マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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兄はシンオウでの旅が終わったと思ってしまった。


第五十二話~兄と親子とセレビィ~

 

 

 

こんにちは兄のサトシです。今回俺たちはポケモン・バッカーズのワールドカップを見にクラウンシティに行くことになりました。…え、リーグですか?そりゃあもう優勝しましたよ。かなり楽しいバトルでした。

それで本当だったら旅を終えてマサラタウンに帰るはずだったんですけど、ヒカリが最後にポケモン・バッカーズを見に行こうよ!と誘ってくれたので急遽予定を変更していくことになったんです。

 

 

だが、クラウンシティに行く途中で迷ってしまい、そこでゾロアに会った。クラウンシティにはマァがいて、そこに行かなければいけないと言ってきたので、俺たちと同じ町だからと一緒に行くことになった。そしてマァが悪者に連れ去られているということが分かり、俺たちは必然的にゾロアに手を貸すことになった。

でもついてみたら何故か大騒ぎになっていて、スイクン達がゾロアークのせいで暴れているというニュースが流れていて…。しかもゾロアはゾロアークがそのマァだといってきて…あれ、これどこかで見たことあるような気がしてきた。

 

 

 

『マァ…』

 

 

「…だいじょーぶよゾロア!私たち協力するし…サトシがいれば百人力だからね!そうでしょサトシ!」

『ポチャポチャ!』

 

「…え?あ、おう。そうだな」

『ピッカッチュ!!』

 

ヒカリは自信満々な表情でゾロアと俺に向かって言ってきた。なので俺も大丈夫だと言っておく。…でもそれにしてもこのデジャブは一体なんだろうか。今はクルトさんの案内で地下を通ってクラウンシティに向かっているんだけれども、その歩いている途中も俺は考えながら必死に思い出そうとする。

 

クラウンシティについては妹に話していないのでどんな内容なのか分からない。まさか原作なわけないよな…?普通にもうシンオウでの旅はほとんど終わったはずだぞ?

でもゾロアを見たような気がするからもしかしたらもしかするかも…?もしも原作の話だった場合は妹に聞いておけばよかったという後悔がでてくる。もしもシンジとゴウカザルの時のようなことになったらどうする。もうそんな悲劇は起こさないと覚悟した。だから全力で何とかしていくけれど、もしも俺が通常とは…いや、原作とは間違った行動をしてしまったらどうすればいい…。それでさらに悪い方向へ行ってしまったら俺は…。

 

 

『ピカピ?』

「あ、悪いピカチュウ。ちょっと考え事してただけだよ」

『ピカ!!』

 

「なぁに?もしかしてどうやってコーダイを倒すのか考えてたの?」

『ポチャァ?』

「サトシだったら考えそうだな。でも考え事して歩いてると足滑らせるかもしれないから気をつけろよ」

 

「ははは…分かった」

 

 

ヒカリもタケシも随分な言いようだ。まあ旅してきたときからずっといろいろと暴れてきたから仕方ないだろう。そう納得しておく。それに今必死に考えることじゃない。思い出せないのなら、無理に思い出すこともないだろう。俺はただ敵を倒せばそれでいい。敵さえ倒してしまえればもう解決も同然なのだから。だからゾロアが言っていた悪者のコーダイを何とかしてしまおう。そう決心してから考えるのをやめ、ちゃんと前を向いて歩く。ゾロアはただ必死にゾロアークが無事であるように願っていた。

 

 

そしてようやくついたクラウンシティで見えてきた光景。クルトさんの話だと、このクラウンシティはセレビィがやってくると言われている自然と人が共存したとても豊かな町だということ。だが、20年前にクラウンシティの植物はすべて枯れ果ててしまったということやその原因は分からず、人とポケモンの力でようやく元に戻っていったということが分かった。…その話はとても良い話であり、植物が戻って良かったと思った。でもその話には何か引っかかる。何か、重要なことがあったような…思い出したいのに思い出せないこのもどかしさに苛立ってしまう。俺は首を振ってこの感情を捨て、町の様子を見るために歩いた。

するとそこから分かってきたこと。エンテイやスイクンが壊したと思っていたものが実は壊されておらず、何もかも無事な町の様子だったことだ。でも人々は避難していったため、町は音もせず静寂だ。ゾロアがマァの臭いがすると言って走りだしたため、俺たちもその後を追う。

