妹は兄の物語に巻き込まれた。
第五十三話~妹は兄と共に行くことになった~
こ、こんにちは…妹のヒナです。兄が帰ってきました。そして巻き込まれました…。
今回私がいるのはマサラタウンではありません。イッシュ地方です…。
イッシュ地方に母と兄、オーキド博士が遊びに行くと思っていたんですが、何故か私もその旅行に巻き込まれました。もちろん原因は兄のせいですはい…。
あと、私たち以外にも、ヒトカゲとルカリオがついて来てくれました。すっごく心強いです。オーキド博士なんてアロハシャツみたいなパインシャツを着て、かなり旅行を楽しもうとしているし…。事件とか起きても大丈夫かな…?
まあロケット団はもう悪さをすることはないしそこらへんは大丈夫だし…何とかなるよね……。
イッシュ地方では見たことないポケモンがたくさんいた。兄はシンオウからの記憶がないので、シンオウでもそうだが、イッシュのポケモンはとても新鮮だと言って笑っていた。でもこの後どうなるのか知っている私としてはどうにもこうにも……。
まず最初に、飛行艇から着いたときに起きたトラブル。伝説がピカチュウに電撃で攻撃し、その先のバトルでいろいろと問題が起きるはずのフラグだったんだけど…。まあ兄ですから。
ピカチュウとルカリオが先に異変に気づき、やってきた雷雲に…普通に攻撃して追い払ってました。
「ピカチュウ!かみなり!」
『ピィィイッカ!!!!』
『ふんっ!!』
『―――――――――――ッッ!!!??』
雷雲の中心にいるであろう伝説に向かってかみなりとはどうだんを食らわせてました。そして雷雲はすぐさま私たちのもとから去っていきました。…何もすることなく。
私が何も原作のことを教えてないのにごく普通にフラグを叩き折ってましたよ。さすがスーパーマサラ人。
「何だったんだ今の?」
『ピィカ?』
『…ただの雷雲とは違っていたな』
「……あーあー」
『カゲッ?』
そしてその後、アララギ博士が迎えに来て、皆で一緒に研究所まで行くことになった。…その時に色違いのヒトカゲと喋れるルカリオに興味をもっていたりしたけど、時間がないからと車まで行きながらいろいろと話をしていった。
とめてある車まで行く途中でも車に乗っていく途中でもイッシュにしかいない新しいポケモンに主に兄とピカチュウが大興奮。もちろん私とヒトカゲもテンションが上がる。
あ、あとルカリオもこういった旅行は初めてなのか、見た目は冷静を装っているが、すごく楽しそうなのが私たちには分かった。
アララギ博士は車を運転しながら私たちに質問してきたので、それに答える。
「どうサトシ君、ヒナちゃん。始めて見るポケモンばかりでしょう?」
「はい!」
『ピッカッチュウ!』
「本当に!!」
『カゲカゲェ!』
研究所についた後、オーキド博士とアララギ博士はいろんな話をして盛り上がり。私たちは待っている間、窓からイッシュ地方のポケモンを見ていた。見ているだけでもかなり楽しいのだけれど、もっと近づいてみたい、どんなポケモンなのか知りたいと兄は呟いていた。
そして急に1人の研究員がやってきて、今日旅立つ新人トレーナーに最初のポケモンを渡す時間だと言ってきたため、私たちは窓から視線を移し、博士たちに近づいて話を聞いた。
「最初のポケモンってどんなポケモンなんですか?」
「あら、気になる?じゃあ一緒に見ていきましょうか!」
「え、本当ですか!?」
『ピカ!?』
「えっと…た、楽しそうだね…でも私はここで待ってるよ…」
『カゲッ!?カゲカゲェ!!』
『ヒトカゲも行きたいと言ってるぞヒナ。俺たちも行くぞ』
「そうだぜヒナ!こういうのは楽しまないと損ってもんだ!!!」
「ちょっ!?ルカリオにお兄ちゃん?!」
…というわけで、その新人トレーナーと最初のポケモンたちを見に行くことになった。すごく嫌な予感がするんだけど大丈夫なのかな。いや大丈夫じゃないよね全然。
