妹は世間のポケモンの価値というものに気がついた。
こんにちは妹のヒナです。最近ヒトカゲと一緒に温かい日差しに当たりながら気持ちよく散歩することが増えました。今日はこれからオーキド研究所に行く途中なのです。
「ヒトカゲ!今日は何して遊ぼっか?」
『カゲェ?……カゲカゲ!!』
ヒトカゲが笑いながら私に何かを言ってくれる。その姿がとても可愛らしい。
にっこりとご機嫌になりつつも、私たちはオーキド研究所までの道のりをひたすら歩いていく―――――。
「よお、お嬢ちゃん?」
「…誰ですか」
『カ、カゲ…』
目の前に現れたのは強面のかなり身体が大きな大人の人たち。数えると6人くらいの男の人たちが私たちの行く道を阻む。私は怯えるヒトカゲの手を掴み、大丈夫だと落ち着かせながらも目の前にいる大人たちを睨む。だが大人たちはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら私たちの周りを囲い、逃げられないようにしていく。
「お嬢ちゃん。そのヒトカゲって色違いだろ?良いもんもってんなァ?」
「ゲヒャヒャヒャ!お前みたいなガキにそれはもったいねえよ!!」
「そうそう!俺たちならうまく使いこなせるぜ?」
「…………………」
『カゲ…』
なんか言い方、表情、その他もろもろがムカつく。ヒトカゲを使いこなすってなんだ。ヒトカゲは道具じゃないのに。でもこのままここにいては危ない。私はバトルというものをしたことがないし、怯えているヒトカゲにそんな無理強いはできない。ここから離れてはやくオーキド研究所に向かわなければ…。
震えて私にしがみつくヒトカゲの手を引っぱり、抱き上げてここから逃げようと動く。
けれどもそれを大人たちが邪魔をする。大人たちはそれぞれオニドリル、ストライク、アーボックなどのポケモンを出してきた。
「おいおい逃げることはないだろぉ?ストライク、ガキどもにでんこうせっかだ!」
「っ!」
『カゲッ!!』
ストライクが私たちにでんこうせっかで攻撃してきた。素早い動きで見えづらいが、一応ミュウツーとの鍛えもあってヒトカゲと共に技を躱すことができた。でもその後にアーボックやオニドリルが襲いかかってきたため、私はヒトカゲを庇って攻撃に当たってしまう。私は攻撃を受けた影響で後ろへ吹っ飛ばされた。
『カゲッカゲェ!!』
「だ、だいじょーぶ…けどはやく逃げて…!」
ヒトカゲが私に抱きつき、傷は大丈夫か、平気かと泣き叫ぶ。私は自身の身体よりもヒトカゲの方が危ないことを分かっていたため、早く逃げろと必死に言う。けれどもヒトカゲは首を横に振り、ここから離れないと泣きながら仕草で示す。それを見た私はニヤニヤと近づく大人たちからどうやって逃げようか必死に考える。アーボックのかみつく攻撃によって足をやられてしまったため、歩けることができるかどうかわからないけれど、それでも必死にヒトカゲを逃がす方法を考える。けれどヒトカゲは大人たちの方に向き、ひのこで威嚇して自分たちの方に来るなと泣きながら叫ぶ。
(…いきなり技を人もろとも当てるってどういう神経してるのあいつら!)
『カゲェ!!!』
「おおっとやる気か?でも色違いでもお前レベル相当低そうだよなァ?」
「ヒャハハハ!俺たちに勝てるわけねえだろ!」
「そうそう。おとなしく捕まった方がお嬢ちゃんを余計に傷つけなくて済むんだぜ?」
「…っ…ヒトカゲ、耳を貸さないではやく逃げなさい!!」
『カゲカゲェ!!!!』
「まぁだそんなこと言ってんのか…よ………」
――――――大人たちが私たちよりも後ろの方を見て動きを止めてしまった。
何かをみて驚愕しているような…そして恐れているような…?
『何をしている貴様ら…!』
「あれ…なんかいっぱいいる」
私とヒトカゲが後ろの方を見ると兄のポケモン、伝説のポケモン、あとルカリオがいました。全員の表情が般若みたいになってて私たちは大人たちよりも怖いと思ってしまった。私の近くにルカリオとミュウがやってきて、私たちを大人たちから離す。そして同時に他のポケモンたちが一気に大人たちに襲いかかっていた。
…すごく、悲鳴が聞こえます。
『ミュウ…ミュ?』
『すぐに治してやるからじっとしていろ!』
「…あ、ありがとうルカリオ、ミュウ」
『カゲェ!?』
『ヒトカゲ、もう大丈夫だ』
『ミューゥ!』
ルカリオが大人たちの攻撃によって傷ついた私にいやしのはどうで治してくれた。そして、血まみれの足をミュウが綺麗にしてくれた。ルカリオが凄く焦っている様子がちょっとおかしく見えた私はヤバいのかな。
ヒトカゲが私のことを気にかけているのかルカリオ達に聞いていて、それをちゃんと答えている。
「ギャァァァァアアアアアアア!!!!!!」
『ダネフッシィイィイイ!!!!!』
『ハハハハハ貴様ら皆消えてしまえばいいッッ!!!!伝説の恐怖をその身に刻み付けろッッ!!!!』
そしてルカリオ達が壁になって大人たちの様子が見えなくなったのだけれども…だ、大丈夫なのかな?
なんだか大人たちのものすごい悲鳴が聞こえてくるんだけど。もう悲鳴というよりも断末魔の叫び声といったほうが正解な感じになってきてるし。
…あと≪やる気≫というより≪殺る気≫に満ちたポケモンたちの声が聞こえてきて、大人たちが最後まで生きてられるかなとちょっと同情した。
特にフシギダネとミュウツーのキレた声が怖すぎる。口調が変わりすぎてるよミュウツー。フシギダネも派手にソーラービームを撃っているのがルカリオ達の隙間から見えるから…ってソーラービームってあれ人に当てていいのかな?
そんなことを思っていたら身体に小さな衝撃が当たり、よく見るとその正体は泣きながら震えるヒトカゲだった。
『カゲカゲッ!』
「ごめんねヒトカゲ…」
ヒトカゲがずっと泣きながら私に抱きつき離れずにいる。それを見ていて悲しくなってきた。
あの時ちゃんと逃げていられたら、ヒトカゲのことを傷つけずに、泣かせずに済んだのではないかと思ったからだ。傷を治したルカリオが私とヒトカゲの頭を優しく撫でてくれた。その顔からは無事でよかったと心から思っている安堵の表情を浮かべていた。
そしてラティアスもこちらに近づいて私とヒトカゲをまとめて抱きしめてくれた。その瞳にも涙が浮かんでいて、無事でよかったと言っていると分かった。
『…ヒナ、ヒトカゲ。もう無茶はするな』
『ミュゥ!!』
『キューン!!』
「…うんごめん…ありがとう」
『カゲェ…!』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「…で、その後は?」
「うん。皆が私とヒトカゲのこと助けてくれたよ。…あ、お兄ちゃんその人たちのこと潰しに行こうとか考えないでよ可哀想だから!」
「一応考えておく」
「考えておかない!」
「…まあそれで、ヒナ。今ミュウツーと話したいんだけどあいついるか?」
「え、うん呼んでみればいると思うよ?…どうしたの一体?」
「…いや、ちょっとやるべきことが見つかっただけだよ」
妹の心境。
お兄ちゃんが何かやろうとしてる。…私もちゃんと考えないといけないよね。