兄はこの事実に苛立っている。
どうもこんにちは兄のサトシです。
ロケット団をどうにかしたいからいろいろと話し合いをしたんだけど、いつの間にか俺自身が指導者になっていました。
え?どんな話し合いをしたのかだって?まああれだよ、世の中には知らない方がいいこともあるってことだよ。
でも話し合いの内容はどうでもいいし、ロケット団の指導者になったということもどうでもいい。
まあちょっとだけ暴走したなと思うことはあるのだけれども。一番問題にすべきことと言ったら目の前に広がる光景だろう。
『ニャー…早くこっちに来るのニャ!』
「この落とし穴でジャリボーイを捕獲してサカキ様に献上すれば…」
「幹部昇進支部長就任良いかんじーよ!」
「…………」
ピカチュウを狙ってよく襲いかかってきていた三人組が今度は俺の方を狙ってくるようになった。指導者になって黒幕として君臨すればもう来ないと思っていたのに、あいつらは何かと俺に関わってくる。
正直言って、うざい。
思わずロケット団に向かってピカチュウの十万ボルトを仕掛けてしまうほどだ。
まあ昔からの仲だし、最初は俺が指導者になることに反対だった三人組だけれども、話をしてみて少し…ほんの少しだけ良い奴だと思えたし、ピカチュウも微妙な表情を浮かべながらニャースと話していた。
だからもう大丈夫。なにも問題ないと思っていたのに、毎日やってくるロケット団の矛先がピカチュウから俺に変わっただけだった。
しかも攫われた場合ロケット団本部に連れて行かれるから面倒だ。
「あいつらったら…ちょっとあんたたち!サトシを狙うのはよしなさい!!」
『チョケチョケ!』
「そうだ!サトシを連れ去ろうとするな!」
「カスミ…ケンジ…トゲピー…」
『ピカピカチュウ!!!!』
「ピカチュウ…」
遠い目をしている俺の前に出てロケット団から守ろうとしてくれる仲間たちを見ると涙が出てくる。
皆に会えて良かったと思うのと同時に、この問題を早く解決しなければとも思う。
涙を拭いて俺はカスミたちより前に出た。
「ちょっとサトシ!」
「大丈夫だカスミ。俺がなんとかする」
「何とかって…」
「大丈夫だから!ピカチュウも攻撃しようとするなよ?」
『ピィ…ピカチュ』
俺はロケット団の方を向いて大きく口を開いた。
「いいかロケット団!もうカスミたちに迷惑かけようとするな!!」
「…へ?」
「俺たち、ジャリガールどもには迷惑かけてないけど?」
『どういう意味ニャ?』
「俺を攫おうとすることそれすなわちカスミたちにも迷惑をかける行為だ!」
「ま、待ちなさい!私たちはサカキ様のことを考えて…」
「お前らにとってサカキが大事なように、俺にとってはポケモンたち、仲間たちが大切なんだよ!!」
大きな声で叫び、ロケット団に向かって指を指す俺。何というか、気持ちが向上していたのだろう。妹がいつも言う言葉に例えると、暴走に近い行動だったと思う。
「大体、正義のロケット団になるなら、悪いことはしない!慈善活動第一優先だって教えただろ!!だから必要なとき以外俺のもとに来んな!攫おうとすんな!!」
大きな声で叫んだのが聞いたのだろう。ロケット団は感動したような表情で俺を見つめてきた。ちなみにカスミたちも何故かロケット団と同じような表情をしていた。
『いいこと言うニャジャリボーイ…』
「そうね。私たちは正義のロケット団になったんですもの」
「悪かったなジャリボーイ!俺たちやることあるから帰るぜ!」
「おう!!」
これで終わった。もう大丈夫だとカスミたちの方を見てみた。
何故かカスミたちが涙ぐんでいてびっくりしたけれど、埃が入ったからとかなんとか言ってたし気のせいか?
俺は抱きついてきたピカチュウを優しく撫でて、笑いかけた。
『ピカピ!ピカチュウ!!』
「もう大丈夫だぞピカチュウ」
『ピッカ!!』
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ただしこの後、俺が必要な時というのは毎日やってくるらしく。俺を連れ去ろうとロケット団が襲撃するのは日常茶飯事になってしまった。
この原作のフラグが折れないことに苛立ち、襲撃するロケット団を空高く吹き飛ばすのも日常の一つになったのはいうまでもない。
「うっぜぇ…」
『ピカピカチュ…』
兄の心境。
ロケット団を吹き飛ばすのがストレス解消のひとつだ。