妹はやるべきことを最後まで行った。
こんにちは妹のヒナです。そろそろ修行が終わりそうです。え、全然強くなってないんじゃないかだって?
皆は一撃で敵を倒す力ではなく、逃げる力や隙を作り、すぐに敵から離れる力をつけてもらおうとしていたので、まだまだ子供な私たちにはこのぐらいで十分だというのだ。幼い子供に無理はさせられないと言う。
でもしばらく経てばまた修行を再開し、身体にあわせて鍛えていくみたいだ。
そして今回の修行に合格をすることが条件となる。それが、不意打ちに対応できるかどうか。もしも大人たちやポケモンたちに襲われたらちゃんと逃げる力は残っているのかという修行をしたらもう大丈夫だと認められる。
なので私とヒトカゲは頑張って修行を終わらせ、皆に安心してもらいたいと思っています。
「………」
『……カゲッ!』
オーキド研究所の森でただ普通に歩いている私たち。ちなみに散歩ではない。ポケモンたちが遠くにいたり近くにいたりして気配が読みづらいこの森の中で突然来る攻撃に反応し、逃げるか攻撃するかを判断していくというもの。そして無事に森から外にでられたら今回の修行は終了としてもらえる。
ヒトカゲが何かに気づき、私は警戒してヒトカゲが向いている方向を見る。だがその方向からは何も起きずに突然後ろからみずでっぽうが来たため、私とヒトカゲはすぐに反応し避ける。
だがすぐに横からはっぱカッターが飛んできたため、私たちは身体の姿勢を低くした。
「ヒトカゲ、えんまく!」
『カゲェ!』
ヒトカゲがえんまくを使い、周りを見えなくしていく。すると周りからいろんな鳴き声が聞こえてきた。私とヒトカゲはそのまま走り、その場から離れた。一応これで先程攻撃してきたポケモンたちから離れることができた。距離をちゃんと考え、走っていた速度を緩め、立ち止まる。そして周りを見渡して警戒していく。私から見ると周りはポケモンたちがこちらをうかがっているようにしか分からないため、ちゃんとわかるヒトカゲに聞いてみた。ヒトカゲも周りの様子を確認し、何か問題がないかどうか気を付けているようだ。
「…平気?」
『……カーゲェ』
しばらくするとヒトカゲは頷き、今は平気だと教えてくれた。けれどいつかは必ず攻撃しに来るため警戒は怠れない。私たちは少し休憩してからまた歩き出す。歩いていてもここは森の中…しかも迷いの森とポケモンたちからいわれている所だから、どこに行けば外に出られるのかは分からない。けれどいつかは出られるはずだと私たちは歩き出す。…もしも今日森の中で迷っているまま夕方になったらルカリオが迎えに来て修行は中断され、また明日やることになる。昨日もそんな感じで修行を行い、そして中断したのでよく分かっている。でもそろそろここから外へ出て修行を終わらせたいという気持ちもあるため、私とヒトカゲは一生懸命歩いて行った。
『…ジュ』
『カ、カゲ!!?』
「うわぁ…!!?」
ジュカインが私たちの方に姿を現し、タネマシンガンで攻撃してきた。さすがはジュカイン、全然見えなかったし分からなかった。私たちは驚いてしまい転びながら、そしてヒトカゲはひのこでなんとかしのぎながらも逃げる。
『ジュカァ!』
「やばいやばい…!ヒトカゲ!ダブルひのことえんまく!!」
『カゲェェエッッ!!!』
ジュカインがこちらに向かってきたため、私は慌ててヒトカゲにひのことえんまくを同時に放ってもらう。
これは私の兄が考えて教えてくれたやり方であり、同時に2つの技ができるというとても便利な攻撃の方法なのだ。でも兄はそれに自分から新しい技を取り入れ、いろいろと恐ろしい技を創り上げようとしている。
教えてもらうのと同時に兄が前にでんじはと10万ボルト、でんこうせっかを混ぜた疑似ボルテッカーらしき攻撃方法をピカチュウに教え、その疑似ボルテッカーに当たったら10万ボルトとでんこうせっかの威力と共に必ず≪まひ≫してしまうという恐ろしいことができるということも知った。だがこれは序の口であり、その疑似ボルテッカーに新しく編み出した技である電気熱を取り入れてしまったのだ。
まあつまり、簡単に言うのなら、疑似ボルテッカーをしているピカチュウの周りに燃え盛る炎が発生するため、攻撃のタイプが【でんき】と【ほのお】になるということである。ピカチュウが走りながら電気と炎を身に纏う姿はかなり恐ろしいだろう。しかも結構な威力があるからある意味一撃必殺の技だと兄は満足げな表情で言っていた。
