思考というのは十人十色それぞれ違う。
こんにちは兄のサトシです。ペンドラー騒動の後、すぐにドリュウズについてアイリスに聞いてみました。するとアイリスから昔の話を聞かせてくれて、いろいろと知ることができました。
アイリスが話す内容を、俺を含めた皆で真剣に聞く。ふと妹の方を見てみたが、苦笑しているような微妙な表情を浮かべていて、もしかしたらこれは原作で話に聞いていたかもしれないと思った。でも今はアイリスの話だ。話はアイリスが今よりも幼い頃に起きた出来事だった。
ドリュウズとアイリスが出会ってからのこと、バトルに連勝していたこと、…そして初めての敗北のこと。
「――――――ドリュウズは負け知らずだった。だから修行の旅に出てからも、何度も何度も励ましたわ…でも、なかなかうまくいかなくて…」
「…それは」
アイリスの話を聞いて少しだけ分かったような気がする。周りを見ていても、負け知らずなだけではないだろうという意見は一致しているようだった。これは、アイリスとドリュウズの考えがすれ違って起きた出来事なのだと俺たちは理解したのだ。…でも、これについては俺たちで解決する問題ではないということも分かった。
「それだけじゃないんじゃないかな?」
「…え?どういうことなのデント…?」
『アイリス。ドリュウズはペンドラーとのバトルでは最初は戦いを放棄してはいたが、その後ちゃんと戦っていただろう。どういう意味なのか分かるか?』
「……ドリュウズは、戦うことにショックじゃない…?」
「そうだアイリス。そのバトルをした時のことを思い出してみろよ。ドリュウズはお前に何か伝えようとしたんじゃないのか?」
「ドリュウズは…ドリュウズは…そうだわあの時…」
何か思い当たることがあるのだろう。アイリスはドリュウズの入っているモンスターボールを取り出して見つめて考え込んでいる。俺たちの話の後考え込んでいるアイリスに妹が話しかけた。
「アイリス。ポケモンっていうのはね、ちゃんと自分の気持ちを相手に分かりやすく伝えようとしているんだよ。だからドリュウズもアイリスに何か言いたいことがあるんじゃないかな?…アイリス、ドリュウズの気持ちをちゃんと分かれば大丈夫だよ絶対」
「…うん。分かった!ありがとう皆!!」
アイリスが考え込んでいたせいで俯いていた顔を上げ、俺たちに礼を言って走っていく。しばらくドリュウズと2人っきりで話がしたいからとキバゴのことを俺たちに頼んでいってしまった。…ああ、これはしばらく帰ってこないかもしれないな。もう姿が見えないアイリスに俺たちは苦笑しながらも少しだけ良かったと思えた。この後の結果がどうなるか分からないけれど、でもおそらくもう大丈夫だ。
だが妹とヒトカゲは違うらしい。アイリスが離れていった場所をずっと眺めて不安そうだ。
「…大丈夫かなアイリス」
『カゲェ…』
「ヒナ、ヒトカゲ。心配することはないって」
「お兄ちゃん、それ予測でしょ…」
「いや違う、俺の勘」
「勘も予測と一緒だからね!!」
『ヒナ、サトシの言うことにいちいち反応していたらキリがない』
「…うん、ルカリオのそのスルー力が私には欲しいかな」
「酷いなお前ら…」
『カゲェ……』
『ピィカッチュ…』
『キバキバ…』
「ははは…」
―――――――――結局その後、アイリスとドリュウズが話をして擦れ違いだったお互いの考えを認めた。そしてドリュウズがきあいだまという技を習得し、アイリスとの仲もまた元に戻っていき、リベンジしに来たペンドラーに襲われるというトラブルもあったが、それはなおさらドリュウズとの仲を元通りにする出来事に過ぎなかったといえるだろう。
「一件落着だな?」
「…お兄ちゃんが言うとまた事件が起きそうな気がするけどね」
「それを言うなって…とにかく、ドリュウズと仲が元通りに戻って良かった」
兄の心境。
事件が起きたら全部叩き折ればいいだけだ。