マサラ人だけどスーパーマサラ人ではないはず   作:若葉ノ茶

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旅に出た兄がさっそくやらかした


第三話~兄のマイブームで新しい技ができそう?~

 

 

 

最近、旅に出た兄がよくわからない技をポケモンに教えているようだ。

【今日のすんごいポケットニュース!本日は新しい技を開発したと言われるサトシさんに来ていただいてます!!】

【と言いましても、まだ完全に完成したとは言えませんがね】

「ブッフォ!!」

「あらあら…ヒナ、大丈夫?」

「だ、だいじょうぶだよまま…」

テレビで流れてきた兄の名前とその話に思わずお茶を吹き出してしまった。

テレビに映った兄は少し前に旅に出た頃と変わってはいなかった。母も兄がテレビに出ていることで喜んでいる。

「サトシがテレビに映ってるわ!今日は御馳走ね!」

「おにいちゃん…」

今日のご飯が楽しみになったのはいいことだけれども、兄は一体何をしているのだろうか。

というよりもこういう場面原作であっただろうか?いやないはずだ絶対に。

…これは兄だから起きたフラグか。

 

【新しい技というのはどうしてできたのでしょうか?何かきっかけなどあったのですか?】

【そうですね…マイブームでできました】

【………え?】

【マイブームでできました】

「…………」

テレビに映る兄は一体何を言っているのだろう。意味不明なことを言ったせいで皆が茫然としているのを見るのはつらい。唯一よかったと言えるのは兄の肩にのっているピカチュウが自信満々な表情でにっこりと笑いかけていることだろうか。

【えっと…マイブームというのは?】

【ポケモンと一緒になって修行することです】

【ほう!では修行というのはバトルをすることですか?具体的にはどのような?】

【たとえばそうですね…ピカチュウ!】

【ピッカァ!!】

兄がピカチュウを呼んだ瞬間、周りが惨状になった。

ピカチュウが十万ボルトで兄を攻撃し、兄はそれを避けピカチュウに回し蹴りをしようとしピカチュウがそれを回避し…というように、兄がポケモンとバトルをしているというものすごい光景が広がっていたのだ。

人とポケモンがバトルできるのはこの兄しかできないことだろう。

もちろんテレビのスタッフは大慌てで止めようとしている。

「うわぁ…」

「あらあらサトシったら元気ねぇ」

「え、これげんきですましていいのかな?」

私はよく兄のことをスーパーマサラ人だと言っているけれど、母の天然さもスーパーマサラ人に入るのではないだろうかと思う。

テレビでは結局カスミさんが兄とピカチュウのことを止めてくれたようだ。ようやく普通の番組に戻る。

恐る恐る兄に質問するテレビアナウンサーがとても可哀そうに思えてきた。

【そ、それでは…いったいどのような新しい技を作り出したのでしょうか?】

【まあ百聞は一見にしかず…ピカチュウ!電気熱!】

【ピィィカァチュゥウウウ!!!】

ピカチュウの電気で熱が発生し、まるでタイプが火のチャージビームのようだと思えた。

これは綺麗だとテレビスタッフが騒ぎ、私も母もテンションが上がった。

【これはまだ未完成の方です…ですがいつか完成し、他にもあっと驚かせるような技を開発していきたいと考えていますよ】

【素晴らしい意気込みですね!これはやはりポケモンと一緒になって修行をしていたおかげですか?】

【まあそれもありますが、必要なのは常識をぶっ壊すことです】

【え?】

(納得できる言葉をありがとうお兄ちゃん。そうだね。一番常識ぶっ壊してるのってお兄ちゃんのほうだもんね。)

テレビの前で私は勢いよく頷いてしまった。スーパーマサラ人の兄だから頷ける言葉だと思った。

でもテレビアナウンサーの人は疑問に思っているらしい。何が常識をぶっ壊すというのだろうかという表情だ。

【つまり、技はこれだけしか覚えられないという概念をなくすことが大事なんですよ。まだまだポケモンにはたくさんの発見、分からない謎が多いんですから。つまり、これはできるんじゃないかと思う好奇心、そしてそれを挑戦する行動力が大切ということです】

【な、なるほど!素晴らしいお言葉です!】

確かにそうだろう。今はまだポケモンには分からない謎や発見していないことが多い。イーブイがブラッキーやエーフィに進化するというのを発見してはいないのだからこそ言える言葉だ。

【あとはポケモンを大切にしているということですかね】

【ポ、ポケモンを?】

兄はピカチュウを撫で、優しい表情でアナウンサーに向かって言った。

【ポケモンを大切にするというのは当たり前のことです。最近ではポケモンを道具のように扱ったり、自分の方が強いんだという愚か者がいたり…ロケット団のようにしつこく悪さをする奴らがいたりと…まあそういう人々が目立っています】

【は、はぁ…】

【ポケモンは俺たちにとって隣人も同然。家族のような存在なのですから。強制的にやるのではなく、一緒に協力してほしいという気持ちが大切なのですよ】

【ピッカッチュウ!!】

「…あ」

なんとなく兄が言いたいことが分かった気がする。兄は釘を刺したのだろう。新しい技ができる道を示すことで起きるポケモンたちの悲劇を起こさないように、ポケモンは道具じゃないんだという言葉で示したのだと分かった。

まあいつもロケット団にピカチュウを狙われるのなら、そんな気持ちにもなるよね。

 

 

 

でも釘を刺すくらいならテレビに出ない方がいいのではないのかと疑問に思う。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

後日、兄に何故テレビに出たのか聞いたら技の開発中にテレビスタッフに見られて強制的に出ることになってしまったと言っていた。

そしていつの間にか兄の名がスーパーマサラ人と共にカント―地方で有名になっていたのは仕方ないことだろうと私は思った。

 

 

 




妹の心境。
 お兄ちゃんの名前がサトシじゃなくスーパーマサラ人になってるかもしれない…

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