんて可愛いからゲットするトレーナーもいるのか…と呟いているし、アイリスとデントはポケモンバトルを見ながらも呆れたような表情をしている。

わたしやヒトカゲ、ルカリオはとにかくこの騒動が終わるのを待つことに決め、少し離れた場所で座ってポケモンバトルを眺めている。

 

でもチラーミィが速いのでチャオブーの攻撃が当たっていないのは凄いと思う。確か兄のピカチュウも本気を出せば残像が見える程度の速さだということは知っているから、ポケモンバトルで素早さというのはかなり必要だということも分かっているけれど…これでベルのゲットって出来るのかな?

 

「これってうまくいくと思う?」

『カゲ…カゲカゲ?』

『…さて、あのベルという女次第だろうな』

 

ルカリオはベルがチラーミィをゲットしようがしまいが興味はないみたいだ。でも私とヒトカゲは気になるのでじっくりとその様子を見る。その間にもバトルはチラーミィのくすぐるによって不利に動き、チャオブーが倒されてしまった。そしてゲットしたいと諦めきれないベルは強引な手段に出る。それは何なのか。

 

 

――――兄に頼み込むという愚策をしたのだ。

 

 

「ねえサトシ君!私バッチケース持ってきてあげたでしょ!?その借りをチラーミィを捕まえるために協力することで返してほしいの!」

「…無茶苦茶だなそれ」

『ピッカ…』

「無茶苦茶は言ってないでしょ!?ほら早く私に借りを返して!」

 

「………………」

『………………』

 

 

 

当然兄とピカチュウは自分勝手なベルの言い分に不機嫌になる。

どうして無茶苦茶だと兄が言うのか。それは、バッチケースを持ってきてくれたのはアララギ博士が忘れてしまったというあちら側の失敗であり、兄がベルに借りを作ってしまった行為ではないからだ。そしてわざわざバッチケースを持ってきたベルについては兄たちは感謝しているようだが、ベルの我儘を聞くようなことではないと考えているはずだ。

デントとアイリスが不機嫌な兄たちのことを察知し、このまま近くにいてはヤバいと思ったのか、私たちの方へと静かにやってくる。そして私の隣にいたルカリオが兄やピカチュウの雰囲気を感じ取って無意識に身を引いているのが分かった。…これもうベル大丈夫じゃないよねチラーミィゲットフラグ叩き折れちゃったよね。

そう思っていたのに、何故か兄とピカチュウははベルに何も言わずただチラーミィのゲットに協力していた。

 

「…ピカチュウ」

『…ピカ』

 

『チラァ!!?』

 

 

ピカチュウのボルテッカーによってチラーミィがその一撃で倒れそうになっている。そしてその様子を見たベルがバックの中からボールを取り出そうとするけれど、なかなか出てこなくて、その間にチラーミィが復活し逃げようとする。

 

「ああ待って!…あったわ!」

『チ、チラ!?』

 

埃だらけのボールを見てチラーミィがすぐにベルの肩に飛び乗りボールを綺麗にしていく、そしてその拍子に捕まえることができてあっけなく終わってしまった。…あ、でもまだ終わってないみたいだ。

 

 

「よしやったわ!チラーミィゲットよ!さすが私ね!」

「…そうかそうか良かったなベル」

 

 

「ええ!ありがとうサト…シ君?」

 

 

 

ようやく兄の様子がおかしいことに気づいたベルだったけど、もう遅すぎる。ベルは兄の怒りをかってしまったのだからもう逃げられない。

ベルは兄とピカチュウの異変を感じ取り、その様子に恐れているようだ。そして私たちの方を見て助けてと視線をよこす。

…けど、まあ自業自得ということで私たちはベルに同情するだけして、兄から助けようとは思ってはいないけどね。ここで助けようとしたら兄が余計に怒るし。

 

 

そして兄とピカチュウは見るものすべてが怖がるような笑顔を浮かべながら、ベルに近づいて言う。

 

 

 

「ちょっと話したいことがあるからそこに座れ?あ、正座以外は却下だから」

『ピッカッチュ』

 

 

「え…?」

 

 

 

 

 

―――――――それからどうなったかって?…まああれです。もう自分の我儘やマイペースで人を巻き込むような行為はしなくなったと言っておきます…。

 

 

 

 

 




妹の心境。
 イッシュ地方のキャラ崩壊が凄まじい…。





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