他にも応用ができてとてもやりやすいと言われたが、私とヒトカゲはこのひのことえんまくの同時攻撃は使えるようになるのに苦労したということを覚えている。
ヒトカゲがひのこの入り混じったえんまくを使って攻撃する。だがジュカインはそれを軽々と避けて余裕そうだ。だが避けたことによって私たちとの距離が広がったためすぐに走りだしてこの場から離れる。
「逃げるよヒトカゲっ!!」
『カゲェ!!』
『……ジュ』
ジュカインは追ってはこなかった。スピードの速いジュカインが走れば必ず私たちに追いつけるのだが、疑問に思うのはとりあえず後でにしておこう。ジュカインの姿が見えなくなると同時に安堵してまた周りを見ていく。
そしてゆっくりと歩き出して出口を目指す。
すると森の少し遠くから光が見えてきた。外に出れると分かって私とヒトカゲはお互いに顔を見て、そして走りだす。ここから出れたら修行が終わる―――――――。
『…ヒナ、ヒトカゲ』
「っ!…ミュウツー」
『カゲ…!』
ミュウツーがいきなり私たちの前に現れてはどうだんでわたしたちに攻撃してきた。とっさだったので避けきれず、ヒトカゲがひのこで応戦し、私たちとミュウツーの間でそれらの攻撃が爆発した。
ミュウツーは今度はサイコキネシスで私たちを宙に浮かせ、そのまま森の出入り口から離れようとする―――。
「ヒトカゲ!ダブルひのこえんまく!!」
『カゲ…カゲェェ!!』
ヒトカゲのひのことえんまくの攻撃を避けた。だがそのおかげで視界が真っ黒になり、サイコキネシスで宙に浮いていた私たちは地面に降りることができた。
あとは、出入り口に立ち塞いでいるミュウツーをどうにかしないといけない。
「いくよ…ヒトカゲ!」
『カゲッ!』
えんまくが薄れ、視界が少しずつ見えてきた。そして見つけたミュウツーの姿。私はヒトカゲに肩にのってもらい、ミュウツーに向かって近づいていく。そしてミュウツーの前で炎のパンチを繰り出そうとする――――――。
『ふん…そんなの効くわけがないだろう!』
「分かってるよそれぐらい…!」
『カゲッ!』
『何ッ!?』
ミュウツーが炎のパンチを受けとめようとしたため、私はそれを避け、ミュウツーの横を通り抜ける。ミュウツーとわざわざ戦うことはないし、伝説に勝てる自信もない。というよりも、自らの力量を知り、戦えるかどうかを見極めるというのも修行のひとつだから、私たちは逃げの一手にでたというわけだ。そしてミュウツーに近づけば必ず捕まえようとするだろうから、ここは出入り口を通るためにわざと近づいて攻撃すると見せかけて、小さな隙をつくっていただけだ。
そして私たちはミュウツーから走って離れ、森の出入り口へ辿り着いた。
「着いた!!」
『カゲッ!!』
私たちが森の外に出たことを喜んでいると、森の方から大きな音が聞こえてきたため、ヒトカゲと警戒してすぐに後ろを振り向く。だがそこにいたのは兄のポケモン、伝説たち、そして私たちの修行に協力してくれたオーキド研究所のポケモンたちだ。
『ダネダネ…!』
フシギダネがこちらに近づき、満面の笑みを浮かべてくれた。そして私たちにつるを伸ばして頭を撫でてくれる。その後ろにいるポケモンたちも皆が喜び、笑ってくれた。
私とヒトカゲはそれを見てお互いに顔を見合わせ、一緒にフシギダネを抱きしめ、皆のもとへ走り出す。
「みんな、ありがとう!!!」
『カゲカゲェ!!!』
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「おいガキ、そのヒトカゲ色違いだろ?お前にはもったいねえよ俺によこせ!!」
「ヒトカゲえんまく!!」
『カゲッ!!』
「ブファ…何しやがるこのガキ!ウツボット!こいつらに向かって…っていない!?逃げやがったなガキども!」
『おい貴様。今ヒナとヒトカゲに何をやろうとしていた…!!』
「なっ!!?―――――ヒギャァァァアアアアアアアアア!!!!!!!」
まあこんな感じで、私たちは主に悪い大人たちにつかまることはありません。
あと逃げていくと時々そこから悲鳴が聞こえてくるのですけどなにかあったのかなと気にしちゃいます。でももう心配かけたくないので私もヒトカゲもその場所へ戻ろうとはしません。
本当に、毎日が平和に暮らせています。
「今日はオーキド研究所へ行ってたくさん散歩しようね!!」
『カゲッ!!』
妹の心境。
修行がなくても、もっと頑張ろう!