兄は妹から映画の話を聞かされた。
こんにちは兄のサトシです。本日はヒカリのコンテスト挑戦のためにアラモスタウンに訪れることになりました。出発する前に妹に電話して何が起きるのか聞いているため、フラグはすべて叩き折りますよ。もうフラグが成り立つだなんてこと絶対に起こしません。
まあ今回は伝説も出てくるらしいのでどうなるのかはわからないんだけどな。
アリスさんに案内してもらった庭園で異変が起きたり、町で派手にダークホールぶちまけたダークライが犯人だとベロベ…じゃないアルベルト男爵が言ったりとまあいろんなことが起きた。俺もダークホールに巻き込まれそうになったけど咄嗟にかわしたからよかった。アルベルト男爵がベロベルト男爵になったのは面白かったと思うけど。
とりあえず俺は、ダークホールで攻撃したために疑われたダークライを倒そうとしていることを止めないといけないと思い、行動した。まず、ダークライがこの町に異変を起こす犯人じゃないと言ってアルベルト男爵と対立し、無事論破しました。これでダークライのこれから起きるダメージの負担がより軽減されると思う。
でもやっぱり納得がいかないらしく、退治するまでにはいかないものの、捕まえようと行動するそうです。
…まあそれぐらいなら俺も何も言う気はしない。
というよりも、無理やり何もするなと言うのも町のみんなが不満に思ってしまうし、最悪の場合俺自身が犯人なのではないかと疑われてしまうからだ。あまり話を変えてしまってはこれから来るであろうパルキアとディアルガに町を吹っ飛ばされる最悪の可能性もあるため、自重しておく。
でもダークライも出てくるタイミングが悪いような気がする。アラモスタウンに異変が起きたと思ったらいきなり現れて、ダークホールで攻撃してしまっては疑われるのも当たり前だろう。町の人から見たら、ダークライが犯人だと言っているように見えてしまうのだから。
まあそんなわけで、町を守ろうと行動するダークライには同情しておこうと思う。
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今、パルキアとディアルガが戦い、このままではアラモスタウンが消えてなくなってしまうと焦っている状況です。あ、ちなみにパルキアのしわざだということも分かり、ダークライの疑いはなくなったんだけどな。
町を包む次元の壁がなくなっていくせいでやばい状況だとトニオさんが言う。
「オラシオンが何かわかりさえすれば…!」
「オラシオン?」
トニオさんとアリスさんがオラシオンについて話し合っていた。トニオさんはオラシオンというものが分からなかったのだけれども、アリスさんがそれは祖母が教えてくれた草笛の曲だという。――――その曲は、まだ異変が起きていない頃にポケモンたちの喧嘩を止めた草笛の曲だった。
「そうだ!ゴーディにはこれから起きる悪夢から予知をして、オラシオンを残していたんだ!」
「…っ!…音盤ね!」
「うん。…オラシオン。大いなる神の怒りを沈める曲――――」
トニオさんとアリスさんがアラモスタウンにある塔をみていた。音盤はそこにあって、塔の天辺に行かないと曲を奏でることはできない。だからそこまで行かないといけないのだ。だが、トニオさんは話を続けた。
「――――悪夢は私にやるべきことを教えようとしていた。未来のために、私はオラシオンを残さなければならない。…それ以外にも、日記にはこう書いてあったんだ」
「…え?ゴーディは何を書き記したの?」
「…オラシオンは、神の民が現れない場合に使うべきもの。神の民がすべてを鎮め、悪夢を浄化してくれるのを祈るのみ」
…あれ?妹のヒナに聞いたときはこんな話なかったような気がする。神の民って何だ?
俺だけじゃなく、アリスさんたちも首を傾けて疑問に思っていた。神の民とはいったい何なのだろうと。だが、トニオさんもその神の民というのを知らず、結局はオラシオンの曲を鳴らしに行くことになった。
だが気球で一気に行くはずがパルキアたちの攻撃の波状を受け、トニオさんとアリスさんは危険だと判断し塔から下に降り、飛ばされて塔の途中にある階段に落ちた俺とヒカリで行くことになった。
このままオラシオンを鳴らせばいい、そうすればこの争いは終わるはず。そう思っていたんだ。
だけど…まあ…。
「ダークライッ!!!」
これは、ヒナから聞いた話に起きた出来事。ダークライがパルキアとディアルガの攻撃を受け、消えていく光景。そしてこれも、オラシオンさえ鳴らせばダークライは助かると聞いていた。だから、大丈夫なんだと思っていたんだけどな…。
「…ああ、これは、駄目だ。やりすぎだお前ら」
『ピィカ…』
『ウパゥ…』
「サ、サトシ?」
塔の隙間からその光景を見ていた俺は小さく呟いた。その声にピカチュウやエイパムは悟ったような鳴き声をし、ヒカリはどこか恐れているような声を出す。たぶん俺今すっごく怖い顔してるかもしれない。今ならポケモンの技のこわいかおができそうな気がするぐらい。
…でもごめん。俺、止まる気ないんだ。
「ヒカリ、先に行ってオラシオン鳴らしてくれ。ピカチュウ、エイパム、ナエトル…ヒカリのこと頼むな」
「え、ちょっとどこ行くのサトシ!!?」
俺は一度下まで行き、途中であいつらの攻撃でなくなってしまった隙間から一気にジャンプし、近くにいたパルキアにとび蹴りをする。
『ッギュルァァアアアアア!!!!』
「うるっせぇんだよパルキア…あとディアルガもな…!」
『ッッ!?キュルァァァアアアアアア!!!!!』
俺はパルキアを一気に下まで叩き落とし、その反動でまた飛び上がってディアルガに近づき蹴り落とす。
落とされた衝撃で少しだけ町が消えてしまったけれどもまあ大丈夫。もうこんなことさせる気はないから。
パルキアとディアルガは驚いていただろう。ただの小さな人間が、自身の身体に攻撃し、なおかつ地面へと沈めていたのだから。しかもその人間は拳を鳴らしつつも笑顔でこちらに近づいてくる。その様子は本当に異様だった。
「 話 し 合 い で も し よ う か ? 」
『―――――――――ッッ!!?』
『―――――――――ッッ!!?』
その後、ヒカリが塔の天辺まで行きオラシオンを鳴らす間は平穏に静寂が続き、そして無事アラモスタウンはもとの世界へと帰ることができた。…まあ町を戻し帰っていく時、パルキアとディアルガはお互い涙を浮かべていたような気がするが…それは俺の気のせいだろう。
ダークライも助かってすべてが終わったと思っていたのだけれども、何故か俺は神の民として崇められ、コンテストが終わり町から出る間、いろんな意味で歓迎されました。
ヒカリにはしばらくの間怖がられました解せぬ。でもすぐにタケシがフォローしてくれたおかげで仲間内に亀裂は生じずにすんだと思っている。
兄の心境。
とりあえず無事に終わってなにより。