曲がり角を曲がって姿が見えなくなってしまったため、俺はスピードを上げてゾロアが行ったであろう道を走る。そして見えてきたのはグラエナとモジャンボがゾロアに襲いかかっている姿。そして次にグラエナが俺の後ろから来たクルトさんに襲いかかってきたため、俺は拳を使って未だにクルトさんに襲いかかるグラエナを追い払おうと動く―――。

 

 

「待って待ってサトシ!!何か様子がおかしいよ!!」

「っ!!…クルトさん?」

 

「ははは久しぶりだなぁグラエナ!元気にしてたかぁ?」

『グォォウ!!!』

 

 

「…ああ、知り合いか」

『…ピィカ』

 

俺はヒカリの声を聞いてすぐに動きを止め、クルトさんの様子を見る。するとグラエナが嬉しそうにクルトさんにじゃれついているため、大丈夫だと理解して握りしめていた拳をひらいて身体の力を抜いた。ピカチュウも俺の肩にのって良かったと安心しているようだ。それによく見るとゾロアは眠らされているだけみたいだし、怪我がなくて本当に良かった。

 

その後、俺たちのもとにやってきたのはクルトさんの祖父たち。グラエナとモジャンボが仲間だと言っていて、町の物を壊したために敵かもしれないと眠らせたのだと言う。それについては悪かったと言っていたし、ゾロアも町の物を壊してしまったのならお相子だと思うから俺は何も文句は言うつもりはない。そしてねむりごなが効きすぎてゾロアは熟睡していた。

 

 

クルトさんの祖父…ジョーさんたちに案内されて来た家で俺たちは町で起きた疑問について話し合うことにした。まあ町で壊されていたはずのものが壊れていないのだから疑問に思うし、何かあるのではないかと思ってしまうのも無理はない。クルトさんはこれがゾロアークのイリュージョンだと推理した。もちろん俺たちもその考えに納得できる。これでコーダイを倒せばいいという方針が俺の中で決定した。

でも一つだけ分からないことがある。コーダイは町の中で何をしているのかだ。クラウンシティの中で、ゾロアークのイリュージョンで化かし、町の人を追い出してその後はどうするつもりなのだろう。それだけだとコーダイの名声が落ちぶれるだけではないだろうか…。

でもその考えはすぐに答えが出た。

 

「え!?セレビィが帰ってきてるだって?!…本当なんですか?」

「うん。私とモジャンボがこの目で見たのよ」

『モジャン!』

 

「セレビィ…が…」

 

コーダイは、セレビィを捕まえにこの町で悪さをしているのか…?

でもそう結論付けるのはまだ早い。俺の中でなにかが引っかかっているからだ。セレビィを捕まえるという考えは間違っているという何かが…。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

その後、ゾロアが目を覚ましてマァが呼んでいると叫び、外に出てポケモンたちに囲まれてしまったらしい。らしいというのは、ゾロアが柵の中に入ってしまって行けなくなり、ピカチュウとポッチャマがその後を追って行ったからだ。でも俺たちが見たときはセレビィがやってきて仲裁し、何とか喧嘩が収まっていた時だった。そしてセレビィがゾロア達のマァ探しを手伝ってくれることになり、俺たちは柵の外からその後を追った。

 

だが追おうとした瞬間―――――。

 

 

「コーダイ…!」

 

「君たちが誰なのかは私は知らない。だが、私の邪魔をするということだけは知っているのだ。―――――私には未来が見える」

 

 

 

コーダイの仲間であるポケモンたちが俺たちの行く手を阻み、妨害する。俺はとっさにハッサムに殴りかかろうと動いたが、コーダイが使った機械の檻によって阻まれてしまう。そしてコーダイは自信満々に言ってきて俺たちを閉じ込める檻の隙間をすべて閉じていった。そして檻が揺れて動いて行ったので、おそらく移動しているのだろう。俺たちが邪魔しないようにどこか別の場所へと。

 

 

 

「…どうするの!?このままだと…?!」

「ああわかってる!大丈夫だヒカリ。ピカチュウとポッチャマがついてる…」

「タケシ…うん。そうよね」

「でも、このままここにいるわけにはいかないな…」

「クルトさん…」

 

「…………………」

 

俺は必死に考えていた。この後の話を…その未来で起きる原作の話を。未来が見えるという言葉に少しだけ分かったような気がしたからだ。でもすぐにそのことが分からなくなる。何か…セレビィに関する何かがあったはずなのだ。

 

「…サトシ?」

「え、あ…ヒカリ、どうかしたか?」

「…ううん。何でもない」

 

 

ヒカリが俺の様子をうかがってきたので、俺は俯いていた顔を上げて言う。だがヒカリはしばらく考えるような様子をして、俺に向かって首を横に振り、苦笑した。

 

