兄は相変わらずのようだ。
こんにちは妹のヒナです。今日兄がジム戦をします。ジムの場所がどこにあるのかわからないけど、アイリスが案内してくれるみたいなので安心です。でもジム戦の前にちょっと市場へ行って買い物をして朝ごはんを食べてから行くことになりました。ですが市場で…私たちのポケモンを見て興奮する変人…じゃなくてデントに会いました。
キバゴを最初に見てアイリスに良く似合うポケモンだと褒めていたのですが、次にピカチュウとヒトカゲとルカリオを見てイッシュでは見ない珍しいポケモンたちに興奮気味のようです。ルカリオはともかく、確かにピカチュウやヒトカゲはカント―地方でよく見るポケモンだからここでは珍しいよね…でも凄い語りっぷりです。いろいろと話しているのですがぶっちゃけ私たち全員聞き流しています。
というより凄く怖いので私もヒトカゲも話しまくっているデントから離れ、兄の後ろに隠れています。ルカリオも気持ち引き気味です。
「
『ピ、ピカチュ…』
『カゲェ…』
『…………』
「お、おう…えっと、俺たちカント―地方から来ました……俺はサトシ。それでこっちが妹のヒナです」
「よろしくお願いします…」
「私はアイリスよ……」
『キババ…』
「そうだったのか!僕はデント。ポケモンソムリエをしているんだ!!」
そこで兄がポケモンソムリエとは何か私に視線で疑問を訴えてきたため私はデントの方を見て聞いてみればいいとこちらも視線で伝える。そして兄が実際にデントに聞くとポケモンソムリエについて教えてくれた。そして次に兄とピカチュウの相性について詳しく見てもらえると言ってきた。それに兄が喜んでデントにお願いしますと言う。なんだか話が長くなりそうだ。
けれどこんなことしてる時間ってあるのかな…?朝ごはんもまだ食べてないし。ルカリオも何も言ってはこないがこのままでいいとは思っていないようだ。私の背を軽く叩いて兄に言ってきてくれと頼まれたため、口を開く。
「…お兄ちゃん。ジム戦はいいの?」
「あ、やべ…忘れてた…」
『ピッカ…』
兄が失敗したというような表情をしているとデントが私たちの話に興味持ってきたようだ。まあそうだよね、デントって確かジムリーダーだから気になるよね。あ、でも兄はそのことを知らない。そして私も教える気はない。
私はこの旅の中では兄に原作の物語について聞かれたら話すと決めているため、兄が何も言ってこないうちは私はできるだけ言うつもりはない。それに本当に原作の知識が必要なとき以外は言わなくても平気だと判断しているので、もしも兄に聞かれたとしても必要でなかったら言わない。
私が原作のことを言ってなくてもそのまま兄は話の通りに進んでいくことが多いため大丈夫だと思っているからだ。それにスーパーマサラ人の兄だからこそ安心しているという点もあったりする。そうじゃないと私は安心して旅に同行することなんてないだろう。…それに旅をしていてしばらくの間に分かったことなんだけど、つらいことや危ないことはほとんど兄が吹き飛ばしているからもう不安はないと思う。何かあったら兄にお任せすればいいや。
まあそんなことを考えているうちに、デントが兄に向かって質問をしてきた。
「君、サンヨウジムに挑戦するのかい?」
「はい!ですが、俺たちまだ朝ご飯を調達する途中でして…」
「まだご飯食べてないから、早く買ってジムに向かいましょう!」
「そうだなアイリス。じゃあデントさん。俺たちここで失礼します――――――――」
「ちょっと待ちたまえ!ご飯ならサンヨウジムで食べていけばいいと思うよ!!」
「…はい?」
デントがジムまで案内する途中でジムは食事も楽しめるということ、そこで朝ごはんを食べていき、ジム戦をすればいいということを言ってきた。私たちはお互い顔を見合わせてデントの誘いにのることにした。
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そういうわけで来ました。サンヨウジム。でもさすがはイッシュ地方…いやここはサンヨウジムだよねっていうところかな?
かなり高級そうなジムの雰囲気だ。これってテーブルマナーとか必要かな…ちょっと心配だけど大丈夫だよね…?原作では普通にソーダとかお手軽なランチとか楽しめるって言ってたし…うん平気だよね。
とりあえず私たちはデントからどんな料理が出てくるのか聞いて、デント達のお勧めの料理を食べることになった。
そして出てきた料理は味も見た目も凄いし美味しい。私たちは美味しい料理に夢中になった。もちろん人だけではなく、ポケモン用の料理もあったからピカチュウたちも美味しく食べている。
ルカリオはこれを自分でも作れないのか考えているようだし、もしもデントが旅の仲間になったら、これから楽しめそうだよねいろいろと。ルカリオの料理はおふくろの味でデントの料理はお店で出てくる味って感じかな?