新人トレーナーはカメラを構えて研究所を撮りまくっている様子が遠くから見えた。その新人トレーナーの名前はシューティ―というらしい。兄がこれから旅立つシューティーに微笑みながら言う。兄はこれから旅をするトレーナーに先輩として頑張れと言いたいから話しかけただけだ。そしてできればこの後シューティーがポケモンを貰ったらバトルでもしようと言うのだろう。
ごく普通に、楽しげに―――――まあそれで平穏に終わらないのがトラブルの基本です。
「俺、サトシ!後ろにいるのは俺の妹のヒナ!俺たちカント―地方のマサラタウンから来たんだ!よろしくなシューティー!」
「…カント―地方……ハッ!」
「ん?何がおかしいんだ?」
「いや、ずいぶんと田舎から来たんだなと思ってさ」
「……………………………………」
「…うわぁ」
『…カゲェ』
『ピィカ』
『ほう、あいつ随分と度胸があるじゃないか』
親しげに話しかけたというのに、シューティーはただ蔑み、田舎だと侮辱した。その言葉に兄は楽しげな表情から一変して無表情になってシューティーを見る。私とヒトカゲとピカチュウは侮辱したことを怒る前に、兄を怒らせたシューティーにこれから起きるであろう暴走に憐れみ、同情した。そしてルカリオはシューティーの度胸と言葉に感心していた。
…でもこれ度胸って言うよりも、藪をつついて蛇を出すとかそういう感じな気がする。
だが、シューティーはそんな兄の様子に気がついていないらしい。むしろ兄の後ろにいる私たちに気づき、そしてピカチュウたちに驚いていた。シューティーはカメラを取り出してピカチュウたちを撮りまくる。
「これは…!」
「…あ、あの…何やってるんですか?」
「君…妹だと言っていたね。これだから田舎者は困るよ」
「そ、そうですか…」
「はあ?」
『カゲ…』
『ピカ…』
『……………』
うんこれで私以外の皆がシューティーの言葉にキレた。完璧にブチ切れました。
皆、過保護すぎるよ本当に…。兄なんてシューティーの言った言葉に怒りすぎて声とか変わってるからね。ヒトカゲも苛ついてるみたいだし…これ本当に大丈夫なのかな…。
でもシューティーもアララギ博士も、周りにいるイッシュ地方の人は皆、兄たちの様子に気づいていない。もしかしてイッシュ地方の人間って天然だったりする?
そしてシューティーは興奮したように話を続けた。
「いいかい?イッシュ地方にピカチュウとヒトカゲ、ルカリオがいる。しかもヒトカゲは色違いだ…これは事件だよ!」
「えっと…ピカチュウたちは私たちと一緒にカント―地方から来たから…事件っていうほどじゃないと思いますよ」
「…なんだ、田舎者のポケモンか」
「ほう…?」
『ピィカ?』
『…カゲェ』
『……………………』
この言葉がいけなかった…もう本当にご愁傷様です。
というよりもルカリオが何も喋らずただ無言でシューティーを睨み付けているのが凄く怖い。兄たちは普通に言葉は言っているから大丈夫…ではないよね。
まあこれから挫折するかもしれないけど頑張ってシューティー。
無言で立っている兄たちを無視して、話は進み、シューティーは無事にツタージャを手に入れることができた。
そしてポケモン図鑑とモンスターボールを手にして旅立とうとする―――――のを兄が止めてきた。
「バトルしようぜシューティー」
「バトル…君、強いの?」
「ああもちろん。シューティーにはいろいろと言いたいことが山ほどあるしな?」
『ピィカ…!』
『カゲ!!』
『……………………』
「…ほどほどにね」
兄たちのバトルを見に行きたくはないと心の底から思っているんだけども、ヒトカゲが凄く行きたそうにしているから仕方なくついて行くことになった。
…結果はまあ、想像通りです。
妹の心境。
ねえお兄ちゃん私は旅に出る気ないからね?旅に連れて行こうとしないでよ!?
兄の心境。
…何言ってんだよ。お前も一緒にイッシュ地方を旅しようぜ!