 

檻がしばらくしてから揺れなくなり、代わりに周りからものすごい音が聞こえてきた。おそらくもう移動し終わったのだろう。俺たちはどうやって脱出しようかその方法を考える。まずこの檻の壁を壊そうと動くと、防御システムが作動して電撃で攻撃されてしまう。俺はその電撃ぐらいなら耐えれるし、問題なく壊せる。だから檻から脱出することは本当だったら簡単なのだ。でも檻の中にはヒカリ達がいる。ヒカリ達は電撃に耐えれないし傷を負ってしまう可能性が十分高い。だから俺は動くことはできない。

 

「…ゾロア……セレビィ」

 

 

今はただ、無事を祈っているだけしかない。この選択が間違っていないと必死に納得して、動かないでただ時が来るのを待つだけだ。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

どのくらい時間が経ったのかは分からない。檻の中では何も知ることができないからだ。このままこうして動かないでいいのだろうかと悩み、そろそろ皆が怪我をしない方法でも考えてやってみようかと思った瞬間誰かがやってきた。やってきたのは女性だった。そしてその人はコーダイの秘書だと言い、挨拶をしてきたが、クルトさんが何やら親しげに話をしていて…実は仲間だったということが分かった。そしてその秘書…リオカさんの助けによって俺たちは外に出ることができて、ようやく動き出すことが可能になった。そして行く途中で分かったコーダイの目的。コーダイはセレビィがときわたりで使用したときに現れる時の波紋というものから力をもらって未来を見ることができるようになったということ、そしてまた未来の力を手にするために、クラウンシティで動いているということを。

 

 

そうして向かった先に待っていたのは、いろいろと見逃せない光景だった。ゾロア達が傷つき、ピカチュウとポッチャマがハッサムによって吹っ飛ばされているところ。

 

「ピカチュウ!!」

 

「ポッチャマっ!トゲキッスお願い!!」

 

 

トゲキッスのおかげでピカチュウとポッチャマは助かり、俺たちはコーダイと対面した。…リオカさんは申し訳なさそうな表情を浮かべていたけど仕方ないだろう。

その後俺たちは無事セレビィとゾロアを連れて昼間、話し合いの場所となった家まで向かう。そこでセレビィとゾロアの怪我を治し、これからセレビィを時の波紋まで連れて行こうということになった。

 

 

 

…その後、トラックで追いかけてきたコーダイ達を止めるためにヒカリとタケシが動いてくれたり、ドーミラーの協力とゾロアが囮になってくれたおかげでコーダイを出しぬいてセレビィを時の波紋まで行かせたり、ゾロアークのイリュージョンによってコーダイに時の波紋を奪い取ったという幻影を見せたりといろいろあった。今の俺たちはコーダイのムウマージのサイコキネシスで宙に浮いている状態です。でも少しだけ皆傷ついてしまったけれど…コーダイの野望が叶うことはなくなったし、ゾロアも無事にゾロアークに会えて…良かった…?あれ、ゾロアが身体をふらつかせながらも今ようやくゾロアークに近づこうとしていて――――――。

 

 

 

「ああ、なんだ。そういうことか!…ピカチュウ、ムウマージに10万ボルト!」

『ピ、ピッカ!!』

 

 

 

『ムゥ!?』

 

 

 

―――――ようやく思い出せた。この後何が起きるのか。そのことも全部、思い出すことができた。

幻影だと分かったコーダイが怒り、ふらつくゾロアとゾロアークに向かって機械で攻撃しようと動く…のを俺は止めようとピカチュウに指示をして身体を自由に動かせるようにする。そして俺は全力で走り、今まさに攻撃しようとしているコーダイに向かってとび蹴りをして吹っ飛ばした。とび蹴りされたコーダイはもうゾロアにも、ゾロアークにも手を出すことはないだろう。…というよりも、俺がそうはさせない。

 

 

 

「ぐっ!?貴様ぁぁ!!!」

 

 

「…もう終わりにしようぜ、コーダイ」

 

 

 

 

 

これでようやく、ハッピーエンドだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

『…サトシ。礼をいうんだぞ。ありがとうなんだぞ!』

『グォォ』

 

 

 

「どういたしまして。俺もピカチュウも…いつかお前たちの故郷に遊びに行くからな!」

『ピッカッチュウ!!』

 

 

 

 

 

 

 




兄の心境。
 いやぁ危なかった…これからヒナに必ず行き先と起きる話を全部聞いとかないとな…。

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