そして兄はジム戦が待ち遠しいのか急いで食べている。でも周りの雰囲気を感じ取り、なるべく目立たないようにマナーに気を付けて少しだけ急いで食べているという感じだ。
そして食べ終わり、兄はデザートが来る前に立ち上がって、近くにいるデントに向かって言う。
「これでお腹いっぱいになったし…ジムに挑戦させてください!!!」
『ピカピッカ!!!』
大きな声で言う兄にジムでご飯を食べている女性が全員反応した。そして明かりが消え、デント達がお店の奥にある暖炉の方まで歩いていく。そして聞こえてくるのは軽やかな音楽と共にデント達がジム戦挑戦者に向かって言う声。デント達の方に明かりがつき、彼らの言葉に女性たちのテンションは上がっていく。私とアイリス、そして席についているポケモンたちが呆気にとられながら先程運ばれてきたデザートを食べる。
私は音楽と共に演技をしているようなジムリーダーのデントたちに感嘆とした声をあげた。
「…まるでエンターテインメントだなぁ。さすがイッシュ地方」
『カゲカゲェ』
「あれ?カント―地方のジムってこんな感じじゃないの?」
『キババ?』
『いや、サトシから聞いた話だが、ジムは大体バトル中心に行うことが多いそうだ』
「うんそうだね…でもハナダジムはこのサンヨウジムと雰囲気は似てるかな?…ジム戦の時は普通だけどね」
『ああ、ハナダジムの水中ショーか…』
『カゲェ…』
私とヒトカゲ、そしてルカリオが遠い目をしてハナダジムにいるであろう4姉妹を思い出す。確かルカリオもハナダジムの水中ショーに出されたことがあったっけ…あの時は大変だった。
そんな私たちに対して、アイリスとキバゴは水中ショーという話に興味をもったようだ。キラキラと輝く目で私たちに言う。
「水中ショー?!何それ見てみたい!!」
『キバ!!』
「あ、じゃあカント―地方に来るときはハナダシティに行ってみたらどうですか?毎日じゃないけどたまにショーやってますし、毎回テーマが変わってショー自体も違ってくるんで面白いですよ!」
「そうね。絶対にカント―地方に行ったらハナダシティに行くわ!ね、キバゴ!!」
『キバキバ!!!』
私たちはデザートに出てきたケーキを食べながらのんびりと話していく。その間にも兄がジムリーダーの話を聞き、そして暖炉が大きく動きバトル場が開くのを待つ。
丁度デザートを食べ終わった時にバトル場への道ができたため、私たちは観戦するために席を立ち、兄の様子を見ていく。
私たちとは違い、ジムリーダーたちに夢中になっている女性たちは全員チアリーダーの恰好をして出てきて驚いた。どこで着替えたんだろう…。
まあそんな疑問は置いておいて、兄は3人のジムリーダーに挑むと宣言していた。兄のその言葉に呆れたように私たちは言う。
「三人とか…さすがサトシね」
『キバキバ』
「もう、お兄ちゃんってば…」
『カゲカゲ』
『…だがサトシのことだ。3人のジムリーダーに挑むとしても特訓で鍛えたのだからすぐ終わりそうだな』
ルカリオの予想通り、バトルは原作通りのポケモンで挑んでいったが、皆一撃で倒すことがあってバトルはすぐに終わってしまい、無事兄が勝っていた。…しかもテイスティング・タイムもやる時間もなくあっけなく終わってしまったのだった。
その後、兄の強さに興味をもったデントが私たちと旅をしたいと言ってきて、そして今までついてくる形だったアイリスもそれなら私も!!となり、皆で一緒に旅をすることになった。
「よろしくお願いします。デントさん」
「デントでいいよ。それに敬語もいらないからね」
「そっか!よろしくデント!!」
『ピッカ!!』
「これからよろしくね!」
『カゲ!!』
「よろしくデント!…あ、そうだ。私もずっと言いたかったことなんだけど…ヒナちゃん。これからは私のこと呼び捨てでいいし敬語もいらないからね!」
『キババ!!』
「え、良いんですか!?」
「いいのよ!」
「わかった!…これからよろしくね。皆!!」
『カゲカゲェ!!』
『デント、アイリス。これからはよろしく頼む』
「っ!!?ル、ルカリオが喋ったぁぁあ!!!!????」
『ッ!?』
まあいろいろとトラブルもあったけど、全部解決したし、皆で仲良く旅に出ることができたから良かったかな。
妹の心境。
これからの旅が賑やかになりそうだね。